法人営業時に使える3つのフレームワークの紹介

法人営業では、ヒアリング力やヒアリングする内容がかなり重要です。
特に商談先企業の内情や現状の立ち位置、問題点はどこにあり、決裁者がどこの誰なのか、またその人はどういった考えを持つ人なのかを的確に聞き出さなければ、業務に支障をきたしてしまいます。
ヒアリングする項目は、かなり幅広くなりますが、商談時にアンケートのように一問一答式に確認できない難しさがあります。

そんな時に、フレームワークを頭に入れておくだけで、商談がスムーズに進みます。
今回の記事では、フレームワークという言葉自体を紐解き、実際に使える「BANT」などのテクニックをご紹介します。

そもそもフレームワークとは

ビジネスにおけるフレームワークとは、共通して用いることが出来る考え方、意思決定、分析、問題解決、戦略立案などの枠組みのことを指します。フレームワークには様々なパターンがあり、それぞれ役割が異なります。

法人営業で使えるフレームワーク

フレームワークという言葉をある程度理解した上で、「それではやってみよう」といっても、これからはじめる方は悩んでしまうものですよね。では実際に使えるフレームワークの一例として「BANT」についてご説明します。

情報収集フェーズで「何を聞くか」の営業フレームワークがBANTです。

BANT(バント)とは、Budget:「予算」、Authority:「決裁権」、Need:「ニーズ」、Timeline:「導入時期」の頭文字を取っており、この4つの質問の切り口を示す営業フレームワークです。

この4つの条件は、成約に必要な条件でもあり、どれか一つでも欠けてしまうと成約できませんので、しっかりヒアリングする必要があります。回答が詳細であるほど、それを元にした戦略やロードマップを作りやすく、成約の確率も上がっていきます。

もう一つ、「DMU」というものも役に立ちます。
DMUマップと3Cは、商談全体を通して、「どこから情報を得るべきか」「どの視点で解釈するのか」を考えるための営業フレームワークとして活用できます。

DMUとはDecision Making Unitの頭文字を取った略語で、購買に当たっての意思決定関与者を指します。顧客の意思決定単位である意思決定者、または意思決定関与者を構造的に把握するための営業フレームワークとなります。このDMUに対して、いかに的確にアプローチしていけるかということが、マーケティングのポイントとなります。

3C分析もまた法人営業において役に立つフレームワークになります。3C分析とは、Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境分析を行うフレームワークのことです。企業やその事業を取りまく環境を整理し分析しやすくする方法です。

法人営業で使えるフレームワーク①:BANT

では、BANTについて詳しく解説していきます。
BANT(バント)とは、Budget:「予算」、Authority:「決裁権」、Need:「ニーズ」、Timeline:「導入時期」の4つを的確にヒアリングし、的確な回答をもらうことで、戦略やロードマップを立てやすくなるというものです。

4つの条件について更に詳しく解説していきます。

Budget「予算」

顧客が商材の購入において想定している予算の金額です。商談に入った後、比較的早い時期に確認する必要があります。顧客の予算に応じて提案内容が変わることもあるため、把握が遅れると営業がスムーズに運ばない場合も出てくるでしょう。

しかし、新規顧客の場合は、関係性が出来上がっておらず信頼関係が十分結べていないうちは、中々本音が聞き出せない場合もあります。その場合は、競合事例などを提示して慎重に探りを入れていくことが必要です。

Authority「決裁権」

商材の購入を最終決定する人が誰なのかという、決定権の所在のことです。営業のアプローチは決裁権を持った相手に対して行うのが基本です。決裁権を持っている相手に直接交渉することで、迅速なクロージングに繋がります。

ただし、会社によっては交渉金額によって決裁権者が変わることもあるため、商談ごとに決裁権者を確認する必要があります。

Need「ニーズ」

顧客がどのような課題を抱えており、商材を通じてどのように解決したいと考えているのかということです。顧客のニーズをしっかりと捉えることが必要です。また、組織全体のニーズなのか、担当者のニーズでまだ会社の承諾を得ていないものなのか、ニーズの範囲によっても、商談の優先度を決めることができるので、把握しておく必要があります。

また、真のニーズを捉えるためには、「なぜそうしたいのか」といった質問を繰り返し、潜在ニーズを探ることが有効です。

Timeline「導入時期」

商材を購入したいのはいつなのか、またいつまでなら間に合うのかということです。受注が決まっていなくても、導入時期が決まっていれば予定を立てやすいです。商談の優先度を高くでき、競合より先に商談を進めることができます。

