
テレビCMや街で流れてくる音を聞いただけで、ある企業の名前が思い浮かんだ経験はありませんか?もし思い当たる経験があれば、その企業は「ソニックブランディング」に成功していると言えるでしょう。
近年、このように「音」を活用したブランド戦略が注目されています。そこで本記事では、ソニックブランディングの意味や具体例、取り組むメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
ソニックブランディングとは何?
ソニックブランディングとは、サウンドロゴのように「音」を活用したブランディング手法です。CMの音や店内のBGM、アプリの操作音・通知音などが該当します。「音のブランディング」とも呼ばれ、目的は、消費者がある音を耳にしたときに企業やブランドを自然と思い浮かぶ状態にすることです。
- サウンドロゴ
サウンドロゴとは、企業やブランド、製品のイメージを表現するために作られた、短く印象的なメロディやサウンドです。テレビCMやラジオ、Webコンテンツなどで、企業名やブランドを印象付けるために使われています。
ソニックブランディングの具体例・事例

「音で企業を思い浮べる」と言われても、具体的な企業名がすぐに思い浮かばない方もいるかもしれません。
そこでここでは、ソニックブランディングに成功している企業の事例を紹介します。
- マクドナルド
テレビCMでお馴染みのメロディは、音を聞くだけでマクドナルドの商品や雰囲気を連想させます。
- Intel(インテル)
「bong」と呼ばれる5音のサウンドロゴで有名です。世界中で高い認知度を誇り、ソニックブランディングの代表的な成功例です。
- ファミリーマート
店舗に入店した際に流れるメロディチャイムは、「ファミマ入店音」として広く知られています。もともとはパナソニック製のチャイム音でしたが、現在ではこの音を聞くだけでファミリーマートを思い浮かべる人が多いでしょう。また、キャッチコピー「あなたと、コンビに、ファミリーマート」とともに流れるメロディも、同社のイメージを象徴するサウンドロゴとして認知されています。
- PayPay
スマホ決済アプリ「PayPay」のサウンドロゴは、決済完了時の「ペイペイ!」という音です。これは、決済が完了したことを利用者と店舗に伝えると同時に、サービス名を印象付ける役割を果たしています。現在、PayPayのユーザー数は6,900万人を超え、日本の人口の半数以上が利用しています。そのため、このサウンドロゴは多くの人にとって非常に馴染みのある音と言えるでしょう。
- チキンラーメン
日清食品ホールディングス株式会社のチキンラーメンは、「すぐおいしい、すごくおいしい。」というフレーズと、それに合わせた印象的なメロディで多くの人に親しまれています。この短いフレーズと音の組み合わせは、製品の魅力をシンプルかつ効果的に伝えており、ソニックブランディングの成功事例と言えます。
このように、企業のブランディングにおいて「音」は有効な手段の一つです。企業のイメージや世界観に合ったサウンドロゴを活用することで、ブランドイメージを自然なかたちで浸透させることができます。
ソニックブランディングが注目される背景
従来のブランディング戦略は、ロゴやカラーといった視覚的要素が中心でした。しかし近年では、聴覚に訴える「ソニックブランディング」が注目を集めています。その背景について紹介します。
音声市場の拡大
ポッドキャストやオーディオブックなど、音声コンテンツの市場が拡大しています。これらの音声メディアは、通勤中や家事の最中に「ながら聴き」ができるため、多くの人に支持されているからです。こうした音声メディアの浸透により、企業にとって「音を通じたブランド体験」の価値が高まっているのです。
音声認識インターフェースの普及
スマートフォンの音声アシスタントやスマートスピーカーの普及により、ユーザーとサービスの接点に音声が使われる機会が増えています。このような状況の中、企業は音声で認知されることが重要になっています。つまり、視覚的だけでなく、聴覚でも認知されるブランド作りが重要になっているのです。
音楽や音声を重視したSNSの流行
TikTokやYouTubeショートなど、音楽やナレーションを活用したショート動画がSNSで人気です。これらのプラットフォームでは、音の使い方一つで動画の印象や拡散力が大きく変わります。そのため、企業も「音」をブランディング要素として戦略的に活用する動きが広がっています。
ソニックブランディングに取り組むメリット

ソニックブランディングに取り組むことで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 記憶に残りやすい
インパクトのある音は記憶に残りやすく、効果的に認知度を高めるのに有効です。特に、短く特徴的なサウンドやメロディは繰り返し耳にすることで、ブランドと結びつきやすくなります。
- 音が企業の資産になる
サウンドロゴは、企業の「聴覚的アイデンティティ」として、長期的に活用できる資産です。さらに、日本では2015年から「音商標」の登録が可能となり、音そのものを知的財産として保護できるようになりました。実際に、ファミリーマートの「あなたと、コンビに、ファミリーマート」や、チキンラーメンの「すぐおいしい、すごくおいしい。」のメロディも、音商標として登録されています。このように、ソニックブランディングに取り組むことで、音を法的にも保護された企業の資産にできます。
- 多様な接点で利用できる
音はテレビCMやラジオ広告、音声メディア、アプリの通知音、店内BGMなど、様々な接点で活用できます。視覚による訴求が難しい場面でも、音を通じて顧客に一貫したブランド体験を提供しやすくなります。
ソニックブランディングの注意点
ソニックブランディングには多くのメリットがありますが、安易に始めるとトラブルにつながるリスクがあります。そのため、始める前に以下の3つの注意点を押さえておきましょう。
注意点① ブランドイメージと一貫性のある音を選ぶ
音の選定では、ブランドイメージとの一貫性が大切です。例えば、高級路線のブランドがポップで軽快なサウンドロゴを使うと、ブランドイメージが損なわれる可能性があります。流行や人気のメロディに流されるのではなく、自社の価値観やメッセージに合った音を選びましょう。
注意点② 音の流用は避ける
フリー素材の使い回しや、他社のサウンドロゴに似た音を採用するのは避けましょう。独自性が失われるだけでなく、著作権や商標権の侵害による法的トラブルに発展する恐れがあるからです。企業の価値ある資産にするためにも、オリジナルの音を制作することが大切です。
注意点③ 定着までに時間がかかる
ソニックブランディングは短期的に成果を上げるのが難しい手法です。音とブランドが紐づくまでに、一定の時間がかかるためです。継続的に同じ音を繰り返し使用することで、徐々にブランドとしての認知が高まるため、中長期的な視点で取り組みましょう。
音を使ったブランディングで認知度を高めよう
ソニックブランディングは、音を活用して企業やブランドの認知度を高める手法です。聴覚を通じてブランド体験を提供できるため、現代の多様なメディア環境でその重要性が増しています。適切に取り組むことでブランドイメージが強化されるだけでなく、音が企業の資産となり、企業価値の向上にもつながります。ブランディングを強化したい企業様は、この機会に取り組みを検討されてみてはいかがでしょうか。