新規事業開発担当になったら知っておくべきフレームワーク

新規事業開発は「事業の拡大」のほかに、「経営者の人材育成」という側面があります。

そのため新規事業開発を任された方は、会社から期待されている証です。せっかくの機会を無駄にしないためにも、ぜひとも成功させたいことでしょう。しかし闇雲に事業を進めても、成功につながる確率を高められません。

そこでおすすめなのは、フレームワークを利用することです。フレームワークは先達により開発された分析方法で、すでに多くの実績があります。会社からの評価をあげるためにも、うまく使いこなして新規事業を軌道に乗せましょう。

本記事では新規事業開発時にフレームワークを利用するメリット、種類、注意点について紹介します。

Contents

フレームワークとは

フレームワークとは、「枠組み」や「骨組み」を意味する言葉です。ビジネス用語として使われる場合は、すでに効果が認められている「型」や「パターン」を指します。新規事業を立ち上げたり、自分の考えをまとめたりするときなど、多くのビジネスシーンで利用されています。

新規事業を始めるときにフレームワークを利用するメリット

新規事業を始めるときには、スピーディにクオリティの高い事業計画書を作成することが大切です。しかし「やらなければいけないこと」や「できればしたいこと」など、一つひとつ洗い出して精査していると作業量が膨大になります。

作業量が多いほど時間を必要とするため論点がブレたり、何をしたいのか分からなくなったりしやすくなります。そのようなロスを抑えるためにも、新規事業ではフレームワークを活用しましょう。

ここでは新規事業を始めるときに、フレームワークを利用する4つのメリットを紹介します。

事業計画のクオリティを高められる

フレームワークは「これまでに効果があると認められている型」なので、すでに多くの事業で実績をあげています。闇雲に事業計画を作成するよりも、フレームワークを活用することで事業計画のクオリティを高められるのがメリットです。

新規事業であれば、なおさら事業計画は重要です。

例えば新商品を開発する際に、ニーズや市場規模、競合商品などの調査を怠った事業計画はどのように感じるでしょうか。成功確率が高いと感じる方は少ないはずです。なぜなら事業計画がしっかり作り込まれていないためです。

フレームワークを利用することで、このような議論しなければいけない項目の抜けをなくせるのもメリットといえます。

思考を整理できる

フレームワークは、新規事業の各要素をパターンに当てはめて考えていくだけで、自然に思考を整理できます。新規事業を始める際にはスケジューリングや市場調査、事業内容や規模、予算の組み立てなど考えなければいけない項目は数多くあります。そのような多くの項目について、問題点や課題、目標などを効率的にまとめられるのがメリットです。

思考時間を短縮できる

フレームワークは、事業の各要素を機械的に型へ埋め込むことで思考を整理できます。あれこれと考えている時間を削減できるため、大幅に思考時間を短縮できるのがメリットです。新規事業開発をスピーディに展開するためにもフレームワークを積極的に活用しましょう。

メンバー間で戦略などを共有しやすくなる

フレームワークは事業の目標や戦略、問題点などを可視化できます。そのため新規事業にかかわるメンバー間で、目標や課題を共有しやすいのがメリットです。引き継ぎのエラーや取り違えの削減、意思疎通にかかる時間の短縮などにつながります。

新規事業開発に使える5つのフレームワーク

ビジネスで使われているフレームワークは数多くあります。例えば「PDCAサイクル」はビジネスシーンでよく聞く言葉でしょう。この「PDCA」は、試行錯誤を繰り返すことで目標を達成するフレームワークです。

数多くのフレームワークのなかで、新規事業開発におすすめの5つは以下のとおりです。

・事業環境を判断:SWOT分析
・自社の優位性を評価:VRIO分析
・顧客・自社・競合の三角関係:3C分析
・外部環境を把握:5フォース分析
・マクロ環境の把握:PEST分析

それぞれの分析方法や特徴について詳しく解説します。

事業環境を判断:SWOT分析

SWOT分析は自社の事業環境を分析するためのフレームワークです。自社の内部環境のStrength(強み)・Weakness(弱み)と、外部環境のOpportunity(機会)・Threat(脅威)の4つの要素を利用します。

SWOT分析のやり方は、まず自社の特徴や欠点など、強み・弱みをリストアップします。内部環境を書き出すと次は外部環境です。自社の販売増につながる変化が機会で、反対に販売減につながる変化が脅威です。

これらの4項目が埋まると、自社のおかれている事業環境を確認できます。SWOT分析をすることで、どのような改善策やマーケティング施策が必要なのかが見えてくるはずです。

さらにクロスSWOT分析と呼ばれる「強み×機会」「強み×脅威」「弱み×機会」「弱み×脅威」から、計画の立案や対応策を検討するフレームワークもあります。

クロスSWOT分析で検討する内容は以下のとおりです。

・強み×機会:強みを生かして機会を最大限活用する方法の模索
・強み×脅威:強みを生かし、脅威を乗り切る方法の模索
・弱み×機会:機会を自社の弱みにより逃さない方法の模索
・弱み×脅威:弱みと脅威のダブルパンチからダメージを抑える方法の模索

このように4つの要素を書き出すことで、自社のおかれている環境を具体的に把握できるのがSWOT分析・クロスSWOT分析です。

自社の優位性を評価:VRIO分析

VRIO分析は内部環境に特化したフレームワークで、自社の競争優位性を評価できます。利用する要素はValue(経済的な価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つです。

VRIO分析のやり方は、まず自社の商材にValueがあるかないかを「Yes」「No」で判断します。「Yes」の場合は次の要素に進み、「No」であれば競争優位の状態が決定します。

Value・Rarity・Inimitability・Organizationの順に「Yes」「No」を判断していくシンプルなフレームワークです。各要素で判断する内容は以下のとおりです。

