今さら聞けないSociety 5.0とは?意味や課題をわかりやすく解説

近年、ビジネスシーンにおいて、「Society 5.0」というキーワードを聞く機会が増えています。

しかし、ビジネスパーソンの中には「意味を今さら聞けない」という方もいるでしょう。

本記事ではそのような方に向けて、Society 5.0の意味や具体例、課題をわかりやすく解説します。

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Society 5.0とは超スマート社会のこと

Society 5.0は簡単に言えば、AIやデジタル技術を最大限活用し、サイバー空間と現実世界を融合した取り組みにより、人々の暮らしを豊かにする超スマート社会のことです。2016年に内閣府が策定した「第5期科学技術基本計画」では、超スマート社会を以下のように定義しています。

「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」

なお、Society 5.0の読み方はソサエティゴーテンゼロです。

Society 1.0から5.0まで

Societyは1.0から5.0まであり、これまでの人類史における5つの社会を意味しています。

  • Society 1.0:狩猟社会
  • Society 2.0:農耕社会
  • Society 3.0:工業社会
  • Society 4.0:情報社会
  • Society 5.0:超スマート社会

なお、現代社会はSociety 4.0の情報社会で、次の新たな社会の位置付けがSociety 5.0です。

Society 5.0が実現したらどうなる?

Society 5.0では、以下のようなことが実現できると期待されています。

  • スマート農業
  • 製造工程の完全自動化
  • AIによる生産性の向上
  • 自動運転車の実用化
  • 人手不足の解消
  • 未来予測・予測精度の向上

それぞれの具体例を解説します。

具体例① スマート農業

スマート農業とはAIやIoT、ドローン、ロボット技術、データ技術を活用した農業のことです。例えば、無人トラクターによる農業の自動化が挙げられます。他にも、ドローンで広範囲の農作物を空撮し、画像をAI技術により分析することで、効率的に農作物の育成状況を確認するなどです。

具体例② 製造工程の完全自動化

AIやIoT、ロボット技術が発達すると、製造工程の完全自動化も夢ではありません。他にも、生産計画をAIが担うことで、生産量の調整や在庫管理の自動化も考えられます。

具体例③ AIによる生産性の向上

Society 5.0では、AIとビッグデータを組み合わせることで、過去データから最適な方法を選択できます。農業であれば、より効率的に育成できる管理方法の選択に役立つでしょう。製造業であれば、製造工程の最適化や自動化により生産性の向上が期待できます。

具体例④ 自動運転車の実用化

大容量の高速通信のインフラ整備により、実現できると期待されているのは、自動運転車の実用化です。全車から得られる情報から、最短ルートの計算や道路の周囲状況の把握まで瞬時にできると考えられているためです。交通渋滞の緩和や交通事故の削減にも役立つと考えられています。

具体例⑤ 人手不足の解消

Society 5.0では、人に代わってロボットが働く機会が増えます。例えば、トラックの自動運転や介護ロボットによる介護の提供などです。運送業界や介護業界は人材不足が深刻化しており、Society 5.0により省人化を実現できると、人手不足が解消すると期待されています。

具体例⑥ 未来予測・予測精度の向上

サイバー空間と現実世界を融合することで、未来予知や予測精度の向上が期待できます。

例えば、デジタルツイン(サイバー空間内に再現した現実世界)内における、台風や大雨のシミュレーションです。デジタルツインでシミュレーションをすることで、より精度の高い未来予知や予測が実現できます。天気や災害以外にも、渋滞の予測や個人の病気のリスクなどを判断するのにも役立つとされています。

Society 5.0の課題・デメリット

Society 5.0の具体例から、メリットばかりと思うかもしれません。しかし、Society 5.0には課題・デメリットもあります。実現した時に備えるために、ここでは5つの課題・デメリットを紹介します。

課題① 個人情報の漏洩や取り扱い

Society 5.0では大量のデータを使用するため、個人情報の漏洩や取り扱いが課題です。例えば、AIの学習データとして個人情報を無断で利用することは、倫理的に問題があるでしょう。また、学習データをAIが誤って公開することも考えられます。このようなリスクに備えるには、個人情報の取り扱いにおいて、これまで以上に透明性の確保が求められます。

課題② セキュリティ強化が必須

Society 5.0は大容量・高速通信が可能なうえに、膨大なデータを取り扱うのが特徴です。そのため、セキュリティに脆弱性があるとハッキングで大量の個人情報が流出したり、大規模なサイバー攻撃を受けたりする可能性があります。個人情報や企業秘密が流出したり、サイバー攻撃によりシステムダウンしたりすると、企業の信頼を失う恐れがあります。

課題③ 雇用への悪影響

Society 5.0の課題・デメリットは、雇用の悪影響です。

AIやロボットが人の代わりに働けるようになると、これまでの職業がなくなり、失業につながる可能性があるためです。

実際に野村総合研究所の調査によると、日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替可能と試算されています。これほどの既存の職業がなくなると、多くの産業に悪影響を与える恐れがあります。

参考:野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に

課題④ ハルシネーション問題

AIを活用した場合に課題となるのは、ハルシネーションです。

ハルシネーションとは、AIが事実と異なる誤った情報を生成する現象のことです。もっともらしい嘘のため、誤情報を拡散したり、誤った情報を元に意思決定をすることで損害が発生したりする恐れがあります。

例えば、生産計画をAIが作成した場合にハルシネーションが発生しないとも限りません。誤りに気がつかないと量産しすぎて不良在庫が発生したり、在庫切れで販売機会を失ったりするでしょう。

また、Society 5.0で期待されている自動運転車においても、AIの誤検知による事故などのリスクが懸念されています。

課題⑤ デジタル格差の是正

Society 5.0では、地方のインフラ整備や高齢者のデジタル教育などが課題です。デジタル技術を活用するには、デジタル格差を是正する必要があるためです。

新たな社会のSociety 5.0に備えよう

AI技術やドローン、データ技術などは日々進歩しています。そのため、現代はSociety 4.0からSociety 5.0に近づいていると言えるでしょう。Society 5.0はビジネスチャンスがある一方で、課題・デメリットもあります。この機会に、いつかくる超スマート社会におけるリスクを検討してみてはいかがでしょうか。