調査結果がうまく活用しきれていない

せっかく調査を行っても、得られたデータが活かしきれずにリソースを無駄にしてしまったことはないでしょうか。 

そうした事態を避けるために、調査を行う際に留意しておくべきポイントがあります。それは、調査結果を活用する目的を定めること、調査結果に対して情報整理を行うことです。加えて、サポート手法について知っておくことも重要です。このコラムでは、調査結果を上手に活用するための方法について紹介していきます。 

【調査結果を活用する為のアイデア】
まず調査結果をどう活用したいのか、調査前に考える 

調査を行う目的を明らかにすることは重要なポイントです。やみくもに調査を進めることで、コストが増えてしまうことやリソースの無駄に繋がるためです。例えば、自社製品をリニューアルする目的、社内環境を改善する目的、顧客の満足度を上げる目的、といった具体的な目標がなければ、どのような情報を集めたらいいのか分からなくなってしまいます。目的を持たずに調べ始めてしまうことで、調査対象を絞り切れずに莫大な時間がかかってしまうのです。調査結果とは、何を成すために実施するかといった目的を定めてこそ大きな意味を持つものなのです。 

目的を明らかにするためには、まずは調査対象を明確に決めましょう。軸を決めずに調査対象を漠然と決めてしまうことは、無駄が多く避けるべきです。具体的には、類似している企業の中からトップシェアの企業、反対にワーストシェアの企業、同レベルの企業といった点や、価格帯やマーケティング戦略が似ていることなども調査対象を絞るにあたって留意すべきポイントになります。一つの軸のみでなく、さまざまな軸から調査を行うことで客観的な分析することが可能になるのです。調査を行う目的に沿って適切に調査対象を定めることで、調査結果の具体的な活用に役立てることができます。 

さらに、調査対象が絞られたらどの項目をピックアップするか決める必要があります。目的をより具体化させるためです。商品・サービスの内容、ターゲット、課題といった点に注目するなどです。 

加えて、調査結果を活用するためには、仮説を立てることが必要不可欠です。調査とは、仮説を導き出すための手段でなく、仮説を確認するために行うからです。例えば、類似のマーケティング戦略を採用している△社は××の点については強く、〇〇については弱い可能性がある、といった見込みのことです。またこの見込みを受けて、自社は△社が弱い〇〇について強化するという戦略を実施することで、他社と差別化できるはずであると仮説を立てます。こうした仮説を踏まえて、必要となる明確な証拠を調査を通して見つけ出すことができます。このように、仮説を立て、調査によって照らし合わせていくことでより効果的に調査結果を集めることができます。 

以上のように、調査を行う目的を事前に明らかにすること、それに沿って調査対象や具体的な調査内容を明確に定めておくこと、仮説を立てておくことが調査結果の活用のポイントになります。 

調査結果をもとに情報整理 

調査項目の内容に納得がいくか確認 

調査結果を整理するために、調査項目の基準を確認しましょう。目的を明確にした際にピックアップした調査項目を仮説に照らし合わせるということです。例えば、ゲーム業界を例に挙げた場合、調査項目は主にこういったものです。商品・サービス情報として、ゲームの種類の多さや面白さ、操作性のしやすさといった品質の部分や、人気商品や限定商品、価格などの詳細。宣伝広告として、広報の仕方や場所、回数といった広告の出し方。ブランド力として、知名度やイメージなどです。こうした項目をもとにして基準を確認します。こうして調査項目を確認することで、適切に調査結果を整理できます。 

また、調査目的のタイプについても必要な項目は異なる点に注意が必要です。具体的には、調査目的がビジネスモデルの場合は事業規模、マーケティング戦略、消費者層など。商品やサービスの場合は、商品の特徴、価格、接客サービスなど。調査目的が販売戦略の場合は、販売エリア、販売実績、シェアなど。調査目的が商流の場合は、業務委託時の契約、受注方法や発注方法などが主に必要となる項目です。 

以上のように、調査項目の確認やタイプの把握によって内容に合理性があるか考えることは、調査結果をうまく整理するために有用です。 

調査結果から背景を洗い出す 

調査結果の確認を経て調査結果の整理がついたら、結果から導き出される背景について焦点を当てることができます。自社と比較し、特長と弱点を洗い出して仮説に合わせ調査項目を分析することが重要です。例えば、自社と比べたときに△社の弱みは××であるらしい、といった仮説に対し、調査結果を用いて明確な根拠を得ることで仮説が検証されます。その情報を用いて、背景情報を洗い出すことができます。△社の弱みは□□であるという調査結果が得られた場合には、なぜ□□が弱みとなっているかという背景の考察に踏み入ることができます。調査結果という断片的な情報から、さらに深い考察が可能になるということです。 

