BtoCで「自社商品の売れ行きを確認するため」や「商品の仕入れの参考にするため」に、よく利用されているのがマーケティングリサーチです。
しかし、BtoB企業ではどうでしょうか。
「納入先からの依頼に応えるだけだから」や「営業が顧客の課題やニーズを聞いてきてくれるから」と、必要性がないと考えている企業もいるかもしれません。ほかにも「リサーチする方法がわからない」などの理由で、実施していない企業もあるでしょう。
本当に、BtoB企業にマーケティングリサーチが不要なのかについては、疑問符が付きます。なぜなら、これからの時代はBtoBであってもオンラインの技術革新で、IT技術が向上したり時代のニーズが急速に変化したりする可能性があるためです。
20年前に、EC市場がここまで市場規模を拡大すると想像できた方はいたでしょうか。同様なことが次はBtoBでも起こるかもしれません。
本記事では将来の変化に対応するためにも、機会ロスを防ぐためにも、BtoB企業のマーケティングリサーチの活用方法を紹介します。
Contents
マーケティングリサーチとは
マーケティングリサーチとは、自社商品・サービスのマーケティングの意思決定に活用されることを目的とした調査や分析、ヒアリングなどを指します。
例えば、自社商品が本当に取引先のニーズを満たしているのか、競合企業の商品に市場を奪われる可能性がないのか、今後の市場でもニーズがありそうかなどの調査です。
BtoBにおいても自社商品・サービスの業界内の立ち位置を確認したり、ニーズを把握して新商品のヒントにしたりするためにはマーケティングリサーチが重要な情報となります。
BtoBのマーケティングリサーチで必要な情報
マーケティングリサーチは、マーケティングの施策の意思決定に影響するため、企業にとって重要な役割を果たします。
そのため、BtoB企業のなかにはどのような情報を入手すれば良いのか戸惑ってしまうこともあるでしょう。
マーケティングリサーチでは、以下の4つの情報が必要となります。
・自社の取引先企業に関係する情報
・類似商品を導入している企業に関係する情報
・取引先企業のエンドユーザーに関係する情報
・自社商品・サービスの市場での優位性
それでは、それぞれの情報の必要性や内容について解説します。
自社の取引先企業に関係する情報
まずは、自社の商品・サービスを導入している取引先企業に関係する情報を集めましょう。例えば、取引先企業はすでに取引しているので、自社商品に決定した何かしらの理由があるはずです。自社の強みを確認するためにも重要なポイントですので、担当者に聞けるのであれば直接確認してみてください。
ほかにも以下のような項目の情報を集めます。
・自社商品・サービスについての評価
・自社と取引を継続している理由
・取引企業が市場におけるポジション
・シェア拡大に役立つ商品が提供できるかどうか
・取引先担当者がどのような商品・サービスを探しているのか
・取引先企業が今後必要となる商品はどのようなものか
取引先企業といつまでも関係性が続くとは限りません。競合企業に契約を奪われることもあるためです。そのようなことがないように、取引先企業のニーズを把握しながら役立つ商品・サービスを提供することが大切です。
また、取引先企業が契約した決め手を理解することで、他の企業に対するマーケティングの参考にもなるでしょう。
類似商品を導入している企業に関係する情報
次は、類似商品を導入している企業に関係する情報を集めましょう。類似商品は自社商品と競合企業との商品を比較しやすく、自社の弱点や競合企業の強みを理解するのに役立つためです。
類似商品を導入している企業に関係する情報を集める際には、以下の項目がポイントとなります。
・なぜ自社商品ではなく類似商品なのか
・自社の新しい取引先になりうるのか
・類似商品を導入している理由は何なのか
・類似商品から新商品の参考になるポイントはないか
類似商品を導入しているのは、自社商品よりもメリットが多いためかもしれませんが、自社商品を知らない可能性もあります。もし自社商品が優れていると判断できる場合は、マーケティングによりシェアを奪うことも可能かもしれません。
