未来のフードテックとは?「食」に関する新規事業の発想法 vol.2

前回は未来の食領域を考える際に、必ずと言っていいほど話題になる「フードテック」について詳しく紹介しました。

しかし、新規事業をどのような視点から考えれば良いのか悩んでいる方も多いでしょう。そこで本記事では、食に関する新規事業の発想法として、「事業開発の3つの切り口」と「価値観のアップデート」について紹介します。

本コラムは、弊社で開催したラジオ風ウェビナー

『未来、どこで誰と食べるのか。食卓と暮らしにまつわる新規事業の発想法』

の一部内容を編集して、全2回のシリーズに分けてお届けします。

Contents

今後はクラウド技術からデータ分析・AIに技術がシフト

食に限らずどの分野にも言えることですが、フードテックのようなIoTの発展はクラウド技術の進歩と歩みをともにしてきました。

実際にクラウドサービスの歴史を見てみると、2008年から徐々にクラウド技術が浸透し始め、現在では当たり前になりつつあります。

クラウドサービスの歴史

・2008年:Google Cloud Platform

・2010年:Azure(Microsoft クラウドサービス)

・2014年:Uber Eats(ウーバーイーツ)

とくにウーバーイーツの流行以降から、具体的なサービスが登場するようになりました。

また2024年にはIoTが当たり前の環境になると予想されており、これらの技術やクラウドをインフラとして、データ分析やAIの技術がより発達していくと予測されています。

フードテックにおけるデータ分析・AIとは

これまでのフードテックにおけるIoTやクラウド技術の活用方法は、ユーザー起点でツールに指示をして、行動を自動化するのが主流でした。例えば、お湯を沸かすのにスマートスピーカーに指示して、電気ポットをオンにするといった具合です。

しかし、これからのフードテックでは、データ分析・AIによる的達成までの方法や活動の自動化が主流になります。具体的にはダイエットアプリで、食事メニューや運動メニューがAIにより自動的に組まれ、それを実行することで目標を達成できるようになるなどです。

つまり、AIやデータの利活用には、行動を技術で置き換えるのではなく、従来行動の先にあった「目的の達成」を起点としてサービスを設計する必要があるのです。

食に関する事業開発の3つの切り口

データ分析・AIを活用したフードテックの新規事業の発想には、食に関する事業開発の3つの切り口が有効です。

①AIによる目的達成までの方法の算出と活動の自動化

②IoT・テクノロジーによる行動の自動化

③社会や個人の課題・価値観

これら3つの切り口は、ピラミッド状の3層構造をイメージすると分かりやすいでしょう。

①AIによる目的達成までの方法の算出と活動の自動化

最上層のAI・データ分析の活用による方法・活動の自動化は、これからのフードテックを考えるうえで重要な切り口になります。この切り口では、AIに活用できるデータを取得し、分析・利活用できる体制を整えてから新たなサービスを検討します。

しかし、「サービスが具体的にならない」という悩みを多く聞くのも事実です。

AIに活用できるデータを持っていても、活用方法や誰にニーズがあるのか分かりにくいためです。そこで重要なのは、下層の切り口になります。

上のフェーズを検討するには、下のフェーズの部分で何か見落としている可能性があるためです。

②IoT・テクノロジーによる行動の自動化

AIに活用できるデータがない場合は、IoT・テクノロジーによる行動の自動化のサービス提供を目指しましょう。

IoTや独自技術のサービスを提供すると、AIに活用するためのデータを収集できるためです。

③社会や個人の課題・価値観

最下層の切り口は、社会や個人の課題・価値観を捉えることです。

社会の価値観・課題・ニーズは時代により変化します。例えば、SDGsは時代に沿った課題として良い例です。

ここで問題となりやすいのは、「社会のニーズに応えているはずなのに、共感する人がいない」ではないでしょうか。

なぜなら社会課題の解決だけでは、個人が結びつかないためです。

そこで特定の世代や個人の価値観・ニーズを理解する必要があるのです。

これはその時代の社会において、どんな課題を個人が持ちうるかという視点になります。例えばダイエットしたい、健康に長生きしたい、筋力をアップしたいなどです。

加えて世代による価値観の違いや、どういった商品・サービスに価値を見出しているかを理解する必要があります。

新規事業のヒント

つまり食の新規事業の発想では、「食の領域におけるゴールまでのプロセス・行動」をテクノロジーに置き換えて、方法と活動を自動化することがポイントです。

さらに、そのサービスは「個人の目的の実現」と「社会課題の解決」を併せ持つ必要があります。

このように聞くと「なんだか難しそう」と感じるかもしれません。

そこで、新規事業の発想のヒントとして、2つの考え方を紹介します。

考え方①SDGsの食と関連するテーマ

SDGsは現在の社会課題を明確に示しているため、ビジネスにおいて積極的に活用したい目標です。

SDGsのテーマのなかでも、とくに食のシーンに結びつきが深いのは以下の10テーマです。

これらのうち、1つのテーマに絞って社会のニーズ・個人のニーズについてアイデアを出してみましょう。

考え方②食を行動の連続として捉える

食領域で考え事をする場合に有効な方法は、行動の一連の流れを書き出してみるというものです。例として、「食事をとる」という行動を実現するのに必要な一連の流れを書き出してみました。

書き出した流れを見ながら、未来のユーザーは各ステップにおいて、何を実現したいかを具体的なテーマに沿って考えてみましょう。

例えば、「食べる・残す・捨てる」ではフードロスの問題がありますし、「調理する・片づける」ではスマート家電やロボットによる自動化も考えられるかもしれません。

このように食を行動の連続として捉えることが、より具体的なアイデアを思いつくヒントになるはずです。

自分の価値観のアップデート

未来のことを考えるときは、ただただ技術にフォーカスしてしまう傾向にあります。

たしかに技術も重要な要素の1つですが、逆にテクノロジーの進化の話から離れられなくなる恐れもあります。

そこで紹介したいのは、人権運動家マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「I have a dream」から始まる一節です。

” 私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。”

引用:アメリカンセンターJAPAN

このスピーチの「同じテーブルにつく」という言葉は、差別や格差のない社会をあらわしています。これは人種に限ったことではありません。食にまつわる様々なシーンでも経済状況や身体的特徴、宗教、持病などにより同じテーブルにつけない人が多くいます。

先程のSDGsのテーマのように、社会課題に関する知識や経験、当事者意識を持ち、自分の価値観のアップデートを図ることで、未来の事業開発に欠かせない課題発見力を磨けるのではないでしょうか。

未来、どこで誰と食べるのか。

全2回にわたって「フードテック」をキーワードに、食の新規事業の発想法について紹介してきました。

AIやデータ利活用において、シーンを思いつかなければ、ニーズを捉えた事業は生まれてきません。「未来、どこで誰と食べるか。」を念頭に、3つの切り口から新規事業のアイデアを模索してみましょう。

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