マーケティング業界では「ポジショニングマップ」という言葉を耳にすることが多いです。 ポジショニングマップは自社商品・サービスの市場における立ち位置を視覚化するために使われる手法となっています。
しかしポジショニングマップの作り方を知っておかなければ正しい立ち位置を把握することは難しいです。 そこで今回は、ポジショニングマップの詳細から作成方法、軸の取り方、注意点について詳しく解説します。 自社商品・サービスの強みや訴求方法を見つけるきっかけとなるので、ぜひ参考にご覧ください。
Contents
ポジショニングマップとは
ポジショニングマップとは、競合との差別化をはかるために市場における自社商品・サービスの独自ポジションを導き出す図表のことです。 縦軸と横軸によって自社と競合の商品・サービスを配置し、市場の状況や関係性、優位性を把握できます。
図表によって今後どのようなマーケティング戦略を実施すべきか判断できるので、方向性を決定するときにも役立ちます。 自社のポジションを視覚的に理解できるため、マーケティングが不慣れな方でも取り入れやすいです。
ポジショニングマップを作る目的
マーケティング戦略の会議やミーティングは会話によって進行することが多いですが、あまりイメージが掴みづらいときがあります。
ポジショニングマップでは2次元の座標によって視覚的に把握できるため、全体が状況を理解しやすくなっています。
自社と競合が市場においてどんなポジションなのかを可視化できるので、改善策を見つけやすいという点がメリットです。
既存製品の見直しだけでなく新商品・サービスの立ち上げにも活用できるので、マーケティング戦略を考えるときには重要な役割があります。
ポジショニングマップの作成するための4STEP
ポジショニングマップを作成するときは、以下の手順で行ってください。
- ターゲットのKBFを抽出
- ターゲットの決め手となるKBFを抽出
- 自社と競合の商品・サービスのKBFを比較
- ポジショニングマップの作成・分析
それでは順番に説明します。
ターゲットのKBFを抽出
ポジショニングマップを作成するときは、まず自社ターゲットのKBF(購買決定要因)を洗い出していきます。
KBFとは顧客が購入を判断する影響となる商品・サービスの特徴や機能を指します。
例えばベッドを販売しているなら、ターゲットのKBFには「低反発で身体の疲れが取れやすい」、「汚れたら洗濯機で丸洗いできる」、「消臭効果があって体臭が気にならない」などが考えられます。 ほかにはベッドの価格も大きな影響を与えるポイントの1つです。
このように顧客が自社商品・サービスに対してどのようなKBFがあるのかを一度洗い出して整理してみましょう。
ターゲットの決め手となるKBFを抽出
自社ターゲットのKBFを洗い出したら購買の決め手となるものを抽出していきます。
例えばデスクワークで身体の負担に悩まされている一人暮らしの30代女性をターゲットにした場合、体圧分散性に優れていたり適度に反発力があったりする性能は重要な要素です。 ほかにも自宅の広さや設置場所、価格なども必要なKBFだと思います。 逆にデザインや移動のしやすさなどはあまり重要視されません。
このようにそれぞれのKBFの重要度を決定すると、ポジショニングマップの作成で最適な主軸を判断できるようになります。
自社と競合の商品・サービスのKBFを比較
各KBFの重要度を決定したあとは、自社と競合のKBFを比較していきます。
今回の例で説明すると、自社の競合他社として安価で性能に優れたベッドを扱うB社や高価で高性能なベッドメーカーのC社などを表にして比較します。
それぞれの強みを比較することで自社にどのような優位性があるのかを明確にできます。
比較からポジショニングマップを作成することで自社の優位性を軸にしてまとめることが可能です。
ベッドのKBF | 重要度 | 自社 | B社 | C社 |
価格 | 高 | 中価格 | 低価格 | 高価格 |
大きさ | 高 | 普通 | 普通 | 大きい |
重さ | 中 | 軽い | 普通 | 重い |
性能 | 高 | 寝返り しやすい | 通気性抜群 | 高反発で沈まない |
素材 | 低 | ファイバー | ゲル、ラテックス | ポケットコイル |
デザイン | 中 | 中 | 低 | 高 |
保証 | 低 | 1年保証 | 3ヶ月保証 | 10年保証 |
ポジショニングマップの作成・分析
