「ライバー」はポスト・ユーチューバーに?投げ銭からみえてくるフォロワーとの関係とは

ライバー

インフルエンサーという言葉が日本社会に浸透して久しいです。彼らは通常、重きを置いているSNSをもっており、インスタグラムで活躍する人をインスタグラマー、ユーチューブで活躍する人をユーチューバーと呼ばれています。インフルエンサーはそれらの総称と言えるでしょう。

しかし、昨今「ポスト・ユーチューバー」の呼び声高い〈ライバー〉が注目されてきています。今回はインフルエンサーの今後を大きく左右するかもしれない「ライバー」についてみていきましょう。

ライバーとは「ライブ配信を行う人」のこと

ライバー(Liver)とは、「ライブ(Live)」に「~をする人」という意味の接尾語「-er」をつけたという造語で、ライブ配信プラットフォームを使用してライブ配信を行う人を指します。ちなみに英語で〈liver〉という単語はライバーではなく一般的に〈レバー(肝)〉とされるため、和製英語として認識したほうが良いかもしれませんね。

2018年10月にはNHKの朝のニュース番組で特集(「スマホでブーム ライバーって?」)されたこともあり、世間一般的に確実に認知度を高めています。

視聴者から送られる「投げ銭」という “収入源”

まず、インフルエンサーと呼ばれる人たちはフォロワーとの関係性がなにより重要です。というのもフォロワーへの影響力が強ければ強いほど、彼らはインフルエンサーとしての地位を確立するため。そしてそれは、定量的な形で再生回数、いいね!、コメント数などにあらわれます。

またインフルエンサーの収入源は、たとえば〈インスタグラマー〉の場合、クライアントから1投稿や年間契約として費用を受け取ります。〈ユーチューバー〉の場合は、それに加えて動画上に表示される広告も大きな収入源となります。

一方、ライバーはリアルタイムでフォロワー(というより視聴者という表現が適当)と交流するため、上述のSNSよりもより濃い交流が生まれます。そしてその形は定量的な形で同様に、視聴者数やコメント数などに加え、視聴者から送られる「投げ銭」にあらわれます

プラットフォームによってその呼び名は異なりますが、視聴者がプラットフォーム上で有料(一部無料)で購入したポイントを、ライバーへ送ります。そこで集まった “投げ銭” に応じた収入が、ライバーたちの収入につながるのです。たしかに収入はプラットフォーム運営会社である点はユーチューバーと同様ですが、その元手となるのは視聴者からである点こそ、ユーチューバーとの大きな違いと言えそうです。

まるでテレビ局と芸能事務所?ライブ配信市場を盛り上げるプレイヤー企業たち

視聴者とをつなぐプラットフォーム

SNSにもライブ配信機能がありますが、いずれもライバーの収入源となる投げ銭システムは導入されていません。そのため、一般的にライバーと呼ばれる彼らの主戦場は、投げ銭システムを導入している専用のプラットフォームとなります。

もちろん、彼らは自身で各SNSを利用していることも多いですが、あくまで情報拡散用であって、ライブ配信を行うプラットフォームとして利用はほとんどされていません。それでは主要ライブ配信プラットフォームをいくつか見てみましょう。

SHOWROOM(ショールーム)

SHOWROOM(ショールーム)
https://www.showroom-live.com/

代表取締役・前田裕二氏としてご存知の方も多いかもしれない、大手ライブ配信プラットフォーム。もともとDeNA本社からの公式放送および芸能人による配信のみが行われていた経緯もあり、人気アイドルやアーティスト、声優等とコミュニケーションを楽しむことができる仮想ライブ空間という特徴を持っています(2014年9月からは一般ユーザーによる配信が可能に)。

17 Live(イチナナ)

17 Live(イチナナ)
https://17media.jp/

2017年6月創業ながら、現在世界9ヶ国・全世界4,000万人以上を誇るライブ配信プラットフォームとして人気を誇っているイチナナライブ。運営は株式会社17 Media Japan。参加した方全員が一緒に盛り上がることができる様々なイベントや、新たなスターを生み出すオーディションなどを壮大なスケールで展開してきています。

LINE LIVE(ライン・ライブ)

