2022年日本国内における家電市場の市場規模・動向 

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、私たちのライフスタイルに大きな影響を与えました。その余波は消費者の消費動向にも現れており、家電市場は最もわかりやすくその余波が見られる領域です。 

今回は、2022年に日本国内の家電市場において、どのような動向が見られるかについて、これまでの事例を検討しながら予測を立てていきます。 

Contents

新型コロナウイルス感染拡大で家電市場の売上はどう変わったか? 

まずは、2020年以降の新型コロナ拡大によって、どのような変化が訪れたのかを振り返っていきましょう。 

「巣ごもり需要」で家電市場は活況 

新型コロナの影響によって、人の流れに大きな制限が加えられ、多くの人は大半の時間を家庭内で過ごすことに限定されることとなっていきました。そんな中生まれたのが「巣ごもり需要」というトレンドで、家庭内で過ごすための物品の購入が2020年以降盛んに行われています。 

巣ごもり需要を特に支えていたのが家電市場で、多くの世帯で家電の買い替え、あるいは新しい家電製品の買い足しが行われました。2021年5月時点で各社が発表した決算報告によると、家電販売最大手であるヤマダホールディングスにおいて、最終利益は前年度のおよそ2倍に当たる517億円という数字を打ち出しています。 

また、関東エリアで勢力を伸ばすノジマに至っては、前年度の3倍以上に当たる528億円に達し、大変な活況を迎えていることがわかります。 

参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210506/k10013015501000.html 

2020年は政府から消費者向けの給付金が配布されたこともあり、家電製品のような比較的高額な物品を購入する後押しがあったこともありますが、緊急事態宣言の解除やパニックの終焉に伴い、2021年度以降も同様に好調な業績を納めることが期待されています。 

ライフスタイルの変化が産んだ新しいトレンドも後押し 

また、巣ごもり需要は単に家電を新しく買い換えるだけでなく、これまでは手に取ることがなかったような品々への需要が高まっていることも報告されています。 

わかりやすい分野と言えるのが、調理家電市場です。ただ調理家電を買い換えるのではなく、少しハイグレードなコーヒーメーカーやオーブンレンジなどの購入が以前よりも顕著に見られるようになっています。 

参考:https://foodclip.cookpad.com/9108/ 

これは、単純に家にいる時間が長くなっただけでなく、緊急事態宣言の影響で外食ができなくなっていることも背景として大きいでしょう。たこ焼き機やパン焼き機、電気圧力鍋など、新型コロナがなければ今まで手に取ることのなかったような調理器具の需要も大きくなっている傾向にあります。 

また、「おうち時間」を有意義に過ごすためのアクティビティとして、家庭用ゲーム機の購入も以前に増して活発になっています。大手ゲームメーカーの任天堂の直近の四半期決算を見ると、売上高は約6959億円、営業利益は約2525億円と、いずれも前年同期を上回っています。 

参考:https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/20220206-00280854 

半導体不足の影響や流通の滞りにより、ゲーム業界では製品の供給不足が依然として深刻であるものの、2022年度以降も引き続き成長の兆しが見られます。 

2022年の需要を理解する上で役立つキーワード 

家電市場における2022年の動向を理解する上では、以下の2つのキーワードが重要になります。それぞれの定義について確認しておきましょう。 

デジタルファースト 

1つ目のトレンドが、デジタルファーストです。デジタルファーストは、これまで紙媒体で提供されてきた情報が、電子媒体を通じて提供することが優先されるというデジタル化のトレンドを指す言葉です。 

生まれた時からデジタルデバイスに囲まれてきたデジタルネイティブ世代の社会進出に伴い、コピーした紙の資料や新聞・雑誌といった媒体は、情報の共有方法やインプット手段として馴染みがなく、効率的ではないという理由から、徐々にその有用性も見直されつつあります。 

デジタルを主体とした情報コミュニケーションが浸透することは、ビジネスにも良い影響を与えます。情報共有を迅速に行うことができたり、システムを効率よく運用し、余計な業務を解消したりと、高い生産性を元ん場にもたらすことできます。 

消費者の一般生活においても例外ではなく、余計な紙媒体を排除し、デジタル経由で情報伝達が行われることで、無駄のないミニマルなライフスタイルを実現可能です。 

デジタルインフラストラクチャ 

2つ目のトレンドは、デジタルインフラストラクチャ、通常デジタルインフラです。デジタルインフラは、IT運用を支える技術基盤全般を指す言葉で、もっともポピュラーな技術がインターネットです。 

