「新規事業を判断するための評価軸を知りたい」
「複数ある事業案を精査するのに、何を基準にすれば良いの?」
このような疑問を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。
残念ながら新規事業の多くは失敗します。しかし一部の事業は成功を収めているのも事実です。その成功のためにはどのような評価軸で判断すれば良いのかは、新規事業を立ち上げるのであれば気になるところでしょう。
本記事ではそのような方に向けて、新規事業の評価軸のポイントやフレームワークを紹介します。
Contents
新規事業でポイントとなる評価軸とは
新規事業を成功させるためには顧客のニーズや、参入するためのハードルの高さ、事業の実現性、コストの回収性など様々な要素を検討する必要があります。その中でも重要なのは以下より解説する9つの評価軸です。
市場の成長性や規模
新規事業を立ち上げるときには「市場調査が重要」というのは、よく耳にするでしょう。そのとおりで市場の成長性や規模、顧客のニーズを把握するのは新規事業を立ち上げる際の基本ともいえます。
なぜならどれほどデザイン性に優れていても、どれほど独自性の高い機能であっても市場規模が小さければ、投資したコストを回収できないためです。
一つ目の評価軸は市場の成長性に問題がないか、十分な規模があるかを確認してください。
競合と自社の優位性
新規事業といえども、既存にまったくない商品やサービスを展開するのは稀でしょう。多くの場合で既存マーケットが確立していたり、他社の類似商品が展開されていたりするはずです。
新規事業を立ち上げる際には、そのような競合と自社に優位性があるかが評価軸となります。
もし優位性を見つけられない場合、すでに実績のある既存の商品・サービスが優位となりますし、価格競争の原因になることもあります。
事業の収益性の予測
三つ目の新規事業の評価軸は事業の収益の予測です。
なぜなら見込まれる利益によって、投資に回せる経営資源が変わってくるためです。また経営資源を導入する価値が事業にあるのか判断する基準にもなります。
例えば営業利益率や、1拠点あたりの売り上げ、利益などを試算しましょう。すると事業の将来の収益性について予測ができるはずです。
事業の持続可能性
事業の持続可能性も評価軸に含まれます。将来にわたって持続が可能なのかを、予算や人員、収益性などから検討します。例えば予算が少なければ事業の持続可能性は下がりますし、市場規模が先細っていく状態であれば、長期の持続は難しいかもしれません。
利益を出せる事業にするためには、事業の持続可能性についても十分に検討しましょう。
顧客像・顧客に提供する価値
商品やサービスは消費者や取引先が「利用したい」「欲しい」と、思ってもらえなければ売れません。そのため新規事業を立ち上げる際には、どのようなターゲット層に、どのような商品・サービスを提供するのかを具体的に決める必要があります。
年齢や性別、地域などにより顧客像やニーズが異なるためです。
ターゲットを具体的に決めることで、提供すべき価値が見えてくるでしょう。
ステークホルダーとの関係
新規事業を立ち上げるのは、自社の都合だけで進められないケースがあります。なぜなら既存事業のステークホルダーとの関係性があるためです。
例えば卸業者と強いつながりを持つ製造業者が「D2C」を、いきなり始めたらどうでしょうか。ステークホルダーである卸業者は困るはずです。最悪の場合、卸業者との関係性が壊れることも覚悟しなければなりません。
このような事態になると既存事業にも大きな影響がでますので、ステークホルダーとの関係性は評価軸として検討しましょう。
リスクの大きさ
新規事業の多くは失敗します。そのため必ず成功させると思っていても、失敗したときのリスクの大きさを把握しておく必要があります。事業失敗の際の金銭的なリスクだけではなく、既存事業に与えるリスクについても検討しておくのが大切です。
オリジナリティ
新規事業は他社の模倣や二番煎じではなく、自社の先進的・独創的な取り組みであるかも評価軸となります。オリジナリティのある事業は担当者が取り組む意義を見出しやすく、モチベーションの向上・維持に役立つためです。
反対にどこかで聞いたことがある事業では、担当者のモチベーションが下がってしまい、途中で頓挫してしまうことにもなりかねません。
経営資源の確保・活用
経営資源には資金や人、土地、建物など様々なものが含まれます。新規事業を立ち上げる際は、これらの経営資源をどのように活用するのか、不足する資源はないのか、不足しそうなら確保できるのかを評価します。
事業を立ち上げてしまえば経営資源は、何とかなると思うかもしれませんが、事業計画の時点で難しいと感じるのであれば、ハードルは高いといえるでしょう。
新規事業の評価に役立つフレームワーク
評価軸を適切に設定するためには、仮説の設定や市場調査など多くの手間がかかります。しかし新規事業案の数が多く、手早く評価したいと悩んでいる方もいるでしょう。
そのような方におすすめなのは、「アンゾフの成長マトリクス」と「BMO法」の2つのフレームワークです。これらを使うことで、新規事業に参入するリスクの把握や、成功度合いを数値化できます。
アンゾフの成長マトリクス
新たなビジネスモデルを考案する際によく利用されるフレームワークが「アンゾフの成長マトリクス」です。既存商品・既存市場・新規商品・新規市場の4つの項目により事業のリスクを推察できるフレームワークです。
商品と市場、既存と新規をそれぞれ掛け合わせることで以下の4通りの戦略に区分されます。
・市場浸透戦略
既存商品と既存市場を組み合わせた事業のことです。既存の事業と同じ市場で既存商品を投入して、シェア拡大を狙う戦略のことです。ノウハウのある市場に対して、知識の豊富な商材を投入するのでリスクを抑えながら事業を展開できます。
・新製品開発戦略
