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たばこの値上がりの変遷
2021年10月、たばこ税の増税に伴いJT(日本たばこ産業)を始め、フィリップ モリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコなどメーカー各社から各銘柄の値上げ発表がありました。喫煙者の方にとっては「またか…」と聞きたくなかった情報だったと思います。
今回のたばこ税増税は、2018年度の税制改正から計画されており、2021年10月のタイミングは3段階目の増税です。1段階目は2018年10月、2段階目は2020年10月に実施。値上げ値については、2018年から2021年にかけたばこ1本当たり1円(1箱当たり20円)ずつ釣り上げ、合計3円(1箱当たり60円)まで引き上げる計画で、当初の予定通り実施されました。
増税に伴いメーカー各社も販売価格の値上げに踏み切り、消費者のお財布には優しくない状況が続いています。そこで、販売価格が引き上げられている実態を2018年から2021年にかけて、紙巻きたばこ、加熱式たばこの価格変動を追いかけてみました。
紙巻たばこ
年月日 | SevenStars | MEVIUS (旧MILD SEVEN) | Marlboro |
2018年10月〜 | 500円 | 480円 | 510円 |
2019年10月〜 | 510円 | 490円 | 520円 |
2020年10月〜 | 560円 | 540円 | 570円 |
2021年10月〜 | 600円 | 580円 | 600円 |
JT、フィリップ モリスの両メーカーは、各増税のタイミングで値上げしてきました。2019年10月の値上げ値は、過去4年間において最も安い10円の引き上げ。2020年10月と2021年10月では、最も高くて50円、安くて30円と増税に伴い販売価格も上昇を辿っています。
加熱式たばこ
年月日 | HEETS (for IQOS) | Marlboro (for IQOS) | ケント・ ネオスティック | neo |
2018年10月 | ーーー | 500円 | 460円 | 490円 |
2019年1月 | 470円 | ーーー | ーーー | ーーー |
2019年10月 | ーーー | 520円 | ーーー | 500円 |
2020年10月 | 500円 | 550円 (一部 560円) | 480円 | 520円 |
2021年10月 | 530円 | 580円 (一部 590円) | 500円 | 560円 |
加熱式たばこ市場においても、フィリップ モリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの両メーカーは各増税のタイミングで販売価格を引き上げてきました。過去4年間で最も値上げ幅が大きかったのは、2020年10月から2021年10月におけるneoで40円もの値上げです。2021年10月になると、表にある銘柄は全て500円代にまで到達しています。
紙巻たばこと加熱式たばこの値上げを比較すると、紙巻たばこの方が値上げ幅が大きいことを確認できます。2021年10月時点の値段においては、紙巻たばこ「SevenStars」「Marlboro」は600円、加熱式たばこ「ケント・ネオスティック」は500円と1箱で約100円もの開きがあります。
たばこ税増税と販売価格上昇の連動はやむを得ないかもしれませんが、消費者にとっては不満が募るばかりではないでしょうか。たばこ税増税に関して財務省はどのような見解なのか。2018年から2021年のたばこ税の見直しについて、財務省のサイトには、「高齢化の進展による社会保障関係費の増加等もあり、引き続き国・地方で厳しい財政事情にあることを踏まえ、財政物資としてのたばこの基本的性格に鑑み、たばこ税の負担水準の見直し等を実施します。」と説明されています。(参考:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm#a04)
つまり、1962年から1985年まで実施していた「たばこの専売制度」の考え方を手本とし、国や地方自治体の財政状況がこれ以上右肩下がりにならないよう税収を安定化させていくという見方ができると思います。税収の減少を抑える方法が増税ということですが、税金の支出については見直されているのかが少し疑問に残ります。
(参考サイト)
・https://neage.jp/sonota/tabako/kentneostick.html
・https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2109/27/news078.html
なぜたばこは値上がりするのか
