
ビジネスにおいて収益性や競争力を高めるには、より効率的な業務プロセスに改善することが重要です。そのような場面で有効なフレームワークは、As-Is(アズイズ)・To-Be(トゥービー)です。本記事では、「売上を拡大したい」「業務効率を高めたい」というビジネスパーソンに向けて、As-Is・To-Beの基本的な概念と使い方をわかりやすく解説します。
Contents
As-Is・To-Beとは
As-Is・To-Beは、「現在の状態」と「理想の状態」を明確にし、そのギャップを分析して改善とすべきアクションを検討するフレームワークです。ここでは、「As-Is」と「To-Be」が具体的な内容について解説します。
As-Isとは
As-Isとは、日本語に直訳すると「現状」や「そのまま」という意味で、同フレームワークでは「現在の状態」を指します。
業務改善をするためには、現在の状態を把握することが不可欠です。例えば、社内の情報共有に課題がある場合は、「会議の議事録がすぐに共有されない」や「部署間でデータのフォーマットが統一されておらず、確認作業に時間がかかる」などが考えられます。
このように、現在の業務プロセスや人員配置、設備などを明確にすることで、現在抱えている課題を顕在化できます。
To-Beとは
To-Beとは、「理想の状態」や「あるべき姿」を指す言葉です。例えば、社内の情報共有に関する理想の状態として、「会議の議事録をクラウド上でいつでも閲覧できる」や「社内全体でデータのフォーマットを統一する」などが考えられます。To-Beを明確にすることは、その実現のためにどのような改善が必要なのかを議論するのに役立ちます。
As-Is・To-Beの使い方

As-Is・To-Beで効果的な業務改善案を検討するには、適切な使い方をする必要があります。なぜなら、手順が異なると効果が薄れる可能性があるためです。ここでは、As-Is・To-Beの使い方として、6つの手順を紹介します。
手順① テーマを設定する
まず、改善したい業務のテーマを設定します。例えば、売上拡大や業務効率化、コスト削減などが考えられます。テーマを選ぶ際は、組織全体の戦略や目標と一致していることが重要です。
手順② To-Beを設定する
次に、テーマに対する理想の状態・あるべき姿を設定します。この手順でのポイントは、As-Isを考える前に、To-Beを先に検討することです。As-Isを先に検討すると、現在の状況から達成できそうな目標をTo-Beに設定しやすくなるためです。
また、To-Beを設定する際は、具体的な数値を盛り込むようにします。例えば、「売上拡大」を目指す場合、「月商3億円」や「新規契約30件/月」といった具合です。このように数値化することで、理想の状態がより明確になります。
ただし、現実とかけ離れた目標になる場合や、理想の状態をうまくイメージできない場合は、As-Isを先に検討するのも一つの方法です。
手順③ As-Isを把握する
To-Beを設定したら、現在の状態、つまりAs-Isの把握です。この手順のポイントは、設定したTo-Beに対応する現在の情報を明確にすることです。例えば、To-Beを「月商3億円」とした場合、As-Isは「直近の月商は2億円」とします。このように、対応した内容を明確にすることで、次の手順がスムーズに進みやすくなります。
手順④ ギャップから課題を抽出する
As-IsとTo-Beのギャップを分析し、改善すべき課題を抽出します。具体的には、現在の状態から理想の状態へ到達するのに、何が阻害要因となっているのかを議論しましょう。もし複数の課題がある場合は、優先順位を決定します。優先度の高い課題から取り組むことで、より効果的な改善が期待できるからです。
手順⑤ アクションを検討する
課題を解決するためのアクションを検討します。例えば、課題を「集客力」とした場合、「集客数を月間3,000人増やすためにWeb広告を強化する」や「折り込みチラシを活用して対象エリアの住人にクーポンを配布する」といった具合です。アクションを決める際は、効果だけでなく、実現可能性やコストのバランスを考慮することが大切です。
手順⑥ 実行し結果を分析する
最後にアクションを実行します。しかし、実行したからといってそれで終わりではありません。設定した期間が経過したら、To-Beにどれほど近づいたのかを分析して、振り返ることが大切です。
As-Is・To-Beのメリット

As-Is・To-Beを活用することで、得られるメリットについて解説します。
メリット① 問題点と改善点を把握できる
As-IsとTo-Beを比較することで、それまでに見えにくかった業務の課題を明確にできます。つまり、課題が可視化されることで建設的な議論がしやすくなり、具体的な改善点を把握できるのがこのフレームワークのメリットです。その結果、業務フローの最適化やボトルネックの解消につながり、効果的な業務改善を実現できます。
メリット② 課題解決の方向性を共有できる
As-Is・To-Beを活用するメリットは、チーム全体で課題解決の方向性を共有できる点です。1枚のシートに現在の状態・理想の状態・課題・アクションを整理することで、業務改善の流れが明確になり、視覚的に理解しやすくなります。これにより、チーム全体が共通の目標を目指して、一丸となって改善に取り組めるようになります。
メリット③ 様々な課題に適用できる
As-Is・To-Beは業務改善にとどまらず、マーケティング戦略の見直しや組織改革、個人のスキルアップなど、様々な課題に適用可能です。このような様々な課題に活用することで、企業全体の競争力が強化され、持続的な成長につながります。
As-Is・To-Beのデメリット
As-Is・To-Beは、運用方法によって逆効果になる場合があるので注意が必要です。ここでは、2つのデメリットについて解説します。
デメリット① 非現実的な「To-Be」を設定するリスクがある
To-Beを設定する際、実現可能性を考慮しないと、現実とかけ離れた理想の状態を設定してしまうリスクがあります。現在の技術力や生産能力、人的リソースを無視して過大な目標を設定しても実現は困難です。その結果、チーム全体のモチベーションの低下を招く可能性があります。
デメリット② As-Isの分析に時間がかかる
As-Is・To-Beで成果を上げるには、As-Isを正確に分析することが重要です。そのためには、データ収集に加え、関係者からインタビューを行うなどの作業を必要とします。これらの作業に多くの時間と労力がかかるため、短期間で成果を上げたい場合には不向きなことがあります。
As-Is・To-Beで効果的に業務を改善しよう
As-Is・To-Beは、業務改善に有効なフレームワークです。現在の状態と理想の状態を明確にして、そのギャップから課題を分析し、アクションを実行することで効果的な対策を実現できるためです。さらに、業務改善だけでなく様々な課題解決に応用できるので、ビジネスパーソンなら押さえておきたいフレームワークと言えます。「業務を効率化したい」や「生産性を高めたい」など、業務改善を検討しているビジネスパーソンは、As-Is・To-Beを活用してみてはいかがでしょうか。