3C分析とは?目的、必要性、事例について

3C分析とは 

3Cとは、市場・顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)に関する分析方法の名前で、それぞれの頭文字を取り3Cと呼ばれています。3C分析は、日本の経営コンサルタントで起業家の大前研一氏によって提唱された考え方で、マーケティングの基本ともいわれています。 

具体的には、自社を取り巻くビジネス環境を3つの視点から理解するのに役立つ手法です。「どの市場が盛り上がっているのか?」「消費者が求めている欲求に、自社の商品やサービスの価値が合致しているか?」「競合他社の価値は?逆に、自社の価値は何か?」と振り返り、新たな課題や取り組むべきことを明確にしていきます。3C分析に注力することは、市場構造の理解を深め、今後の商品開発やマーケティング戦略の立案、失敗しない意思決定へと繋げられる可能性が高まります。 

コロナ禍が続いており、経営難に直面している企業が多いのではないでしょうか。これからは「withコロナ」の新生活が始まり、新たな時代の価値に沿った商品やサービス展開が消費者に求められるでしょう。さらにSDGsへの関心が高まりつつあります。消費者が求める価値は複雑化していくと思いますが、3C分析を用いて、複雑に絡み合っていても求められている価値を見抜ける力を養っていきましょう。 

それでは、3C分析のそれぞれの要素を説明していきます。 

「自社の理解(Company)」 

自社をしっかりと見つめ直すのが最初のステップです。「市場・顧客(Customer)」、「競合(Company)」から分析を始めることを推奨しているサイトが多いですが、ここでは「自社の理解(Company)」を第一優先と考えています。その理由は、自社の理解を深めないとその先に進めないためです。 

例えば、子供が「体調が悪い…」と訴えかけてきたらどんな行動を取りますか?大半の人は「どこが悪い?」と原因を探るのではないでしょうか。ビジネスにおいても、成功や失敗の原因を探り、その原因が明確になってようやく次の段階へと進めます。自社の理解を優先する理由を分かって頂けたでしょうか。 

自社の理解を深掘りしていくためには、次の3つを押さえることがポイントです。 

① 経営層や上層部、会社全体の戦略の把握 

② 使用可能な経営資源の把握 

③ 自社の強みや弱み、特性の把握 

一歩目は、会社が考える戦略の全体像を掴むことです。会社の方針と逆の方向を目指していた場合、努力が水の泡となりかねません。坂を駆け上がるより駆け下るようが楽なように、方向性を間違わないことが大切です。 

二歩目は、使用可能な経営資源の把握です。経営資源とは、「資金、人、モノ、情報、時間、知的財産」のことを指します。どんなスキルを持つ従業員がいるのか、投資可能な資金はいくらか、稼働している設備や機械、ブランドや特許等の知的財産の数、これまで蓄積してきた情報の質と量の把握等、時間を惜しまず把握に努めましょう。 

三歩目は、自社の強みや弱み、特性を把握することです。成功した、あるいは失敗した原因は何か、自社商品やサービスの価値は何か、どのような方法で今のポジションを築き上げたのか等、把握していきましょう。 

「市場・顧客(Customer)」 

市場においては、購入者数がどれくらいなのか、市場規模はいくらか、各企業のシェア率はどのくらいか等を把握していきます。市場の動きや今後の市場の成長予測等は、社会の変化に関連している可能性が高いです。社会の変化の兆しを見逃さない方法として「PEST分析」が有効と言われており、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)のそれぞれの視点からビジネス環境の変化を読み取ります。 

顧客においては、次の2つの視点から理解を深めていきましょう。 

① データなどを用いて全体像を量的に理解する 

② 質的調査を活用し、消費者の深層心理に近づく 

「量的な理解」は、次のような項目を調べることで深まります。 

・消費者の年齢や性別、収入など 

・自社商品やサービスの世帯浸透率、認知率 

・購入頻度、購入行動 

「質的な理解」は、次のような質問が参考になるでしょう。 

・消費者が心の底に秘めている悩みや価値観は何か? 

・日常はどんなことに関心があるのか? 

・違うアプローチをすると購買行動は変わるのか? 