「税収入の安定を保つ」が理由の1つといえるでしょう。知っている人もいるかもしれませんが、国・地方のたばこ税等の税収は、1985年から2019年まで毎年約2兆円納められています。税収入の過去については、財務省のサイトで確認でき次のグラフの通りです。
参照:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm#a04
2021年までの年数を含めると約40年間、毎年2兆円程度の税収を積み上げてきたことが想像できます。大まかに計算しても、約40年✖️2兆円=約80兆円の税収です。国・地方自治体にとっては、手放したくない財源の1つなのでしょう。これまでの年数と金額から、たばこ値上がりの理由の1つに「税収入の安定を保つこと」がいえるのではないでしょうか。
また消費者の方にとっては、税負担の割合も気になるかと思います。例えば、紙巻たばこ1箱580円(20本入り)のたばこを購入するとしましょう。1箱 580円で買った場合、消費者の税負担は約6割にもなります。約6割を金額に換算すると約360円。たばこを買ったにも関わらず、ほとんど税金の支払いに割り当てられており、たばこより税金を買っている。そんな感覚になるのではと思います。
たばこに対する税負担の割合は高いです。先程の内容でも理解できたかと思いますが、違う商品と照らし合わせると、さらに分かりやすいでしょう。次の表をご覧ください。
紙巻たばこ (1箱 20本入り) | ビール (350ml✖️6缶) | ウイスキー (700ml) | ガソリン (1L) | 灯油 (18L) | |
税負担割合 (消費税含む) | 約60% | 約45% | 約28% | 約50% | 約12% |
参照:https://www.jti.co.jp/tobacco/knowledge/tax/index.html
他の商品と比較すると、たばこの税負担の割合の高さが一目瞭然です。ビールやウイスキーよりも高く、ガソリンや灯油に比べても群を抜いて高いことが確認できます。
喫煙率に変化はあるのか
2020年12月に厚生労働省が更新した「国民健康・栄養調査」によると、1989年〜2020年にかけての成人喫煙率は下がっていると見えます。特に成人男性喫煙率の減少は顕著で、1989年では成人男性の喫煙率は約55%でしたが、2020年には約27%にまで減少しました。成人男性の喫煙率は減少する一方、成人女性の喫煙率は、1989年では約8%、2020年は約9%と横ばいの状態。
2020年の時点で習慣的に喫煙している成人男性の割合は、30〜60歳までが30%を超えており、20歳代や70歳以上より多くの人が習慣的に喫煙しているようです。成人女性の喫煙者数は成人男性に比べると少ないですが、2020年の時点では30〜40歳の割合が高く10%を超え、50歳代、20歳代、70歳以上の順に習慣的喫煙者の割合が高くなっています。
厚生労働省の調査結果から、成人喫煙者数の割合は全体として減少傾向にあるといえるでしょう。喫煙者数の減少の背景には、世帯収入の横ばい、ストレス発散方法の増加、健康志向の人口増加など様々な要因があると思いますが、たばこの値上がりも1つの理由として考えられるかと思います。
今後どうなっていくのか
将来のたばこ業界について、「値上げ」と「価値観」についてまとめてみました。
たばこの値上げ
今後もどこかのタイミングでたばこ税増税の発表があるかと思います。増税に伴い販売価格の値上がりも懸念されるでしょう。先ほど紹介した財務省が公表しているグラフから、紙巻タバコの販売数量が減少しているものの、たばこ税による税収は毎年約2兆円と安定しています。つまり、今後も紙巻たばこの販売数量が減ったとしても、税収を減少させないため増税の可能性が考えられるでしょう。
嗜好品から贅沢品へ
たばこに対して「嗜好品」のイメージを抱く人は多いと思います。ですが、その価値観が変わりつつあります。現在の紙巻たばこの値段1箱の値段は、600円にまで引き上がり、これまでの「嗜好品」の印象から「贅沢品」のイメージに変わってきつつあるのです。特に、家計管理する主婦目線では、たばこへのイメージは厳しくなってきているでしょう。
ストレス社会の中、たばこをストレス解消や気分転換の商品として購入している人は多いと思います。喫煙が習慣になっている成人喫煙者の割合が減少傾向にありますが、ストレス社会ではたばこ購入者が0になるとは考えにくいでしょう。家計を圧迫していると知っているが、気分転換のため喫煙を止められず喫煙に対して悩みを抱える成人男性も増加するのではと思います。
たばこの値上げは、家計圧迫だけでなく精神を病ませる原因にもなりかねません。喫煙者の方にとっては、たばことの付き合い方を再度考える良い機会とも考えられそうです。
(その他参考サイト:https://j-town.net/2021/02/02317945.html?p=all)