コロナリスク世代の購買行動

全世界的に影響を及ぼしたコロナ禍における経済状況の悪化は、まだまだ残っていくと推測されています。そのようなアフターコロナの時代には、どのように消費者の行動は変化していくでしょうか。コロナリスク世代の購買行動の特徴とこれから求められる価値について考えていきます。 

コロナリスク世代とは 

コロナリスク世代とは、新型コロナウイルスの影響で悪化した経済期を生きる世代のことです。 

年代により、その影響は異なります。例えば、現在の大学生ほどの年代は就職活動への大きな影響が見込まれています。インバウンド産業や飲食業の衰退のためです。それにより、付随する労働市場も悪化しつつあります。加えて、さらに下の年代である小学生から高校生世代は、学校が休みになったことによるコミュニケーション不足などの影響が懸念されています。その結果、スマホ依存に陥る可能性が上がっています。このように、コロナリスク世代は年代によってさまざまな影響を受けています。 

コロナリスク世代が感じる不安と欲求

コロナリスク世代は、具体的にどのような不安と欲求を抱えているでしょうか。 

大きく分けて、3つの特徴が挙げられます。 

①家族への感染源にならないか 

祖母・祖父など高齢の家族を持つコロナリスク世代は、コロナ禍によって自分が感染源になることに不安を感じています。感染リスクの高い家族へ移してしまわないためです。 

例えば、自分が外へ遊びに行くことでコロナウイルスを家に持ち帰り、感染リスクの高い家族へ移してしまうことは、非常に取り返しのつかないことです。そうした不安のため、外へ出掛けたい、あるいは家の中だけでなく新しい刺激を受けたいといった欲求があると考えられます。 

②将来への影響についての懸念 

コロナ禍の状況は未だかつてなく、不安定であり予測が難しい状況です。そのため、将来についての不安を感じている人が多いと考えられます。 

小学生から高校生のコロナリスク世代は、学校が休校になった影響で授業に遅れが生じました。そのことで学力の低下について不安に感じる生徒が多いと思われます。また、大学生ほどの年代では、経済状況の悪化を受けて就職に対する不安が強くなっています。世界的に停滞した経済がどのように回復していくかは難しい問題です。 

③コミュニケーション不足 

コロナでの自粛を受けて、人同士が会う機会が減りました。例えば、コロナ以前においては当たり前に行われていた部活や習い事、サークル活動や飲み会など、人との出会いのきっかけになるイベントが全く控えられています。外部のコミュニティに参加することが難しくなった状況では、人々のコミュニケーション不足による人間関係への不安が強くなると考えられます。 

このような不安を受けて、コロナリスク世代は外部のコミュニティとコミュニケーションを行いたい欲求を持っていると考えられます。 

以上のように、コロナリスク世代はさまざまな不安や欲求を抱えています。 

都市部/地方での違い  

コロナリスク世代の行動は、都市部と地方で違いが見受けられます。 

中でも、テレワークの導入については大きく異なっています。 

比較的人口の多い都市である東京・神奈川・大阪などにおいてはテレワーク導入が活発なことに対して、その他の道府県ではあまり導入されていません。感染する可能性の高い都市部では、テレワークは必須の仕事アイテムとなりました。しかし、人口の少ない地方においては優先順位が低く、採用されないまま対面で仕事が行われているのです。このように、都市部では活発にテレワークが利用されていますが、地方においてはあまり採用されていません。 

この点を受けて、コロナ禍の仕事をリモートで行いたい地方の人々が都市部の仕事場へ移る流れが発生しています。人口が少ないといっても、感染リスクは存在します。そのため、よりコロナ禍に合った働き方を採用している企業へ人が流れていくのです。その結果、地方から都市へと労働力が流れていく構図が生まれかねない問題があります。 

反対に、地方に新しい価値を見出す考え方も出てきています。都市部に比べて、感染リスクが少ないからです。 

コロナ禍を生活するのであれば、少し買い物をするたびに大量の人とすれ違う都市部より、人の少ない地方の方がより安心できるでしょう。また、学校や仕事のオンライン化の流れを受け、地方の弱点とされた部分が解消されることになりました。移動時間が減り、ネット上でコミュニケーションが望めることから、地方へ新たな価値を見出す人々が出てきたのです。都市部よりも地方への需要が増える流れがあるということです。 

このように、テレワークの導入で後れを取った地方から都市部へと労働力が流れている反面、感染リスク自体がそもそも少ない地方に価値を見出す考え方が出てきているというコロナリスク世代の行動が見受けられます。 

