ジュース界の覇者「JOE & THE JUICE」に学ぶ “良いもの” を広げる秘訣

いまやコーヒーと近い感覚で気軽に立ち寄って頼むことも少なくない「ジュース」。近年さらに加速の一途をたどるウェルネス志向の追い風を受けて、人気は高まるばかり。今回はそんな「ジュース」に注目して、注目のジュースブランドのブランディングを覗いてみようと思います。

ジュースのイメージといえば?「健康」「クレンズ」「自然派」

まず日本で有名なジュースブランドをいくつか見ていきましょう。(ちなみにここでは千疋屋や高野フルーツパーラーといった老舗処ではなく、昨今のウェルネス志向をターゲットに作られたブランドを選定しています)

サンシャインジュース(SUNSHINE JUICE)

SUNSHINE JUICE

http://sunshinejuice.jp/

「日本初のコールドプレスジュース専門店」として2014年1月より、美容や健康など様々な要望に合わせたジュースの組み合わせを提案。味覚だけではなく、頭で、体で美味しいと感じることのできるジュースを提案しています。オンライン通販ではジュースにとどまらずスープやヴィーガン食品など、ブランド独自の目線で厳選されたアイテムを購入することができます。

ジューサリー(JUICERY)

WhyJuice

http://www.why-juice.me/

オーガニックコスメティックでお馴染みの「コスメキッチン」が手がけるジューススタンド。NewWomanなど商業施設内などアクセスの良い立地にあることから見かけたこともあるのでは?自然に近い素材を中心に独自の基準で厳選して使用しており、こちらもナチュラル・オーガニック志向の層から支持されています。

ELLE Cafe

ELLEcaféJUICE CLEANSE

https://ellecafe.jp/columns/ellecafe-juicecleanseprogram/

番号の入ったオシャレなボトルが印象的な、ジュースクレンズプログラムを看板アイテムとして世に出し早数年。いまだ衰えない人気を見るに、今やすっかり定着した感もうかがえます。

以上、国内ではすっかりお馴染みのブランドですが、正直なところ受けるイメージは似ていると感じる方も多いのでは?まるで美容意識の高い女性たちが起き抜けの朝やランチタイムに優雅に飲んでいる・・・そんな光景が浮かんでいるかもしれません。

一方、視線を日本国外に向けてみるとその光景は大きく変わります。しかも先ほどのジュースのイメージを根こそぎ覆すようなジュースブランドが、今日のジュース界の覇者になっているいるようなのです。

JOE & THE JUICE

コペンハーゲン発。若者を虜にするジュースブランド「JOE & THE JOICE」

世界的にブームのつづくジュース界において、その筆頭として挙げられるのが「JOE & THE JUICE」というコペンハーゲン発のジュースブランド。

2002年に興された「JOE & THE JUICE」は、2009年に初めてイギリスに上陸して以降順調に業績を伸ばし、日本未上陸ながら現在世界では15ヵ国で約270店舗(※2018年9月時点)を展開しています。2017年時点では190店舗だったことを踏まえると、その拡大スピードをお分かりいただけることでしょう。

そのJOE & THE JUICEの最大の特徴は、もちろん豊富なメニューと注文直後に新鮮なジュースを作ってくれる美味しさもさることながら、何と言ってもストリートカルチャー色の強さにあるようなのです。

日本のジュースブランドに共通していた「ナチュラル」「自然派」といったイメージとは一線を画すブランド戦略を垣間見ると、重要なヒントが見えてくるかもしれません。

JOE & THE JUICE

まずは人生を生きること、ジュースはその側にある、という見せ方

いきなり重い話を・・・と思われるかもしれませんが、オフィシャルサイトをご覧ください。真っ先に出てくるファウンダーでありCEOでもあるKaspar Basseのメッセージに、ジュースについての商品説明や原材料についての言及はありません。

まるで人生へのレッスンを説いているかのような彼のメッセージのあいだには、若者がスケートボードに乗るシーンやバスケットボールをするシーンなど、ストリートでの光景がつづきます。

アパレルブランドかベンチャー企業の採用ページサイトのようなビジュアルと熱量ですが、それはまるでジュースが人生のメインではなく、人生を生きるという主目的の側にいつもジュースがあることを自ずと物語っているようにも見受けられます。

ピンクをキーカラーに、ミレニアル世代やZ世代もしっかり意識

現在 #joeandthejuice では9万件を超えるインスタグラムの投稿がされています。インスタ映え代表カラーでもあるピンクをキーカラーにしているJOE & THE JUICEはオンライン上でもしっかりと「映える」ことを見越していたのだとしたら天晴れです。

 
 
 
 
 
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もはや顔採用?イケメンばかりの「Juicers」によるパフォーマンス

特に女性をターゲットにしたとき非常にわかりやすい施策・・・なのかもしれませんが、面白いほどにどの店舗に行っても同じようにイケメンにおもてなしされるというのは、一つの特徴として度々取り上げられています。

 
 
 
 
 
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顧客動向よりも従業員。「Juicers」に重きを置いたブランドづくり

そんなイケメン揃いの「Juicers」ですが、もしかしたらその理由は、輝ける環境にあるかもしれません。というのも、CEOのKaspar Basseの意識の向こうにあるのは顧客動向よりも先にまず「Juicers」である従業員たちだからです。

15ヵ国に展開しているJOE & THE JUICEは「JOE HOUSE」と呼ばれるハウスを所有しており、従業員はそこで生活をしながら海外で働くことが認められています。仕事があるから我慢をする、ではなく、NYという憧れの地へ行きたいからそこで働くーー、これは「Juicers」自身の人生を重視するからこその配慮なのかもしれません。

「従業員にフォーカスすることこそ、マニュアルで作ったものよりも良いものができあがる」というBasse本人の思いは、スターバックスから起業ヒントを得た時から、すでに秘めていたものかもしれません。将来的には住まいのみならず勉学の機会も「Juicers」に提供していきたいという展望もあるとか。

何よりもまず「Juicers」たちの輝く場所を整えること。その彼らがJOE & THE JUICEのいちばんの理解者であることこそ、草の根レベルからこのブランドの価値を引き上げている最大の秘訣なのかもしれませんね。

ウェルネス文脈で広がると思いきや、カルチャーを前面に押し出すブランディングで市場をとってしまっている感もあるJOE & THE JUICE。「健康のためにジュースを飲む」ではなく「ジュースを飲んでいるわたしたち」「Juicersでいる自分」というコミュニティを非常にうまく形成している印象を受けます。

もちろんこれまでも外資が幾度となく撤退している日本市場において、仮にJOE & THE JUICEが上陸して流行するという確約はないものの、なにかと噂の絶えない日本上陸も楽しみではありますね。実現したらどのように受け入れられるか非常に気になるところです。

なにはともあれ斬新なブランディングでジュース界を凌駕する「JOE & THE JUICE」から学ぶことは多いはず。今後の展開にも目が離せません。

参考資料

JOE & THE JUICE

Joe & the Juice boss Kaspar Basse: Employee focus is bearing fruit

Number of Joe & The Juice stores as of June 2018, by country