・Value(経済的な価値)
Valueは自社の商品やサービスといった資源が顧客や取引先に対して、価値を提供しているかで判断します。「No」の場合は競争劣位となります。

・Rarity(希少性)
Rarityは競合他社が同様の商品やサービスを提供していないかです。類似商品がある場合は競争均衡となります。

・Inimitability(模倣困難性)
Inimitabilityは競合他社が同様のビジネスを模倣しようとしたとき、どの程度のコストやリソースを必要とするかです。つまり他社が模倣しやすいかどうかで判断します。模倣しやすい場合は一時的な競争優位です。

・Organization(組織)
Organizationは資源を活用できる体制が整っているかで判断します。「No」の場合は持続的な競争優位で、「Yes」の場合は経営資源を最大限活用できている状態です。

つまり多くの「Yes」がつくほどに、自社資源に優位性があると判断できます。

顧客・自社・競合の三角関係:3C分析

3C分析はCustomer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の、3つの要素から分析するフレームワークです。これら3つの要素の三角関係を分析することで、マーケティング環境の把握に役立ちます。

3つの要素は以下のとおりです。

・Customer(市場・顧客)
市場規模や市場の成長性、顧客のニーズ、購買行動の変化を分析します。

・Competitor(競合)
ターゲットとする市場・顧客に対して競合となる企業の商品・サービスの分析です。

・Company(自社)
自社資源の優位性の確認や、競合との比較などを分析します。

マーケティング環境を漏れなく分析できるので、新規事業開発時にはおすすめのフレームワークです。

外部環境を把握:5フォース分析

5フォース分析は外部環境を5つの競争要因から分析するフレームワークです。自社の事業に外部要因がどのように影響するかの把握に役立ちます。5つの競争要因は以下のとおりです。

・競合他社の脅威
競合他社との競争が激化するほど、自社のシェアを奪われるリスクがあります。

・新規参入者の脅威
新規参入者が多いことは、競合他社が増えるため競争激化の原因です。そのため新規参入しやすい業界は、収益性が下がりやすい傾向にあります。また収益性を一時的に改善できても、すぐに新規参入者が増えるため収益の確保が難しくなります。

・代替品の脅威
自社商品・サービスにとって代わる商材を、競合他社から開発される脅威のことです。例えばCDに対する音楽配信サービスのように、市場を大きく奪われる可能性もあります。

・買い手の交渉力
買い手の交渉力が強い場合、売り手が希望する金額で販売できないことも珍しくありません。交渉力に負けてしまい販売価格を下げることで、収益性を悪化させる恐れがあります。

・売り手の交渉力
仕入れ先である売り手の交渉力が強いと、仕入れコストが高くなり利益を圧迫します。

これら5つの競争要因について分析することで、自社の事業で利益をあげるための戦略を検討できます。

マクロ環境の把握:PEST分析

PEST分析は4つの要素でマクロ環境を分析するフレームワークです。要素はPolitics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)となります。

政治情勢の変動や技術革新など、自社や競合他社などとは関係なく発生する要因でも営業活動に大きな影響があります。このようなマクロ環境を推察するために利用されるのがPEST分析です。4つの要素の内容は以下のとおりです。

・Politics(政治)
政治情勢や外交関係、法律、国策、税制の見直しなど

・Economy(経済)
経済成長率や金利、インフレ・デフレ、失業率など

・Society(社会)
人口や世帯数の増減、社会の価値観、文化など

・Technology(技術)
技術革新、特許、インフラの整備など

PEST分析をすることで、将来の外部要因による影響を予測できます。早めに対応策を施すことでダメージ軽減や収益最大化に役立つでしょう。

フレームワークを使用する際の注意点

フレームワークは新規事業を立ち上げるときに有用なツールです。より効果的に使うためには、以下の3つの注意点に気をつけましょう。

分析に時間をかけすぎない

フレームワークは思考をまとめやすく、様々な角度から分析できるのが魅力です。しかし、あまりにも細かく分析すると時間がかかりすぎてしまいます。

事業計画の作成に時間をかけすぎてしまうと、その間に人件費などのコストが発生します。予算内で結果をだすためにも、不必要にコストを増やさないことが大切です。またフレームワークのメリットである、「時間の短縮」を生かすためにも分析に時間をかけすぎないようにしましょう。

複数のフレームワークを組み合わせる

フレームワークを活用するときは、複数の種類を組み合わせるのがおすすめです。

なぜなら種類により、分析できる内容や強みが異なるためです。具体的にフレームワークは大きく分類すると以下の3つがあるので、これらを組み合わせて分析するのが良いでしょう。

・事業の内部環境分析:3C分析・VRIO分析
・事業の外部環境分析:3C分析・5フォース分析
・事業と環境からの分析:SWOT分析

例えば内部環境分析はVRIO分析、外部環境分析に3C分析、事業と環境からの分析をSWOT分析といった組み合わせです。

このように組み合わせることで、多角的な視点から新規事業を分析できます。

分析結果を行動につなげる

そもそもフレームワークの目的は、分析することでマーケティング手法の立案や、具体的な施策を実行することです。分析すること自体が目的にならないように、分析結果をどのような行動につなげるかについても検討してください。

フレームワークで方向性を決定しよう

フレームワークを活用することで、新規事業開発に必要な情報整理や方向性を決定するのに役立ちます。

フレームワークのメリットは「思考を整理できる」「思考時間を短縮できる」ですが、不慣れな方にとっては活用が難しいと感じることもあるでしょう。

そこで新規事業を成功させるためには、プロである外部コンサルタントに相談してみるのもおすすめです。外部コンサルタントを利用することで時間と工数を省けるため、よりスピーディに事業展開できるメリットもあります。