デスクリサーチとは?手順や調査に役立つ情報源、コツを解説

デスクリサーチとは、既存の統計データや文献、官公庁の公開資料などを活用して行う調査手法です。机上調査とも呼ばれ、主に市場調査やニーズ調査の前段階によく活用されています。

新規事業の検討や市場分析を行う際には、まずデスクリサーチによって市場規模や競合状況、業界のトレンドなどを把握することが重要です。しかし、「具体的にはどのような手順で進めればいいのか」「どの情報源を活用すればいいのか」と迷う方もいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、デスクリサーチの具体的な手順や注意点、コツをわかりやすく解説します。

デスクリサーチとは

デスクリサーチとは、既存の統計データや文献、資料を収集・分析する調査手法です。主な目的は、事業戦略の策定や商品開発、マーケティング戦略などの意思決定に必要な情報を収集することです。

特徴は、新たにデータを収集するのではなく、すでに公開されている情報を活用する点にあります。比較的低コストかつ短期間で市場の全体像を把握できることから、本格的な市場調査や消費者調査に先立つ基礎調査として広く活用されています。主な情報源は次のとおりです。

  • 官公庁が公開している統計データ
  • 業界団体が発行する調査レポート
  • 市場調査会社の分析資料
  • 企業のIR資料や決算説明資料
  • ニュース記事や専門メディア

実際の市場調査では、まずデスクリサーチによって市場構造や市場機会を把握し、その後にアンケート調査やインタビュー調査などの一次調査を行うケースが一般的です。

デスクリサーチとデスクトップリサーチの違い

デスクリサーチと似た言葉に「デスクトップリサーチ」があります。どちらも、公開されている統計データやレポート、各種資料などを収集・分析し、市場や業界の状況を把握する調査手法です。そのため、多くの場面ではほぼ同義語として使われています。

ただし、一部では次のように区別されることもあります。

  • デスクリサーチ:オンライン・オフライン双方の情報を利用する調査
  • デスクトップリサーチ:主にオンラインの情報を利用する調査

このように区別する必要がある場合は、調査対象の範囲を意識しましょう。

デスクリサーチのメリット

デスクリサーチは、事業戦略の立案や市場分析を行う上で重要な調査手法の一つです。なぜなら、効率的に市場の全体像を把握でき、意思決定に役立つためです。特に、次の3つのメリットはデスクリサーチを実施する大きな理由と言えます。

  • 一次調査と比べてコストを抑えられる

デスクリサーチのメリットは、調査コストを抑えられる点です。アンケート調査やインタビュー調査などの一次調査では、調査設計や調査対象者の募集、データ収集・集計などに多くの費用と手間がかかります。一方、デスクリサーチは既に公開されている情報を活用するため、比較的低コストで情報を収集できます。

例えば、官公庁の統計データを活用し市場規模や市場構造などを把握する際は、多くの場合無料で公開されているため、費用をかけずに市場の全体像を把握できるでしょう。このように、費用を抑えつつ市場の全体像を把握するのにデスクリサーチは有効です。

  • 短期間で情報を収集できる

デスクリサーチは、短期間で多くの情報を収集できる点もメリットです。例えば、新規事業の立ち上げを検討している場合は業界ニュースや企業のIR資料、調査レポートなどを調べることで、市場のトレンドや競合企業の動向を比較的短時間で把握できます。このように、迅速に情報を収集できることは、スピーディな意思決定に役立ちます。

  • 時間や場所に制限されず調査できる

デスクリサーチは、時間や場所に縛られずに調査を進められる点もメリットです。公開されているデータや資料の多くはインターネット上で入手できるため、オフィスや自宅など場所を問わず調査を進められます。例えば、海外市場の情報を調べる際も国内にいながら調査できます。このように、時間や地理的な制約を受けずに情報収集を行えるメリットは、デスクリサーチが多くの企業で活用されている理由の一つです。

デスクリサーチのデメリット

デスクリサーチは有用な調査手法ですが、いくつかのデメリットもあります。ここではデスクリサーチを実施する際に押さえておきたい3つのデメリットを紹介します。

  • データが古い可能性がある

デスクリサーチで収集するデータは必ずしも最新とは限りません。官公庁の統計データや市場調査レポートは、調査や集計に一定の時間がかかる上、定期的に行われていない場合があるためです。古いデータをもとに市場分析を行うと、現在の市場動向を反映していない結論に至る可能性があります。このようなリスクを防ぐためには、複数の情報源を比較し、最新のニュースや企業動向などもあわせて確認することが重要です。

