SDGsにより持続可能な社会の実現に対する意識が高まるなか、次に注目されているキーワードはサーキュラーシティです。
聞いたことはあるけれど、「意味がわからない」や「事例を知りたい」と感じている方もいるでしょう。
本記事ではサステナブルな取り組みに関心のある方に向けて、サーキュラーシティの概要や国内外の事例3選を紹介します。
Contents
サーキュラーシティとは?
サーキュラーシティとは、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の線形経済(リニアエコノミー)から脱却し、資源を循環利用する循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行に取り組む地域のことです。
そもそも、なぜ線形経済を脱却する必要があるかといえば、以下のような課題を抱えているためです。
- 世界的な人口増加や経済成長による資源採掘量の増加
- 世界の廃棄物量の急激な増加
- 地球温暖化や環境問題の深刻化
- 生物多様性の損失
- 人権問題や紛争
2050年には世界の人口が97億人に達するとみられています。このまま線形経済を継続すると、必要な資源の量や廃棄物の量は2015年の2倍以上になる見込みで、これらの課題がますます深刻化するでしょう。
そこで線形経済の課題を解消し、持続可能な社会の実現のためには循環経済へ移行する必要性があるのです。
また循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、資源を循環して利用し続けられる経済システムを指します。詳しい内容は「サーキュラーエコノミーとは?」の記事をご確認ください。
国内外のサーキュラーシティの取り組み事例3選
海外だけではなく、日本においてもサーキュラーシティの実現に向けた取り組みを実施しています。具体的な取り組みの内容を知りたい方に向けて、国内外のサーキュラーシティの事例3選を紹介します。
アムステルダム:2050年までに100%循環経済への移行
アムステルダムはオランダの首都です。アムステルダムでは、2019年に「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy」を発表し、以下の2つ目標を掲げています。
- 2050年までに100%循環経済へ移行すること
- 2030年までに一次原材料の使用量を半減すること
また同報告書では、これらの目標を達成するために3つのバリューチェーンと17の方向性を定めています。
食品および有機廃棄物の流れ
1つ目のバリューチェーンは、食品および食品廃棄物の流れを改善することです。例えば、揚げ物に使用した廃油を回収してバイオディーゼルに変換するなどが挙げられます。このバリューチェーンの方向性は以下の6つです。
- 都市部で循環型の食料生産を創出する
- すべての住民に健康的で持続可能な植物ベースの食品の消費を推奨する
- 食品ロスを最小限にする
- 家庭や企業からの有機廃棄物の分別収集を拡大する
- バイオマスと食品廃棄物の流れを循環する
- バイオマスや水流からの栄養を循環する
食品や有機廃棄物を適切に処理・循環することで、温室効果ガスの排出量削減も期待できます。
消費財
2つ目のバリューチェーンは、家電や衣類、家具などの消費財の流れを循環することです。消費財の方向性は以下の5つがあります。
- 大量消費・大量生産を避ける
- 消費財のリサイクルを促進する
- 製品の共有化と長期使用を促進する
- 消費財の修理と修復のために地元の工芸センターを増加する
- 再利用・修理・リサイクルに適した製品を使用する
つまり、消費財の修理・再利用を促進することで、資源の使用量の削減や廃棄物の流れを循環できるとしています。
建築
3つ目のバリューチェーンは建築です。例えば木材や廃材は、そのまま使用したり加工したりすることで、建物の建築資材にできます。アムステルダムの報告書では、このような循環方法を以下の6つの方向性で示しています。
- 都市デザイン・総合アプローチ・耐気候構造により、サーキュラーシティの開発を促進する
- すべての建設やインフラプロジェクトの土地割り当てと入札において、循環基準を使用する
- 適応可能な機能とシステムを備えた建物を開発する
- 分解と分別収集を拡大する
- 再生可能な二次建材を使用する
- 民間住宅および公営住宅における循環型改修を促進する
アムステルダムは3つのバリューチェーンをもとに、他の地域に先駆けて循環経済を実現する取り組みを実施しています。そのため、サーキュラーシティの先進的な地域といえるでしょう。
鹿児島県薩摩川内市:サーキュラーパーク九州
出典:サーキュラーパーク九州
鹿児島県薩摩川内市は、2024年2月16日に「サーキュラーパーク九州」の連携協定を締結しました。
サーキュラーパーク九州とは、廃棄物を資源として循環させることで脱炭素やサーキュラーエコノミーの実現を目指す取り組みです。国立大学法人鹿児島大学や九州電力株式会社、サーキュラーパーク九州株式会社、薩摩川内市の連携のもとに運営しています。
2030年までにリソーシング事業やソリューション事業の展開を経て、川内発電所跡地に資源循環拠点を実現する予定です。現在は、廃食油資源循環促進に向けた実証実験やプラスチック包装容器の水平リサイクルなどに取り組んでいます。
薩摩川内市はサーキュラーパーク九州の取り組みにより、世界の脱炭素化のモデルケースとなることを目指しています。
愛知県蒲郡市:サーキュラーシティ蒲郡
出典:サーキュラーシティ蒲郡
愛知県蒲郡市は、「サーキュラーシティ蒲郡」で循環経済の実現を目指している自治体です。サーキュラーシティ蒲郡の目標は、蒲郡市に関わるすべての方のウェルビーイングの実現です。以下の7つの項目を重点分野に指定しています。
- 教育:サーキュラーシティ蒲郡の取り組みの認知や価値観の定着
- 消費:環境負荷が少ない商品・サービスを選ぶ消費行動の浸透
- 健康:社会的なつながりを強化して、生涯活躍できる地域の構築
- 食:地元の食材への理解を深め、環境負荷の少ない「食の循環」の構築
- 観光:持続可能な観光地の追求
- 交通:利便性が高く、環境負荷の少ない交通手段の構築
- ものづくり:製品のライフサイクル全体を見据えたビジネスモデルへの転換
2023年度には、以下の6つのプロジェクトが採用されました。
- まちなかモビリティ
電動モビリティを推進するプロジェクトで、2024年2月には、電動トゥクトゥク(3輪自動車)や電動アシスト3輪自転車などの実証実験が実施されました。
- アップサイクルウェディングドレス
蒲郡市内の工場で、カーテンの製造時に発生する端材をウェディングドレスにアップサイクルする取り組みです。
- みかんの枝から繊維アップサイクル
みかんの枝から抽出した色素を使用して染色する取り組みで、婦人用スーツやスカートスーツを試作しました。
- お昼寝ふとん循環プロジェクト
幼稚園や保育園で使われているお昼寝布団を回収する取り組みです。
- CO2でつくる・つながるプロジェクト
ハウスみかんの育成方法にCO2を活用する取り組みです。
- 廃棄物を燃料化するグリーン発電
可燃ごみを発電のエネルギーとすることで、循環型のグリーン発電を目指しています。
このように、愛知県蒲郡市はさまざまな取り組みを実施し、サーキュラーシティの実現を目指しています。
サーキュラーシティの実現のためにできること
サーキュラーシティの実現のために、企業や個人ができることは例えば以下のような取り組みです。
- 地元の食材を使用する
- 食品ロスを減らす
- 製品のライフサイクルを考えて設計する
- 簡易包装の製品を選択する
持続可能な社会に対して意識が高まるなか、今後もサーキュラーシティの実現を目指す自治体が増えると予想されます。そのため、サーキュラーシティに貢献する新規事業を立ち上げることは、ビジネスチャンスを広げるのに役立つでしょう。