また、類似商品にも需要があるのは、自社商品には解決できないニーズがあることを意味しています。取引先企業の様々なニーズを把握・解決するためにも、類似商品を参考にするのは重要です。
取引先企業のエンドユーザーに関係する情報
取引先企業がBtoB・BtoCにかかわらず、その先にはエンドユーザーがいます。つまり、取引先企業が利益を上げるためには、エンドユーザーに関係する情報にアンテナを張っておくことが必要です。
エンドユーザーの動向は取引先企業の経済活動に影響するため、回りまわって自社商品・サービスの売れ行きにも影響するためです。エンドユーザーに関係する情報は以下の項目をポイントにしましょう。
・ニーズに変化がないか
・市場規模や動向に変化はないか
・トレンドが変化していないか
・既存商品でニーズを満たせているか
エンドユーザーの動向を把握できていれば、取引先企業にも説得力のある提案ができるようになるでしょう。また、エンドユーザーの動きを察知することで、新商品の開発など先回りした戦略を打ち出せるようにもなります。
自社商品・サービスの市場での優位性
自社商品・サービスの市場での優位性があるかないかは、今後の売り上げに影響する重要な情報です。
もし、類似商品に対して優位性がなければ、取引先企業から「どこの商品でも一緒」と思われてしまう可能性があるためです。
優位性を確認するには、以下の項目をポイントにしましょう。
・自社の商品・サービスでないとニーズに応えられないのか
・類似商品と比較して優位性が認められるか
・自社商品と類似商品のシェアの比較
自社商品・サービスに優位性がなければ、最終的には価格競争となります。つまり、安く提供できる企業が契約を結びやすくなりますが、それでは利益を上げるのが困難になります。
自社商品・サービスをどのようにして優位性を高めるのかを検討しましょう。
マーケティングリサーチの種類と特徴
マーケティングリサーチに必要な情報を得るためには、以下の6つのリサーチ方法があります。
・定量調査
・定性調査
・営業ヒアリング
・有識者ヒアリング
・競合調査
・市場調査
「どのようにマーケティングリサーチをすれば良いのかわからない」という方のために、6つのリサーチ方法について詳しく解説します。
定量調査
定量調査とは、数値化することを目的としたリサーチ方法です。具体的には、アンケート調査をイメージするとわかりやすいでしょう。
例えば、新商品を試してもらい、5段階のなかから使用感を選択してもらうといった具合です。多数の人にアンケートしてもらい、回答の平均をとることで使用感を数値化できます。
このような数値からマーケティングの施策を決定します。
定量調査の特徴は、数値化できるため説得力があることです。先ほどの例のように、使用感というわかりにくい概念であっても数値にすることで、商機があるのかを判断できるためです。
実際に行われる定量調査には、以下のように様々な方法があります。
・ネットリサーチ
・会場調査
・ホームユーステスト
・街頭調査
・郵送調査
・電話調査
Web上のアンケート調査であるネットリサーチはコストを抑えられるため、較的安価にできるのがメリットです。
ただし、アンケート内容以外は確認する方法がないため、各項目について深掘りできないデメリットもあります。
定性調査
定性調査とは、定量調査で数値化できない情報をリサーチする方法です。例えば、インタビューで使用感や購入した理由などを直接聞きだすことです。このような具体的な情報はアンケート調査で得られません。
「なぜ商品を使用しているのか」「なぜ類似商品ではなく、自社商品を購入したのか」など、実際の顧客から意見を聞くことで顧客理解を深めるのに役立ちます。
ほかにも、BtoCであれば店舗を訪れる顧客がどのように動いているのかを知ることで、店のレイアウトや商品の配置の参考にするといった活用方法もできるでしょう。
このような定性調査には、以下の方法があります。
・グループインタビュー
・インデプスインタビュー
・行動観察調査
・訪問観察調査
・ワークショップ
定性調査は情報を深掘りできるのがメリットです。一方、インタビューをするモニターに負担がかかることや、モニター選びが難しいこと、調査数が少なくなりやすいことなどのデメリットもあります。