これまでの手順を終えたらポジショニングマップを作成していきます。
今回の例をもとにベッドのポジショニングマップを作成する場合、性能を横軸に大きさを縦軸とします。 そして性能の左側には「シンプル」、右側には「多機能」、大きさは上側に「小さい」、下側に「大きい」を配置します。 作成したマップに自社と競合の商品を配置し、それぞれどのような位置にあるのかをチェックしていきます。
ポジショニングマップの軸を選定するときは競合に勝てるものか、顧客にとって重要なKBFなのかを判断して決定することが大切です。
もし競合と自社のポジショニングに大きな差異がないときは再度軸を変更してみましょう。
ポジショニングマップの軸をとる方法
ポジショニングマップの作成時に軸をとるには、以下のポイントをチェックしてください。
- 使われる機会や使用用途にもとづいた軸
- 商品・サービスの仕様や機能にもとづいた軸
- 商品・サービスから得られるベネフィットにもとづいた軸
それでは解説していきます。
使われる機会や使用用途にもとづいた軸
商品やサービスが使われる機会や使用用途はポジショニングマップの軸となります。
例えばワイヤレスイヤホンを商品として扱うならスポーツシーンか普段使いなのかなどがあげられます。 ほかにもアウトドアかインドア、自宅か会社かなど利用シーンを考えると軸にすべきポイントが明確になるでしょう。
商品・サービスの仕様や機能にもとづいた軸
商品やサービスの仕様や機能は最も軸にしやすい要素です。
例えばパソコンなら容量や処理速度、画素数などが軸となります。
商品やサービスに専門的な内容が含まれるときは、専門知識がある顧客をターゲットとして軸にすることをおすすめします。
商品・サービスから得られるベネフィットにもとづいた軸
商品やサービスから顧客が得られるベネフィット(恩恵)をもとに軸をとることも可能です。
しかし仕様や機能に比べると感覚的なものになりがちなので、ポジショニングを定型的に訴求するときにはこちらを軸にすることが最適です。
ポジショニングマップ作成時の注意点
ポジショニングマップの作成時には、以下のような注意点に気をつけてください。
- ターゲットのKBFと関係がない要素を軸にしない
- 相関性のあるKBFをポジショニング軸にしない
上記のようなポイントは作成に慣れていないと見落としがちです。
詳細について説明するので、ぜひ参考にご覧ください。
ターゲットのKBFと関係がない要素を軸にしない
ポジショニングマップを作成するときは、ターゲットのKBFと関係がない要素を軸にしないように気をつけなくてはいけません。 KBFの関係性が低いと正しい施策を考えることは難しくなるので、図表にまとめても意味がなくなってしまいます。
例えばスマートフォンを商品とする場合、解像度を軸にするとします。 しかし近年のスマートフォンの解像度はどれも一定以上の性能を持っているため、顧客は解像度を気にしなくなっているでしょう。
もし消費者ニーズと離れた要素で競合他社との差別化に成功しても、ターゲットとなる顧客が差別化要素に反応できなければ無意味なものとなってしまいます。
相関性のあるKBFをポジショニング軸にしない
価格や重さなど相関性の高い要素をKBFの軸にすることはNGです。 理由としては、相関性の高い要素で軸をとっても右肩上がりの直線しか描かれないからです。
もし価格を横軸、重さを縦軸にしてポジショニングマップを作成すると、図にはコスパ重視なら安いベッド、品質重視なら高いベッドなどの傾向しか見えてきません。
ほかにはない技術力や高品質で安価な製品を実現できなければ、結果的にターゲット顧客へ訴求することは難しいです。 そのため軸を決定するときには、2つの要素が独立した関係性にあるかを意識することが大切です。
まとめ
今回はマーケティング手法の1つであるポジショニングマップについて詳しく解説しました。 ポジショニングマップは市場における自社商品・サービスの独自ポジションを導き出す図表です。縦軸と横軸によって自社と競合の立ち位置はどこにあるのかを理解できるので、図表から新たなマーケティング戦略を考えられます。
ポジショニングマップを作成するときは、自社ターゲットのKBF(購買決定要因)を抽出して購入判断の決め手とし、競合との比較から図表を作っていきましょう。 新しい商品やサービスの展開を検討しているなら、ぜひポジショニングマップの導入を実施してみてください。