サイバーレジリエンスとは?意味や必要性、高める方法を紹介

サイバー攻撃による被害がニュースで度々報道されており、これらの攻撃は企業にとって深刻なリスクとなっています。 

従来の対策方法は、外部からの不正アクセスを遮断することに重点が置かれがちでした。しかし、サイバー攻撃を100%防ぐことは難しいため、攻撃を受けた後の「回復力」や「適応力」を高めるサイバーレジリエンスが注目されています。 

本記事ではサイバー攻撃のリスクを軽減したいビジネスパーソンに向けて、サイバーレジリエンスの意味や注目される背景、高める方法をわかりやすく解説します。 

Contents

サイバーレジリエンスとは 

レジリエンスとは、「回復力」「適応力」「復元力」などを意味する言葉です。そして、サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を受けた場合でも迅速に復旧する「回復力」や被害を最小限に抑える「適応力」を指します。 

サイバーレジリエンスの考え方の特徴は、サイバー攻撃への対策をした上で、それでも被害が発生する可能性があることを前提にしている点です。そのため、従来の不正アクセスを遮断するといった基本的な対策に加えて、セキュリティが突破された場合の対応策や復旧の準備が必要です。 

サイバーレジリエンスが注目される背景 

そもそも、「なぜサイバーレジリエンスが必要なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。そこで、ここではサイバーレジリエンスが注目される背景を解説します。 

ランサムウェアによる被害の深刻化 

近年、企業にとって大きな問題となっているサイバー攻撃はランサムウェアです。 

ランサムウェアとは、「ランサム(身代金)」と「ソフトウェア」を組み合わせた造語です。感染すると、システムやデータが暗号化されて使用不能になります。そして、攻撃者から復元と引き換えに身代金を要求されるサイバー攻撃です。そして、日本のランサムウェアによる被害件数は高い水準で推移しています。警視庁の調べによると、2022年は230件、2023年は197件でした。 

参考:警視庁「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」 

ランサムウェアが企業にとって大きなリスクとなるのは、次の5つの問題点があるためです。 

問題点① 身代金を要求される 

ランサムウェアを感染させた攻撃者の目的は、企業から身代金を引き出すことです。感染した場合、企業は身代金を支払うか否かという非常に難しい決断を迫られます。支払いに応じれば、経営に大きな負担を強いられるだけでなく、犯罪者を助長する結果にもなりかねません。 

問題点② 身代金を支払っても復元する保証がない 

要求された身代金を支払ったとしても、暗号化されたデータが確実に復元される保証はありません。攻撃者の目的は身代金の取得なので、目的を達成すれば復元作業をしないことも十分にあり得るからです。そのため、身代金を支払ったにもかかわらず、データが復元できないという可能性があります。 

問題点③ 業務が長期間停止する可能性がある 

ランサムウェアがシステムや業務に必要なデータを暗号化すると、復旧するまで業務に支障が出ます。場合によっては、業務がストップすることもあるでしょう。また、ランサムウェアがバックアップデータを攻撃する場合があります。そのようなケースでは復旧がさらに困難になり、長期間を要することがあります。実際に警視庁のアンケート調査によると、ランサムウェア被害にあった企業のうち、約20%が復旧までに1カ月以上の時間を要しました。 

問題点④ 復旧にコストが発生する 

感染後の復旧作業は、専門的な知識やスキルが必要な上にコストも発生します。実際に警視庁のアンケート調査によると、ランサムウェア被害にあった企業のうち、約37%が復旧に1,000万円以上のコストが発生したとのことです。 

問題点⑤ 信頼を損なう 

ランサムウェアによる被害は、取引先や顧客、さらにはステークホルダーからの信頼を損ないます。業務停止による納期遅延や個人情報の流出などが発生する可能性があるためです。さらにこのような事案が発生すると、ステークホルダーからの評価も下がるでしょう。一度信頼を失うと、再構築するには時間とコストがかかり、経営にも悪影響を及ぼします。 

このように様々な問題を引き起こすランサムウェアの脅威に対応するために、サイバーレジリエンスが注目されているのです。 

欧州サイバーレジリエンス法の発効 

サイバーレジリエンスが注目される背景として、「欧州サイバーレジリエンス法」の発効が挙げられます。 

この規制は、欧州においてデジタル要素を含む全ての製品に対して、サイバーセキュリティを確保することを義務付けたものです。開発、製造、販売、保守といったライフサイクル全体において、リスクに応じたセキュリティ対策を講じる必要がある点が特徴です。また、2027年12月11日以降、対象製品は認証を受けなければ欧州市場で販売できなくなります。 

こうした状況を受けて日本企業も対応を迫られており、サイバーレジリエンスに注目が集まっているのです。 

サイバーレジリエンスを高める対策 

サイバーレジリエンスを高めるには、次の4つのポイントを押さえる必要があります。 

  • 情報資産の洗い出し 
  • 被害の最小化 
  • 復旧への備え 
  • 専門人材の確保・育成 

これら4つのポイントを実現するための対策を紹介します。 

対策① 情報資産の洗い出し 

サイバーレジリエンスを高める第一歩は、情報資産を洗い出すことです。どこにどのような情報資産が保管されているかを把握し、その価値や優先度を明確にすることで、リスクを正確に評価できるためです。そして、リスクの度合いに応じた情報資産の管理方法やセキュリティ対策を検討しましょう。 

対策② 被害の最小化 

サイバー攻撃を受けた場合に備えて、被害を最小化する仕組みを構築します。例えば、アクセス権限の設定によるネットワークの細分化です。ネットワークに細かく制限をかけることで、被害を抑制できます。他にも検知システムを導入し、不正アクセスを早期発見することも被害の最小化に役立ちます。 

対策③ 復旧への備え 

システムがウイルスに感染した場合、早期に復旧することが大切です。復旧に時間がかかるほど損害が大きくなるためです。復旧の迅速化には、以下のような対策が役立ちます。 

  • 定期的なバックアップの実施 
  • バックアップデータを安全な場所に保管 
  • サーバーやストレージの二重化による冗長化 
  • 復旧作業に備えたトレーニングの実施 
  • 復旧手順の明確化 

これらの対策を実施することで、サイバー攻撃に対する「回復力」や「適応力」を高められます。 

対策④ 専門人材の確保・育成 

サイバーレジリエンスを高めるには、サイバーセキュリティの専門知識を持つ人材が不可欠です。リスクの評価や実態に即した対策をするには、高度な知識とスキルが求められるためです。そのため専門人材を確保した上で、トレーニングを通じて自社のシステムに精通した人材を育成する必要があります。ただし、専門人材の確保が難しい場合は、外部の専門機関にアウトソーシングすることも有効な選択肢と言えます。 

サイバー攻撃の脅威に備えよう 

サイバー攻撃が巧妙化しており、完全に防ぐことは困難です。そこで重要なのは、被害を最小限に抑え、迅速に復旧できるように予め対策することです。ランサムウェアの被害が高い水準を推移している今、脅威への備えとしてサイバーレジリエンスを高めてみてはいかがでしょうか。