クロス集計をわかりやすく解説!単純集計との違いとやり方、注意点について 

鮮度があり、信用に値する情報を収集する上では、アンケート調査は最も有力な方法の一つと言えるでしょう。ただ、アンケートはただ調査を実施するだけではなく、調査結果を正しく分析することで、より多くの知見を得ることができます。 

今回は、そんな集計方法の中でもポピュラーなクロス集計の方法について、単純集計との違いに触れながらご紹介していきます。 

Contents

クロス集計とは 

クロス集計は、アンケート調査などから得られた回答をもとにして、さまざまな視座から調査結果を分析し、知見を獲得するための集計方法です。 

ただ調査結果を漫然と眺めるのではなく、主体的に結果から事実を導こうとする姿勢を反映した結果が得られるため、クリエイティブな知見を得やすいのが強みです。 

クロス集計は複数の視点を調査結果に適用し、どれくらい細分化するかによって集計の際の名前も変わります。回答結果の細分化の程度に応じて、「二重クロス集計」「三重クロス集計」と呼ばれ、必要に合わせた調査結果のアウトプットができます。 

単純集計との違い 

また、クロス集計の前提となるのが、単純集計(GT集計)と呼ばれる調査です。単純集計はその名の通り、集計方法としては最もシンプルな方法で、設問結果に対してどのような回答が得られているのか、単純に集計します。 

単純集計によって得られるのは、回答者の数と回答者の割合の2つの結果です。その調査に対して、何人の回答者が協力してくれたのか、そして回答者が設問に対してどんな割合で回答をしてくれたのかがわかります。 

単純集計の場合、そのアンケートがどれくらいの規模で行われたのかを把握したり、質問に対しての直接的な結果を把握することができますが、それ以上の情報を回答から見出すことはできません。すぐに結果を得やすい分、得られる情報も限定的です。 

一方でクロス集計は、そんな単純集計から得られる情報をもとに、より多くの情報を導くことを前提とします。単純集計においては客観的な事実のみを頼りにしていましたが、クロス集計では調査を行う側の仮説が求められます。さまざまな仮説に基づき、調査結果を読み解くことによって、より深みのある情報を得ることができます。 

クロス集計でわかる主な結果 

クロス集計をアンケートの調査結果に適用することで、さまざまな事実を見出すことができます。どのような情報を発掘できるのか、その例を確認しましょう。 

商品の満足度 

例えば、特定の商品に対する顧客満足度です。アンケート調査で顧客満足度を把握したい場合、「商品に満足しているかどうか」という設問事項を提示し、5段階評価などで回答してもらうのが一般的です。 

ただ漠然とどれくらい商品に満足してもらうことができているかを知りたい場合には、単純集計で調査結果を把握するだけで良いかもしれません。しかし重要なのは、そこからどんな課題を見出すことができるかという点です。 

商品の満足度とは一言で言っても、誰にどのような点で満足してもらえているのか、という情報が肝心です。男性と女性のどちらが満足しているのか、その商品の、どんなポイントに顧客は満足しているのか、といった情報です。 

クロス集計を実施することで、このような、より具体的な満足度のディテールを把握することができます。 

例えばアンケートにおける回答者の世帯構成と価格に注目してクロス集計を行うとしましょう。回答者には自身が結婚しているかどうか、子供がいるかどうかを回答してもらうとともに、その商品の価格についての満足度を回答してもらうとします。 

単純集計の場合、世帯構成と価格に対する満足度は、別個の数字として扱われるため、その関連性を見出すことは難しくなります。しかし、クロス集計の場合は違います。 

例えば商品の価格についての満足度を問う回答結果で、満足と答える人が70%いたとします。この結果だけを見た場合、商品の価格設定については概ね問題がないと考えるかもしれません。 

しかし、世帯構成の集計結果と価格の集計結果をクロス集計で分析したところ、新しい事実が見えてきます。 

すでに所帯を持ち、子供もいる家庭の回答者の多くは価格に不満を抱えており、独身の世帯だけが満足と答えていた、という結果です。 

つまり、独身の消費者にとっては問題のない価格設定だが、ファミリー層には高額に感じられる価格であったことが、クロス集計を通じてわかります。 

子供の養育費や住宅ローンなど、ファミリー層は何かと独身世帯に比べてかかるお金が多く、コストパフォーマンスを重視する傾向が強いため、価格に対してはシビアな判断基準を持っていることが見えてくる、という仕組みです。 