ただ法人の場合は、決算時期に左右されるため、納期を先にしている場合があります。導入時期が先である場合は案件をよく整理しておきましょう。

ここで注意しておきたいことは、BANTには注意点があるということです。
BANTにより、4つの条件は見える化されるのですが、このようなアンケートに正直回答してくれる顧客は少ないということです。企業間の付き合いとして建前で答えているケースもあるでしょう。

この場合は、BANTに関する情報は参考程度にとどめておき、直接ヒアリングした内容で商談を進めていきましょう。

法人営業で使えるフレームワーク②:DMU

例えば住宅を購入する際、家主である主人が購入に乗り気でも、財布を握っている奥様がYESと言わない限り契約には至らないという事もしばしばあるでしょう。また、法人顧客においては複数の部門や人間が関与するため意思決定に至る構造はより複雑になり、エンドユーザーと購買意思決定者は異なる場合がほとんどです。

法人営業におけるDMUは、ユーザー(使用者)、ディサイダー(決定者)、インフルエンサー(関与者)、バイヤー(購買者)、ゲートキーパー、イニシエーター(起案者)の6つに整理できます。この6つの役割の決定権構造を明確に把握するためのツールがDMUマップです。

DMUマップとは、担当者を中心として、その関与者の存在とそれぞれの役割を記載した図を作成することで、全体像を可視化して、顧客理解を深めることが出来るものです。

DMUマップの作成により、窓口となる担当者とその周囲との関係性や、各人物の役割や組織内のキーパーソンを明確化できます。

顧客の意思決定の全体像を知ることは営業活動だけでなくマーケティング施策においても大いに役立ちます。それぞれの役割の人がどういった情報を求めているのか整理することで、サイトに載せる情報を見直したり、メルマガの配信内容をブラッシュアップしたりと、成果に繋げるための工夫が可能です。

DMUマップを作成するには、次の3つのステップが大切です。

情報収集をする、ヒアリングする

第一のステップとして、顧客に関する情報を集めて整理します。

顧客企業の業種、事業規模などの基本情報のほか、問い合わせや商談に至った背景や課題、窓口担当者に決定権がどれくらいあるかや、意思決定にどんな人が関わっているかをヒアリングし、まとめます。

顧客情報の収集は、マーケティング部門だけでなく、営業部門の担当者と協力しながら進めていくのが理想です。

担当者を中心に関係者を配置する

顧客情報をまとめたら、担当者を中心にマッピングしていきます。担当者=決裁者であるようならマッピングする必要はないかもしれませんが、規模が大きい会社や、決定権のない担当者との商談の場合は効果的です。

それぞれの関係性を書き込む

最後に各人物の関係性を可視化します。

矢印や記述などを用いて、関係性をマップに落とし込みましょう。

法人営業で使えるフレームワーク③:3C分析

3C分析は、市場/顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)という3つの視点で、企業やその事業を取りまく環境を整理し分析するためのフレームワークです。

市場や顧客・競合という企業の外部環境、自社という内部環境を整理分析することで、自社の事業、製品やサービスの市場におけるポジション、強み・弱みなどを詳細に把握することができます。そして自社の強みが活かせる市場領域の発見や経営課題の発見、あるいは戦略案の発想といったことに活用することができます。

3C分析では、社内外のデータや文献などで市場や顧客・競合・自社の情報収集をするのですが、これらの方法で情報収集ができない場合、新たな方法で市場調査を設計し実施したり、入手できる情報を元に推定したりする必要があります。

ビジネスは基本的に顧客を知ることから始まるため、3C分析も市場/顧客(Customer)の分析から始めるのが一般的です。

Customer:市場・顧客分析

自社が展開する事業においてどのような顧客が存在するのか、その顧客はどのような必要性や欲求を持っているのかなど、自社の製品やサービスの市場の規模や成長性、市場特性、顧客ニーズや顧客の特性といった観点から情報を収集し、整理分析します。

競合間のパワーバランスや関係性を分析することで、自社を取り巻く脅威を明らかにし、収益性を高めるための戦略立てに役立ちます。

Competitor:競合分析

競争状況やライバルとなる競争相手を抽出し、企業や製品の強みや弱み、業績や経営資源、戦略などを整理分析します。情報の整理や分析は企業レベル、事業、ブランド製品のレベルなど目的に沿ったレベルで行います。

