PSM分析とは?活用シーンや調査方法

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PSM分析とは

「基準となる目安の価格を探る方法」がPSM分析と言えるでしょう。つまり、価格に絶対の正解はないということです。この分析では、企業側の理想的な価格と消費者のイメージにある価格の差、いわゆるギャップを小さくすることを目的としています。また、PSM分析を行うことで、売り上げの向上やブランドの構築といった効果も期待できるでしょう。自社商品やサービスの販売が増えていかない。その原因の1つは「価格設定」かもと感じている方は、PSM分析を行うことで解決の糸口が見つかるでしょう。原因がよく分からない方も、価格について調べることで一筋の光が見えるかもしれません。 

そもそも、PSMとは「Price Sensitivity Measurement」(価格感度測定)の略語です。商品やサービスの価格に対して、消費者がどう感じるか若しくは感じているかを測定できます。後ほど詳しく説明しますが、”たった4つの質問”を消費者に問いかけることで、基準となる目安の価格を可視化できる特徴があります。 

この4つの質問をすることで「最高価格(上限価格)」「妥協価格」「理想価格(最適価格)」「最低品質保証価格(下限価格)」を探っていきます。それぞれの言葉が持つ目的などについても、後で詳細に説明しています。 

この記事を開いて頂いた皆さんには「なかなか売り上げが伸びてこない」「新商品を開発するコンセプトは決まっているが、価格設定に悩んでいる」など様々な理由があるかと思います。その深刻な悩みを解決する可能性を持つ方法として、PSM分析が役に立つかもしれません。 

PSM分析をすることで、利益の最大化、売り上げの向上、ブランドの構築などの目標を達成するために必要な価格が見つかると思います。

PSM分析で出来ること

日常生活で何か商品やサービスを買う時に、少し躊躇する経験はありませんか?直感的に商品を気に入り購入に至る場合は別として、購入を悩む時は「商品の品質やサービス内容」と「価格」を比較していませんか?

私たちは、日用品や飲食物など何か商品やサービスを買うとなると、その商品の質と価格を比較検討しています。ドラッグストアやスーパーでは他社商品も陳列されているので、さらに比較検討が厳しくなっているでしょう。 

ここで伝えたいことは、「PSM分析」を理解するためには、消費者が購入に至るまでに熾烈な比較検証をしていることです。そして、ライバルに打ち勝ち選んでもらえるには、商品と価格を見た時、ためらいなくストレスフリーに選べる環境を整えるのが必要になるでしょう。その環境を整備するための手段に「PSM分析」があります。 

PSM分析を行って、消費者が持つ価格イメージと売り手側が決定した価格のギャップを埋め、消費者が選びやすくできるようにしていきましょう。 

それでは、具体的に使えるシチュエーションはどんな時でしょうか?その代表例を抜き出してみました。例えば、次のような場合に使えると思います。 

・類似品が無いマーケットへ発売する新商品への、消費者が抱く価格の感覚を探りたい。 

・販売中の商品に対する価格のイメージを探りたい 

・価格改定するにあたり基準を探りたい 

これらは代表例なので、活用方法はもっとたくさんあるでしょう。 

具体的なPSM分析の方法の前に、まずは、分析に関する4つの用語(最高価格(上限価格)、妥協価格、理想価格(最適価格)、最低品質保証価格(下限価格))を説明します。 

最高価格(上限価格) 

これは、これ以上価格が値上がりすると誰も選んでくれない、買ってくれないという価格です。ネガティブに聞こえるかもしれませんが、逆に売る側の視点からすると、最も利益が大きい価格でもあります。

商品やサービスを売る側としては、この価格で売れれば一番嬉しいけれど、そんなの厳しいのではと思っていませんか?

実は、設定方法によっては最高価格(上限価格)で販売し売り上げを見込める可能性があります。 

例えば、高級品やプロ用、特別会員価格といった特別感を与えた商品やサービスのようなケース。1点ものや商品に使われている材料、技術の高さといった付加価値が分かりやすい商品やサービスに対して適用しやすいでしょう。

この価格設定に対して、もう少し頑張れば買えると感じる消費者が多い傾向にあるそうです。 

妥協価格 

消費者が「この商品でこの価格なら買おうかな」と納得してお金を払う価格です。そこそこな品質でこの値段なら仕方ないと感じる、安すぎず高すぎずの中間的なポジションに位置することが多いです。

この価格を適用している商品の場合、消費者にとっては前から欲しかった商品であったり、少し財布を緩めても良いと妥協したりして購入している傾向があるでしょう。 

そして、他の3つの価格と比較すると、消費者が疑問や違和感を持ちにくい価格設定になっているため、売り上げトップの商品やベストセラー商品に多い傾向があるようです。 

理想価格(最適価格) 

言葉通り、消費者にとって理想的な価格のことを言います。その理想的な価格とは、消費者が購入するまでの間、少しのためらいもなく購入する価格です。消費者にとって最適な価格なので「安いから低品質?」「質の割りに高すぎるかも?」といった疑問や疑いを持たず購入しているケースが多いでしょう。

消費者に受け入れてもらえやすい価格なので、マーケットへの浸透速度が早いのも特徴です。 

最低品質保証価格(下限価格): 

