ベンチャーとスタートアップは違う?新規事業にまつわる組織体制

新規事業を進める際には、必ず組織体制について検討する必要があります。

なぜなら企業は、事業に適した形に組織体制を構築しなければならないためです。例えばサービスのターゲットや内容、ニーズ、市場が異なる場合もあるため、画一的な組織体制ではマッチしないこともあるでしょう。

その組織体制を表す用語には、ベンチャーやスタートアップ、スモールビジネスがあります。3つの用語は似ているため混同してしまう方もいるかもしれません。

新規事業の組織体制について理解を深めるためにも、ベンチャーやスタートアップ、スモールビジネスの違いや特徴について解説します。

Contents

ベンチャーとは

そもそもベンチャーとはベンチャービジネスの略で、新しい事業に取り組んでいる企業を指します。

経済産業省のベンチャー宣言でも、「ベンチャーとは、起業にとどまらず、既存大企業の改革も含めた企業としての新しい取組への挑戦である。」と定義しています。

引用:経済産業省「ベンチャー有識者会議

またベンチャービジネスは清成忠男らの著書によって提唱された和製英語で、本来の英語では新規事業のことをスタートアップ・ビジネスと呼びます。そのため、スタートアップとベンチャーは混同しやすいかもしれませんが、日本では同じ意味ではないので注意しましょう。

ベンチャーは日本語に言い換えると新興企業のことです。

ベンチャーの中に、スタートアップやスモールビジネスが含まれるとイメージするとわかりやすいでしょう。

スタートアップとは

スタートアップとは、短期間で急成長させることを目的として取り組んでいる新規企業のことです。スタートアップは、これまでにない革新的なサービスや技術などにより、新たな市場の開拓や新たな価値の創造といったイノベーションを生み出します。

スタートアップはIT企業によくみられる新規事業の立ち上げ方法で、GAFAと呼ばれるGoogle・Apple・Facebook・Amazonが代表例です。

昨今、国内においてもスタートアップでの新規事業への取り組みが注目されています。

その証拠として政府は2022年をスタートアップ創出元年と位置付け、「スタートマップ育成5か年計画ロードマップ」を公表しました。これによると、政府はスタートアップ企業を支援して日本の「第二創業期」の創出を目指すとのことです。

参考:経済産業省「新規事業・スタートアップ

スタートアップの特徴

「新規事業の中でどのような企業がスタートアップと呼ばれるのか?」と、疑問に思う方もいるでしょう。そこで、スタートアップの4つの特徴を紹介します。

・急成長を目指している
・これまでにはないビジネスモデルである
・イノベーションや社会貢献ができる
・出口戦略を検討している

これら4つの特徴は、スタートアップかどうかを判断するうえで重要な要素となります。

急成長を目指していること

スタートアップの特徴は、事業の急成長を目的としていることです。スタートアップの成長曲線はいわゆる「Jカーブ」を描きます。

Jカーブとは、事業開始から数年間は赤字の状態が続き、ある時点から急激な右肩上がりとなる成長曲線のことです。そのため、成功すると急成長を遂げられるのがスタートアップの醍醐味といえるでしょう。

しかしスタートアップは、売上がゼロの状態から始まることも珍しくありません。なぜなら初期はサービスの認知度が低いため、市場の開拓に注力する必要があるためです。結果が出るまでの資金繰りが、スタートアップを成功させるためのポイントとなります。

これまでにないビジネスであること

スタートアップの特徴は事業の商品・サービスで、これまでにはない価値を提供することです。これにより、新たな市場を開拓してシェアを独占できるのが、スタートアップが急成長を遂げられる理由でもあります。

反対に既存に類似の商品・サービスがある場合は、すでに市場が確立されているため、参入しても急激な成長は難しいでしょう。つまりスタートアップは、革新性や斬新性のあるビジネス内容であるかがポイントです。

