「新規事業を立ち上げたけれど、商品が売れるか心配」
「新商品を開発するとき、最初の製造数を迷ってしまう」
「新サービスの投入前に、ユーザーに受け入れられるか知りたい」
このように、新規事業で新商品・新サービスを投入する際には不安があるでしょう。売れると見込んでいた商品が全く売れないこともありえるためです。そのため最初から本格的に展開してしまうと、大量の売れ残りを発生させるリスクがあります。
そのようなリスクを抑えるために用いられる方法はテストマーケティングです。
本記事ではテストマーケティングのメリット・デメリット、方法についてわかりやすく解説します。
Contents
テストマーケティングとは
テストマーケティングとは、新商品・新サービスを本格展開する前に一部の地域や店舗、ユーザーに対して試験的に販売する方法です。
小規模のマーケットで試して得られるデータをもとに、新商品の改善やターゲット設定の見直しをします。試しであっても実際に市場にだすことで、課題やターゲット層のニーズが明確になるためです。
例えば男性の美容意識の高まりを受けて、男性向け化粧品の新商品を開発したとしましょう。しかしテストマーケティングしてみると全然男性に売れず、反対に女性が興味を持っていたとします。
この商品の場合、男性向けでは売れない可能性が高く、女性向けとして売れる可能性があることを示しています。女性が興味を示した要因を分析し、商品を改善することで次につなげられるでしょう。
このように市場調査などでニーズを読んで新商品を開発しても、必ずしも売れるとは限らないためテストマーケティングを実施することが重要になるのです。
テストマーケティングの3つのメリット
BtoCやBtoBで、テストマーケティングがよく用いられるのは以下の3つのメリットがあるためです。
・リスクを最小限にできる
・ターゲットが明確になる
・客観的な意見が聞ける
テストマーケティングから得られたデータを分析することで、マーケティング戦略を見直せるのがポイントです。
リスクを最小限にできる
事業者にとって最も避けたいのは、大量に商品を製造・仕入れたのに全く売れないことです。投資した費用が無駄になるだけではなく、処分・保管のためにさらに費用が必要となるためです。
事業者の規模によっては1回の失敗で、大きなダメージとなることもあります。
このような事態を避けられるのがテストマーケティングのメリットです。
なぜなら小さな市場で試すことで、本格的に導入した場合の必要な商品数を計算できるためです。それに合わせた仕入れ体制、製造管理を構築することでリスクを抑えながらも販売機会に備えられます。
ターゲットが明確になる
新商品の企画段階で多くの場合はターゲットを明確に設定しているでしょう。しかし本当に想定したターゲット層が購入してくれるかは別問題です。その答えは実際に市場に投入してみるまではわかりません。
テストマーケティングであれば、小さな市場だとしても実際に商品を投入するので顧客の反応がみられます。もしターゲティングにミスがあれば、この段階で気づけるでしょう。
先に紹介した、男性向けとして開発した化粧品が女性向けに適しているといった具合です。
実際のユーザーの行動をもとにして、ターゲットを明確にできるのは、テストマーケティングのメリットです。
客観的な意見が聞ける
テストマーケティングのメリットは、本格展開する前にユーザーからの客観的な意見を聞けることです。例えば良いレビューもあれば悪いレビューもあるでしょう。そのような実際に使ってみたユーザーの意見は、商品を改良・改善するための良いヒントになります。
商品を改善してから本格投入することで、投入後の悪いレビューを抑えるのにも役立つはずです。またユーザーの意見から商品を改善することで、よりニーズに対応できるため売上アップも期待できます。
テストマーケティングのデメリット
テストマーケティングはメリットばかりではなく、デメリットもあります。それは自社が開発している商品を競合他社に知られてしまうことです。テストマーケティングをした時点で、競合他社に自社がどのような戦略で次の商品を開発しているのかが明らかになります。
テストマーケティングまでに商標登録などの必要な手続きを済ませる必要があります。
テストマーケティング手法 オフラインの場合
オフラインで行うテストマーケティング手法は以下の3つがあります。
・実店舗での試験販売
・モニター調査
・会場調査
オフライン調査の魅力は、実際にユーザーと触れ合えることです。ユーザーが商品を手にとってどのような部分をみているのか、どのような表情をしているのかなどを観察・インタビューすることもできます。
実店舗での試験販売
実店舗での試験販売は、実際に店舗に商品を陳列してどのくらいの商品が売れるのか、どのようなユーザー層が興味を示すのかを確認する手法です。
本格的な展開と違うことは、一部の地域や限られた店舗でのみ販売することです。
例えば「当店だけの限定商品」や「○○県だけの限定販売」といった商品を見かけることがよくあります。コンビニや全国チェーンの飲食店で、そのような商品のなかから定番商品にかわった商品をイメージできる方は少なくないでしょう。このように店舗や地域を絞って販売し、反応の良かった商品を全国展開するといった流れにすることで、リスクを抑えながら商品開発ができます。
実店舗での試験販売は、本番に近い環境でテストマーケティングできるので、高精度なデータを取得できるのが特徴です。
ただし実際に近い環境で販売するためには、既存商品と同様に広告を投下する必要もあるためコストがかかります。またテストをする地域や店舗を絞りすぎてしまうと、データを収集するのに時間がかかることもデメリットです。
モニター調査
モニター調査はホームユーステストとも呼ばれ、試供品などを各家庭で試してもらう方法です。
具体的には既存顧客や希望者などから調査対象を選出し、テストしたい商品のサンプルを自宅に送付して試供してもらいます。重要な点は、試供してもらった方に使用感や感想などを、インタビューやアンケートでフィードバックしてもらうことです。フィードバックされた情報を分析することで、商品の改善や本格的な展開ができるかの判断材料にします。
