オフボーディングは、企業価値の向上や離職率の改善などに効果があるとして注目されています。しかし、「オフボーディングってどういう意味?」という方もいるでしょう。そこで本記事では、オフボーディングの意味や注目される背景、メリットなど、注目のビジネス用語をわかりやすく紹介します。
Contents
オフボーディングとは
オフボーディングとは、退職希望者に対して事務手続きや引き継ぎなどをサポートすることで、円満退職できるようにする取り組みのことです。その目的は、退職者と良好な関係を維持することです。
オフボーディングとオンボーディングの違い
オフボーディングと似た言葉にはオンボーディングがあります。オンボーディングとは、新入社員が職場環境や仕事内容に順応して、早期に戦力にすることを目的にサポートする取り組みのことです。つまり、オフボーディングとオンボーディングの違いは目的と対象者です。
オフボーディングが注目される背景
終身雇用制度が当たり前の時代では、退職希望者は裏切り者というレッテルを張られ、サポートをする対象ではありませんでした。そのため、退職希望者に対してサポートすることに疑問を感じる方もいるでしょう。しかし、近年はオフボーディングに取り組む企業が増えています。この章では、オフボーディングが注目される背景を3つ紹介します。
SNSの普及
SNSが普及した現代では、個人が自由に情報を発信できるようになりました。そのため、従業員が退職時に冷遇されたり不快な思いをしたりすると、SNSを通じてネガティブな口コミが拡散されるリスクがあります。退職者の「なかなか退職させてもらえなかった」などのネガティブな口コミはブランドイメージを低下させ、従業員のモチベーションの低下や採用活動が不利になるといった悪影響を及ぼします。そのような悪影響を防ぐために注目されているのがオフボーディングです。
働き方の多様化
働き方が多様化した現代において、退職者と良好な関係を維持することは重要です。再雇用や副業、退職者が転職した企業との協業、あるいは一般消費者となって関係性が継続する場合もあるためです。そこで、退職者と良好な関係を維持するために、オフボーディングが注目されています。
アルムナイ採用の一般化
アルムナイ採用は退職者を再雇用することです。少子高齢化や人口減少、人材の流動性が高まった現代において、人材確保のためにアルムナイ採用が増えています。そして、ネガティブな感情を持つ企業で再度働きたいと思う人は少ないため、アルムナイ採用には退職者との良好な関係を維持することが重要です。そこで、将来のアルムナイ採用につなげる取り組みとして、オフボーディングが注目されています。
オフボーディングに取り組むメリット
オフボーディングに取り組む企業が増えているのは、多くのメリットがあるためです。この章では、企業がオフボーディングに取り組む4つのメリットを紹介します。
メリット① 企業価値の向上
退職者との良好な関係を維持できると、企業価値の向上につながります。なぜなら、良好な関係性を維持できていると、退職後に優れた人材を紹介してくれる可能性があるためです。また、転職先などで新たな知識や経験を獲得した後、再雇用することで新たな考え方を企業に取り入れることもできます。このように、オフボーディングに取り組むことで企業価値の向上が期待できます。
メリット② 離職率の改善
オフボーディングに取り組むことで、離職率の改善につながります。なぜなら、面談などにより退職希望者の本音を聞き出して、「退職したい」と思う原因を改善することで、退職を思い留まる可能性があるためです。また、退職につながる原因を把握し改善することは、他の従業員にも働きやすい環境となります。この2つの効果により、離職率の改善が期待できます。
メリット③ 従業員のロイヤリティの向上
オフボーディングのメリットは、既存の従業員のロイヤリティ(愛社精神)向上につながることです。退職者の意見や不満を把握して改善することで、従業員に働きやすい環境となり、満足度が高まるためです。このようにオフボーディングは、退職者だけではなく、既存の従業員にも好影響が期待できます。
メリット④ ネガティブな口コミの対策
オフボーディングのメリットは、ネガティブな口コミ対策になることです。退職者と良好な関係を構築することで、SNSにネガティブな口コミが投稿されるのを予防できるためです
オフボーディングのプロセス
オフボーディングですべきことは、退職前・退職日直前から当日・退職後の各プロセスによって異なります。ここでは、各プロセスですべき項目をわかりやすく紹介します。
退職前
退職前にすべき項目は以下のとおりです。
- 面談
- 社内への公表
- 業務の引き継ぎ
- 退職時に必要な書類の準備
退職前は、後任への引き継ぎや煩雑な事務手続きがあります。それらをサポートすることで、退職希望者には感謝の気持ちが芽生えるでしょう。また、面談では退職希望者の本音を聞き出すことが重要です。これまでの待遇や評価制度、職場環境など様々な観点から意見をもらい、職場環境の改善に役立てます。
退職日直前から当日
退職日直前から当日にすべき項目は以下のとおりです。
- 会社の資産・備品の回収
- システムやメールへのアクセス制限
退職日直前から当日にかけて重要なのは、企業のセキュリティを維持することです。そのために、パソコンやUSBメモリ、社員証、鍵などの会社の資産・備品を回収します。また、退職後も会社のシステムやメールにアクセスできると、機密情報の漏洩の恐れがあるので注意が必要です。退職後は使用できないように、アクセス権を制限します。
退職後
退職後にすべき項目は以下のとおりです。
- 退職手続きに伴う書類の送付
- 社内イベントや同窓会の案内
退職後は、離職票や源泉徴収票などの退職手続きに伴う書類を早期に送付します。これらの送付が遅れると、退職者が不安に感じたり手間が増えたりするためです。また、アルムナイ採用を促すために、退職後は社内イベントや同窓会などの案内も送付しましょう。
オフボーディングの効果を高めるためのポイント
オフボーディングの効果を高めるには、以下の2つのポイントが重要です。
- 退職することを否定しない
- 転職をサポートする
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
ポイント① 退職することを否定しない
面談などの場面では、辞めてほしくないあまりに強く引き留めてしまったり、退職することを否定したりしがちです。しかし、このような行動は退職希望者にストレスを与えてしまい、「なかなか辞めさせてくれない」などの不満につながる可能性があるので注意しましょう。そのため、オフボーディングの効果を高めるには退職することを否定せず、退職希望者の意思を尊重する姿勢が大切です。
ポイント② 転職をサポートする
オフボーディングの効果を高めるには、転職をサポートすることが有効です。例えば、転職活動の際に役立つ推薦状の発行、転職先の紹介などです。このように転職までサポートすることで、退職者に感謝の気持ちが芽生えるため、オフボーディングの効果が高まります。
オフボーディングに取り組んでみよう
オフボーディングは、退職希望者をサポートすることで、企業価値の向上や離職率の改善などが期待できる取り組みです。退職者からネガティブな口コミを拡散されるリスクの低減にも役立ちます。まだ取り組んでいないのであれば、この機会にオフボーディングに取り組んでみてはいかがでしょうか。