スマートパッケージングとは何?意味や導入するメリット、事例3選

消費者の満足度向上や高度なトレーサビリティが実現できるとして、スマートパッケージングが注目されています。しかし、「どんな意味?」や「具体的な事例を知りたい」など、疑問をお持ちのビジネスパーソンもいるでしょう。そこで、本記事ではスマートパッケージングの意味や導入するメリット、事例を紹介します。 

スマートパッケージングとは 

スマートパッケージングとは、QRコードやバーコードといった識別技術に加えて、センサーやインジケータなどを活用して製品の真贋判定や追跡、品質の確認を可能にする包装技術です。例えば、食料品や医薬品の品質が悪化しないように、設定した温度を超えた場合に管理者へ知らせる機能を持つ包装が該当します。
※インジケータとは、対象の状態を示すためのデータや計器のことです。 

大きく分類すると、アクティブパッケージングとインテリジェンスパッケージングの2種類です。ここでは、各種類の内容を解説します。 

アクティブパッケージングとは 

アクティブパッケージングは、製品の品質を維持する機能を持つ包装技術のことです。例えば、乾燥材や脱酸素剤を使用し、湿気や酸化を抑えて食料品や医薬品の品質を保つ包装技術が該当します。このような技術を活用することで、傷みやすい食品の保存期間を大幅に伸ばせます。 

インテリジェンスパッケージングとは 

インテリジェンスパッケージングは、診断機能や表示機能を備えた梱包技術です。センサーやインジケータを内蔵し、適切な環境下で保存されているかを確認します。例えば、設定した温度を超えるとパッケージのインジケータが反応し、色が変わるといった具合です。これにより、製品の品質の正当性を可視化できます。 

スマートパッケージングの市場規模 

スマートパッケージが注目される一つの理由は、世界の市場規模が増加傾向にあることです。 

実際にResearch Nesterの「スマートパッケージング市場調査」によると、世界のスマートパッケージング市場規模は2023年が359億米ドルでした。そして2024年に368億米ドル、2036年末までに604億米ドルに達すると予想されており、今後は年間成長率5.4%で市場規模が拡大すると見込まれています。特に食料品や医薬品の安全性の向上に向けて、スマートパッケージングは需要が高まるとしています。 

企業がスマートパッケージングを導入するメリット 

企業からスマートパッケージングが注目されているのは、多くのメリットが得られるからです。ここでは企業が導入する4つのメリットを紹介します。 

メリット① 品質管理の向上 

スマートパッケージングを導入することで、製品の品質管理が飛躍的に向上します。例えば、温度や湿度の変化をリアルタイムで検知したり、適切な環境下での保管や輸送をサポートしたりできるからです。特に、食品や医薬品など、品質管理が重視される業界では、スマートパッケージングを導入するメリットは大きいと言えます。 

メリット② 消費者の満足度向上 

消費者にとって、商品の安全性や情報の透明性は重要な要素です。スマートパッケージングを活用することで、製品の追跡データを比較的容易に参照できるようになります。これにより、消費者の信頼を獲得し、ブランド価値の向上にもつながるでしょう。 

メリット③ 高度なトレーサビリティの実現 

スマートパッケージを導入するメリットは、既存のトレーサビリティをより高度化できることです。例えば、RFIDやQRコードを活用することで、原材料の調達から消費者に届くまでを比較的容易に追跡できます。複雑化したグローバルサプライチェーンの全体像を把握するのにも役立ちます。 

※RFIDとは、ICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術です。電波を用いて離れた位置から情報を読み取れるため、業務効率の改善に役立ちます。 

メリット④ 偽造商品の流通の防止 

現代は流通のグローバル化と電子商取引の拡大により、不正な取引や偽造による模造品が市場に出回るリスクが増大しています。スマートパッケージングを活用することで、そのような偽物が市場に出回るのを予防できます。具体的には、RFIDやQRコード、あるいはホログラムなどのテクノロジーを活用することで、真贋を見極めることが可能なためです。これにより、消費者を偽物から保護できます。 

スマートパッケージングの取り組み事例3選 

スマートパッケージングの技術は、多様な分野で活用され、業務効率や事業拡大に貢献しています。ここでは、企業の取り組み事例3選を紹介します。 

事例① 社会福祉法人恩賜財団 済生会滋賀県病院 

社会福祉法人恩賜財団 済生会滋賀県病院では、院内業務の効率化を目的として、2020年にICタグを活用したスマートパッケージングの導入を開始しました。 

具体的には、手術材料の梱包材にICタグを貼付し、通常通り手術を実施。その後、使用済みの梱包材をICタグの読み取り機が付いたダストボックスに捨てるだけで、手術材料が患者名と自動で紐付く仕組みを構築しました。 

この取り組みにより、手術材料と患者情報の自動登録が可能になり、手作業による登録の負担が大幅に軽減されました。加えて、手術材料の使用量を正確に把握できるようになったことで、発注業務の自動化にもつながっています。 

参考:一般社団法人 日本自動認識システム協会「RFID活用事例集」 

事例② 三菱ガス化学株式会社 

三菱ガス化学株式会社は、世界に先駆けて脱酸素剤を開発した企業です。同社が取り組む新たなスマートパッケージングの技術として、酸素吸収フィルム「エージレスオーマック」があります。この製品は、レトルト食品やボイル加熱食品の品質保持に活用されており、フィルム自体に酸素吸収機能を持たせることで、内容物に含まれる酸素を除去し、食品本来の風味や色調の保持を可能にしました。 

「エージレスオーマック」はフィルム包装でありながら長期間の品質保持を可能にし、従来の缶詰からの切り替えが進んでいます。実際に、はごろもフーズ株式会社の同製品を採用した「朝からフルーツ(パウチ)」シリーズは、消費者から高い評価を得ています。その理由の一つが、缶詰では難しかった内容物の可視化を実現したことです。さらに、同製品には「保存期間の延長」「コスト削減」「容器の小型化による売り場拡大」といったメリットもあり、採用が広がっています。 

参考:三菱ガス化学株式会社「酸素吸収フィルム「エージレスオーマック®」」 

事例③ TOPPANデジタル株式会社 

TOPPANホールディングス株式会社のグループ会社であるTOPPANデジタル株式会社は、スマートパッケージングの取り組みとして、開封検知機能付きICタグラベルを開発しました。 

このICタグラベルは、2種類の周波数に対応し、開封の有無を正確に検知できるのが特長です。1枚のICタグで物流や在庫管理、製品の追跡、真贋判定まで対応できるため、特に医薬品や医療機器の分野での普及が期待されています。なお、同社はこの技術を活用し、2025年度には関連受注を含め約20億円の売上を目指しています。 

参考:TOPPANホールディングス株式会社「TOPPANデジタル、開封検知機能付きデュアルICタグラベルを開発」 

スマートパッケージングを事業に役立てよう 

スマートパッケージングは、従来の包装に新たな技術を加えることで、利便性や機能性を向上させた革新的な包装技術です。QRコードやバーコードに加え、センサーやインジケータなど、多様な技術が活用されています。 

すでに多くの企業が、業務効率化や事業拡大を目的に取り組んでいます。新規事業のアイデアを探しているご担当者様は、この機会にスマートパッケージングの活用や事業案を検討してみてはいかがでしょうか。