今の価格よりさらに安くすると「品質に問題あるのかな?」と消費者に疑問を抱かれる価格のことを言います。消費者が想像する価格とかけ離れて安い場合、品質に対して疑問を抱かれることがあります。

そのため、セール品や特売品として販売する際、最低品質保証価格を知っている上で価格設定しないと、逆に、売り上げが伸びない可能性があるので注意が必要です。 

一般的に、ドンキ・ホーテやプライスカットなどのお店、スーパーの惣菜コーナーなどで最低品質保証価格を目にする機会が多いと思います。 

ここでお伝えした通り、PSM分析には4つの価格が存在します。それぞれの特徴の違いをしっかりと抑えておくと、新商品の価格設定や従来の商品の価格改定を検討する際に役立つと思います。

PSM分析の方法

全体的な流れとしては、主に4つの手順で進めていきます。消費者への4つの質問から始まり、表計算ソフトへデータ整理、データをグラフへ視覚化、価格の決定といった流れでPSM分析を行います。 

①消費者への4つの質問 

PSM分析は、次の4つの質問を消費者にするところからがスタートです。質問内容は次の通りです。 

  • これ以上高いと買わないと思う価格はいくら? 
  • 買っても良いけど少し高いと思う価格はいくら? 
  • 安いので買おうと思う価格はいくら? 
  • これ以上安いと品質を不安に思う価格はいくら? 

これらの質問の問いかけ方は変えても構いませんが、質問の意図は変えてはいけません。質問の文章を変更する時は、必ず質問の意図がズレていないか確認しましょう。 

②表計算ソフトへデータ整理 

アンケート結果を整理していきます。ExcelやNumbersといったソフトを使うと計算しやすいでしょう。Excelを使ってデータを整理する場合、関数を入力すると早いです。

関数入力方法については、こちら(https://gmo-research.jp/research-column/psm-analytics)の記事を参考にすると分かりやすいかと思います。 

アンケート結果を整理する方法は、それぞれの価格に対する4つの質問の回答割合を算出していきます。 

③グラフへの可視化 

計算結果からグラフを作成しましょう。

グラフにすると、次の図のような形になるでしょう。もし、全く違うグラフになった場合は、計算方法の確認と横軸と縦軸の単位が間違っていないか確認してみましょう。因みに、横軸は価格、縦軸は回答割合を表しています。 

不明.png
参考:総務省統計局(https://www.stat.go.jp/naruhodo/15_episode/toukeigaku/kakaku.html)

④価格の決定 

先程の図において、下限価格〜上限価格までの範囲を、受容価格帯(許容可能価格帯)と言われています。この範囲内で決めた価格は、消費者に受け入れられやすい傾向のようです。 

PSM分析の使用例 

ここからは、2つを例にとりPSM分析をどのように使うのかを紹介します。

値引きキャンペーン

スーパーの鮮魚や惣菜コーナーの特売、衣料品店のシーズン服のセールなど日常生活で「特別販売」や「セール」を常に目にします。特売やセールの値引きキャンペーンは、一時的でも価格を下げ販売数を増やしたい場合に効果を発揮します。ただ、値引きにも限度があるので注意してください。 

先ほど説明した、最低品質保証価格(下限価格)の概要を覚えていますか? 最低品質保証価格(下限価格)は、この価格より安いと消費者が品質に不安を感じる価格です。価格を下げて販売する際には、最低品質保証価格(下限価格)よりも安くなりすぎないようにして、期間限定で値引きキャンペーンを行うと良いでしょう。 

そうすることで、利益を失う機会を減らしつつ在庫も減らせるかもしれません。値引きをする場合にもPSM分析を活用できるでしょう。 

スキミングプライス 

スキミングプライスとは、新商品を意図的に高額で販売し、マーケットへの浸透度合いを見計らって少しづつ価格を下げ、さらにターゲットを拡大していく価格戦略のことです。意図的に高額で販売するのには目的があり、初めは高額でも支払ってくれる客層をターゲットとして販売するということです。富裕層にある程度広まった段階で徐々に価格を下げ、次の客層の手の届く範囲で販売し市場を拡大する狙いです。PSM分析に置き換えると、発売当初は最高価格(上限価格)で販売し、その後妥協価格や理想価格(最適価格)へと価格を下げていくイメージです。 

スキミングプライスを検討する場合、客層を変えて販売することを理解しておきましょう。富裕層向けに商品が売れたからといって、次の客層にも好まれるとは言い難いということです。つまり、客層によって自社製品に求める価値の違いを見極め、ニーズの差異を理解した上でスキミングプライス戦略を検討した方が良いでしょう。 

おわりに

PSM分析について、概要から使用例まで詳しく説明してきました。PSM分析を使うことで、企業側の販売したい価格と消費者が買いたいと思う価格のギャップを小さくする場合や、少しでも利益を得たい場合などに役立つことがイメージできたと思います。 

PSM分析から消費者が購入しても良いと思える価格の幅を知ることで、 

・価格を値上げできる可能性を探る 

・価格を下げても企業利益と消費者の満足度の両方を上げる価格を探る 

・消費者がストレスフリーに購入できる環境を提供する 

など様々な価格戦略を発見できるかもしれません。 

価格戦略に行き詰まった場合には、PSM分析を使って暗闇から一筋の光を見つけてみてください。