競合他社のビジネスについて「結果」と「要因」の2軸で分析を行うと良いでしょう。「結果」は、競合企業の売上や利益率、市場でのシェア、顧客数といったビジネスでの明らかな成果などの分析です。併せて、競合企業での資産の活かし方がわかるものとして、社員1人あたりの売上や、顧客単価などにも着目しましょう。
「要因」は結果が出た背景や効率について分析します。販売ルート、営業体制、製造工程、新製品の開発、顧客サポートなど、様々な側面から、競合企業の仕組みを明らかにし、高い売上を上げるためのポイントを探します。

Company:自社分析

自社の能力、経営資源の現状を整理・分析します。
収集するべき情報としては、競合分析とほぼ同じ内容です。

自社分析

3C分析で3つの観点で情報が整理できたら、そこから何が言えるのかを検討します。

成功要因

まず、市場・顧客分析、競合分析から市場で勝つための条件(KSF=Key Success Factor=成功要因)を発見し、次に自社分析からKSFと自社の現状とのギャップを整理します。
そして、このギャップから、どのような手を打てば市場で勝てるのか考える、あるいはKSFと自社の能力や資源から自社の強みが活かせる市場機会を考えます。
経営資源、売上高、市場シェア、収益性、販路、技術力、組織力など、様々なポイントに着目し、自社の強みと弱み、KSF(成功要因)を導き出しましょう。

SWOT分析とクロス分析

自社分析でよく用いられる手法として「SWOT分析」と「クロス分析」があるので解説します。

「SWOT分析」とは、自社の内部環境と外部環境を4つの視点から分析するフレームワークです。内部環境にはStrength(自社の強み)とWeakness(自社の弱み)があり、外部環境にはOpportunity(機会)とThreat(脅威)があります。SWOT分析の目的は、自社の強みと弱みを客観的に捉え、チャンス(機会)とピンチ(脅威)を把握したうえで、最適な戦略を選択することです。

「自社の強みの活かし方」と「自社の弱みの改善方法」を深く探るフレームワークとも言えます。自社の強みと弱み、機会と脅威の4項目を軸に、戦略やビジネス機会を導き出し、自社における課題を洗い出すことが可能です。

クロス分析(クロスSWOT分析)とは、SWOT分析の結果を掛け合わせて、自社が競合他社に勝つための戦略を導き出すフレームワークです。

縦軸に強みと弱み、横軸に機会と脅威を設定して分析します。
それぞれの項目は以下です。

  • 強み × 機会 → 自社の強みを活かして外部のチャンス(機会)を最大化する
  • 強み × 脅威 → 自社の強みを活かして外部のピンチ(脅威)を切り抜ける
  • 弱み × 機会 → 自社の弱みを克服して外部のチャンス(機会)を活用する
  • 弱み × 脅威 → 自社の弱みを克服して外部のピンチ(脅威)を切り抜ける

このようにクロス分析は、強みと弱みに機会と脅威を掛け合わせることで、業界内での自社のポジショニングを探ることが可能です。
3C分析というフレームワークの中で企業の置かれた環境を整理することで、企業の課題や戦略の分析、戦略案の発想や企画業務に使うことができるのです。

まとめ

法人営業においては、ヒアリング力とヒアリングする内容が非常に重要です。商談先企業の内情や立ち位置、問題点、決裁者の情報を正確に聞き出すことが必要です。そこで、フレームワークを使うことで商談をスムーズに進めることができます。フレームワークとは、共通して用いることができる考え方、意思決定、分析、問題解決、戦略立案などの枠組みのことを指します。法人営業においては、「BANT」、「DMU」、「3C分析」のフレームワークが役立ちます。

また、ビジネス展開に関しては、まずビジネスプランを作成することが大切です。その際、市場調査やビジネス戦略のアドバイスを受けることで、より戦略的なビジネスプランを策定することができます。このようなアドバイスを受けるためには、プロである外部コンサルタントに相談することをおすすめします。外部コンサルタントを利用することで、ビジネスプラン作成にかかる時間や労力を大幅に短縮することができ、よりスピーディに事業展開に着手することができます。また、外部コンサルタントは様々なビジネスに関する知識や経験を持っているため、貴重なアドバイスやフィードバックを得ることができます。より戦略的かつスムーズなビジネス展開を目指す場合は、外部コンサルタントの活用が有益であると言えます。