モニター調査をよく利用するのは、化粧品などの美容用品や家電製品です。美容用品であれば試供品をもらったことがある方も多いでしょう。そのような方のなかには、アンケートやインタビューをお願いされた方もいるはずです。
なぜ美容用品や家電製品にモニター調査が多いのかというと、これらの商品はしばらく使わないと効果などを実感できないためです。自宅でじっくりと試してもらうことで、ユーザーの本当の意見を聞き出しやすくなります。
デメリットはサンプルの管理がモニター任せのため、適切な保管方法や使用方法ではない場合があることです。
会場調査
会場調査とは調査対象者に特定の場所に集まってもらい、商品・サービスの感想をヒアリングする方法です。
会場調査のメリットは調査対象者が商品をテストしているのを直に観察できる点や、使用している際に疑問に思ったことや不都合な点をインタビューで確認できる点です。
ほかにも商品やパッケージをみたときのユーザーの表情であったり、使用している際の生の声を聞いたりすることで、肌感覚で商品の反応を感じることもできるでしょう。
ただし会場の準備やユーザーに対応するためにスタッフを配置する必要があるなど、人件費や場所代に費用がかかるのがデメリットです。
調査対象者を集める方法としては、事前に対象者に対して案内をだす方法や、当日会場周辺にいる方に声をかけてお願いする方法があります。
また法人向けのサービスであれば、展示会が会場調査の役割を果たしてくれます。
テストマーケティング手法 オンラインの場合
オンラインのテストマーケティング手法は以下の3つです。
・Webアンケート
・SNSマーケティング
・クラウドファンディングマーケティング
オンラインのテストマーケティングの特徴は、顧客と面と向かって話せないかわりにオフラインよりも素直な感想を引き出しやすいことです。インタビューなどではどうしても遠慮した意見になることもありますが、オンラインでは好きなことを記入しやすいためです。
またオフラインより手軽に実施できるのも、オンラインのテストマーケティングの魅力となります。
Webアンケート
Webアンケートとは、モニターに対してWeb上でアンケートを採る方法です。
モニターがWeb上でアンケートに入力してくれるので、データとして扱いやすく平均値などを算出するのも簡単にできます。オフラインのアンケートであれば、ペンで記入してもらうとデータ化するにはデータ入力が必要となりますが、Webアンケートではそれらの手間がかかりません。
またWeb上であれば日本全国どこからでも応募できるので、手軽にユーザーを集められるのも魅力といえるでしょう。オフラインのテストマーケティングに参加できなかったユーザーの意見を聞くこともできます。さらにWebアンケートは低コストで調査できるのもメリットです。
このようにメリットの多いWebアンケートですが、デメリットもあります。それはWebアンケートに慣れていない、高齢者の方を対象とした商品・サービスには向いていないことです。
Webアンケートを実施するためには様々なツールがあります。とくに「Googleフォーム」はよく利用されているアンケートツールです。
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、SNSに新商品・サービスに関する情報を投稿して、その投稿に対する「いいね」の数やコメントなどからユーザーの反応を調査する方法です。
TwitterやFacebook、Instagramなどの主要なSNSを使って新商品に関する情報を発信することで、ユーザーがどれくらいの関心を持ってくれているのかを測れます。
例えば、商品を待ちわびている方が多ければ「いいね」やコメントの数が増えますし、反対に需要や認知度が低ければ反応は少ないでしょう。
SNSマーケティングは自社の投稿に対するユーザーの反応をみるだけなので、とても簡単にできるテストマーケティングです。他の手法よりも手軽にできて費用をほとんどかけずに実施できるのが魅力です。
ただし効果を測定するためには、ある程度のフォロワー数がないと信頼度のある情報にはなりません。フォロワー数が少ないと、1人が「いいね」を押すか押さないかでデータが大きく変動してしまうためです。
クラウドファンディングマーケティング
クラウドファンディングマーケティングとは、自社の新商品・サービスに対する支援をクラウドファンディングサイトで募ることにより、世間の反応を確かめる方法です。
クラウドファンディングでは、商品企画やサービスにユーザーが魅力を感じなければ出資してもらえません。つまり出資額が集まるほどに期待されている企画だとわかります。
クラウドファンディングの特徴は、商品がまだ製造されていない企画段階からでも出資を募れることです。資金調達を兼ねながらテストマーケティングにもなるので、一石二鳥のマーケティング手法といえるでしょう。また出資を募ることにより、商品企画の認知度を高められるといったメリットもあります。
クラウドファンディングの有名なサイトといえば「Campfire」「Makuake」です。それらのサイトでは目標金額の3,000%以上を集める商品も出ており、成功事例を確認することもできます。
まとめ
テストマーケティングは新規事業で新商品・新サービスを投入する際の、リスクを抑えるのに役立つマーケティング手法です。
オンライン・オフラインのそれぞれの手法にメリット・デメリットがあるため、自社商品・サービスにあった方法を選択することで確度の高い情報を得られるでしょう。
しかしテストマーケティングでは様々な情報を得られますが、必ずしも情報が正しいわけではありません。情報が偏っていることもありますし、情報の分析方法により方向性やポイントがかわってくることもあるためです。
メリット・デメリット・注意点を理解したうえで、テストマーケティングをうまく活用してください。