市場調査と情報過多社会に求められる「本質を見抜く力」

現在、旧来の4マス媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の存在感が薄れつつあり、その一方でインターネットやSNSが非常に大きな影響力を持つ時代になっています。

新しいメディアが発達したことで、今までにない自由な発想、周りに影響を受けない個人の感性や考えに基づいた情報発信が各所から展開されるようになってきました。

情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書

情報通信政策研究所の調査によると、30代を境にテレビとインターネットの利用時間が逆転している状況が顕著になっています。現在の学生や新社会人の世代は、PCやスマートフォン、タブレットを介して日常的にさまざまな情報と接触しています。

この傾向は今後も続き、インターネットがさらに圧倒的な影響力を持つようになっていくと考えられます。

情報の取捨選択

4マス媒体が圧倒的な影響力を持っていた頃は、自然と幅広い情報に接していました。ところが、インターネットやスマートフォンの普及によって、今は自分で情報をカスタマイズして取捨選択できる時代になっています。

つまり、自分にとって都合が良い情報ばかりを収集し、反対に都合の悪い情報や興味がない情報は無意識のうちに排除しているということです。こうした情報収集の偏りが、無意識かつ極端に進んでいるのではないでしょうか。

常にさまざまな情報に触れているということは、簡単に情報が手に入る状況にあるとも言えます。そして、情報が簡単に手に入る今だからこそ「メディアリテラシー」が必要です。

昨今、虚構新聞やフェイクニュースなど、あえて嘘の情報を真実のように伝えるメディアが注目されています。
事実を伝えるメディアよりも面白いコンテンツとして人気を集め、一見すると「嘘」が「真実」に見えてしまうこともあります。

虚構新聞

嘘の情報(根拠のない情報)から真実の情報まで、さまざまな情報が氾濫する現在においては、すべてを真正面から受け入れるのではなく、情報の真偽をしっかりと見極めることが非常に重要です。

例えば、病気や健康に関する情報は特に見極めが重要なものの一つです。具合が悪くなったときの対処方法なども簡単に検索できますが、情報の真偽をしっかりと考えて判断しないと、病気によっては手遅れになる可能性もあります。

「まず疑う」から入る思考

つい先日、ふとしたきっかけで『常識を疑うことから始めよう』という本を読みました。

内容としては、「社会人になれば当たり前」「言わなくてもわかるよね?」といった、世の中にあるたくさんの“常識”に従うことは果たして本当の自分なのか?という問いを投げかけたものです。

常識を疑うことから始めよう
参考文献:『常識を疑うことから始めよう』(著 ひすいこたろう、石井しおり)

当たり前になっていることや周りのみんなが当然のように思っていることも、常識を疑い、まずは自分の頭で考える。そうすることで、本来の自分を発見でき、情報や決まり事の本質を理解できるということを伝えているのだと感じました。

こうした考え方は、現在の情報過多社会において非常に重要な発想ではないでしょうか。

マーケティングにおける本質を見抜く力と発想の重要性

筆者は職業柄、多くの調査結果を目にする機会があります。調査結果は膨大なデータの塊であり、さまざまな情報があふれています。そういった膨大な情報を読み解く力と、ここまで述べた情報過多社会との付き合い方には、どこか通じるものがあります。

ただ調査結果という事実のみを見ることも重要ですが、そこからわかる本質や背景を見抜くことこそ、マーケティング活動を最大限効果的に行うために必要な要素だと考えます。

そのためには、たくさんの調査結果に触れ、さまざまな角度から分析をすること。それをリアルな場面で感じ取り、多様なケースを体験することが重要です。

リアルな体験を通じて自分なりに考察することで、ようやく血となり肉となって自分自身の力になっていくのだと考えます。

とはいえ、自分一人の力だけで考えるのは難しいことも多く、ただ知識が豊富にあればよいというわけでもありません。

そういった場合には、その業界に詳しい人間以外の人材、つまり第三者が入ることで、新しい発見や本質が見えてくることもあるのではないでしょうか。
業界の常識を疑ってかかることで、新しいビジネスチャンスやビジネススキームが生まれ、現状の問題や課題を打破するきっかけにつながるのだと考えます。

「経験がない業界だから」「難しい業界だから」と諦めてしまう前に、経験がない業界や難しい業界だからこそ、外部の力を借りてみてはいかがでしょうか。