これらの項目を参考に調査が浅かった部分を見つけ出し、消費者理解を深めていきましょう。 

「競合(Company)」 

競合他社の理解を進めるのは、競合他社の商品やサービスの特徴や強み、値段設定などを研究するだけでは十分といえないでしょう。それらの調査は大前提と考え、もう少し視野を広げて競合理解を行うべきです。それは、本来の競合相手に迫るためです。 

例えば、布団のクリーニング市場。競合他社を研究する際、多くの人は他社のクリーニングのサービス内容や品質、納期などを調べて比較するでしょう。この段階は大前提の部分であり、本当に調査すべき対象は他に考えられます。 

クリーニングに対する消費者の主なニーズは、「清潔にしたい、綺麗にしたい」だと思います。現在は家電製品の進化が素晴らしく、レイコップなどの布団掃除機が世帯に浸透し、クリーニングに出さずとも「清潔さ・綺麗さ」を得られると感じている消費者は多いでしょう。また、水洗いできる布団も販売されており、近所のコインランドリーでニーズを満たす人も増えてきているかもしれません。 

布団掃除機、コインランドリーも「清潔にしたい・綺麗にしたい」消費者のニーズを満たすものだと広く捉えると、これらの分野も競合になってきます。競合調査においては、例のように広い視野で競合を想像し「自社の本当の価値」を考え抜いていきましょう。そうすれば、最終的に目を向けるべき方向が明確になってくると思います。 

参考サイト 

https://akala.ai/note/btob-sales-marketing/post-3c-analysis/ 

https://gicp.co.jp/manegementnote/customer-company-competitor/ 

参考著書 

・著者:森岡毅氏「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」 

3C分析の目的 

ビジネスを成功するために必要不可欠なものがあります。それはいったい何でしょうか?資金力、人材育成と確保、消費者へのアプローチ方法とたくさんあるでしょう。その中でも成功確率を高めるために必要なものは「良質な情報」です。「良質な情報」は、ビジネスを生き抜いていく上で意思決定に必要不可欠だからです。 

それでは意思決定に欠かせない「良質な情報」は、どこから得られるのでしょうか?それは「戦況分析」から得られ、裏を返せば、「戦況分析」ができなければ「良質な情報」は得られないということです。 

3C分析は「戦況分析」の切り口であり、ビジネスの成功確率を高める「良質な情報」を得ることが3C分析の目的です。 

私たちを取り巻くビジネスの市場構造は、製造会社、運送会社、販売店、消費者等とビジネスに関わる全ての利害関係から成り立っています。市場構造の理解を深め、市場構造に逆らわずビジネス環境の流れに乗るために、3C分析による「戦況分析」に注力を注いでいきましょう。 

参考著書 

・著者:森岡毅氏「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」 

3C分析の方法 

3C分析の方法はいくつか存在しますが、以下の質問をヒントに情報収集してみると良いでしょう。 

「自社の理解(Company)」 

・今のビジネスを始めた動機やきっかけは何ですか? 

・ビジネスを始めた当初、どのように新規顧客を獲得しましたか? 

・新規顧客の獲得方法において、自社のビジネスを構築してきた具体的な方法は何ですか? 

・マーケティングや販売活動の成果を測定できていますか? 

「市場・顧客(Customer)」 

・なぜ顧客は自社商品やサービスを購入しているのでしょうか? 

・なぜ顧客は自社商品やサービスを購入したのでしょうか? 

・新規顧客はどの層からきていますか?(年齢、性別、年収など) 

・新規顧客が本当に望んでいるものは何ですか? 

「競合(Company)」 

・最も存在が大きい競合他社はどこですか? 

・競合が提供している商品やサービスと自社商品の価値の違いを明確に回答できますか? 

・今考えている競合は、本当に競い合うべき存在ですか? 

