デジタル・ディバイドは、情報通信技術を利用できるかできないかで生じる格差のことです。日本だけではなく、世界的な問題として注目されています。本記事ではデジタル・ディバイドの概要、企業における問題点と対策例をわかりやすく解説します。
Contents
デジタル・ディバイドとは
総務省のデジタル・ディバイドの定義は、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」です。日本語では情報格差とも呼ばれています。
ITやICTなどの情報通信技術が発展している現代において、インターネットを利用しない、あるいはできないことは様々な問題を引き起こします。そのため、個人や企業においてはデジタル・ディバイドの解消が必要とされているのです。
また、日本においてもデジタル・ディバイドは存在しています。総務省の調査によると2021年の日本のインターネット利用率は82.9%でした。つまり、日本の6人に1人がインターネットを利用していません。このことから、日本においても対策が必要と言えます。
参考:総務省「令和4年版 情報通信白書|総論」
デジタル・ディバイドの種類
デジタル・ディバイドは、格差の対象によって以下の3種類に分類されます。
- 個人・集団間
- 地域間
- 国際間
3種類は、相互に影響しているのが特徴です。この章では、全体像を把握するために各種類について解説します。
個人・集団間デジタル・ディバイド
個人・集団間デジタル・ディバイドは、個人間や企業・学校などの集団間で生じる情報格差のことです。
例えば、高齢者がスマートフォンやパソコンを持っていないために若者との情報格差があることや、使用しているインターネットの接続端末の性能に違いがあるなどです。
個人・集団間のデジタル・ディバイドは年齢や性別、収入などの違いによって格差が生じやすくなります。
地域間デジタル・ディバイド
地域間デジタル・ディバイドは、地域や自治体などの間で生じる情報格差のことです。
例えば、都市部では5Gなどの最先端の情報通信技術を利用できます。しかし、地方では5Gのインフラが整っていないため、利用できないエリアも珍しくありません。※5Gとは第5世代移動通信システムのことで、高速かつ大容量のモバイル通信を実現できる技術です。
このように地域間のデジタル・ディバイドは、地域間のITインフラの違いにより生じやすくなります。
国際間デジタル・ディバイド
国際間デジタル・ディバイドは、国家間で生じる情報格差のことです。例えば先進国と発展途上国を比較した場合、インフラの整備状況や収入、教育レベルの違いにより格差が生じます。
デジタル・ディバイドが起こる原因
なぜデジタル・ディバイドが起こるのかといえば、主に以下の4つの原因があります。
- 収入や予算の違い
- 年齢の違い
- ITインフラの違い
- 教育や学歴の違い
この章では、デジタル・ディバイドの原因について詳しく解説します。
収入や予算の違い
個人・集団間において収入の違いは、選択できる通信機器やサービスに差を生む原因です。収入が高いほど、より高性能なサービスや製品を選択できるためです。
また、地域間や国家間において予算の違いは、ITインフラの整備や教育といった様々な分野に影響します。そのため、予算の少ない地域や国ほどデジタル・ディバイドが生じやすくなります。
年齢の違い
生まれながらにしてIT技術に囲まれて育った若者世代をデジタルネイティブと呼ぶように、若者世代は新しいIT技術を使える可能性が高いです。一方、高齢者はスマートフォンを持っていても、あまり活用できていない現状があります。その証拠に、総務省の調査によるスマートフォンやタブレットの利用状況は以下のとおりです。
出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」
グラフから年齢が高くなるほど、情報通信機器を活用しなくなることが見て取れます。
ITインフラの違い
光回線が整備されていない地域は、整備されている地域と比較して高速通信が困難です。他にも移動通信システムが4Gと5Gのどちらに対応しているかによって、地域のモバイル通信速度が大きく変わります。このようにITインフラの違いは、通信速度に大きな影響を与えます。
通信速度に開きがあると、同じ時間で得られる情報量も大きく異なるため、デジタル・ディバイドが生まれてしまうのです。
なおITインフラは都市部よりも地方で遅れがちです。その要因として予算が少ないことや、人口密度が低いために設備投資をしても回収が困難な点が挙げられます。
教育や学歴の違い
教育レベルが高いと、コンピュータの操作方法やIT技術の活用方法などを学習・習得する機会が増えます。また教育レベルの差は学歴の差にもつながり、学歴が高いほど高収入の仕事に就きやすくなるため、教育や学歴の違いはデジタル・ディバイドの原因となるのです。
デジタル・ディバイドによる企業への影響と問題点
デジタル・ディバイドは個人の問題と思うかもしれませんが、企業にも影響があります。
例えば、IT技術に精通した人材を確保できなければ、オンライン市場への参入ができない、あるいは遅れてしまうことで成長の機会を逃してしまうかもしれません。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)などのIT技術を使った変革を推進できなければ、業界における競争力が低下するでしょう。
さらには新しいIT技術を導入できなければ、生産性を高められず、競合他社との競争で不利になります。このようにデジタル・ディバイドは、企業にとっても影響が大きいため、対策すべき問題です。
企業におけるデジタル・ディバイドの対策例
企業が成長するには、IT技術を上手く取り入れる必要があります。そのためにもデジタル・ディバイドへの対策が重要です。対策例として2つの方法を紹介します。
IT技術に精通した人材の確保
企業におけるデジタル・ディバイドの対策は、IT技術に精通した人材を確保することです。最新のIT技術を把握し、対応できる人材がいればDX導入などで力になるためです。
しかし、このようなIT技術に精通した人材を確保するのは容易ではありません。そこで、人材確保に向けて待遇を見直すことも対策となります。
IT技術に関する社員教育を拡充
求人を出しても、IT技術に精通した人材を確保できるとは限りません。そこで、社内でIT技術に精通した人材を育てることも大切な対策方法です。
例えば、以下のような研修が考えられます。
- 新たなITツールの操作方法の習得
- パソコンの操作方法の習得
- プログラミング技術の習得
- 外部講師による講習会や勉強会
- AI活用に関する研修 等
このようにIT技術に精通した人材を育成することで、デジタル・ディバイドが解消されるでしょう。
デジタル・ディバイド対策で競争力を高めよう
デジタル・ディバイドは、情報格差とも呼ばれ、情報通信技術を利用できる人とできない人の格差です。個人においては、情報通信技術を活用できないと得られる情報量に違いがでるため、様々な不利益を被る可能性があります。
企業も同様に、新たなIT技術を積極的に活用できないと競争力が低下する可能性があります。そこで企業においては、IT技術に精通した人材を確保・育成するなどの対策に取り組みましょう。