BtoBの営業戦略の立て方とは?代表的な4つのフレームワークを解説

BtoBの営業戦略は一貫性のある営業をするために必要な計画です。例えば以下のように悩んでいる方は、営業戦略の立案をおすすめします。

「見込み顧客と商談がなかなか進まない」
「組織的な営業ができない」
「属人的な営業手法から脱却できない」

営業戦略を立案するメリットは顧客分析や市場調査、顧客育成の方法の発見、組織的な営業へのシフトなどです。

本記事ではBtoBの営業戦略の立て方と、立案に役立つフレームワークについて紹介します。

営業戦略とは 

営業戦略とは企業の目標を達成するための、中長期的な方針や計画のことです。具体的には「売り上げの拡大」や「自社商品の認知度アップ」などの目標を実現するため、リードの獲得方法や成約率向上の施策といった営業活動の方針です。また営業戦略に沿った営業活動のことを「営業戦術」と呼びます。

例えば企業の目標を1年間に40件の成約とすると、「1日100件のテレアポで2件の商談につなげる」「月4件の成約をとるために月40件の商談をする」といったように営業戦術を明確にするのが営業戦略です。

BtoBにおける経営戦略においては、BtoBの特徴である「決裁に至るまでに時間がかかること」や「一度の契約金額が高額」などを把握したうえで取り組む必要があります。

営業戦略と販売戦略の違い 

営業戦略と似た言葉に販売戦略があります。

販売戦略とは、自社商品やサービスを販売することを主眼において、どのように顧客や営業先にアプローチしていくかの方針や計画のことです。

営業戦略は企業の目標なのに対して、販売戦略は売上目標や販売数といった販売することに限定した目標です。目標に違いがあるため、プロセスやアプローチの方法も異なります。

BtoB営業において戦略がないとどうなる ?

BtoB営業において戦略がないと、スムーズな営業活動に支障をきたすことがあります。

例えば営業戦略の方針が決まっていないため、営業活動が属人化することや、組織として一貫性のない営業活動になるといった具合です。営業活動が属人化することで、営業の途中でも勝手に見込みがないと判断してしまうかもしれません。反対に、成約率の低い商談に注力して、効率を低下させることもあるでしょう。

このような営業活動を続けていると事業計画の推進を阻害したり、売り上げの予測ができず投資判断を見誤ったりする原因となります。

BtoBの営業戦略の立て方は6ステップ

BtoBの営業戦略の立て方は大まかに説明すると、KGIやKPIの目標設定から始まり、フレームワークを利用した調査・分析、営業設計といった流れです。ここではBtoB営業戦略の立て方を6ステップで紹介します。

KGIやKPIなどの営業目標を設定する

BtoB営業の戦略を立てるために、KGIやKPIなどの目標を明確にする必要があります。

KGIは「重要目標達成指標」と呼ばれ、最終的な目標値を意味します。一方KPIは、「重要業績評価指数」と呼ばれ、各プロセスの進捗状況を把握する際に利用される中間指標のことです。

例えばKGIを「昨年比で115%の売上増」としましょう。するとその目標を達成するためのKPIは、「リード数を1.5倍にする」「顧客分析により成約率を15%高める」などと設定できます。

KGIを設定することで、KPIの設定もしやすくなります。

自社の課題・問題点を洗い出す

営業戦略を立てるためには、自社の課題を洗い出すことが大切です。なぜなら自社の課題や問題点を把握できていないと、適切な改善策が検討できないためです。

例えば成約率が十分高い場合、さらに成約率にこだわって改善するのはどうでしょう。成功するかもしれませんが、すでに高い状態であるならば伸びしろも少ないことが予想されます。成約率を伸ばすことよりも、リード数や客単価を増加させる取り組みのほうが期待値は高いかもしれません。