LINE LIVE(ライン・ライブ)
https://live.line.me/

「夢を叶えるライブ配信アプリ」として、LINEを展開する株式会社LINEによって運営されています。女優・広瀬すずさん公式アカウントなどでも注目されています。

囲い込み・育成はすでに始まっている!マネジメント・プロデュース事業を展開する企業も

トップユーチューバーが所属する〈UUUM(ウーム)〉のように、ライブ配信市場でも昨今、ライバーのマネジメントを行う企業が徐々に増えてきています。プラットフォーム同様に注目のプロダクションをいくつか見ていきましょう。

COUPE MANAGEMENT(クープ・マネジメント)

COUPE MANAGEMENT(クープ・マネジメント)
http://coupe-management.com/

美容師とサロンモデルのマッチング事業を展開する株式会社COUPE(クープ)運営。「個性を輝かせる」企業理念のもと、もともと多数のサロンモデルを擁していることもあり人気ライバーたちを続々と生み出しています。

LIVERS(ライバーズ)

LIVERS(ライバーズ)
http://www.top-livers.com/

ライバーのプロデュースを行うサービスで登録料などは無料。登録が可能なのは15歳以上の女性のみであり、人気ライバーをプロデュース・育成することに主軸においています。

KOSライバーマネジメント部

KOSライバーマネジメント部
https://kospro.jp/

「モテクリエイター」として一躍有名人となったゆうこすこと菅本裕子が代表を務める株式会社KOSが運営するライバーマネジメント。AKBグループのアイドル出身という経歴をもつ自身だからこそ信頼性高く、透明性のあるライバーマネジメントが行われています。

“業界の覇者” 不在の現在からみえてくる可能性

市場参入の可能性

このように盛り上がりを見せるライブ配信市場は、プラットフォーム・マネジメントプロダクションともに今後ますますの乱立が予想されます。

ユーチューブ、インスタグラムのように “業界の覇者” が現時点では不在の状況であるライブ市場。それは、世間一般的に「プラットフォーム名+(~の人という意味の接尾語)-er」という言葉で呼ばれず、あくまで「ライバー」という総称で呼ばれていることが何よりの証拠でしょう。言い換えれば、まだまだ先読みのできない市場だけにどの立場にとっても、伸び代の多い市場ということがいえそうです。

問われるモラルと細分化する社会

ライバーと視聴者に問われるモラル

突然ですが、エマ・ロバーツ主演の映画「NERVE/ナーヴ/世界で一番危険なゲーム」をご存知でしょうか。

「ナーヴ」という架空の配信ゲーム上で、平凡な女の子が視聴者からの過激なリクエストに答えていき、一夜にして人気者になってしまうという物語です。最初は友人の色恋沙汰といった初歩的なリクエストだったにもかかわらず、徐々にブティックでの万引きやビル間での綱渡りなど、犯罪・命の危険が伴うリクエストへとエスカレートしていく様子がスリリングに描かれていました。

終盤は茶番劇のように物語が収束したものの、プレイヤーと視聴側のモラルという問題提起は、コンテンツ作成後に編集というプロセスを挟むことができないライブ配信にとって、常につきまとうトピックでしょう。

細分化したチャネルの先

ソーシャルネットワークが広まった2010年代は「個の時代」といわれています。個人はオンラインというもう一つの世界を持ち、その世界で個人の意見を発することを許されました。

かつて企業や強い組織がつくりあげた “偶像のアイドル” を生み出すことができなくなる時代になっていくのかもしれません。例えるならば、マリリン・モンローのような一世を風靡する絶対的アイコン不在時代の始まりともとれるでしょう。

しかしながらそれは同時に、複数のアイコンが細分化されたチャネルでそれぞれのアイコンとなっていく未来の始まりでもあります。

ライバーと視聴者というシンプルな構造は、個人対個人という純度の高い交流を今後より一層加速させていくことでしょう。投げ銭のみならず、おひねりの飛び交うさらに活発な市場になる日は、想像より近いのかもしれません。

参考リンク

2018年10月22日(月) スマホでブーム ライバーって?

「ユーチューバーに続く市場は“ライバー”だ!」 大学でサロンモデル検索サービスを立ち上げた起業家の次なる挑戦

KOSライバーマネジメント部 公式note

SHOWROOM (ストリーミングサービス) Wikipedia