日本の空き家問題をビジネスチャンスに!現状と対策、事例を紹介

地方の過疎化や高齢化、核家族世帯の増加などを背景に日本全国で空き家が増加しており、様々な問題が発生しています。この空き家問題は、日本が抱える課題の1つです。

  • 空き家問題について詳しく知りたい
  • 空き家を有効活用したビジネスを模索している

本記事ではこのような方に向けて、空き家問題の現状と対策、事例を紹介します。

Contents

日本の空き家問題の現状

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家数は900万戸で過去最多を記録しました。全国の空き家数及び空き家率の推移は以下のとおりです。

出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査

また、空き家の中でも特に問題なのは、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、賃貸・売却・二次的利用を考えておらず、長期間の不在や取り壊す予定の住宅を指します。

同調査において、2023年の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の数は385万戸でした。この数は総住宅数に占める割合の5.9%に該当します。つまり全国の住宅のうち、20戸に1戸以上は賃貸や売却、二次的利用を考えていない空き家です。

全国空き家率ランキング

空き家問題の現状を把握するために、ここでは2023年の全国の空き家率ランキングを紹介します。

順位都道府県空き家率(%)賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率(%)
1位徳島県21.212.2
2位和歌山県21.212.0
3位山梨県20.58.7
4位鹿児島県20.413.6
5位高知県20.312.9
6位長野県20.08.9
7位愛媛県19.812.2
8位山口県19.411.1
9位大分県19.19.3
10位香川県18.59.7
全国平均13.85.9

参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査

空き家率ランキングの上位の都道府県は20%を超え、5戸に1戸が空き家となっています。また賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率は、全国で最も高い都道府県が鹿児島県の13.6%、次いで高知県の12.9%でした。

空き家増加による問題点

空き家が増加すると、地域住民にとって多くの問題が発生します。具体的な問題点は以下のとおりです。

  • 老朽化による倒壊のリスクがある
  • 治安が悪化する
  • 景観が悪化する
  • 不法投棄の温床になる

各問題点について簡単に紹介します。

問題点① 老朽化による倒壊のリスクがある

空き家を適切に管理せずに長期間放置すると、問題となるのは倒壊です。地域住民が倒壊に巻き込まれれば命を落とすリスクがありますし、近隣住宅に被害を及ぼす恐れもあります。また、そのような事態になれば所有者は賠償責任が発生するため、空き家の倒壊は地域住民・所有者の双方にリスクがあると言えます。

問題点② 治安が悪化する

空き家が増えると問題となるのは、放火や空き巣などによる治安の悪化です。適切に管理されずにゴミや枯草が散乱している空き家があると、放火犯のターゲットになる可能性が高まるためです。また、家財道具などをそのまま放置していると、空き巣などに狙われることも十分に考えられます。空き家が増えるとこのような犯罪者を呼び込んでしまうため、治安の悪化を招く要因です。

問題点③ 景観が悪化する

管理されていない空き家は、庭木や雑草が生い茂ることで景観を悪化させます。また、所有者以外が草むしりをするのに住居に入るのは不法侵入となる可能性があるため、近隣住民が対応しにくいのも問題解決を困難にしています。

問題点④ 不法投棄の温床になる

適切に管理されていない空き家は、敷地にゴミが捨てられても発見が遅れたり、対処せずに放置したりするため、不法投棄の温床になるのが問題です。ゴミで溢れてしまうと景観の悪化だけではなく、衛生面においても近隣住民に迷惑がかかります。

日本の空き家問題への対策

空き家問題が深刻化する中、日本政府や各自治体も様々な対策を実施しています。主な取り組みは以下のとおりです。

  • 税制支援
  • 特定空き家・管理不全空き家の指定
  • 空き家バンク

空き家の再利用などに関する重要な施策のため、これら3つの取り組みについて理解を深めましょう。

税制支援(空き家の発生を抑制するための特例措置)

「空き家の発生を抑制するための特例措置」は、住宅の所有権を相続した相続人が相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに、要件を満たして住宅や土地を売却した場合に3,000万円の特別控除が受けられる制度です。政府はこの制度により、相続した住宅の売却を促すことで空き家として放置されるのを抑制しています。

特定空き家・管理不全空き家の指定

2023年12月に、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。新たに「管理不全空き家」の区分が新設され、特定空き家となる可能性のある空き家に対して指導や勧告を行えます。

特定空き家とは、倒壊の恐れや著しく不衛生などの問題を抱える空き家を指します。各自治体が特定空き家の所有者に対して助言・指導・勧告・命令を行い、それに従わない場合は行政代執行で取り壊すことが可能です。

管理不全空き家は特定空き家になる可能性がある空き家で、同様に各自治体が指導や勧告を行います。特定空き家や管理不全空き家の指導で改善が見られない場合は勧告となり、固定資産税や都市計画税の軽減措置がなくなるため、所有者にとっては税負担が増えることになります。

空き家バンク

空き家バンクとは、空き家物件を自治体のホームページなどで情報を提供し、空き家を処分したい方と住宅を必要としている方との橋渡しをするサービスです。2019年に行われた国土交通省のアンケートによると、約7割に該当する1,261の自治体が空き家バンクを設置していました。

空き家問題の解決に貢献するビジネス事例

空き家問題の解決策をすでにビジネスにつなげている企業もあります。ここでは新規事業のアイデアを探している方に向けて、空き家問題の解決に貢献するビジネス事例を紹介します。

アットホーム株式会社:全国版空き家バンク

アットホーム株式会社は、不動産情報サービスを提供している企業です。

同社は2017年10月より国土交通省のモデル事業として、全国版の空き家・空き地バンクサイトを運営しています。自治体と協業することで、開設から5年で8,000件の成約を獲得しています。今後も国土交通省や自治体と連携し、空き家のマッチング支援を推進するとのことです。

参考:PR TIMES「アットホーム 空き家バンク、開設5年で成約報告件数8,000件を超える

株式会社ジェクトワン:アキサポ

株式会社ジェクトワンは、空き家対策としてアキサポを運営しています。

アキサポとは所有者から空き家を借り受け、リノベーション工事を行い一定期間転賃するサービスです。具体的な仕組みは以下のとおりです。

参考:アキサポ「初めての方へ「アキサポ」とは?

上図のように、所有者は負担なくリノベーションができて、毎月家賃収入を得られるようになっています。この仕組みにより株式会社ジェクトワンは、空き家を新たな資源として活用するビジネスモデルを構築しています。

急増する空き家を資源にしよう

少子高齢化の進行や核家族世帯の増加により、今後、急速に空き家が増加する見込みです。そして、すでに空き家率が20%を超え、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率が10%以上となり深刻化した地方自治体もあります。

新規事業のアイデアに悩んでいる方は、急増する空き家を資源にできる事業案を検討してみてはいかがでしょうか。