10代・20代の若者を中心に、「推し活」文化が浸透しています。推し活とは、人気アニメやアイドルを応援する活動のことで、若者の消費行動として注目されています。
センイル広告は韓国発祥の文化で、推し活の1つです。簡単に説明すると、ファンが応援したいアイドルの広告を自費で出稿することを指します。
推し活は消費行動であることから、センイル広告はビジネスとしても注目されています。すでに日本でもサービスを展開している企業があるほどです。
本記事では若者の消費行動の理解を深めるために、センイル広告の概要や出し方、注意点などをわかりやすく紹介します。
Contents
センイル広告(応援広告)とは?
センイル広告とは、ファンが自分の推しを応援するための広告のことです。センイルは韓国語で誕生日を意味し、アイドルの誕生日などの特別な日に出稿するのが一般的です。日本語では応援広告や推し広告と呼ばれることもあります。
センイル広告の目的は、一般的な広告と異なり集客やブランドの認知度の拡大ではありません。ファンが推しに喜んでもらえることが目的となります。
そのため、ファンが推しの誕生日を応援したい、推しに喜んでもらいたいなどの気持ちを表明する広告といえるでしょう。出稿場所は、主に街頭ビジョンやバス停広告、駅構内のデジタルサイネージなどです。また、ファン独自の活動のため自費で出稿するのも特徴といえます。
センイル広告が生まれた背景
韓国でセンイル広告が生まれた背景は、人気オーディション番組の影響です。
韓国ではアイドルグループのプロデュース手法として、オーディション番組を放送し、人気のあるメンバーをデビューさせる決める企画が人気です。例えば、「PRODUCE 101」などの番組が有名で、I.O.I(アイオーアイ)やIZ*ONE(アイズワン)などのアイドルグループが生まれています。
これらのオーディション番組の特徴は、アイドルを国民がプロデュースするという参加型の企画で、応援・支持されているメンバーほどデビューしやすいことです。そのため、ファンが推しのメンバーを応援しようと始まったのがセンイル広告です。
とくに、韓国ではデビューメンバーの投票のために課金制度もあるため、お金をかけるほど推しの応援になると考えられています。
このようなオーディション番組は日本でも人気があり、「Nizi Project」からNiziU(ニジュー)が誕生するなど、成功事例も多くあります。
推し活の市場規模
消費者庁の「若者の消費行動」によると、2019年のアニメの市場規模は3,000億円、アイドルの市場規模は2,610億円とのことでした。推し活は主に好きなアニメのキャラクターやアイドルを応援する活動であることから、これらの市場規模を合わせた5,610億円が潜在的な市場と考えることができます。
フィットネス市場やペット関連市場がおおむね5,000億円規模であることから、推し活の市場の大きさがわかるでしょう。
また有名人やキャラクターなどを応援する活動にお金を使う人の割合は、若くなるほど増加傾向にあるため、今後の新たな産業としても注目されています。
出典:消費者庁「若者の消費行動」
日本におけるセンイル広告の出し方
出典:センイルJAPAN
推し活をしている方であれば、「日本でもセンイル広告を出してみたい」と思うかもしれません。そこでこの章では、日本におけるセンイル広告の出し方として、センイルJAPANで広告を出稿する方法について紹介します。
センイルJAPANとは、誰でも簡単にセンイル広告を出稿できるサービスです。韓国に加えて日本の媒体でも出稿した実績があります。また、ポスター広告のデザインや動画制作も行っているので、手軽に出稿できるのが魅力です。
さらに大規模なセンイル広告であれば、一人では資金が足りないこともあるでしょう。センイルJAPANでは、センイルクラファンを運営しており、多くのファンが出資することで大規模な広告を出稿することも可能です。
センイルJAPANでの広告の出し方は以下のとおりです。
1. 問い合わせ
まずは「センイルJAPAN」に問い合わせをします。
2. 広告媒体の選定
次にどの媒体にセンイル広告を出すかを決定します。センイルJAPANでは、街頭ビジョンや交通広告などに加えて、コンサート会場周辺やアーティスト事務所周辺にも出稿できるのが魅力です。そのような場所に出すことでアイドル本人に見てもらえる可能性を高められます。
3. 広告のデザイン・映像の作成
センイルJAPANで広告のデザインや動画を作成します。専門的な知識やスキルがなくても広告の出稿が可能です。
4. 広告素材審査
広告物が放映できるかを審査します。
5. 広告開始
審査を通過すれば指定日に広告を配信します。
事務所の許可が必要?センイル広告の注意点
センイル広告を出稿する際の注意点は著作権・肖像権を侵害しないことです。
センイル広告は、アイドルやアニメのキャラクターの画像や動画を素材に使うのが一般的です。しかし、アイドルやアニメのキャラクターの画像や動画、音声などには肖像権や著作権があります。勝手に使用してしまうと、訴訟のリスクがあるので注意しましょう。
とくに日本は著作権・肖像権に厳しいため、必ず所属事務所の許諾が必要です。
一方、韓国の場合は応援のために画像や動画の使用が黙認されています。ファンが多言語に翻訳して配信するなど、海外進出を後押ししている側面もあるためです。そのため、韓国における推し広告は日本よりもハードルが低いといえます。
また広告媒体によっては、個人名義で出稿できない場合があるのも注意点です。例えば、交通広告などの公共性の高い場所は審査が厳しい場合もあります。
センイル広告を容認している日本のグループ
日本では肖像権・著作権が厳しいため、センイル広告は難しいと考えてしまうかもしれません。たしかに多くのアイドルグループの事務所は、センイル広告を許可していないため注意が必要です。現在のところ、センイルJAPANで出稿が可能なアイドルグループは以下のとおりです。
・JO1
・INI
・BE:FIRST
・LDH所属メンバー
参照:センイルJAPAN「応援/センイル広告が可能な日本人アーティストをご紹介!話題のBE:FIRSTやJO1・INI、LDHまで」
また、Vtuberの事務所として有名な「にじさんじ」と「ホロライブ」は、応援広告規程やガイドラインを守ることを条件に、センイル広告に寛容な立場をとっています。
参照:ANYCOLOR株式会社「応援広告規程」
参照:カバー株式会社「二次創作ガイドライン」
推し活をビジネスに取り入れてみよう
推し活は若者を中心に広がっている消費行動です。2021年の流行後対象にもノミネートされ、現在ではさまざまな業界に広がっています。今回紹介したセンイル広告もその1つです。推し活と広告媒体を組み合わせることで、新たなビジネスとして注目されています。
ただし、韓国では肖像権・著作権がゆるいこともあり、推し活の1つとして定着していますが、日本ではまだまだといえるでしょう。今後、各事務所がセンイル広告を容認する動きが広がれば、日本でも目にする機会が増えていくかもしれません。
新規事業のアイデアに悩んでいる経営者は、センイル広告のように、推し活を既存事業と組み合わせてビジネスに取り入れてみてはいかがでしょうか。