日本はここからが面白い!日本経済史と飛躍への活路②~ミクロ経済学から読み解く 少子高齢化時代に、日本が取るべき 経済大国復活への道筋!~

少子高齢化の影響により、様々な業界で従来のビジネスモデルが通用しにくくなっています。例えば、「モノが売れない」と困っている製造業の方も多くいらっしゃるでしょう。

そこで前回の「日本経済の変遷」に続き、今回は少子高齢化時代の経済成長と日本がとるべき戦略についてお届けします。

Contents

少子高齢化時代の日本の現状

戦後の日本の総人口は増加を続け、1970年に初めて1億人を突破しました。しかし、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じ、2024年6月1日時点で日本の総人口は1億2,389万人です。少子高齢化を背景に今後も人口減少が続き、2055年には9,744万人と1億人を割り込む見込みです。

出典:一般財団法人国土技術研究センター「人口減少していく日本

このように人口減少が進む要因の1つに、合計特殊出生率の低下があげられます。合計特殊出生率とは、1人の女性が生涯で産む子どもの数の平均です。人口を維持するには2.06~2.07が必要と言われる中、2023年度は1.20で大きく下回っています。

このまま少子高齢化が進むと、どのような社会になるのかイメージが沸かない方もいるでしょう。

そこで、未来の日本の様子を端的に示す例として、65歳以上の高齢者を何人の労働者で支えるのかを紹介します。1965年は1人の65歳以上の高齢者を20~64歳の9.1人が支えていました。2012年になると2.4人となり、2050年には1.2人で支える見込みです。

少子高齢化時代の経済成長とは

少子高齢化時代の経済成長の基礎知識として、まず紹介するのは「ソロー・モデル」です。

ソロー・モデルとは、マクロ経済学の代表的な倫理モデルで、アメリカのロバート・ソローが提唱しました。ソロー・モデルでは、GDPを以下の式で表します。

各要素の内容や意味は以下のとおりです。

記号内容意味
K資本蓄積量 Capital(Kapital)社会にどのくらいの資本が蓄積されているのか
L労働量 Labor労働力や労働人口
A全要素生産性 Total Factor Productivity (TFP)資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因 例:技術進歩や効率化、最適なビジネスモデル等

ソロー・モデルの式は、A・K・Lの3つの要素を改善することで、GDPが高まることを示しています。

●各要素の改善例

K:短期的に資本の増加を考える場合、外資資本を含む資本の蓄積

L:国内で人口動態がない場合、移民の受け入れを含めた人口増加策

A:社会効率化・イノベーションの実現(生産効率を高める)

1人あたりのGDP成長を考える

1人あたりGDPは、国民1人あたりどれだけ豊かであるかを示す指標です。GDPを総人口で割って算出します。ソロー・モデルで考えると式は以下のとおりです。

この式は、A・Kの増加、もしくはLの減少で1人あたりGDPが増えることを示しています。GDPと1人あたりGDPの各要素の違いは以下のとおりです。

日本がとるべき戦略

ソロー・モデルから日本がとれる経済成長モデルの方向性は、「GDPを高める」と「1人あたりGDPを高める」の2つです。どちらが日本に適しているかを考察します。

GDPを高める経済成長モデル

GDPを高める経済成長モデルは、アメリカや中国のように、多くの人口を抱えて大国を目指す手法です。人口ボーナスを狙う戦略とも言えます。人口ボーナスとは、人口増加期にもたらされる成長の恩恵のことで、労働力が豊富になると経済成長が期待できます。

1960年代の日本における高度成長期は、この人口ボーナス期を迎えたことが要因です。現在の中国の成長も、人口の急激な増加で説明がつきます。そして、アメリカやヨーロッパでは、移民を受け入れることで人口増加を継続させています。

しかし、現在の日本は人口ボーナスの反動による急激な少子高齢化時代です。このような中、人口ボーナスを狙うには、アメリカやヨーロッパのように移民を受け入れる政策が考えられます。ただし、国民が移民政策を受け入れるかは別問題のため、実現できるかは不透明です。

1人あたりGDPを高める経済成長モデル

1人あたりGDPを高めるには、ソロー・モデルの式から全要素生産性と資本量の蓄積を高めることが必要です。具体的には、「生産性の向上」と「資本量の増加」を指します。

この経済成長モデルで成功している国はスイスです。

スイスは、2023年の1人あたりGDPが10万ドルを超え、世界3位でした。同年の日本の1人あたりGDPが3万ドルであることから、日本よりも約3倍高いことになります。

スイスの経済成長において重要な特徴は以下の3つです。

  • 観光立国で外国人観光客から外貨を蓄積している
  • ラグジュアリや精密機械の産業で強みを持っている
  • ネスレやロシュなどのグローバル企業の経済活動により外貨を蓄積している

このように、スイスは観光立国で精密な技術を持っている国です。日本と共通点が多く、参考にすべき経済成長モデルと言えます。

1人あたりGDPを高める経済成長モデルの具体的な施策例は以下のとおりです。

1. 全要素生産性を高める(生産性の向上)

  • 産業構造を転換し、高付加価値産業へ集中する
  • 国民の教育水準や能力を高める

2. 資本蓄積量を高める(資本量の増加)

  • 自国以外の市場から外貨を稼ぐ
  • 絶え間ないイノベーションと効率化を促す

ここまでの説明から、現在の日本には1人あたりGDPを高める経済成長モデルが適していると言えます。

セルウェルが考える高付加価値化

前述したように、少子高齢化時代の経済成長には、1人あたりGDPを高める経済成長モデルが有効です。そして、1人あたりGDPを高めるには、高付加価値化が必要です。

そこで、経済成長のために「日本国内の産業を高付加価値産業のみにする」という極端な考えに至るかもしれません。この場合、分業化された付加価値の低い産業については、ほかの国や地域が担うことになります。例えば、原料を海外で作ってもらい、日本では完成品を作ることに専念するといった具合です。

しかし、この手法は貿易依存を生み出し、様々な弊害をもたらします。

弊害1. 空洞化現象

IT分野の高付加価値化に注力したとします。製造業は海外からの輸入に依存することになり、製造業従事者の失業率が増加するでしょう。製造業従事者はスキルや経験がないため、IT分野の職に就けません。すると、製造業の盛んな海外の地域に人材が流出し、産業の空洞化が起こってしまいます。

弊害2. 食料自給問題

日本は食料自給率が低く、輸入に依存しています。ほかの産業に注力してしまうと、食料自給率はさらに悪化するでしょう。食料品を輸入に頼ることは、有事の際には安全保障上の致命的な問題となります。輸入が止まると、国民の生活が即座に苦しくなるためです。

このような弊害があるため、国内の産業を高付加価値産業のみにすればいいというのは非現実的です。

そこでセルウェルは、高付加価値産業のみにするのではなく、日本独自のバリューチェーンを構築することが重要と考えています。具体的には、人材や資金などの足りない部分をイノベーションによる高付加価値化でカバーすることです。

ビジネスの課題はセルウェルにお任せください

セルウェルでは、お客様の課題やニーズに適した高付加価値化を提案しています。少子高齢化時代の今、どのようにして事業を成長させるかで悩んでいるご担当者様は、弊社までお気軽にご相談ください。