目標達成のフレームワーク「WOOPの法則」とは?

「売上拡大」や「業務効率化」など、ビジネスパーソンなら誰しも達成したい目標があるでしょう。そして、多くの人が「目標達成にはポジティブ思考が大切」と聞いたことがあるのではないでしょうか。ポジティブ思考とは、物事を前向きに捉え、肯定的に考える姿勢のことです。しかし、ポジティブ思考を実践しても「やる気はあるのに目標を達成できない」や「努力が続かない」と、悩む人も少なくありません。 

そのようなポジティブ思考の課題に対処したフレームワークが「WOOPの法則」です。本記事では、WOOPの法則の基本概念と活用法をわかりやすく解説します。 

Contents

WOOPの法則とは 

WOOPの法則は、「Wish(願望)」「Outcome(結果)」「Obstacle(障害)」「Plan(計画)」の4つの要素で構成されるフレームワークです。 

提唱者の紹介 

同法則は、ドイツの心理学者でニューヨーク大学とハンブルク大学の教授であるガブリエル・エッティンゲン氏が提唱しました。同氏はポジティブ思考の危険性を伝え、日常生活と長期的な成長を実現するのに効果的なテクニックに関する研究において功績を残しています。また、同氏はWOOPの法則の普及に努めており、アプリケーションの開発なども行っています。 

WOOPの法則の4要素 

WOOPの法則は、4つの要素を順番に考えていくことで、ポジティブ思考で陥りがちな「単なる願望」で終わらせることなく、目標の達成へと導く仕組みです。以下では、4つの要素の内容と検討する際のポイントを解説します。 

Wish(願望):達成したい目標 

Wishはその名前のとおり、「達成したい願望」を設定する要素です。この要素で大切なのは「努力すれば達成できるレベル」の目標を立てることです。 

例えば、売上拡大を目指す場合は「売上高10%増」や「来店者数10%増」など、実現可能な範囲で目標を設定します。これが「売上高100%増」のように、あまり現実的でない目標だと、ポジティブ思考で陥りがちな「単なる願望」で終わる可能性が高くなります。 

WOOPの法則は、繰り返し実践することで徐々に高い目標へ到達できる仕組みです。そのため、実現可能性が低すぎる目標を設定せず、現実的な範囲で目標を設定することがWOOPの法則で成功するための秘訣です。 

Outcome(結果):達成したときに得られる結果 

Outcomeは、Wishで設定した目標が達成されたときに得られる結果をイメージする要素です。理想の未来を具体的にイメージすることで、目標達成へのモチベーションを高めることができます。 

例えば、「売上が10%増加すれば、チームの評価が上がり、自分は昇進のチャンスが広がる」などです。 

Outcomeを設定する際のポイントは、目標達成によって得られるメリットを明確にすることです。さらに、達成したときの喜びや充実感まで想像すると、より強いモチベーションにつながります。 

Obstacleは、目標達成の阻害要因を明確にする要素です。この要素によって、ネガティブな視点を取り入れていることがWOOPの法則の大きな特徴です。 

Obstacle(障害):達成までに超える必要のある障害 

例えば、「売上高を10%増加させる」という目標を立てた場合、「現在の業務が多く、新たな取り組みをする時間がない」や「チーム内でスキルや知識の差が大きく、統一した戦略を実施できない」などが考えられます。 

Obstacleを検討する際のポイントは、目標達成の阻害要因をネガティブな視点から徹底的に洗い出すことです。もし、阻害要因を思いつかない場合は、Wishの設定が誤っている可能性があるので、再度Wishの設定に問題がないか確認しましょう。 

Plan(計画):障害を越えるための計画 

Planは、Obstacleで検討した目標達成の阻害要因に対して、具体的な行動を計画する要素です。ここで有効なのは、「if-thenプランニング」という手法です。「もし〇〇という状況になったら、△△をする」のように、事前に想定する障害が発生した場合の対応策を決めます。 

例えば、「売上を10%増加させる」という目標に対して、「新規顧客の開拓に時間を割けない」という障害があるとします。この場合、if-thenプランニングを活用すると、次のような計画を立案できます。 