イノベーションや社会貢献ができること

スタートアップの成功には、イノベーションを起こすことが必要です。イノベーションが起きなければ急激な成長にはつながらないためです。

市場を拡大するためには、独創的なサービスに加えて社会貢献につながるビジネスモデルかどうかも重要となります。社会貢献という付加価値をつけることで、イノベーションがより大きくなりやすいためです。

スタートアップで新規事業を立ち上げる場合は、目新しいサービス内容だけではなく、社会にとって役立つ商品・サービスを提案することが求められるでしょう。

出口戦略を検討していること

スタートアップの特徴は、出口戦略があることです。

スタートアップは開業当初から成果を上げるわけではありません。そのため、エンジェル投資家などから資金を調達する必要があります。

エンジェル投資家とは、立ち上げたばかりの企業に対して投資をする出資家です。

そのエンジェル投資家に利益を還元するために、スタートアップでは成功した場合の出口戦略が必要となります。一般的には事業の売却や上場です。

出口戦略で利益を確保することで、次のスタートアップの立ち上げや投資家への配当といった利益の分配ができます。

このように、出口戦略があるのもスタートアップの大きな特徴です。

スタートアップのメリット・デメリット

BtoBとはBusiness to Businessの略で、企業間取引のことを指します。つまりBtoB営業とは、企業を対象とした営業のことで、日本語で法人営業とも呼びます。 

BtoB営業は取引対象が法人のため契約するまでに、複数の担当者の確認や決裁者の判断が必要となります。このため成約となるまでに、時間がかかりやすいのが特徴です。 

BtoB営業の種類 

スタートアップのメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット・リターンが大きい
・短期間で成長できる
デメリット・失敗のリスクが高い
・資金調達に苦労する

スタートアップは成功すると、大企業への成長も夢ではありません。

しかしリターンが大きい反面、失敗のリスクが高いのがデメリットです。なぜなら、これまでにない商品・サービスでも、新たな市場を確立できないこともあるためです。またスタートアップは起業当初の売上のない時期を乗り越えるために、資金調達も課題となります。

そのため、スタートアップでの新規事業はハイリスクハイリターンな方法ともいえるでしょう。

スモールビジネスとは

スモールビジネスとは、小規模な組織体制で始める事業です。例えば1人で事業を始める個人事業主や、フリーランスなども含まれます。数人程度の従業員数で始める新規事業をイメージするとわかりやすいでしょう。

スモールビジネスの特徴

スモールビジネスは小規模な組織体制で始める以外にも、以下の3つの特徴があります。

・安定した会社経営をする
・既存の市場に参入する
・自分のやりたい仕事ができる

スモールビジネスについて理解を深めるためにも、3つの特徴を押さえておきましょう。

安定した会社経営をすること

スモールビジネスの特徴は、その目的にあります。スモールビジネスの目的は、安定した会社経営をすることです。なぜなら個人事業主のように、自分の生活費をしっかりと稼ぐ必要があるためです。そのため、スモールビジネスの成長曲線は緩やかな右肩上がりが理想となります。

既存の市場に参入すること

スモールビジネスの特徴は、既存のビジネスモデルを利用・応用した事業であることです。例えば飲食店などを少人数で経営したり、ECサイトで既存商品を販売したりといった具合です。

スモールビジネスは、すでに市場が確立している分野に参入するため、需要がある程度見込めるのも特徴といえるでしょう。

自分のやりたい仕事ができること

スモールビジネスでは少人数での経営のため、自分のやりたいことを実現しやすいビジネスモデルです。例えば、絵が好きな方であればイラストレーター、プログラミングが得意であればプログラマー、料理の腕に自信があれば飲食店の運営といった具合です。

自分の趣味や長所、好きなことを仕事に生かせるのがスモールビジネスの魅力といえます。

スモールビジネスのメリット・デメリット

スモールビジネスのメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット・開業資金を抑えられる
・自分の好きなことを仕事にできる
デメリット・収入が不安定になりやすい
・担当業務の範囲が広くなる