  • 情報の信頼性にばらつきがある

デスクリサーチでは、得られる情報の信頼性にばらつきがある点がデメリットです。出典が不明確、あるいは根拠が示されていないデータをそのまま利用してしまうと、誤った分析につながる可能性があります。そのため、官公庁の統計データや調査会社のレポートなど、信頼性の高い資料を優先的に参照することが重要です。

  • データが偏る可能性がある

特定の企業の資料や業界団体のレポートだけを参考にすると、その組織の立場や意図が反映された情報に偏る可能性があります。このような偏りを防ぐためには、複数の情報源から情報を収集することが重要です。

このように、デスクリサーチにはいくつかのデメリットがあります。しかし、これらのポイントを理解した上で調査を行えば、効率的に市場の全体像を把握する有効な手法として活用できます。

デスクリサーチの具体的な手順

デスクリサーチで効果を上げるには、計画的に進めることが重要です。ここではデスクリサーチを実施する際の基本的な手順を解説します。

手順① 目的を明確にする

デスクリサーチの最初の手順は、目的の明確化です。目的が曖昧なまま情報収集を始めると必要以上に多くの情報を集めてしまい、時間や手間がかかるだけでなく、分析の効率が低下する可能性があるためです。例えば、次のような目的を設定します。

  • 新規事業の市場規模を把握する
  • 競合企業の動向を調査する
  • 業界の成長性やトレンドを把握する

このように調査目的を具体的に設定することで、収集すべき情報の範囲も明確になり、効率的に調査を進められます。

手順② 情報源を選定する

次に、調査に利用する情報源を選定します。デスクリサーチでは様々な情報源を活用できますが、どの情報を採用するかによって調査結果の信頼性は大きく変わります。そのため、情報源の選定はデスクリサーチにおいて重要なプロセスの一つです。情報源を選ぶ際は、量の多さに加えて、信頼性・客観性・更新時期などを確認することが重要です。具体的には、官公庁の統計データや調査会社のレポートは信頼性が高く、情報源によく採用されています。

また、調査目的に応じて使い分けることも重要です。市場規模を把握したい場合は統計データ、競合企業の動向を把握したい場合はIR資料などを参考にします。このように調査目的に適した情報源を選定することで、より信頼性の高いデータを収集でき、調査の精度も向上します。

手順③ 情報を収集する

選定した情報源から、調査目的に沿った必要な情報を収集します。この段階で重要なのは、情報の公開時期や出典を必ず確認することです。公開から時間が経過しているデータや、出典が不明確な情報を使用すると、現在の市場状況と乖離した分析結果になる可能性があるためです。

例えば、市場規模や成長率などは数年前のデータであっても現状と大きく異なっていることも少なくありません。また、インターネット上には根拠が明確でない情報も多く存在します。そのため、情報を収集する際は、データの更新時期・出典・信頼性を確認することが重要です。

手順④ 収集したデータから仮説を検証する

情報収集が終わったら、集めたデータを分析して仮説の検証を行います。例えば、新規事業の市場調査で「○○市場は今後成長する可能性が高い」という仮説を立てていた場合、市場規模の推移や将来予測などのデータをもとに、その仮説が妥当かどうかを検証します。このプロセスでは、複数の情報源を比較しながら分析することが重要です。異なる資料を照らし合わせることで、より多くの視点から仮説を検証できます。

手順⑤ レポートにまとめる

最後に、調査結果を整理してレポートとしてまとめます。デスクリサーチは意思決定の判断材料に使われるケースが多く、情報をわかりやすくまとめることが求められます。図表やグラフを活用し、視認性を意識することがポイントです。また、調査結果から得られた示唆や今後の課題などもあわせて記載すると、その価値をより高められます。

デスクリサーチに役立つサイト・ツール

デスクリサーチでは、信頼性の高い情報を得るために情報源の選定が重要です。ここでは、デスクリサーチでよく利用される代表的なサイト・ツールを紹介します。

e-Stat 政府統計の総合窓口 

出典:e-Stat 政府統計の総合窓口

e-Statは、日本政府が提供する統計データのポータルサイトです。総務省をはじめとする各省庁が公開している統計情報を横断的に検索できるため、デスクリサーチでは基本的な情報源の一つです。主に次のようなデータを収集できます。

  • 人口統計
  • 産業統計
  • 家計調査
  • 労働統計

このようなデータを活用することで、市場規模の推計やターゲット市場の人口動向などを把握できます。そのため、新規事業の市場調査や市場規模の把握など、基礎的な分析を行う際に適したサイトです。

統計ダッシュボード

出典:統計ダッシュボード

統計ダッシュボードは、国や民間企業などが提供している統計データの図表やグラフを調査できるシステムです。数値データをグラフ形式で把握できるため、データの変化を直感的に理解できます。主に次のようなデータを収集できます。

