
新規事業の立ち上げは、成功よりも失敗のほうが多いと言われています。累積黒字化を達成できた新規事業が1割未満という調査結果も報告されています。
このことからわかるように、新規事業で成果を上げることは決して簡単ではありません。しかし一方で、成果を上げている企業が存在するのも事実です。その違いはどこにあるのでしょうか。
本記事では、新規事業の成功事例を取り上げ、それらに共通する成功要因をわかりやすく解説します。
新規事業が失敗しやすい理由
新規事業の立ち上げは、企業にとって重要な成長戦略の一つです。しかしその一方で、成功確率は決して高いとは言えず、多くが失敗しているのが現実です。
アビームコンサルティング株式会社の調査によると、新規事業プロジェクトのうち、累積黒字化を達成できたのは全体の7%、中核事業化できたのはわずか4%にとどまっています。これほど新規事業の立ち上げが難しい主な理由は次のとおりです。
- 市場やニーズの不確実性
- 仮説と実態のニーズとのズレ
- 市場選定のミス
- 調査・検証不足
- 専門知識・ノウハウの不足
ただし、新規事業で成果を出すためには、こうした失敗要因を避けるだけでは十分とは言えません。成功している事例に共通する要素を理解し、それを取り入れていく姿勢が重要なポイントです。
参考:アビームコンサルティング株式会社「アビームコンサルティング、新規事業創出の実態調査を発表」
新規事業の成功事例6選

大手企業・中小企業を問わず多くの企業が新規事業に取り組む中、特に成果を上げている取り組みを成功事例として紹介します。
株式会社リコー:ブライトヴォックス
株式会社リコーは、社内外からイノベーターを募り、新規事業の創出を目指すプロジェクト「TRIBUS(トライバス)」を展開しています。これは社内外のアイデアやスタートアップの知見を取り込みながら、事業化までのプロセスを加速させる統合型アクセラレータープログラムです。
TRIBUSから生まれた代表的な事例の一つが、株式会社ブライトヴォックスです。同社は、肉眼で立体的に見えるディスプレイ「brightvox 3D」を開発しています。この技術の特徴は、専用のグラスを必要とせずに立体映像を表示できる点です。イベントや展示会、エンターテインメント領域に加え、デジタルアートや文化財の再現など、幅広い分野での活用が期待されています。総務省主催の「異能ジェネレーションアワード」において企業特別賞を受賞するなど、その革新性は高く評価されています。
ラクスル株式会社:ラクスルバンク
ラクスル株式会社は、印刷・広告・物流などの領域で培った中小企業との接点を生かし、2025年に新たな金融事業として「ラクスルバンク」を立ち上げました。これはGMOあおぞらネット銀行と連携したネット銀行サービスです。最短即日での口座開設や低水準の振込手数料、高いポイント還元などが特徴です。
同社は既存事業において347万人以上のユーザー、110万以上の法人利用者を抱えており、この強固な顧客基盤を金融領域と掛け合わせることで中小企業の見えないコスト削減を目指しています。このようにラクスルバンクは、既存事業で築いたアセットを起点に新規領域へと展開し、事業化に成功した事例と言えます。
タニタ株式会社:タニタ食堂
タニタ株式会社は、体脂肪計などの計測機器メーカーとして培ってきた知見を生かし、「健康づくりのノウハウを社外へ展開する」という新たな事業領域に踏み出しています。その代表例が「タニタ食堂」です。
タニタ食堂の原点は、1990年に一般向けの減量施設「ベストウェイトセンター」を社員向けの食堂へと転用したことにあります。当初はカロリー重視の献立で構成されており、味や量に対して社員から不満の声も多く寄せられていました。
その後タニタは方針を見直し、「健康」と「おいしさ」の両立へとシフトします。高級食材に頼らず旬の野菜を活用しながら、カロリーや塩分を抑えつつ、満足度の高いメニュー開発を追求しました。この取り組みから生まれたレシピ本は大ヒットし、ベストセラーとなっています。
さらに、「社員以外にも食べられる場を提供してほしい」という要望に応え、一般向けのタニタ食堂として事業を開始しました。このようにタニタ食堂は、社内で培った健康づくりの仕組みを社外へと展開し、事業化を実現させた成功事例と言えます。
セコム株式会社:バーチャル警備システム
セコム株式会社は、深刻化する人手不足や警備ニーズの多様化に対応するため、新規事業として「バーチャル警備システム」を開発しました。これは、ディスプレイ一体型ミラー上にAIを搭載したキャラクター「バーチャル警備員」を表示し、警戒監視や受付業務などを担わせる次世代型の常駐警備サービスです。
来訪者への対応や周辺監視はバーチャル警備員が行い、その映像や音声情報はリアルタイムで監視センターへ送信されます。必要に応じて、熟練した警備員が遠隔または現地で対応する仕組みとなっており、「人とAIの役割分担」によって警備品質と効率性の両立を実現しています。
バーチャル警備システムは、従来の「人による常駐警備」をデジタル技術で拡張し、限られた人材で高度な警備サービスを提供するという新しいモデルを確立した成功事例です。
荒川工業株式会社:ナノバブル発生器
荒川工業株式会社は、自動車部品の精密加工で培った金属加工技術を生かし、新規事業として「ナノバブル発生器」を開発しました。ナノバブルとは、極めて微細な気泡を水中に発生させる技術で、洗浄力や消臭力の向上などが期待される技術です。
同社のナノバブル発生器は、配管や水回りに設置することで、家庭用から産業用まで幅広い環境でナノバブルを生成できる点が特徴です。洗濯や浴室での汚れ除去に加え、農作物の洗浄や養殖場の水質改善など、産業分野での活用も広がっています。
同社の取り組みは、BtoC・BtoBの両面で市場を開拓した新規事業の成功事例と言えます。
株式会社山翠舎:古木アップサイクル
株式会社山翠舎は、古民家の解体時に発生する古木を家具や店舗内装などに再活用する事業を展開しています。もともとは木材の輸入を手がけていましたが、空き家問題という社会課題に向き合う中で、社会貢献につながる取り組みとして古木の活用を推進するようになりました。
同社の特徴は、古木が持つ歴史や風合いを生かし、飲食店や宿泊施設などの空間を高付加価値なデザインへと昇華している点にあります。こうした取り組みはSDGsの観点からも高く評価されています。
成功事例に共通する新規事業の成功要因

紹介した企業は多岐にわたりますが、新規事業の成功事例には共通する特徴があります。その中でも特に重要な要素は次の2つです。
① 既存アセットの活用
多くの成功事例では、完全にゼロから事業を立ち上げているわけではありません。技術力や顧客基盤、ノウハウなど、既存事業で培ったアセットを活用しています。自社の強みやリソースを別の市場で再活用することで、成功確率を高めていると言えるでしょう。
② 市場変化や社会課題が起点
もう一つの共通点は、市場の変化や社会課題を起点としている点です。人手不足や空き家問題、健康志向の高まりなど、外部環境の変化を起点に新規事業を創出しています。
こうしたアプローチによって、新しい市場でも需要を捉えることに成功しています。
まとめ
新規事業の立ち上げは、企業のさらなる成長を実現するのに有効な戦略です。成功すれば大きな成果が期待できる反面、多くの事業が成果を上げていません。
成功確率を高めるためには、成功事例から学ぶことが重要です。多くの成功企業に共通しているのは、自社の強みを生かしながら、市場変化や社会課題を起点にビジネスを構築している点です。これから新規事業に取り組む際は、こうした視点を参考にしてみてはいかがでしょうか。
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