3C分析には時間がかかります。データ収集だけでは不十分で、本当の価値に迫るために考えて抜くことが重要です。本当の価値を見出しビジネスを生き抜くため、市場構造の理解を深めていきましょう。 

注意点 

3C分析は「戦況分析」における1つの方法であり、市場構造の理解を深め、ビジネスの成功確率を高める「良質な情報」を得ることが目的です。3C分析を行ったからといって、自社商品やサービスの売上が伸びると勘違いしないよう注意しましょう。 

3C分析によって、間違った意思決定を回避するために「良質な情報」を入手し、今後の課題や集中投資すべき経営資源を見極めていきます。潤沢な経営資源を持つ会社であれば、どんどん新商品の開発や新企画に着手して、数を打って当てる方法でも良いでしょう。しかし経営資源に限りがあり、何に注力すべきか悩んでいる会社がほとんどだと思います。 

自社商品やサービスを購入してもらうには、消費者の頭の中に自社の商品やサービスが浮かぶかが重要で、選択肢の1つとして考えてもらうために「戦況分析」が必要になります。限られた経営資源で最大限の売上を達成できるように3C分析を活用していきましょう。 

利用事例 

今回は「スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社」(以下、スターバックス)に注目し、3C分析を用いて企業研究してみました。 

  • 「自社の理解(Company)」 

スターバックスは、1996年東京の銀座に日本1号店をオープンし、その後も店舗数の拡大に注力してきました。その結果、2021年の3月末時点の日本における店舗数は1,637店舗にまで到達。2021年には日本上陸から25周年を迎え、日本上陸を果たしてから毎年約65店舗をオープンしてきており、47都道府県の制覇を果たしました。 

店舗数を伸ばせている成功要因はたくさんあると思いますが、成功要因の1つに「店内の雰囲気」が入るかと思います。スターバックスの店内に入ると「おしゃれ」「高級感」「居心地の良さ」などを感じる人が多いのではないでしょうか。コーヒーの美味しさ以外に、店舗を訪れた人の気分を高める内装や接客もスターバックスの特徴といえるでしょう。 

これらの特徴とは別に、スターバックスが掲げているミッションを知っていますか?公式ホームページに掲載されており、次のように宣言しています。 

『人々の心を豊かで活力あるものにするためにー 

 ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから』 

(参考:https://www.starbucks.co.jp/company/mission.html) 

実際に店舗を訪れると、リラックスして友達と会話している人や仕事に熱中している人がおり、スターバックスが掲げるミッションを体現していると感じます。会社の方針を守り目標を達成しているスタッフの能力も、スターバックスの強みでしょう。 

  • 「市場・顧客(Customer)」 

なぜスターバックスの利用者が多いのでしょうか? コーヒーが美味しいから? 居心地が良い店内だから? これらの要因も利用者数を伸ばしている理由に入るでしょう。その中でも「利用者の気持ちがハッピーになる接客」が大きな理由ではないかと思います。 

とあるスターバックスの店内で、常連客と思われる方と店員さんが、友達のような距離感で会話している光景を目にしました。正直、他の大手カフェチェーン店ではこのような光景を見たことがありません。スターバックスの利用頻度が多い利用者の方々の中には、店員さんとの会話を楽しみにスターバックスへ来店している人もいるのではと思います。 

都心は行き交う人が多く、無意識に騒々しい日常を過ごしている人もいるでしょう。「第3の場所の提供」を掲げるスターバックスは、無意識に感じている忙しさから離れられる空間を潜在的に求めている人々のインサイトを捉えているのではないでしょうか。 

  • 「競合(Company)」 

「忙しい日常から離れられる空間」を提供している会社を競合とした場合、どの分野の会社が競合となるでしょうか。「自分らしくいられる場所」と広い意味で考えると、個人スペースを提供している会社を競合他社と考えられそうです。 

個人スペースを提供している会社との違いとして、「落ち着いた内装」「アクセスの良さ」などが挙げられるでしょう。ただカフェよりも静かな場所を好む人にとっては、個人スペースを利用するという選択肢も増えるかもしれません。 

そうすると今後の課題として取り組むべきことは、「カフェでもさらに落ち着ける場所の提供」と見えてくるでしょう。 

スターバックスを事例に、自社の理解 → 市場・顧客 → 競合 の順番で3C分析を行ってみました。この順番で行うことで、経営方針や会社全体の動きに合致した事業展開ができているのか、方向そのものが正しいのか、原点と照らし合わせながら戦況分析を進める感覚を掴めたのではないでしょうか。 

3C分析は「戦況分析」の切り口であり、ビジネスの成功確率を高める「良質な情報」を得ることが3C分析の目的という意識を持ち、取り組んでみてください。今の状況を打破できる可能性が見えてくるでしょう。