改善点につながる詳細なニーズ 

クロス集計は、設問間の回答結果を比較することで、より細かなニーズを探ることもできます。例えば、とある商品の満足度について、複数の指標からアンケートを取った調査を例に考えてみます。 

今回の商品満足度において回答を求めた設問は、味、価格、機能(買いやすさ)の3つとします。それぞれの解答結果を漠然と単純集計するだけでは、その商品の改善点を絞ることが難しくなります。 

そこで、クロス集計を用いて設問間の解答の差を比較することにしてみます。すると、味と価格については満足しているものの、機能については満足していない、という結果が見えてきたとします。 

つまり、味と価格については現状で改善の余地はないが、機能、つまり買いやすさについては不満を抱えており、相対的にみて優先的に改善すべき点であることがわかります。 

このことから、商品の改善案としては流通の見直しや、販売店の増加などに向けて動けば良いということが改善の目処として見出すことができるでしょう。 

集計方法 

それでは、クロス集計を実施する上ではどのような方法を用いて集計を行うべきなのでしょうか。主な方法としては、エクセルを使う方法と、集計ツールを使う方法の2種類が挙げられます。 

エクセルを活用する 

クロス集計において最もポピュラーな方法の一つが、エクセルの活用です。エクセルは広く普及している表計算ソフトであるため、集計作業においても活躍機会が多いのが特徴です。 

エクセルにはピボットテーブル機能と呼ばれるツールが搭載されています。ピボットテーブルを活用することで、例え大量に設問が用意されている場合でも、必要な設問を絞って簡単に集計を行うことができます。 

エクセルはできることが多い分、操作が難しく感じてしまうことも多いものですが、基本的に無料で運用できるだけでなく、汎用性が高いため、使いこなせるようになっておいて損はないでしょう。 

集計ツールを活用する 

クロス集計を行うもう一つの方法が、集計ツールの活用です。リサーチ会社などが提供している集計特化のツールにデータを読み込ませることで、簡単にクロス集計を実施することができます。 

単純集計とクロス集計の両方が行えるだけでなく、レポートとして簡単に出力することも可能になっているため、集計に伴う負担を最小限に抑えられます。 

実践的な多くのツールは有料ですが、集計業務が負担になっている場合、こういったツールの導入が最もコストパフォーマンスの高い選択となり得るでしょう。 

クロス集計を運用する上での注意点 

クロス集計は多くの情報を得られるため、積極的に活用すべき手法です。ただ、運用に際しては注意点もあるため、過度な信用や依存は回避するべきとも言えます。 

単純集計を丁寧に行う 

アンケート調査を行う際には、クロス集計の前に単純集計を確実にこなしましょう。単純集計の結果から、クロス集計につながる仮説を立てていくことができます。 

回答者数に注意する 

まず、調査がどれくらいのスケールで行われているかを踏まえた上で、クロス集計を実践する必要がある点です。アンケート調査というのは、膨大な数の母集団からサンプルを採取し、全体的な動向として参考にするための手法です。 

ある程度外れ値の存在も踏まえた調査であるとはいえ、回答者の数はそれなりに確保しておかなければ、正しい結果を導くことが難しくなってしまいます。どのような領域かにもよりますが、例えば一桁レベルのサンプル調査では、調査として正しく結果を得ることが難しくなります。 

適切な傾向をクロス集計によって掴むためには、最低でも数十人〜数百人規模のアンケート調査を行うべきでしょう。クロス集計を運用したい場合には、調査の規模に目を向けましょう。 

あらかじめ仮説を検討する 

クロス集計が単純集計と大きく違う点として、調査を行う人間の主体性や仮説に大きく結果が依存している点です。調査を行う側で単純集計結果を踏まえながら、さまざまな仮説を立ててみることが大切です。 

その商品がどんな層に人気なのか、そして、どのような点で購入が控えられているのかなど、あらかじめ知りたい情報を導き出すための設問事項を検討することも大切です。ただ調査を実施するだけでは有益な情報は導けないため、前のめりな姿勢で情報を読み込もうとすることが求められます。 

まとめ 

クロス集計は、アンケート調査から有益な情報を多様に導くことができる、優れた集計手法です。これまではエクセルで行うことが一般的でしたが、最近は調査ツールが広く普及したことで、専用の集計ツールの活用も有効になってきました。 

また、クロス集計は直接集計とは異なり、データを読み解く側の仮説力も試されます。さまざまなデータを読み込みながら、仮説を立てる力を身につけるよう意識しましょう。