この場合、自社の課題がリード数・客単価・商談数などのいずれにあるのかを把握することで、より具体的な施策を立案できるでしょう。

このように自社の分析をすることは、営業戦略を立てるうえで重要です。

市場・顧客・競合を調査し分析する

経営戦略を立てる際には、外部環境についても調査・分析する必要があります。市場調査により市場の規模や成長率が予想と相違がないか、顧客分析から顧客のニーズに対応できているか、競合他社との優位性を比較して劣っていないかなどを確認するためです。

顧客・競合・自社の関係を分析できるフレームワークには、3C分析があります。また市場調査に役立つフレームワークはSWOT分析です。このようなフレームワークを活用しながら、外部環境について分析しましょう。

複数のフレームワークを活用する

フレームワークは調査や分析をする際に、決められた要素を検討していくことで、漏れなく要点を押さえられる便利なツールです。

営業戦略に役立つフレームワークには、「3C分析」「ファイブフォース分析」「セグメンテーション分析」「SWOT分析」などがあります。

フレームワークはすでに多くの実績をあげている手法ですが、1つのフレームワークだけでは偏りが出る可能性もあります。複数利用することで多角的な視点から営業戦略を立案できるでしょう。

営業戦術に何が利用できるかを洗い出す

次に営業戦術に何が利用できるかを洗い出します。

例えば「ホワイトペーパーによるリード数の増加」「テレアポの件数の増加」「アップセルによる客単価の向上」などです。

このように自社で実現できる営業戦術の種類や内容を把握することで、KPIの設計や営業設計がしやすくなります。

営業設計をする

目標や自社の課題、外部環境などを踏まえたうえで戦略を立案します。具体的にはどのような営業戦術にするか、どのようなKPIを設定するかです。また計画を達成するためには、スケジュールについても考慮しましょう。

例えば「半年間で商談数を1.2倍に増やす」や「3ヵ月で成約数100件を超える」などです。

KPIを達成できない場合はPDCAによって早期に改善して、経営戦略を修正する必要もあります。

BtoB営業の戦略立案に役立つフレームワーク4選

BtoB営業戦略を立案するには、外部環境や内部環境といった自社のおかれている状況の把握が欠かせません。そこで役立つのはフレームワークです。フレームワークを利用することで、自社の課題や問題点を効率的に洗い出せるためです。BtoBの営業戦略に役立つ4つのフレームワークを紹介します。

3C分析 

3C分析とは、Customer(顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の頭文字から名づけられたフレームワークです。外部環境と内部環境から経営戦略を見直すのに役立ちます。

具体的には以下の項目をポイントに分析します。

・Customer:市場の規模や成長率、顧客のニーズに変化がないか
・Company:自社にどのような優位性があるのか
・Competitor:競合の動向や顧客対応はどのようにしているか

3つのCの関係性を分析することで、自社の強み・弱みを把握できるため改善ポイントを発見できるでしょう。

3C分析を実施するうえでの注意点は以下の2つです。

・スピーディに実施すること
市場の動向や顧客のニーズは変動します。3C分析にじっくりと時間をかけると、調査したときと分析するころには、市場や顧客に変化があるかもしれません。3C分析をする際は、スピーディに実施することを心がけましょう。

・事実を集めること
3C分析をする際に重要なポイントは、事実を集めることです。客観的なデータなどから得られる事実などから分析しましょう。個人的な意見や憶測を盛り込んでしまうと確度が下がるためです。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は5つの脅威から、自社の優位性を分析するフレームワークです。例えばBtoB営業がうまく成果につながらない場合、ファイブフォース分析をすることで競合他社にシェアを奪われていたり、多くの新規参入企業が現れたりしているなどの原因がわかります。

ファイブフォース分析の5つの脅威は以下のとおりです。

・新規参入企業の脅威
新規参入がしやすい業界かどうかを確認します。新規参入がしやすい業界ほど収益性が下がりやすいためです。また新規参入した企業があれば、技術力やブランド力などから自社に対する影響を検討しましょう。

