インターネットが広く普及したことにより、今や無数のWebサービスが国内市場に登場しています。これらのサービスの中にはお互いに類似する製品も含まれていますが、これらを差別化する要素として注目されているのがCXです。
CXの概念はインターネット以外の現場でも頻繁に持ち出されており、顧客体験を考える上での基準として採用されています。
今回は、そんなCXの概要について触れながら、UXの概念とどのように分けて考えるべきなのか、そしてCX改善に成功するために必要なポイントについて、ご紹介していきます。
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CXとは?
CXの総称はカスタマーエクスペリエンスで、つまり顧客体験価値の概念を指す言葉です。顧客とは自社の商品やサービスを購入し、利用している人のことを言いますが、彼らが自社商品を通じて、どのような体験をするかは人によって様々です。
ある人は自社の狙い通り、そのサービスに対して大きな価値を見出してくれるかもしれませんが、時に自社で考えていたほどの満足度を実感してもらえないこともあるでしょう。
商品やサービスについて不満を抱えた顧客は、会社に対してトラブルシューティングを求めることもあります。CXの概念においては、顧客が商品を手に取った瞬間、あるいはその前からフォローアップを徹底し、購入後も顧客の満足度を高められるようサポートすることで、価値を高めていこうというコンセプトが重視されています。
なぜCXが重視されるのか
顧客に満足してもらえるサービスづくり、というのは長年多くの企業が取り組んできた課題ですが、なぜ今になってCXという言葉に注目が集まるようになったのでしょうか。
CXが重視されるようになった背景としては、まずインターネットの普及が挙げられます。安価なラップトップの登場、そしてスマートフォンやタブレットが広く消費者の手元に行き渡ったことで、いつでも情報に触れることができるようになりました。
多様なメディアを通じて、企業が顧客と接点を持てる機会が増加し、従来よりも粒度の高いフォローアップやカスタマーサポートを提供できるため、きめ細やかなCXの改善に多くの企業が取り組んでいます。
また、広く情報が共有されたことに加え、商品開発の技術が極端に成熟したことで、競合との差別化も苛烈化していることも、CX重視の背景と言えます。AとBのどちらの商品も似たり寄ったりとなってしまい、価格や品質など、わかりやすい部分での差別化は極端に難しくなってきているためです。
このような状況で差別化できるのは、顧客体験価値です。どの製品が最も質の高いカスタマーサポートを提供しているのか、消費者と商品との接点確保に力を入れているのか、ということがSNSを通じて消費者から発信されるため、高い品質のCXを実現しなければ関係性の深い顧客を創出することができません。
上記のような複雑なCXの実現は、これまで高度なデータアナリストを抱える大企業に限定されてきましたが、最近ではCX改善に向けたデータ活用に特化したサービスも次々と登場しています。そのため、データ分析についてのノウハウがなくとも、システムを導入するだけで、簡単にCX改善の糸口を発見し、実行に移すことができます。
ビッグデータの収集やAIによるデータ分析が可能になったことで、データを扱う上でのハードルも解消されたことが、CXをより身近な概念へと昇華させました。
UXとの違い
CXと似たような概念として、UXと呼ばれるものがあります。UXはユーザーエクスペリエンスの略称で、ユーザーが商品やサービスを経て獲得する体験や、感情を表す考え方です。
特定の人間がどう感じているか、ということに焦点を当てているという点については、CXもUXも同様です。しかし両者を明確に隔てているのは、対象となるのが「顧客(カスタマー)」か「ユーザー」か、という点です。
CXの場合、名前の通りすでに商品を購入した人、つまりカスタマーを対象とした体験価値の追求が重視されています。購入前後の一連の体験価値を最大化することに焦点を当てており、その商品を購入することで、できるだけ大きな感動や満足感を与えることが重視されています。
UXの場合、もう少し個々の体験に焦点を当てていることがポイントです。例えばオンラインショップの閲覧、決済サービスの利用、口コミの閲覧など、商品を購入する際にはいくつもの体験をユーザーは経験することとなります。
UXは、それら一つ一つの体験価値が正しく創出できているか、ということに注目した概念です。CXは、顧客体験をマクロな視点で改善することが目的ですが、UXはもう少しミクロな、個々の体験価値の改善を目指します。
そのため、UXの改善は史上目的ではなく、CXを改善するための手段として考えられるケースも珍しくありません。
CXの向上で得られるメリット
