
近年、ChatGPTを筆頭に生成AIに注目が集まっています。しかし、現在のAIは何かしらの作業に特化しているものが中心で、さまざまな作業に対応できません。
そこで、AIの次に開発が進められているのはAGI(汎用人工知能)です。AGIは汎用型AIのことで、人間の知能を超えると考えられており、世界のゲームチェンジャーになると期待されています。
本記事ではAGIの概要、AIやASIとの違い、現状をわかりやすく解説します。
Contents
AGI(汎用人工知能)とは

AGI(汎用人工知能)とは、Artificial General Intelligenceの略で、人間のような知能と自己学習機能を持つ汎用型AIのことです。
人間のように物事を考えられることから、さまざまな作業をこなせるのが特徴です。また自己学習機能により、人間の知能を追い越すと考えられています。
ソフトバンクの創業者である孫正義氏の考えでは、「AGIの知能は、全人類の知能の10倍」になるとのことです。
参考:ソフトバンク「AIは「AGI」へと進化し、今後10年で全人類の叡智の10倍を超える。孫正義 特別講演レポート」
AGIとAIの違い
AGIとAIの違いは汎用性です。
AIは、特定の目的や作業を達成するために開発された人工知能のことです。作業を実施するには、人間がタスクを指示する必要があります。また、AIには自己学習機能がありません。
一方、AGIは人間のような知能を持つことから、AGI自身で考えて作業を実施できるのが特徴です。そのため複雑、あるいは複数のタスクにも対応できます。さらに自己学習機能により、新たなデータを自動的に取り込めるのもAIと異なる点です。
AGIとASIの違い
AGIと一緒によく聞くキーワードはASIです。
ASIはArtificial Super Intelligenceの略で、人工超知能を意味します。簡単にいえば、AGIをさらに進化させた人工知能がASIです。
ASIは、その優れた知能から人間では解決が困難な問題も解決できるとされています。しかし、AGIもまだ開発途中のため、ASIは現時点では実用化されていません。
AGIの実現時に起こるシンギュラリティとは

シンギュラリティとは、AIが人間の知能を超える転換点を意味し、日本語で技術的特異点とも呼びます。つまり、シンギュラリティに到達することは、AGIの実現を意味します。
このように聞くと、「AGIはいつ実現するの?」と思う方もいるでしょう。
シンギュラリティの提唱者で、人工知能の世界的権威のレイ・カーツワイル氏は、2045年にシンギュラリティが起こると予測していました。しかし近年、同氏は2029年にAIが人の知能と同レベルになると予測しています。そのため、早ければあと5年程度でAGIが実現する可能性があるのです。
AGI(汎用人工知能)にできること
AGIの開発に成功すると、あらゆる産業や分野において人工知能が活躍すると期待されています。ここでは、AGIにできる具体例を紹介します。
人間との自然なコミュニケーション
まず1つ目のAGIができることは、人間との自然なコミュニケーションです。そのためAGIは、カスタマーサービスやコールセンターなどの業務を遂行できるでしょう。また、翻訳や通訳としての活用も考えられます。
アイデアの創造
2つ目のAGIができることは、新たなアイデアの創造です。絵画や作曲、小説などのクリエイティブな活動だけではなく、マーケティングデータを活用した新規事業のアイデア出しもできるでしょう。将来はAGIのアイデアにより、新技術を開発することが普通になるのかもしれません。
新たな治療法の確立や医薬品の開発
AGIは、これまでの医療で治療が困難な病気に対して、有効な治療法の確立や医薬品の開発ができると期待されています。ほかに、病気の診断といった医療業務を担うことも可能です。
自律的な意思決定
AGIの特徴は、自律的な意思決定をできることです。これにより、さまざまな業務の自動化や自動運転の実現などが期待されています。
AGI(汎用人工知能)の現状
AGIは2024年4月時点で、まだ実用化には至っていません。世界でAGIの実現に向けて研究・開発を進めているのが現状です。この章では、海外と国内の代表的な2つの企業と団体の取り組みを紹介します。
海外事例:Google DeepMind

GoogleはAIの開発を促進するために、自社のAI開発部門のGoogle Brain TeamとDeepMindを2023年に統合し、Google DeepMindを設立しました。DeepMindは2014年にGoogleに買収されたAI関連会社で、代表的なAIサービスにAlphaGoがあります。AlphaGoとは、AIとして初めてプロ棋士に勝った囲碁プログラムです。
Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOによると、AGIの実現には数十年かかると思われていましたが、AIの研究の進歩により早ければ数年以内にAGIを実現できる可能性があるとのことです。
2つのチームが結合したことで、AGIの実現が近づいたといえます。
参考:THE WALL STREET JOURNAL「Google DeepMind CEO Says Some Form of AGI Possible in a Few Years」
国内事例:全脳アーキテクチャ・イニシアティブ

全脳アーキテクチャ・イニシアティブは、脳全体の情報処理の構造を参考にAGIの実現を目指している非営利団体です。脳の構造を模倣し、人工的に構成した機械学習器を組み合わせることで、人間以上の能力を持つAIを実現できるとしています。
2015年の設立から、「脳全体のアーキテクチャ(構造)に学び人間のような汎用人工知能を創る」をモットーに掲げ、これまでに39回の全脳アーキテクチャ勉強会を開催してきました。勉強会では、人間の脳の働きやAIに関する情報の共有を図っています。
全脳アーキテクチャ・イニシアティブの考え方は、AGI実現のアプローチ手法の1つとして注目されています。
AGI(汎用人工知能)の課題
AGIの実現は、あと数年から10年といわれているように、遠い未来のことではありません。
しかし、AGIが人類の知能を超えることで、制御できなくなる懸念も指摘されています。シンギュラリティが起こると、AGIは人間の知能を超えてしまうことから、AGIの動きを予測することが誰もできなくなるためです。
この問題は、レイ・カーツワイル氏が2045年にシンギュラリティが起こると予測したことから、2045年問題と呼ばれています。例えば、現在の仕事がAIに奪われることや社会システムの変化などの懸念があります。
AGIの実現は事業に大きな影響を及ぼす可能性がある
世界ではAGIの開発が積極的に進められ、早ければあと数年で実現できるかもしれません。しかし、人工知能が人間の知能を超えた場合、2045年問題により現在の事業に大きな影響がでることも考えられます。事業にどのような影響がでるのかを把握するためにも、今後のAGI関連の動向に注目してみましょう。