BtoB営業・法人営業においてコンテンツマーケティングの重要性が増しています。
2022年のトライベック・ブランド戦略研究所の「BtoBサイト調査 2022」によると、BtoB営業先の担当者が商品を購入する際に参考としている情報源は、「企業のWebサイト」が66.7%で1位でした。一方、「営業員の説明」は40.8%と大きな開きがあります。
このことから、BtoBではWebで収集した情報をもとに、商品の比較や購入の検討をしている割合が高くなっているとわかります。営業先が商品を検討する初期段階で、自社商品・サービスを売り込むための有効な手法としてコンテンツマーケティングが注目されているのです。
本記事では、BtoBにおけるコンテンツマーケティングの重要性・種類・注意点について紹介します。
参考:https://brand.tribeck.jp/research_service/websitevalue/bb/bb2022/
Contents
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、顧客に価値のある情報をコンテンツとして配信することで、顧客との関係を構築して契約につなげるマーケティング手法です。
具体的には、オウンドメディアやブログなどで自社商品に関係する情報や、YouTubeなどでターゲット層の問題解決に役立つウェビナーの配信などがあります。
これらのコンテンツは、一度作成すると自社の資産として残ります。そのため、数多くのコンテンツを作成・発信することで、中長期間にわたって見込み顧客を獲得できるのがコンテンツマーケティングの特徴です。
BtoB企業がコンテンツマーケティングに取り組むべき理由
BtoBの特徴は、「一度契約すると関係が長期間になりやすいこと」「一度の売上金額が大きいこと」です。これらの特徴からBtoBとコンテンツマーケティングの相性は良く、売上アップの施策として注目されています。
ここでは、BtoB企業がコンテンツマーケティングに取り組むべき5つの理由を紹介します。
商品比較・検討の初期段階から候補になる
コンテンツマーケティングをすることで、見込み顧客が商品を探し始める初期段階から自社商品を比較・検討の対象に含めてもらいやすくなります。
その理由は、冒頭にも触れたように営業先の担当者が第一次情報として、Web上の情報を活用しているためです。つまり、営業担当者がアプローチをする前に商品情報を入手・検討しているため、コンテンツマーケティングをしなければ不利になることさえあります。このような不利益とならないためにもコンテンツマーケティングはすべきなのです。
定期的なコミュニケーションがとれる
コンテンツマーケティングは、顧客とのコミュニケーションに役立ちます。
例えば、SNSやメールマガジンが顧客とのコミュニケーションに役立つ代表的なコンテンツでしょう。自社商品や顧客の課題解決方法を発信することで、フォロワーが増えることやコメントがくることもあるためです。
コミュニケーションにより顧客からの信頼を得られると、顧客の問題が顕在化したときに「あの企業にお願いしよう」と契約の決め手となることもあります。信頼関係を構築するためにも、コンテンツマーケティングはすべき手法といえるでしょう。
企業の信頼性を高められる
コンテンツマーケティングは、企業の信頼性を高められます。専門性が高いコンテンツを発信すると、顧客からは専門企業として認知されるためです。
BtoB営業は営業先のビジネスの結果にもかかわるため、営業先からすると十分なスキル・経験・知識などを持っている企業は安心して取り引きできます。
つまり、自社の専門性の高さを周知するのに役立つのがコンテンツマーケティングなのです。
コンテンツが自社の資産となる
コンテンツマーケティングで作成したコンテンツは自社の資産となり、増やすほど成果をあげやすくなります。
例えば、YouTubeで数年前の動画を見ていることに気づいた経験はありませんか。このような動画は数年間、新規顧客の開拓や顧客の問題を解決して役割を果たしているといえます。つまり、一度作成したコンテンツは削除しない限りなくならないため、中長期にわたって見込み顧客の獲得に役立つ大切な資産となるのです。
しかし、コンテンツを増やすには時間がかかるため、できる限り早くコンテンツマーケティングを始めるのが良いでしょう。
社内教育に利用できる
コンテンツマーケティングをすべき理由は、社内教育にも役立つためです。