・既存競合他社の脅威
競合他社との競争についての脅威です。競合他社が多く、競争が激化するほど収益性が下がります。競合の数や質などを確認します。

・代替品の脅威
自社製品・サービスの代替品が登場し、シェアを奪われる脅威のことです。例えば携帯電話に対するスマホや、CDに対する音楽ストリーミングサービスです。このような代替品の登場は、業界全体を脅かすこともあります。

・売り手の交渉力
売り手の交渉力が強いほど、商材・サービスの購入コストが高くなる可能性があります。購入コストが高くなるほど、収益を圧迫するでしょう。

・買い手の交渉力
買い手の交渉力が強い場合、自社商材・サービスを思うような価格で販売できずに安く購入される可能性があります。

このようにファイブフォース分析は、外部環境の脅威に特化した分析方法です。さらに効果的に活用するために、SWOT分析と組み合わせて使用する方法をおすすめします。

セグメンテーション分析

セグメンテーション分析はSTP分析の1つの要素で、市場を細分化して分析することです。STP分析はSegmentation・Targeting・Positioningの3つの頭文字から名づけられたフレームワークです。

セグメンテーションには以下の4つの分類方法があります。

・人口動態変数
人口動態変数は、人に関する属性で分類する方法のことです。年齢や性別、職業、収入などが該当します。

・地理的変数
地理的変数は日本やアメリカといった国、都道府県や市町村などの地域、交通手段や人口密度などです。地理的変数は日常生活と関係の深い商材を取り扱う際に利用される分類方法です。

・行動変数
行動変数は、顧客の行動を属性として分類する方法のことです。購入時間や購入回数、購入した商品などがあります。例えば「商品Aを購入した顧客」や「朝に購入する顧客」などでセグメンテーションできます。

・心理的変数
心理的変数は価値観や好み、パーソナリティといった定性的な属性で分類する方法です。

セグメンテーション分析はこれら4つの分類方法を複数組み合わせることで、市場を細分化します。すると自社商品・サービスを必要としている企業が見えてくるでしょう。

自社商品と相性の良い企業像をサーチしたい場合に有効なフレームワークです。

しかしあまりに細分化しすぎると、ターゲットが少なすぎるため、有効な営業戦略につながらないので注意が必要です。

SWOT 分析

SWOT分析とは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機械)・Threat(脅威)の頭文字から名づけられたフレームワークです。SWOT分析をすることで、経営資源をうまく活用したBtoB営業の戦略を立案できます。

SWOT分析の各要素は以下のとおりです。

・Strength(強み)
自社の強みのことで、目標達成に役立つ内部環境となります。

・Weakness(弱み)
自社の弱みのことで、例えば「価格の競争力が弱い」「営業担当の人的リソースが少ない」などがあげられます。

・Opportunity(機会)
自社にとってプラスに働く外的要因のことで、市場規模の拡大や顧客ニーズの変化などです。

・Threat(脅威)
自社にとってマイナスに働く外的要因のことで、競合他社との競争激化や市場規模の縮小などです。

SWOT分析をすることで自社の内部環境・外部環境から、自社のおかれている環境を整理するのに役立ちます。まずはS・W・O・Tの4つの要素を書き出して、どのような営業戦術が有効であるかを検討しましょう。

ただし同じ項目であってもプラス要素として捉えるか、マイナス要素として捉えるかは考え方により変化するのがデメリットです。判断の難しい要素についても、正確な分析のためには区別する必要があります。

SWOT分析の「強み・弱み」と「機会・脅威」をそれぞれ組み合わせて、細かな分析をするクロスSWOT分析と呼ばれるフレームワークもあります。

フレームワークで的確な営業戦略を立案しよう

的確な営業戦略を立案するためには、自社の強みや弱み、競合他社との優位性などを明確にする必要があります。そのため、BtoBの営業戦略の立て方で重要なポイントはフレームワークを活用することです。

フレームワークは決められた各要素を検討することで、自社の内部環境・外部環境を効率的に把握できるためです。

「どのフレームワークを利用すればわからない」と悩んでいる方は、まず本記事で紹介した4つのフレームワークを試してみてください。