  • 経済成長率
  • 消費者物価指数
  • 人口推移
  • 労働市場の指標
  • 家計消費動向

これらの統計データを視覚的に確認できることから、市場環境の変化やトレンドを把握する際に役立ちます。

国立国会図書館サーチ 

出典:国立国会図書館サーチ

国立国会図書館サーチは、国立国会図書館が提供する検索サービスで、連携している日本国内の図書館や研究機関が保有する資料を検索できるデータベースです。書籍や論文、デジタル資料など幅広い情報を一括で検索できます。検索可能な主な資料は次のとおりです。

  • 紙の本や電子書籍の出版情報
  • 国立国会図書館の所蔵資料
  • 国立国会図書館のデジタル資料
  • 大学や研究機関の学術資料
  • データ連携している全国の図書館のデジタル資料

また、一部の資料はインターネット上で直接閲覧できるほか、必要に応じてコピーを取り寄せることも可能です。こうした機能により、特定のテーマについて文献や研究資料から情報を収集するのに役立ちます。

EDINET

出典:EDINET

EDINETは、金融庁が運営している企業情報開示システムです。上場企業が提出する有価証券報告書や四半期報告書などを検索・閲覧できます。主に次のような情報を収集できます。

  • 企業の事業内容
  • 企業の財務状況
  • 企業のリスク情報

競合調査や業界構造の把握など、企業分析を行うのに向いています。

野村総合研究所(NRI)

出典:野村総合研究所

野村総合研究所は、日本を代表するシンクタンクの一つであり、様々な業界に関するレポートや分析記事を公開しています。専門家による市場分析や将来予測がまとめられているため、業界理解を深める際に有効です。主に次のような情報を確認できます。

  • IT・金融などの業界分析
  • 市場の将来予測
  • 社会・産業構造の変化

統計データだけでは把握しにくい市場の背景やトレンドを理解するのに役立ちます。

ChatGPT

出典:ChatGPT

ChatGPTは、OpenAIが開発した生成AIツールです。自然な文章で質問を入力することで、AIが短時間で回答してくれるのが特徴です。デスクリサーチでは、次のような場面で役立ちます。

  • 顧客ニーズや課題の洗い出し
  • 情報収集のサポート(ソース元の提示など)
  • 収集した情報の要約
  • レポートの作成

目的の明確化からレポートのまとめまで、使い方次第で活用できるのが生成AIツールの強みです。ただし、生成AIツールの出力する情報には誤りが含まれる可能性があるため、データの正確性や出典については別途確認することが重要です。

デスクリサーチを実施する際の注意点・コツ

デスクリサーチを実施する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。言い換えると、これらの注意点を意識して調査を進めることで精度の向上が期待できます。特に、調査の質を左右するポイントは次のとおりです。

  • 複数の情報源を比較する

デスクリサーチでは、特定の資料だけを参考にすると情報が偏る可能性があります。複数の情報源を組み合わせて確認することが重要です。異なる資料を比較することで、データの信頼性を確認できるだけでなく、より多角的な視点で市場や業界の状況を把握できます。

  • 情報の更新時期や信頼性を確認する

公開されているデータは必ずしも最新とは限りません。特に統計データや市場調査レポートは作成から一定の時間が経過している場合があります。そのため、調査で得られた情報の公開時期や出典を確認し、信頼性の高いデータを優先して活用することが大切です。

  • 担当人材のスキルやノウハウが成果を左右する

デスクリサーチは、必要な情報を効率的に見つける検索力や、収集したデータを読み解いて仮説を導き出す分析力が求められます。そのため、担当者のスキルや知識によって調査の質が大きく変わる可能性があります。精度を高めるためには、ノウハウを蓄積し、調査の進め方を標準化していくことも重要です。

また、専門人材が不足している場合は専門家やコンサルティング会社に委託する方法も有効な選択肢です。

新規事業のアイデア検証にデスクリサーチを活用しよう

デスクリサーチは、既存の統計データや資料を活用して市場や業界の全体像を把握する調査手法です。市場規模や顧客ニーズ、競合企業の動向の把握に加え、新規事業のアイデア検証などにも活用できます。比較的低コスト、かつ短期間で情報を収集できる点がメリットです。新規事業を立ち上げる予定のご担当者様は、事前調査としてデスクリサーチを実施してみてはいかがでしょうか。

一方で、情報の偏りや信頼性の低いデータが含まれる可能性がある点には注意が必要です。また、必要な情報を見つけ出し分析するためには、一定のスキルやノウハウも求められます。自社だけでの実施が難しい場合は、セルウェルのデスクリサーチサービスの活用もぜひご検討ください。専門チームが情報収集から分析までをサポートいたします。