なぜ150本あっても、一つも決まらなかったのか
この会社には技術力があり、社内公募で新規事業のアイデアが150本集まっていました。ところが「どれをやるか」が半年決まらない。現場を整理すると、止まっていた理由は次の3つに分かれました。
① 評価の基準が人によって違う 技術畑の役員は実現性を、営業出身の役員は市場規模を、経営企画は投資回収を見ていた。同じ案の評価が正反対になる。 |
② 基準の議論を、案の議論と同時にやっていた 「この案は良い/悪い」の議論の中で基準もぶつかるため、毎回ゼロから議論がやり直しになる。 |
③ 落とす理由を誰も言語化できない 提案者は現場のエース。基準がないまま落とせば「あの人の案を潰した」だけが残る。だから誰も決めない。 |
3つに見えて、根っこはひとつです。「アイデアが足りない」のではなく、決めるための共通言語がなかった。これが、決められない「たった1つの理由」の正体でした。
実際に使った「評価表」(簡易版を公開)
セルウェルが持ち込んだのは、151本目のアイデアではなく、次のような一枚です。実物を簡略化していますが、構造はこのままです。
| 評価軸(重み) |
見る項目 |
判定に使う事実 |
| 市場性(40%) |
市場規模と成長率/顧客の困りごとの深さ/競合の密度 |
公的統計・業界データ・顧客ヒアリングの一次情報 |
| 自社適合(35%) |
既存技術の転用度/販路・顧客基盤との接点/担える人材の有無 |
技術棚卸し・販路マップ・スキル台帳 |
| 実現性(25%) |
必要投資と回収期間/規制・認証のハードル/撤退のしやすさ |
概算投資額・規制調査・撤退条件の事前定義 |
※重み(40/35/25)はこの会社の合意値。既存事業の成熟度や投資体力で変わります。数字そのものより「先に重みを合意する」ことに意味があります。
順番が9割——「重みの合意」を案の議論より先に
この表で重要なのは、中身より使う順番です。私たちは必ず、個別の案を一切見せる前に「重みだけ」を経営陣に合意させます。案が見えた後に基準を議論すると、自分の推す案に有利な基準を主張する政治が始まるからです。案が見えない段階なら、基準の議論は純粋な経営方針の議論になります。
この会社では、重みの合意に1か月かけました。遠回りに見えて、これが最短でした。基準が固まった後の採点・絞り込みは2か月。150案は7案に集約され、7案すべてが経営会議を通過しました。
|