CXを向上することで、具体的にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。自社が抱えている課題も踏まえ、期待できる利点について確認しましょう。
リピーター(ロイヤルカスタマー)の獲得
CX向上の大きなメリットの一つが、リピーターの獲得です。購入した商品を通じて、満足のいく体験を得られた顧客は、同じブランドの商品を購入したいと考えるようになります。まして、競合の激しい同じような製品を扱っている領域であれば、なおさら「あそこのブランドは良いところだ」と感じてもらうことが重要になるでしょう。
サービスに対して強い信頼や愛着を抱く顧客は「ロイヤルカスタマー」と言われ、一度顧客として定着すれば離脱してしまうリスクが極端に小さくなり、中長期的な売上の確保へ大いに貢献してくれます。
ロイヤルカスタマーのわかりやすい例としては、iPhoneなどでお馴染みのAppleの顧客が挙げられるでしょう。IT企業としては異例なレベルで多くの顧客から強力な信頼を獲得しており、もはやApple以外のブランドの製品には手を出したくない、という顧客も少なくありません。
これほどの信頼性を養うには多くの時間が必要ですが、Appleの順調な業績を顧みると、CX向上に力を入れるべき理由がよくわかります。
ブランディングの強化
2つ目に、ブランディングの強化です。顧客にとって好感や親しみを抱いてもらうことができれば、ブランドイメージが向上し、更なる商品価値を付与することができるようになります。
例え同じ品質のバッグを販売するにしても、半世紀以上続く老舗の鞄屋が提供するバッグと、先月立ち上げたばかりの新しい鞄屋のバッグでは、前者の方が圧倒的に選ばれるものです。
ブランディングによっては、多少値段が高くとも、前者の方を購入する傾向も見られます。ブランディングがもたらす社会的評価は侮れず、時として価格よりも大きな意味を持つことがあります。
地道なCX向上によって根強いファンを獲得し、販売経験を積んでいくことで、例え同じ商品を販売していても、多くの付加価値をもたらすことができるようになるでしょう。
口コミによるプロモーション強化
CXによってブランド力が強化されれば、消費者間でのプロモーションも積極的に行われることが期待できます。
SNSなどを通じて「ここのお店は料理も美味しくてサービスも最高だった」という噂が広まれば、多くの人が詰めかけるようになります。店舗が「うちは安くて美味しいよ」と直接消費者へ語りかけるよりも、消費者の生の声の方が遥かに信頼性が高いためです。
SNSが登場したことによって、従来に比べて消費者が共有する口コミの効果は、その事業に多大な影響を与えるまでに発展しています。うまく活用できれば高いコストパフォーマンスを発揮できるプロモーションを実現できるため、CXの向上によって、消費者が他の人に紹介したくなるようなビジネスへと成長させていきましょう。
CXを成功させるためのポイント
CXの向上に成功できれば、上記のような多大なメリットを長期にわたって期待できます。CXの成功に欠かせないポイントとして、以下を確認しておきましょう。
顧客接点における課題を把握する
まずは、自社のカスタマー体験にどのような課題があるのかを把握するところから始めましょう。顧客接点において、どこで不満を覚えているのか、どんなサービスを求めているのか、ということを正しく理解しなければなりません。
顧客とコミュニケーションができるポイントは、CXの中で複数発生するものです。それぞれの接点において改善点がないか、一つ一つ確認しましょう。
多様化する価値観に寄り添える仕組みづくりに努める
CXにおいて重視されるのが、一人一人の顧客満足に応えようとする姿勢と仕組み作りです。今やマーケットの規模は縮小傾向にあり、一律のサービスを届ければそれで良いという時代は終わりを迎えています。
顧客一人一人が抱える個人的なニーズをうまく汲み取ることで、強烈な愛着を抱いてもらうことができるようになります。データ活用をうまく推進し、どの顧客がどんなことを求めているのかを可視化しながら、サービスを改善しましょう。
改善には繰り返し取り組む
CXの向上は、一度取り組むだけでは不十分で、後から新しい課題も出てきてしまうものです。
競合よりも高度なCXを実現したい場合、PDCAサイクルを回しながら、常に最善のサービスを提供できるよう、課題発見と解決に努めることをルール化しましょう。
まとめ
あらゆる顧客や消費者の動向がデータ化されるようになったことで、これまでの商品がすくいきれていなかったニーズを拾い上げられるようになってきました。CXの改善は、このような顧客のニッチな需要に応え、確かな満足感を与えることで実現できる取り組みです。
自社のサービスにおける課題発見から解決までを定期的に行い、確実に優れたCXの実現へと結びつけましょう。