  • もし新規顧客の開拓に時間を割けなくなったら、週に1回業務を見直して作業の効率化を図る。 
  • もし新規顧客の開拓に時間を割けなくなったら、既存事業の業務の外注化を進める。 

Planを検討する際のポイントは、「if-thenプランニング」を活用して、実現可能な対策方法にすることです。 

WOOPの法則のメリット 

WOOPの法則を活用することで、得られる2つのメリットについて解説します。 

メリット① 目標達成を実現できる 

WOOPの法則の最大のメリットは、目標達成の可能性が高まることです。目標を明確にし、達成後の結果をイメージするだけでなく、目標達成の阻害要因の障害を事前に特定し、それを克服する計画を立てることで実現可能性が大幅に向上するためです。 

つまり、WOOPの法則はポジティブ思考でモチベーションを高めつつ、ネガティブ思考で課題に備えるというバランスの取れた戦略と言えます。さらに、障害が発生した場合に冷静に対応できるため、途中で挫折するリスクが低くなるのも実現可能性を高める要因の一つです。 

メリット② モチベーションが維持しやすい 

WOOPの法則のメリットの一つは、目標達成後の結果を明確にすることで、モチベーションを維持しやすい点です。一方、ポジティブ思考だけで目標を設定すると、予期せぬ障害が発生した際に対応策がなく、モチベーションが下がったり挫折したりして目標の達成が困難になります。 

WOOPの法則の活用例 

WOOPの法則は様々なビジネスシーンで活用できる実践的なフレームワークです。ここでは、キャリアアップと業務効率化を目指す場合の活用例を紹介します。 

キャリアアップを目指す場合 

キャリアアップを実現するには、ただ単に「昇進したい」や「スキルを向上させたい」と願うだけでは不十分です。目標の達成には、以下のように具体的な障害を洗い出し、それを乗り越える計画を立てる必要があります。 

  • Wish:チームリーダーに昇進する 
  • Outcome:昇進してマネジメント経験を積み、キャリアの選択肢を広げる 
  • Obstacle:マネジメント経験の不足により、上司や同僚からリーダー候補として認識されていない 
  • Plan: 

もしマネジメント経験が不足しているなら、社内外の研修を受講して知識を身につける 
もし周囲から評価を得られていないなら、定期的にフィードバックをもらい改善点を明確にする 

このようにWOOPの法則を活用することで、すべきことが明確になり、キャリアアップの実現の可能性が高まります。 

業務効率化を目指す場合 

業務効率化は、生産性の向上やワークライフバランスの改善につながります。しかし、改善点に気づいていても普段の業務に忙殺され、業務改善に手が回らないことも珍しくありません。WOOPの法則を活用することで、そのような場合でも効率化に向けた取り組みを実施できます。 

  • Wish:毎日の業務時間を30分間短縮し、新たなプロジェクトの作業時間を確保する 
  • Outcome:新たなプロジェクトを推進することで、事業拡大や売上アップにつながる 
  • Obstacle:ルーティン業務に時間を取られ、業務時間を短縮できない 
  • Plan: 
    もしルーティン業務の時間を短縮できないなら、自動化ツールを導入する 
    もしチーム内のコミュニケーションに時間がかかるなら、オンラインツールを活用して効率的に情報共有できる仕組み
    を構築する 

このように業務効率化を実現することで、新たなプロジェクトに時間を割けるだけでなく、生産性の向上や従業員のワークライフバランスの向上につながるでしょう 

WOOPの法則で目標を達成しよう 

WOOPの法則は、目標の設定だけではなく、障害を明確にして、それを乗り越える計画を立てるフレームワークです。活用することで、目標達成の実現可能性を高めることができます。個人の目標達成はもちろんのこと、ビジネスの課題に対してもWOOPの法則は有効です。「目標を立ててもなかなか達成できない」や「途中で障害が発生すると挫折してしまう」という方は、ぜひWOOPの法則を取り入れてみてはいかがでしょうか。