顧客に価値のあるコンテンツを作るには、深い知識を必要とします。そのため、社員にコンテンツ作成を依頼することで、社員は知識を深められるでしょう。また、ベテラン社員が監修したコンテンツを新人社員に読んでもらうことで、新人社員の教育にも貢献します。
BtoB営業・法人営業で有効なコンテンツマーケティングの種類
コンテンツマーケティングと聞くと「ブログ」を思いつく方も多いかもしれません。しかし、BtoB営業・法人営業では様々なコンテンツが有効です。そこで、コンテンツマーケティングの種類について紹介します。
コンテンツSEO
コンテンツSEOは、検索エンジンからの顧客流入を狙ったコンテンツマーケティングです。
例えば、「物流業務 アウトソーシング メリット」のキーワードでコンテンツSEOを作成するとしましょう。検索キーワードから、検索者は物流業務の外注を検討しているECサイト担当者であると想像できます。そこで、ECサイトの入庫・梱包・出庫といった発送業務を外注するメリットについて、詳しく説明したコンテンツを作成・配信します。それを見たECサイト担当者は、外注するメリットがデメリットを上回ると感じれば「問い合わせ」などの次のアクションをするでしょう。
このように、コンテンツSEOは購買意欲の高いユーザーを流入できるため、売り上げにつながりやすいのが特徴です。利用される媒体は、ブログ・オウンドメディア・コーポレートサイトなどがあります。
コンテンツSEOで効果をあげるためには、キーワード選びが重要です。キーワードが集客やコンバージョンにつながるのかを見極めて、検索者のニーズに適したコンテンツを作成する必要があります。
ホワイトペーパー
他社のオウンドメディアで商品情報や市場調査などの報告書を、PDF形式でダウンロードできるサイトを見たことがある方は多いのではないでしょうか。この報告書のことをホワイトペーパーと呼びます。
ホワイトペーパーの主な目的は、見込み顧客が知りたい情報を提供するかわりに、ダウンロードをするときに氏名・電話番号・会社名・メールアドレスなどの情報を入力してもらうことです。具体的には、コンテンツSEOのページ下にダウンロードフォームが設置されていたり、ダウンロードフォーム専用ページへのリンクが貼られていたりします。
ホワイトペーパーはBtoBのコンテンツマーケティングでよく利用されます。獲得したリード情報をもとに、メールマガジンを配布したり、営業したりすることで見込み顧客から顧客への育成を目指せるためです。
メールマガジン
メールマガジンはBtoBのコンテンツマーケティングにも役立ちます。BtoBのメールマガジンで配信する内容は、業界の動向や商品情報、キャンペーン情報やセミナーの案内などです。
ホワイトペーパーで獲得したリード情報や既存顧客のメールアドレスに、これらの情報を配信することで以下の効果が期待できます。
・顧客との関係性の維持
・見込み顧客の育成
・リピーターの獲得
・自社サイトへの誘導
メールマガジンのメリットは、一斉配信できるため手間もかからず、コストも安価で済むことです。
セミナー・ウェビナー
オンラインセミナーのウェビナーは、コンテンツマーケティングと相性の良いコンテンツです。オフラインでするセミナーや展示会も1つのコンテンツですが、参加者しか情報を得られないデメリットがあります。
そこで、ウェビナーをYouTubeなどで公開すると不特定多数の方が閲覧できるので、潜在顧客との接点を作れます。また、ウェビナーはブログなどで公開しているテキスト記事を動画化することで、1つの内容を2つのコンテンツにできるのも魅力です。
テキスト情報が好きな方もいれば、動画での解説が好きな方もいます。双方のコンテンツを制作しておくことで、早い段階で接点を持てるようになるでしょう。
事例紹介コンテンツ
事例紹介コンテンツは、見込み顧客に自社商品を導入するメリットを伝えるのに役立ちます。
BtoCで商品を購入する際には、どのような商品であるかを購入者の口コミを参考にするでしょう。同様にBtoBでも契約する前に、「どのような企業が導入しているのか」「導入企業は何に困っていたのか」「導入後にどのような結果が得られたのか」「導入の決め手は何だったのか」を知りたいはずです。
これらの情報をまとめたのが事例紹介コンテンツで、導入の疑似体験ができるため見込み顧客にとって説得力のあるコンテンツとなります。
レビューコンテンツ