また、仮説が外れていた場合には新たに仮説を構築しましょう。△社の弱みは××である、という仮説が成り立たない証拠を見つけたら、別の部分に弱みがあるかもしれないと考え、また検証するといった具合です。このように、調査結果を仮説に照らし合わせ、外れたならば再度構築していくことで、明確に根拠のある情報が集まります。 

その背景から自社活動の具体策に活用 

背景分析が終わったら、自社にどのように活用できるか考えましょう。整理した情報をもとに分類・分析する必要があります。調査に活用できるフレームワークを5つご紹介します。 

  1. 3C分析 

Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点からマーケティング環境を分析するフレームワーク。 

■活用の例 

Customer(市場・顧客)…△社とは業界の市場規模がかぶっている 

Competitor(競合)…競合の△社とは採用している戦略が同じである 

Company(自社)…自社の強みは〇〇である 

結果、市場規模と採用戦略が同じである△社に対しては、自社の強みである○○を利用してマーケティング上の優位に立つことができることが分かります。 

②5フォース分析 

売り手の交渉力、買い手の交渉力、競争企業間の敵対関係、新規参入業者の脅威、代替品の脅威といった、業界全体の収益性に関する5つの力が強いほど業界の収益は低いとするフレームワーク。 

■活用の例 

売り手の交渉力…□社は自社に比べて材料を大量仕入れしているため、供給会社に対する価格交渉力が高い 

買い手の交渉力…□社の商品は自社に比べて代替性が高いため、差別化の点については弱い 

競争企業間の敵対関係…□社は同じくらいの規模の競合があり、競争関係は激しい 

新規参入業者の脅威…いくつかの新規業者の参入はあるが、□社を脅かすほどではない 

代替品の脅威…自社に比べて□社商品の代替品は非常に多い。 

このように、5つのフォース(脅威)を書き出して、自社と□社の競争の構図を理解し比較することで調査結果を活用します。 

  1. バリューチェーン分析 

事業活動を主活動と支援活動に分類したうえで、どの過程で付加価値を出しているか分析するフレームワーク。 

■活用の例 

自社バリューチェーン…仕入れ→提供→マーケティング→サービス 

各レイヤーのコスト…仕入れレイヤーにおいては供給先のコストが高い 

バリューチェーンの強み/弱み…〇社よりも供給コストが高い 

結果、どんな活動が価値を生み出すのに重要なのかを分析することができます。 

④SWOT分析 

強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つを組み合わせて分析することで市場機会や事業課題を発見するフレームワーク。 

■活用の例 

強み(Strength)…×社は、価格や品質が強みである 

弱み(Weakness)…×社は、認知度やブランド力が弱い 

機会(Opportunity)…×社は、市場規模や成長性が高い 

脅威(Threat)…×社は、競合による脅威がある 

結果、×社とは強みがかぶっているが認知度やブランド力については違いがあるのでそこが顧客に伝わるような戦略を取ろう、といった活用が可能になります。 

⑤4P分析 

製品(Product)、値段(Price)、場所(Place)、広告(Promotion)の4つの観点から企業戦略を策定するためのフレームワーク。 

■活用の例 

製品(Product)…工具を扱う☆社の製品は丈夫である 

値段(Price)…☆社の製品は高価である 

場所(Place)…☆社はネットで主に販売している 

広告(Promotion)…☆社は広告活動に力を入れていない 

結果、☆社とは場所がかぶっているが、自社には広告に割ける予算があるため☆社と比べて積極的に広告を利用する戦略を取ろう、といった活用が可能になります。 

このように、フレームワークを用いて軸を設定して調査結果を活用することで、自社の立ち位置やポジションが理解しやすくなり、具体策に活用することができます。 

調査結果活用へのサポート例 

上記のようにして得られた有用な調査結果を活用するために、マーケティングリサーチ手法を使ったさまざまなサポートの方法があります。 

・市場規模を知りたい場合 

POSデータ分析による調査結果活用…商品が購入された時点のデータを集めることによって、売れ筋の商品や売れやすさのパターンなどを明らかにする。 

消費者webパネル調査による調査結果活用…同じ調査対象消費者(パネル)に繰り返しアンケートを行い、今後の購入計画などを把握するサポート方法。 

・競合企業の動向を知りたい場合 

企業中期計画・決算短信によるデータ活用方法 

帝国データバンクなどの信用調査のデータ活用 

従業員インタビューへのデータ活用方法 

・流通を把握したい場合 

流通構造の調査へのデータ活用 

バイヤー調査へのデータ活用 

・自社ブランドの強み・弱みを分析したい場合 

自社ブランドイメージ調査 

店頭調査 

ミステリーショッパー 

新商品コンセプトの受容性を知りたい 

・産業構造を把握したい場合 

業界のエクスパートにインタビュー 

法規制・事業ライセンスの調査 

このように、調査により得たデータをマーケティングリサーチ手法に当てはめて利用するサポート方法には様々なものがあります。