待ったナシ?あなたのビジネスに「脱プラスチック」はほんとうに必要か

ビジネスシーンで「地球のため」が謳われる時代

スターバックスが2030年までに取り組む課題

来年で創業50周年を迎える大手コーヒーチェーン企業スターバックスは、2030年までにエコフレンドリーな企業になるために達成すべき3つの誓いをたてました。それらは同社の現状の二酸化炭素の排出を50%削減することをはじめとして、大きく分けて3ヶ条。「脱プラスチック」(以下、脱プラ)など具体的なアクションまで落とし込まれた発表への意気込みは、ケヴィン・ジョンソンCEOの言葉にも表れています。

「2021年、スターバックスは50周年を迎えます。その節目にあたり、私たちは新たな挑戦をしなければならないと感じています。私たちの暮らすこの地球のために、今までよりも広い視野で考え、共に手を取り合っていかなければなりません」

名実ともに大企業である同社の宣言は、環境関連のメディアのみならず、日本でもファッションメディアなどが大きく取り上げました。というのも昨今環境問題への取り組む動きは徐々に日本でも広がりつつあるのです。青山ファーマーズマーケットでも、2020年4月からビニル袋廃止宣言が適応されましたね。

まだ日本では少数派の「地球のため」というアクション

しかし残念ながらこういった「脱プラ」へのアクションは、普段東京などの大都市で生活している限り、まだ珍しいと言わざるを得ません。実際に、コンビニなどではビニル袋を当たり前にもらう生活に慣れている方も多いのではないでしょうか。日本のコンビニは、買い物をするとなにも言わない限り店員さんがビニル袋に詰めてくれることが当たり前ですよね。

しかし、それは世界のほかの大都市からしてみるとすでに時代遅れの異様な光景に映っています。「どのくらい時代遅れなのか」ということを、世界の様子から覗いてみましょう。

「脱プラスチック」って、どのくらい緊急の課題?

出典:https://www.about.sainsburys.co.uk/making-a-difference/environment/plastics-packaging

イギリス大手スーパーではPB商品のプラ蓋が消える

イギリス大手スーパーマーケットSainsbury’sでは、2020年から、ヨーグルト容器を密閉する紙蓋の上につけられていたプラスチックの蓋が取り除かれました。同社は現在、年間12万トン使用しているプラスチックのうちわずか再利用しているものはうち1%にすぎません。そのため、2025年までに50%削減という目標を掲げています。

出典:https://www.beunpackaged.com/

オーガニックスーパーでは量り売りが当たり前

同じくイギリスにあるオーガニックスーパーのPlanet Organicでは ‘Unpacking(パッケージされていない)’ いわゆる量り売りが広く受け入れられています。何度か使える丈夫なペーパーバックや有料の布バックに欲しい量だけ入れて買うことができます。これは「脱プラ」にくわえフードロスの問題も副次的に解決していますね。こういった量り売りは「Unpackaged」という企業により2006年以降、ロンドンを中心にイギリスで導入が広げられてきています。

出典:https://www.beunpackaged.com/

「気候変動」はダボス会議でもキーテーマのひとつ

世界経済という大局観にたったときも「脱プラ」の動きは盛んに推し進められてきています。ジュネーブに拠点をおく非営利財団「世界経済フォーラム」が毎年1月にスイス・ダボスで開催している年次総会、通称「ダボス会議」は今後の世界経済が取り組むべき問題について話し合う機会として、議題はつねに注目されています。

その会議においても「気候変動」はキーテーマとして挙げられています。「グローバル・リスク報告書2020」でも、世界が抱えるリスクトップ10のうち気候の脅威や生物多様性の喪失といった問題がとりだたされました。10代の環境アクティベストでもあるグレタ・トゥーンベリ氏が登壇したことでも話題になりましたが、そこで彼女は企業および政府にたいし、温室効果ガスの根本的で緊急の削減を求めました。

その一助として「脱プラ」はもっとも注目されている手段でもあるのです。

「この地球のため」という真のサステナビリティを考える

経済的利益のために謳うエコフレンドリーという「グリーンウォッシング」

ところで、すこし話題は逸れますが「グリーンウォッシング」という言葉をご存知でしょうか?