IT時代の到来によって、多くの世帯にコンピュータが普及しましたが、スマートフォンの登場はさらにIT活用を身近にしていくこととなります。 

そんなスマホ需要の拡大を支えたのが、日本全国に張り巡らされた4G回線や、光回線といった高速回線です。最近では5Gといった次世代高速通信網の普及も進んでおり、今後は更なる高速化と利便性の向上が進むと考えられます。 

2022年に需要が低下すると考えられる家電製品 

それではここから、2022年に需要動向が徐々に変化を迎えると思われる市場動向について見ていきましょう。2021年には活況だった製品、あるいは不況だった製品を問わず、2022年に苦しくなるであろう分野はいくつか存在します。 

参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00067/00041/ 

テレビ 

需要が伸び悩む製品として第一に懸念されているのが、テレビです。2020年から2021年にかけて、テレビは国内での巣篭もり需要だけでなく、海外でも需要が高まっており、多くの売上が記録された領域です。しかし2021年7月以降は供給過剰が一部見られたり、パネル価格の高騰や新型コロナの拡大といった要因が影響したりしたことで、売上に鈍化が見られます。 

パネル価格が落ち着きを取り戻すのは2022年の上半期とみられ、需要を喚起できるのは下半期以降と考えられています。 

パソコン・タブレット機器 

PCやタブレット端末についても、巣ごもり需要やリモートワークの普及によって、大きな成長が2021年までは見られた分野です。しかしながらいずれの製品も伸び率はピークを迎え、2022年以降は前年ほどの業績は期待できないとされています。 

オーディオ 

新型コロナや情勢不安の影響により、悪影響が懸念されているのがオーディオ分野です。コンピュータの制御に不可欠な半導体の不足はオーディオメーカー各社を悩ませており、ソニーが一部製品の出荷額値上げを発表したことで、駆け込み需要が発生していると見られます。 

値上げ幅は3〜31%と見られており、これほどの値上げの敢行は実に7年ぶりとされています。製品によっては10万円近い値上げが行われるケースもあり、購買の鈍化が懸念されます。 

参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3144G0R30C22A3000000/ 

2022年に需要が高まる家電製品 

それでは逆に、2022年以降需要が高まる家電製品にはどんなものが挙げられるのでしょうか。 

参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00067/00041/?P=2 

家庭用ゲーム機 

半導体不足の影響は、PCやオーディオだけにとどまらず、ゲーム業界にも波及していました。特に新型ゲーム機の供給不足は深刻で、ハードウェアの生産が思ったように進められなかったことから、各社で業績の下方修正が行われました。 

2022年以降は半導体の供給が改善すると見られており、各社で増産が進み、十分な供給と更なる需要の喚起が期待されています。 

時計(スマートウォッチ) 

外出機会が減ったことで、腕時計やスマートウォッチの需要は大きく減退していました。2022年は各国で外出規制やマスク規制などが緩和されたことで、以前とほぼ同様の生活が戻ってくると期待されています。 

それに伴い、外出時に身につけるためのアイテムについても、従来のような需要が戻ってくると考えられています。 

スマホ 

スマホについても、時計などと同様に需要の回復が期待されています。新興国などでは感染再拡大の恐れもあり、リスクは抱えているものの、人流の増加に伴う買い替え需要の喚起が進むと期待されます。 

注目すべき電子機器の最新トレンド 

需要の変動だけでなく、新しい電子機器のトレンドについても注目したいところです。最後に2つの最新トレンドについて、確認しておきましょう。 

家電サブスクリプションサービス 

一つ目の兆候は、家電のサブスクリプションサービスの登場です。従来のように家電を買うのではなくサブスクで借りるという新しい入手方法は、初期費用を抑えられるだけでなく、最新の家電をリーズナブルに利用でき、廃棄や買い替えの心配もないことから、重宝されると期待されています。 

スマート家電 

また、巣ごもり需要の喚起によって、生活へのIoT導入も盛んに行われています。顕著なのはスマート家電の登場で、IoTやAIといった技術で家電を制御し、スマホからコントロールしたり、他の家電と合わせて一括管理ができたりと、多くの恩恵をもたらしてくれています。 

家の中で過ごす時間が増えたからこそ、家庭内で発生する雑務の負担が重く感じられるようになり、それを解消するためにスマート家電を選ぶ人は増えていることでしょう。 

まとめ 

家電市場は新型コロナの影響により、大きな変化を迎えています。巣ごもり需要は売上の改善に良い影響を与えていますが、一方で需要がピークアウトしたカテゴリも少なくなく、トレンドを把握する上では注意が必要です。 

新型コロナや情勢不安の影響により、家電の需給を予測することは難しくなっていますが、最新の情報をもとに適切な判断を下しましょう。