スモールビジネスは、小規模で始めることから開業資金も少額で済むのがメリットです。事業によっては、ほとんど資金をかけずに開業できることもあるでしょう。

しかし、安定した売上を確保できなければ、収入が不安定になります。また人数が少ないため、経理などの事務作業を担当するなど、業務の範囲が広くなるのもデメリットです。

このように小規模ゆえのデメリットもありますが、個人事業主やフリーランスなどのように、自分の好きなことを仕事にできるのがスモールビジネスのメリットです。

新規事業を起業するハードルが低いのも、スモールビジネスの魅力といえるでしょう。

スタートアップとスモールビジネスの違い

スタートアップとスモールビジネスの違いについて、わかりにくいと感じる方もいるでしょう。そこで、ここではスタートアップとスモールビジネスの違いについてわかりやすく解説します。

スタートアップとスモールビジネスの違いは、主に以下の4つがあります。

・成長曲線
・市場の違い
・資金調達の方法
・出口戦略
・イノベーションの手法

どちらの方法で新規事業を立ち上げればよいか迷っている方は、それぞれの違いを参考にしてください。

成長曲線

スタートアップとスモールビジネスの違いは、成長曲線を比較するとわかりやすいでしょう。

スタートアップは起業から数年間は赤字経営が続き、ある時点から急速に成長していく「Jカーブ」を描きます。一方、スモールビジネスは緩やかな右肩上がりのラインです。

成長曲線からもわかるように、急速な成長が期待できるのがスタートアップで、安定した経営を重視するのがスモールビジネスといえます。

市場の違い

スタートアップとスモールビジネスは、参入する市場にも違いがあります。

スモールビジネスの場合は、すでに存在している市場に参入するため、ある程度の需要が見込めます。しかし、スタートアップは起業時には存在していない市場を新たに開拓するため、需要があるかないかは不確実です。

スタートアップはうまく市場の新規開拓に成功すれば、大きなリターンを得られますが、失敗のリスクもあります。

資金調達の方法

資金調達の方法にも違いがあります。

スモールビジネスでは必要な資金が少額であることから、自己資金や銀行からの融資が主な資金調達方法です。

一方、スタートアップは確実性に乏しいこともあり、銀行からの融資よりもベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資が主な資金調達方法となります。

出口戦略

スタートアップとスモールビジネスは、出口戦略の有無で違いがあります。

スタートアップは出資してくれたベンチャーキャピタルや、エンジェル投資家に利益を還元するために、出口戦略があります。一般的には事業の売却や上場です。利益を確定することで、運転資金の調達や次のスタートアップを立ち上げる資金としても活用できます。

一方、スモールビジネスでは多くの場合で出口戦略がありません。スモールビジネスの目的が安定した経営なので、大企業になることや事業の売却を目的としていないためです。

イノベーションの手法

スタートアップとスモールビジネスは、イノベーションの方法に違いがあります。

スタートアップのイノベーションは、破壊的イノベーションと呼ばれます。

破壊的イノベーションとは、クレイトン・クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」にて提唱した考え方です。具体的には革新性や斬新性のあるアイデアによって、既存市場の状況を変化させることを意味します。

一方、スモールビジネスのイノベーションは持続的イノベーションと呼ばれます。

持続的イノベーションとは、現在の市場または顧客から支持され続けるために、今の商品・サービスをより良いものへと変化させることです。例えば製品のマイナーチェンジを繰り返し、顧客のニーズや課題を解決するのが持続的イノベーションです。

特性の理解が新規事業の成功の秘訣

ベンチャーには、スタートアップやスモールビジネスといった手法があります。

新規事業を立ち上げる際には、スタートアップとスモールビジネスの特性を理解したうえで、事業にマッチした方法を選択しましょう。

特性を生かすことで、新規事業の成功確率を上げられるためです。