Oxford英語辞典にも載っているこの言葉、1986年にアメリカの環境保護主義者であるJay Westerveld氏がフィジーを訪れたときに彼の旅行体験から言及された言葉です。地元の海とサンゴ礁保全のために、地元のホテルからタオルを繰り返し使うことをすすめられたのですが、実際のホテルのゴールというのは環境保護ではなく、ホテル自身の経費削減だったというのです。海岸やサンゴ礁近くのホテルの急激な拡大は、環境的利益よりも経済的利益の追求を反映していたのです。

Jay氏は、主目的が増益でありながら、環境保護を示す行為を「グリーンウォッシング」と名付けました。

たしかに「エコフレンドリー」「サステナビリティ」といった言葉は、日本でもカタカナで謳い文句のひとつのように浸透しつつあるのが事実です。それは上述の通りダボス会議で取り上げられるほどに世界が早急に解決すべき課題で、世界中が注目しているからともいえるでしょう。

しかし、それらを謳うビジネスを包括的にとらえたときに「この地球のため」になっているのでしょうか、また、ビジネスをつづけるという意味合いにおいて持続可能性がないものを「サステナブル」「エコフレンドリー」を謳う資格はあるのでしょうか。これは一消費者であるときにも、ぜひ踊らされないように注意したい観点ですね。

脱プラスチック、はたして正解?脱プラのほんとうの目的は「この地球のため」

さいごに、興味深い意見をご紹介したいと思います。

これまで「脱プラ」に取り組むべき背景と事象をご紹介してきましたが、「わが社も早急に『脱プラ』しよう!」と判断すること、それはいささか短絡的ことかもしれません。

その「脱プラ」が「この地球」の破壊につながるケースがあるというのです。たとえばペットボトルからガラスボトルにすると重量が増えて運搬時の二酸化炭素排出量が増える、紙バックはプラスチックバックよりも生産のうえでの水の使用量と二酸化炭素排出量が多い。綿バックはさらに排出量が多い、など素材の変更が、さらなる環境悪化につながる危険があるのです。

そもそも、プラスチックバックというものは環境保護の視点で開発されました。
1959年、紙バック生産による木材の大量伐採を食い止めるべく、スウェーデンで開発されたのがプラスチックバックの発祥です。軽くて何年も持つ素材として、幾度も使うことにプラスチックは存在意義を得たのです。実際にリサイクルされたプラスチックバックの「エコフレンドリー」レヴェルは、紙バックの3倍、綿バックの131倍も良いとされています。

環境を考えて発明された素材が21世紀になり単に忌み嫌われているというのも悲しい現実だと思いませんか。

問題の根っこに在るのは、わたしたち人類の怠慢にあります。それゆえに顧客からの一辺倒の「脱プラ」プレッシャーに従属することは懸命とはいえません。食分野に限らず、これは小売全般にいえること。「脱プラ」という行為は実行することがゴールではなく、あくまで地球環境の保全に対する一手段でしかないのです。

手段と目的を見誤ることなく「脱プラ」以外の方法で「この地球のため」を考えることもまた、立派な企業が取るべきアクションといえるのではないでしょうか。

参考リンク

A message from Starbucks ceo Kevin Johnson: Starbucks new sustainability commitment
https://stories.starbucks.com/stories/2020/5-things-to-know-about-starbucks-new-environmental-sustainability-commitment/

Plastics and packaging – Sainsbury’s
https://www.about.sainsburys.co.uk/making-a-difference/environment/plastics-packaging

Unpackaged At Planet Organic
https://www.planetorganic.com/unpackaged-at-planet-organic/

Davos 2020 Official Website
https://www.weforum.org/gpap

The Global Risks Report 2020 – Executive Summary
http://reports.weforum.org/global-risks-report-2020/executive-summary/

5 things we learned aboutclimate change at Davos 2020
https://www.weforum.org/agenda/2020/01/climate-change-crisis-what-we-learned-at-davos-2020/

The Net-Zero Challenge:Fast-Forward to Decisive Climate Action [.pdf]
https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_Net_Zero_Challenge.pdf

Foreign Office first department to announce plastic ban for its global network by 2020
https://www.civilserviceworld.com/articles/news/foreign-office-first-department-announce-plastic-ban-its-global-network-2020

Consultation on proposals to ban the distribution and/or sale of plastic straws, plastic – stemmed cotton buds and plastic drink stirrers in England.
https://consult.defra.gov.uk/waste-and-recycling/plastic-straws-stirrers-and-buds/

Beware of Greenwashing in Finance
https://impakter.com/beware-of-greenwashing-finance/

Greenwashing / Inbestopedia
https://www.investopedia.com/terms/g/greenwashing.asp

Plastic packaging ban ‘could harm environment’
https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-51040155

Plastic promises: what the grocery sector is really doing about packaging
https://www.green-alliance.org.uk/plastic_promises.php