レビューコンテンツは、事例紹介の中でも購入した顧客からの評判に特化したコンテンツです。
「そもそも、導入して良かったのか悪かったのか」「どのような効果があったのか」「導入することで何が改善したのか」など、顧客からのレビューをまとめることで自社商品の信ぴょう性を高められます。レビューコンテンツは、オウンドメディアやコーポレートサイトに掲載する方法もありますし、顧客のSNSに投稿されたレビューを紹介する方法もあります。
コンテンツマーケティングで注意すべきポイント
コンテンツマーケティングはメリットばかりではなく、「効果が現れるまでに時間がかかる」「コンテンツの制作にコストがかかる」などのデメリットもあります。そのため、コンテンツマーケティングを実施する際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。
コンテンツマーケティングに適しているか
BtoBには、コンテンツマーケティングに適していないビジネスモデルがあります。適していないBtoBでは、どれほどコンテンツを投下しても結果につながりにくいので注意が必要です。
コンテンツマーケティングとの相性の良いビジネスモデルは、顧客が問題意識のある商品・サービスといえるでしょう。営業先の担当者が自ら情報を調べるのは、「既存の商品やサービスでは不満があり改善したい」「自社の問題の解決方法を知りたい」といった課題感のあるときです。
反対に、既存商品で満足している場合や問題意識がなければ、積極的に情報を調べてくれません。そのような商材を取り扱っているのであれば、コンテンツマーケティングに向いていないでしょう。
例えば、ネジや電球などのように性能が一定で、金額を比較するだけの商材です。すでに性能が決まっていることや効果などもおおよそ予測できることから、事前にコンテンツなどで調査したいと思う方は少ないためです。
失敗しないためには、コンテンツマーケティングを始める前に、顧客にどのような課題感や問題意識があるのかを調査しましょう。
コンテンツを継続的に増やせる体制を作れるか
コンテンツマーケティングは効果が出るまでに時間がかかります。効果が出始めるまでに1年以上かかることも珍しくありません。そのため、コンテンツマーケティングで失敗しやすいのは、やり始めたものの結果がすぐに出ないために途中でやめてしまう場合や、長期間にわたってコンテンツを増やせる体制が作れていない場合です。
失敗例としては、閑散期に人的リソースが余っていたため、安易にコンテンツマーケティングを始めてしまうケースです。このようなケースでは、閑散期であれば問題なくコンテンツを増やせるものの、繁忙期となると人的リソースが足りなくなります。そのため、コンテンツを安定的に増やし続けることが難しく、効果が出るまでにはさらに時間がかかります。
このように、コンテンツマーケティングを成功させるためには、継続的にコンテンツを増やせる体制を作れるかが重要なポイントです。専用の人材確保やコンテンツを外注することも検討しましょう。
コンテンツの発信・分析・改善のPDCAを回せるか
コンテンツマーケティングは、コンテンツを発信し続けることが大切です。しかし、発信したコンテンツが意図したような役割を果たしているか、顧客にとって本当に価値があるのかを分析することも忘れてはいけません。発信・分析・改善といったPDCAを回すことにより、コンテンツがさらに磨かれ価値が高まっていくためです。
例えば、コンテンツSEOではリライトと呼ばれる加筆や修正をすることがあります。検索者のニーズに適したコンテンツであるほどSEOは有利となるため、リライトをするかしないかで結果が変わるためです。
このようなPDCAを回すためには、人的リソースの確保や仕事の役割分担などが課題となりやすいので注意しましょう。
まとめ
BtoB営業・法人営業にはコンテンツマーケティングが有効です。しかし、コンテンツマーケティングは種類が豊富で時間もかかることから、あれもこれもしなければいけないと思うかもしれません。
たしかに、コンテンツを数多く投下できるほど効果が出やすい側面はありますが、顧客にとって価値のあるコンテンツを作成することが何よりも大切です。コンテンツ数に囚われすぎてしまうと、品質が不十分で誰にも刺さらない内容になりかねないためです。
コンテンツマーケティングはすべてを一度にできないので、まずはターゲット層を明確にするためのペルソナ設定と、施策の優先順位を考えてみましょう。