アメリカの若者に広がるダムフォン(Dumb Phone)とは?

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、2024年の日本のスマートフォン比率は97.0%でした。さらに、15~19歳の女性の約2割がスマートフォン(タブレットを含む)を2台以上所有していることも判明しています。この調査結果からもわかるように、現代の生活においてスマートフォンは不可欠な通信機器です。しかし、アメリカでは時代の流れと逆行し、若者の間でダムフォン(Dumb Phone)と呼ばれる電話とメールだけの携帯電話が流行っています。

そこで今回は、アメリカの若者のトレンドでもあるダムフォンについて徹底解説します。

※スマートフォン比率とは、携帯電話所有者の中でスマートフォンを利用している人の割合のことです。

Contents

ダムフォン(Dumb Phone)とは

ダムフォン(Dumb Phone)とは、電話やメール、アラームなどの基本的な機能のみを搭載した携帯電話のことです。英語のDumbは「アホな、間抜けな、愚かな」といった意味のため、ダムフォンを直訳して「アホ携帯」や「間抜けな携帯」と呼ぶこともあります。

ダムフォンの特徴

ダムフォンと呼ばれる携帯電話の特徴は以下のとおりです。

  • 基本的な機能のみ搭載している

ダムフォンの機能は、通話・メール・SMS(ショートメッセージサービス)・アラーム・カレンダーなど、基本的な機能のみです。

  • バッテリーの持ちが良い

機能がシンプルなため、バッテリーの持ちが良く、一度の充電で長時間使用できます。

  • インターネットに接続できないモデルもある

ダムフォンの中には、インターネットに接続できないモデルもあります。

このように、ダムフォンは電話やメールといった基本的な機能に特化した携帯電話です。

ダムフォンとガラケーの違い

ダムフォンはその特徴から、日本のガラケーとほぼ同義です。ただし、あえて機能を制限した最近の携帯電話をダムフォンとして区別することもあります。

また、日本のガラケーには物理ボタンが搭載されていることがほとんどです。しかし、アメリカのダムフォンの中には、デザイン性を追求するために、タッチパネルによる操作方法を採用したモデルもあります。

出典:Light社

アメリカにおけるダムフォンの現状

リサーチ会社Morning Consultの「There’s a Market for ‘Dumb’ Technology — And It’s Made Up of Young People」によると、アメリカの成人10人に1人が「家族の誰かがダムフォンを使っている」と回答しました。また、同調査ではアメリカのZ世代の16%がダムフォンを使用中で、25%の人が「興味がある」とのことです。このように、アメリカではZ世代を中心にダムフォンを選ぶ人が増えています。

※Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代のことです。

Z世代がダムフォンに注目する背景

アメリカのZ世代がダムフォンに注目する背景は、以下の3つが考えられます。

  • スクリーンタイムの抑制
  • SNS依存やSNS疲れからの解放
  • デジタルミニマリズムの拡大

アメリカのトレンドを知るためにも、これらの背景について詳しく解説します。

スクリーンタイムの抑制

スクリーンタイムとは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの画面を見る時間のことです。

スマートフォンが普及し、生活に欠かせないツールとなった今、スクリーンタイムの増加が問題視されています。DataReportalによると、アメリカのスクリーンタイムの1日の平均は7時間4分でした。日本のスクリーンタイムの平均は3時間56分なので、日本と比較しても多くの時間をスクリーンタイムに費やしていることがわかります。

過度なスクリーンタイムは視力低下や睡眠障害、うつ病のリスクを増大させるなど、心身の健康に悪影響を及ぼすと指摘されています。そこで、スクリーンタイムを抑制できる手段として注目されているのがダムフォンです。

SNS依存やSNS疲れからの解放

アメリカでは、子どものSNS依存やSNS疲れが問題視されています。実際にニューヨーク市では、14歳未満の子どもにSNSを利用させないこと、SNSの利用時間の上限を設けることなどを保護者や学校関係者に求めています。これは、SNSに依存することによる精神的なリスクを懸念したためです。

また、アメリカ公衆衛生長官の「Social Media and Youth Mental Health」の報告によると、アメリカの13歳から17歳の子どもの95%がSNSを利用しており、平均3.5時間を費やしているとのことです。そして、1日3時間以上SNSを利用する若者は、うつや不安といったメンタルヘルスが悪化するリスクが2倍になると報告しています。

このようなSNS依存やSNS疲れから解放するための手段として、そもそもSNSを利用できないダムフォンが注目されています。

デジタルミニマリズムの拡大

デジタルミニマリズムとは、生活に必要か否かを基準に使用するデジタルツールを厳選し、スマートフォンやSNSから距離をおくライフスタイルのことです。アメリカではデジタルミニマリズムの考え方が広がっており、その一環としてダムフォンが注目されています。

アメリカのダムフォンに関する動向

アメリカでは、ダムフォンが若者から支持されている影響で、フィーチャーフォン(ガラケー)の売上が増加しています。携帯電話メーカーによると、2022年から増加し始め、今では毎月数万台を販売しているとのことです。

フィーチャーフォンの世界市場が衰退する中、真逆の動きとして注目されています。

また、SNSやインターネットに依存することによる健康への懸念が高まることで、今後5年間で少なくとも販売数が5%増加する可能性もあるとのことです。

ここではアメリカのダムフォンに関する動向として、話題の出来事を紹介します。

Luddite Club(ラッダイト・クラブ)の発足

ダムフォンに関連した活動として、Luddite Club(ラッダイト・クラブ)の発足が挙げられます。Luddite Clubとは、SNSに疲れた高校生らが立ち上げたグループ活動です。主な目的はスマートフォンを使わないことで、定期的にグループのメンバーで集まり、デバイスの電源を切って同じ時間を共有しながら自由に過ごすとのことです。このLuddite Clubは、他の高校にも広がっており、スマートフォンから離れたいと感じている高校生が増えていることがわかります。

参考:NEWPEACE「スマホ断ちのコミュニティ!?オンラインの世界から距離をおくラッダイト・クラブのコミュニティ

人気ラッパーとのコラボモデルが即日完売

アメリカのLight社は、人気ラッパーのケンドリック・ラマー氏とコラボレーションし、ダムフォンの「Light Phone II」の限定バージョン250台を発売しました。それらは即日完売し、話題になりました。この出来事からもダムフォンが注目されていることが伺えます。

参考:Forbes JAPAN「通話とメールだけ「アホ携帯」が人気 脱スマホ中毒だけでない米Z世代の需要

SNS疲れがビジネスチャンスに

ダムフォンは基本的な機能に絞ることで、スクリーンタイムの抑制やSNS依存・SNS疲れからの解放が期待できる携帯電話です。ダムフォンのトレンドは始まって間もないですが、月数万台売れており、ニーズは確実にあるとのことです。新規事業のアイデアを探している方は、ダムフォンの事例を参考にしてはいかがでしょうか。