新製品開発戦略は既存市場に、新しい商品・サービスを投入することです。つまり既存市場の新たなニーズに対応するために、今までにない商品で顧客獲得を狙う戦略です。この方法は新商品の開発などにより、初期投資・初期費用が発生するのでリスクもあります。
・新市場開拓戦略
新たな市場に既存の商品を投入する戦略方法です。例えば、既存商品を新たなECサイトで展開してみることや、海外での販売にのりだすことです。すでに商品はあることから、大掛かりな商品開発をせずに市場開拓ができます。
・多角化戦略
多角化戦略は新たな市場で、新たな商品・サービスを投入する方法です。商品・市場のどちらについても経験とノウハウがないため、リスクが大きいのが特徴です。しかし成功すると新規市場の進出と、新規商品の開発を達成できるためハイリスク・ハイリターンな戦略ともいえます。
新規事業を立ち上げる場合、リスクの高い多角化戦略となることもあるでしょう。またこれから新たに会社を立ち上げようという方も、リスクが高いことを意味します。多角化戦略でもリスクを減らすためには、その中の4つの型について理解を深めておく必要があります。
新規事業がどの型になるのかをチェックすることで、自社の強み・弱みを把握するのに役立つでしょう。
・水平型多角化
既存事業で得たノウハウや経験を生かした新規商品を、既存市場と似た市場に投入する方法です。これまでの経験や技術を生かしていることや、市場が似ているためこともあり、既存事業・新規事業の双方に良い影響がでるのを期待できます。
・垂直型多角化
既存市場と同じような市場に、既存事業とは関連性の低い商品を投入する方法です。例えばゴルフショップが、新たに練習場を併設するようなものです。するとゴルフショップで購入した顧客が練習場を使ったり、反対に練習場を利用して顧客が買い物をしたりすることが期待できます。
しかし垂直型多角化をするには、初期費用がかかるためリスクがあります。また新たな技術の取得やノウハウ構築も必要になるでしょう。
・集中型多角化
既存事業の技術やノウハウを生かせる新たな商品で、これまでとはまったく異なる事業に参入することです。例えばスマホの液晶画面を製造しているメーカーが、スマートウォッチやVR、カーナビの液晶を開発するといった具合です。自社の持つ技術やノウハウを中心にして事業を展開していくため、「同心円的多角化」とも呼ばれます。
・集成型多角化
多角化戦略の中でもリスクが高いのは集成型多角化です。既存の商品・事業とはまったく関係のない事業を展開するためです。集成型多角化のリスクを抑えるためには、外部コンサルタントを利用して、第三者の視点からの対策方法を教えてもらいましょう。
また集成型多角化を成功させることで。既存事業が思わしくなくても新規事業でカバーできるため、リスクを分散できるメリットもあります。
BMO法
BMO法とは新規事業を参入させるのか、中止するのかを判断する際に役立つフレームワークです。BMO法は12項目を各10点満点で判定することで、新規事業の優劣を数値化できます。
例えば社内で新規事業案を公募して多数の案が寄せられたとき、一つひとつの案を精査している時間はないでしょう。そこでBMO法により数値化することで、比較検討がしやすくなります。
BMOの評価項目は「事業の魅力度」と「事業の自社適応度」に分類され、それぞれ6つの評価項目があります。
1) 事業の魅力度
・売り上げ・利益の可能性
・成長の可能性
・競争状況
・リスク分散度
・事業再構築の可能性
・特殊な社会的状況
2) 事業の自社適応度
・資金力
・マーケティング力
・製造力
・技術力
・原材料入手力
・マネジメント支援
BMOの評価方法はこれらの点数を計算することで評価します。事業の魅力度が35点以上、合計が80点以上あれば、80%以上の成功確率のある事業といわれます。
新規事業の評価軸を設定するうえで難しい理由
新規事業における評価軸とフレームワークを解説してきましたが、「なんとなく使うのは難しそう」と感じている方も少なくないでしょう。
その理由は新規事業の評価軸を設定しようにも、事業を運営しておらずデータ収集が難しいためです。ほかにも仮説や予測によって、事業の評価軸を設定するのにも経験や知識が必要となります。
このように、新規事業の評価軸を設定するのが難しいと感じる理由は主に以下の3つです。
データの収集が難しい
評価軸を設定するためには、項目にあてはまるデータ収集が必要です。しかし事業を運営していないため、仮説をもとにデータを収集しなければなりません。実際に事業を展開して得られるデータとは異なりますので、扱いになれていないと難しいと感じる原因となるでしょう。
仮説の設定が難しい
新規事業であれば、ペルソナの設定から市場規模のニーズの把握まで、多くの場合で仮説によって数値を算出します。しかし仮説の設定を間違えている可能性もあり、もし間違えていれば結果も違ってきます。このように結果まで左右する仮説を、適切に設定するのは容易ではありません。
投入できる経営資源がない
どれだけ素晴らしい新規事業案を作成しても、投入できる経営資源がない場合もあります。人的リソースが足りない場合や、資金が不足してしまうなど様々です。経営資源がなければ事業を展開することも難しいので、評価軸も設定できないでしょう。
新規事業の評価軸の設定は外部委託がおすすめ
新規事業の評価軸は9つあります。その中でもとくに大切なのは「経営資源の確保・活用」です。資金・人・物を確保できなければ、事業を運営できないためです。
また新規事業案が豊富にある場合や、新規事業を立ち上げるかどうか悩む場合には、「アンゾフの成長マトリクス」や「BMO法」などのフレームワークを利用してみましょう。事業の成功確率や、リスクを判断するのに役立つためです。
しかし実際には、新規事業を立ち上げる機会が多い方は限られており、経験不足でうまく活用できない可能性もあります。そこで成功確率を上げるために、新規事業の評価軸の設定は、外部コンサルタントに依頼してみてはいかがでしょうか。
適切なアドバイスと方法により、新規事業を成功に導いてくれるはずです。