コロナ禍でジェンダーレスが進む?「ジェンダー平等を実現しよう」というSDGs 目標を実践化、Z世代の商品選択の特徴 

ジェンダーレスとは 

ジェンダーレスの言葉を身近に感じていませんか?アパレル業界を始め美容、学生服業界など様々な業界でジェンダーレス事業が展開されており、ジェンダーレスを耳にする機会が増えたと思います。ジェンダーレスへの注目が高まっているのは日本だけでなく、SDGs 17個の目標の5番目に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられているように、世界的にもジェンダーレスへの関心が高まっています。 

世界的にも注目度が高いジェンダーレスですが、皆さんはこの言葉の意味を知っていますか?ジェンダーレスとは、身体的な構造の違いはあるけれど、社会や文化において「男らしさ・女らしさ」の意識をなくす考え方のことです。日本の具体的な取り組みとしては、男性の育児休暇の取得を促したり、女性の社会復帰・進出の環境整備などが挙げられます。女だから家事育児をする、男は家事育児よりも仕事に打ち込むべきなど、これまでの「社会的性差(ジェンダー)」をなくす動きが求められています。 

世界各国でジェンダーレスへの取り組みが進んでいますが、なぜここまで注目されているのでしょうか?日本人には想像が難しいかもしれませんが、世界では、女性として生まれたために教育を受けられず、成人になる前に結婚・妊娠・出産をする人がいます。また、成人を迎えても社会進出や復帰が難しく家事育児に専念するしかない、家庭内暴力を受けている人など「社会的性差」による差別に泣いている人が多いのも事実です。 

「社会的性差」に立ち向かい、史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの話を知っている人も多いでしょう。マララ・ユスフザイさんは当時、イスラム武装勢力のタリバンに占領されていた地域にいながらも、インターネットを使い女性でも教育を受ける権利があると主張していました。しかしその活動が世に広まった結果、タリバンに銃で撃たれ重症を負うことに。何とか一命を取り止め「女性の教育の権利」について活動を再開した話は多くの方の記憶に深く刺さったと思います。 

また女性だけでなく、男性も「社会的性差」に悩んでいる人が多いのも事実です。Lean In Tokyoによる「男性が職場や学校、家庭で感じる生きづらさに関する意識調査」では、約8割の男性が「男だから」の考え方が原因で生きづらさを感じていると分かったそうです。 

https://leanintokyo.org/20191106press-release/

各年代が感じる「生きづらさ」は違うようで、20・30代は「デートでは男性が負担を大きくする、女性をリードすべき」、40・50代は「男性は定年まで正社員として働くべき」という風潮に悩んでいる人が多かったそうです。 

問題の大きさに違いはあるものの、先ほど紹介した内容のように「男らしさ・女らしさ」の固定概念によって悩みを抱えている人が多く存在します。ジェンダーレスが注目を浴びているのは、一人一人がより良い生活を実現するために必要だからだと感じます。 

コロナ禍でジェンダーレスな商品が注目されている理由 

「自分らしさ」や「自分にとっての心地よさ」など、コロナ禍を経験し自分の価値観を大切にする人が増えたことが理由の1つと考えられるでしょう。 

コロナ禍の生活とコロナ前との生活で、リモートワークに変わり家で過ごす時間が増えた人や休日に外出する頻度、友人と会う回数が減ったなど生活面で変化を感じている方が多いと思います。目にする表面の変化だけでなく、内面の変化にも気づいている人もいるのではないでしょうか。 

特にコロナ禍でリモートワークが広まり、同僚や上司と直接会う機会や仕事終わりの飲み会が減ったと思います。読者の方の中には、リモートワークが増え直接人と会う機会が減ったことで、周囲の目線を気にせずリラックスした気持ちで毎日過ごせていると実感している人もいるでしょう。 

周囲の目線を気にせず過ごせる日々が増えたことで、ジェンダーレスファッションがさらに拡大しています。コロナ前の消費者の意識の中には、服を買う際、職場へ着ていっても無難、目立ちすぎない色や柄物と他人の目線を意識した服を購入していた人が多いと思います。読者の方も心当たりがありませんか? 