コロナリスク世代の安心とは  

コロナリスク世代において安心できることは、時間に余裕があることです。コロナ以前には通学・通勤などに使っていた時間が、コロナ禍のオンライン化を経て自分のために使うことができるようになりました。 

例えば、コロナ以前は朝9時に家を出て10時から出勤し、そのまま会社に居続けて16時に退勤、17時に帰宅というようにずっと会社にいる生活をしていたとします。それが、オンライン化によって10時からリモートで自分の家から出勤し、16時になったらその瞬間からプライベートの時間に切り替えることが可能になりました。また、コロナの発生により半ばパニック状態だった2020年4月,5月には自粛していた人も多く、ほぼ強制的に自分のために時間を使う期間になりました。このような生活で、以前に比べて時間が増えた人が多くなっており、そうした余裕はコロナリスク世代のメリットとも捉えられます。 

コロナリスク世代の人口と市場規模 

コロナリスク世代で、特に大きく購買行動が変化すると思われるのはZ世代/ミレニアル世代です。Z世代とは1990年代中ごろ以降に生まれた世代を指し、ミレニアル世代はそれ以前の1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代を指します。この二つの世代はデジタルネイティブ世代であり、コロナ禍の自粛ムーブにおいては、対面の必要がないインターネットを使って新しい市場を形成していくと考えられます。 

具体的に、コロナ禍において規模を拡大した市場は、Zoomなどの通話ソフトやUberEatsなどの配達サービス、ネットショッピングなどを挙げることができます。もしあなたがリモートワークをする際にはオフィスの代わりにZoomを利用して会議をしたでしょう。また、外出をせずに飲食店の食事を摂りたいときにはUberEatsなどのサービスから配達を頼み、ショッピングモールに行かずに洋服を買いたいときにはネットショッピングで外に出ることなく購入できます。インターネットを使って、自粛中でも家に居ながら様々な購買が可能なことが理解できるでしょう。このように、デジタルに親しい世代であるZ世代/ミレニアル世代は、コロナ禍においてはインターネットを通した新しい市場への需要を拡大させることになりました。 

加えて、情報収集やコミュニケーションもネット上で行われる流れがあります。例えば、ハローワークや地方自治体サイトへのアクセスが増えました。不安定な状況下で気軽に人と会うことができない不安を、インターネットから情報を得ることで解消しようとした人が多かったのです。また、SNSでの会話や閲覧時間も増えました。人と会えない状況で会話がしたい欲求を、ネット上でコミュニケーションを取ることで解決させました。このように、対面で行われた行動がコロナ禍によってオンライン化していき、市場がインターネットの中に移っていることが、コロナリスク世代、特にその中のZ世代/ミレニアル世代における市場の特徴だと考えられます。 

豊かな時間を過ごしてもらうために考えられるこれからの価値とは 

デジタル化がますます進んでいくアフターコロナにおいては、情報の恣意性に焦点を当てる必要があると推察されます。すなわち、ユーザーの思うままに情報の取捨選択が進んでいくことです。 

例えば、SNSにおいて情報を得る際には、知らず知らずのうちに表示される情報が決まっています。野球の情報をよく閲覧する人には野球のニュースが、アニメの情報を得る人にはアニメのニュースが、ビジネスに興味がある人にはビジネスのニュースが表示されるように設計されているのです。同様に、ショッピングサイトで閲覧したページがYoutubeの広告に出てくることもあります。ユーザーが気に入る情報が無意識に提示されているのです。このように、オンラインで得られる情報はユーザーの好みにとても偏っていることは、アフターコロナにおいてさらに重視されるべき点です。 

アフターコロナにおける価値基準とは、ユーザーの好みに委ねられる比率が非常に大きいと考えられます。情報の恣意性が強いことは、言い換えると好き嫌いを極めていくことだからです。そうして、自分が熱中できるデジタルサービスに対して対価を払っていくでしょう。例えば、好みのテイストの映画を取り揃えている映画視聴サブスクリプションに登録することや、為になると感じる記事を購入することです。好きなものが率先して表示されるインターネットの中で、より自分に必要だと感じられる商品やサービスに価値を感じるということです。このように、コロナリスク世代は豊かな時間を過ごしていくと考えられます。 

コロナリスク世代は、不安定で漠然とした不安を抱えつつも、制限された現実の行動範囲をインターネットの中へと広げることで解消していく世代だと考えられます。また、そのようにして急激に開拓されていくインターネット市場に注目していくことでアフターコロナにおける購買行動の変化を推測するヒントを得ることができるでしょう。