営業ヒアリング
営業ヒアリングとは、営業担当者が取引先や営業先で直接情報を聞きだすことです。直に聞ける情報のため、取引先企業の課題など突っ込んだ情報を収集できるのが特徴です。
営業ヒアリングをするときは、以下のような項目について確認します。
・顧客の困っている課題
・顧客の解決したい悩み
・利用している競合商品
・契約するうえで重視しているポイント
・予算や納期
・自社商品・サービスの評価
・自社商品・サービスの改善点
このように営業ヒアリングは、取引先企業の生の声を集められます。商品の訴求方法の見直しや商品の改善、新商品のヒントを得るなどBtoBマーケティングにはなくてはならないリサーチ方法です。
また、自社商品に関する情報だけではなく、検討している類似商品もあれば教えてもらいましょう。取引先企業が類似商品のどのような部分について魅力を感じているのかを知ることで、自社商品の弱点を洗いだせるためです。
有識者ヒアリング
有識者ヒアリングとは、医者や大学研究所などの専門家から意見をもらうことです。自社商品の有効性を確認するためには専門家の意見が重要なためです。場合によっては、自社商品の改善点を聞けることもあるでしょう。
自社商品の権威性を高めるためにも利用できます。例えば、「〇〇医師もおすすめ!1日1本で元気をサポート」のような謳い文句をBtoCで見かけることがあるでしょう。同様に、BtoBであっても専門家に監修してもらうことで、商品の権威性・信頼性を高められます。
これらのメリットを生かすために、有識者ヒアリングをするときは以下の項目がポイントです。
・その分野の専門家であるか
・研究所などで専門的なデータを得られるか
・監修が可能であるか
また、研究所でしか得られない自社商品のデータを測定してもらうことも、自社商品の優位性を示すのに有効な手段です。
競合調査
競合調査とは、その名のとおり競合企業についての調査です。
自社にとって脅威となりえる競合企業のピックアップから始めましょう。例えば、「価格帯の近い商品を販売している企業」「導入先が似通っている企業」「類似商品を展開している企業」などです。
同じ市場をターゲットにした商品・サービスを投入してくる企業は、自社のシェアを奪う可能性があります。競合企業がどのような戦略で市場を開拓しているのか、今後の狙いなどもしっかりと見定める必要があるでしょう。
このような競合調査をすることによるメリットは以下のとおりです。
・新たな競合企業を早期に発見できる
・市場の変化に敏感になれる
・他社との区別化に役立つ
・自社のターゲットが明確になる
また、自社単独でシェアを占めているビジネスもあるかもしれません。しかし、そのような場合であってもいつ競合企業が出現するかわからないため、このような競合調査を実施することは重要です。
市場調査
市場調査は市場規模やニーズ、トレンドなどを把握するために必要な調査です。市場調査の範囲となる情報は幅広く、アンケートや官公庁が公開しているデータなど様々です。そのため、調査に用いられる方法は主に以下の4種類があります。
・定量調査
・定性調査
・覆面調査
・統計データ調査
これらの調査結果を組み合わせて分析することにより、「市場規模の縮小拡大の状況把握」「ニーズに変化が起きていないか」「トレンドが変わっていないか」を確認します。例えば、市場規模が拡大していれば、将来有望な可能性を秘めていることがわかりますし、収縮していれば先細る可能性を示しています。
このように、市場調査は今後のマーケティングをどのようにするかの判断基準となるでしょう。
外部コンサルタントの利用も検討しよう
本記事では、BtoBにおけるマーケティングリサーチの重要性と種類について解説してきました。
しかし、重要性がわかっても実践するのは難しそうと感じる企業も多いのではないでしょうか。また、リサーチを実施してもデータを正しく収集・分析するには高いスキルと経験が必要になります。不慣れな方がしても、すぐに結果に結びつかないこともあるでしょう。
そこで、不安のある方におすすめをしたいのが外部コンサルタントの利用です。専門家に任せることで必要な情報を得られることや、工数・時間を省くことにもつながるためです。