ですがコロナ禍を経験し、「自分の価値観」や「自分らしさ」の大切さに気づいた人が多くなり「自分らしさ」を閉じ込めず解き放つことで幸せを感じている人が増えています。ジェンダーレスな商品は「自分らしさ」を実現する選択肢の1つとして注目度が高まっています。 

Z世代の商品選択の特徴 

Z世代は幼い頃を過ぎた時早い時期から、インターネットなど情報技術が発達した環境に囲まれ、オンラインのコミュニケーションやインターネットを通じて世界の情報に触れることが当たり前になっています。SNSやインターネットの普及により、物心ついた時から様々な価値観を持った人に触れられる環境で育っているため、「自分の価値観を大切にする」その傾向が強いと言われているのがZ世代です。 

商品やサービスを購入する際には「自分にとって本当に必要な商品やサービスか」「本当に価値あるものか」と自分の価値観を軸に考える特徴が見られます。またInstagramやTwitterなどSNSの普及により、自分と似た価値観を持つ人から情報を入手したり、興味ある情報だけ入手したりと情報を選択しています。SNSや検索エンジンでは情報が溢れかえっているため、調べた情報に対して警戒心が強いのもZ世代の特徴といえるでしょう。 

自分の価値観を持ち、情報に対して警戒心が強いZ世代。彼ら彼女たちに商品を購入してもらうには、お金を支払う価値があると感じてもらえるかどうかが鍵になるのではないでしょうか。 

ジェンダーレス商品の例 

ジェンダーレス商品は様々な業界で販売されており、ファッションを始め、学生服や美容品など大手企業が事業に取り組み商品展開しています。 

そこで今回は、ファッション、ビューティー関連、装飾品の3つに関するジェンダーレス商品を紹介します。 

ファッション 

ユニクロ事業を手がけているファーストリテイリング社の完全子会社ジーユー(GU)では、2022年春夏ファッションに向け、性別、年齢を超えたジェンダーレス・エイジレスな商品の展開を発表しました。 

昨年の秋からXSや3XLとサイズの幅を広げて商品を販売しており、性別や体型に縛られず自分に合うファッションを楽しんでもらうコンセプトを発信しています。ジーユー(GU)がジェンダーレスファッションへの取り組みを強化しているのには、Z世代を中心に「自分らしさ」を大切にしている人が増えているのが背景にあるでしょう。特に10代〜20代の若者に「自分らしいファッション」を求める人が多いようです。 

また今後の消費者の中心がZ世代へ移り変わると予想しており、将来消費者に選ばれる企業になるため「多様性」を考えた商品を強化していく方向へ足場を固めていくかもしれません。 

Youtubeで発表会の一部が紹介されているので、気になる方は是非チェックしてみてください。 

参考サイト&Youtube 

https://www.youtube.com/watch?v=t4KYMSSEnWk 

https://www.zaikai.jp/articles/detail/1182 

ビューティー関連 

最近では一般男性のメイクが流行っていますが、これまでは考えられなかったと思います。K-POPや男性人気アイドルの影響や、リモートワークが広まりWeb会議で映る自分の姿を改善したいと思う男性が増えたことが男性メイクの急増の背景にあるでしょう。 

資生堂、コーセー、オルビスなどの大手化粧品会社も男性メイク用品の研究・開発・販売に力を注ぎ込んでおり、新たな市場に注目が集まっています。 

資生堂では2003年にブランド「SHISEIDO MEN」を発売し、2003年から19年間、男性の肌を徹底的に研究しています。現在「SHISEIDO MEN」のHPでは、スキンケア商品は10種類、メイクアップ商品は4種類のラインナップ。購入者のレビューでは高評価が多く、男性の肌トラブルを改善に導いてくれるような商品が多そうです。リピータが多いのも納得できるのではないでしょうか。 

https://www.shiseido.co.jp/shiseidomen/ 

装飾品 

ブライダルジュエリーやネックレス、ピアスなどのジュエリー商品で多くの人気を集めている 4℃。実は昨年、ジェンダーレスなジュエリー展開を目的として、公式オンラインショップ限定「4℃ HOMME+(ヨンドシー オムプラス)」が誕生しました。商品ラインナップは、ネックレス、リング、バングル、ブレスレットやイヤーカフなど豊富です。 

シルバーやゴールドの商品が多く、ジェンダーレスを意識した商品だと感じます。さらにプレゼント用のラッピングサービスもあり、大切な人への贈り物の選択肢が増えそうです。 

https://www.fdcp.co.jp/DefaultBrandTop.aspx?bid=4c-homme 

4. 今後の課題 

日々変化しているライフスタイルに対応していくことが、今後の課題と言えるでしょう。ジェンダーレス商品に注目が集まっていますが、ジェンダーレス商品を展開している企業では、より良い暮らしを実現する手段の1つと捉えている企業が多いと感じます。 

コロナ禍を経験し、多くの人が「自分の価値観」を振り返るようになりました。その結果、流行に流されて何となく購入するのではなく、本当に自分に価値ある商品やサービスかを見極める意識が高まっています。特に近い将来メイン消費者となるZ世代ではその傾向が強いようです。 

消費者のニーズに合わせた商品やサービス販売は大前提ではありますが、全ての消費者に向けたサービスよりも、消費者の価値観を絞り特定の人に届ける意識を持ち、環境にも配慮した企業が今後勝ち残っていくのではと感じます。 

デジタル技術の発達、感染症などライフスタイルが変化する要因は様々ですが、この変化と向き合えるかが重要になってくるのではないでしょうか。