日本のゴミは東京ドーム115杯分!新時代に取り組むべき “ゼロ・ウェイスト” とは?

注目のゼロ・ウェイスト

世界屈指のゴミ排出大国、日本

環境省が平成最後に発表したレポートによると、平成29年度において日本のゴミは4,289万トンと発表されました。どのくらいの量かというと、なんと東京ドーム約115杯分

あいかわらず数値が大きすぎて現実味がありませんが、約1億2700万人いる日本人1人当たり、1日で920グラムものゴミを出している計算になるのだとか。

みなさん一人一人がいちにちで1kgもゴミを排出している、と考える確かに多いと感じるのではないでしょうか?

そんな中で昨今頻繁に聞かれる注目のワード「ゼロ・ウェイスト」について今回はご紹介したいと思います。まずは2つのグラフから見ていきましょう。

[Zero waste] の直近3年間の検索数ですが、ここ2年程度で飛躍的に世界での注目が集まっていることがお分かりいただけると思います。

また、こちらは [Zero waste] の検索数を順位付けしたマップ。2016/05/03~2019/06/03での結果は、1位フランスに次いで、ベルギー、ラトビア、スイスの順となっています。この意識はヨーロッパを筆頭に、関心が高い様子が伺えますね。

ゼロ・ウェイストとは

では、ゼロ・ウェイストとは一体どのような定義がなされているのでしょうか?

ゼロ・ウェイストとは、すべての製品を再利用するために、再資源化を助長させようという哲学のこと。(Wikipedia)

ゼロ・ウェイストとは、責任ある生産・消費・再利用そして回収、そして、燃やすことの無いパッケージや素材そして環境や人間の健康に外を及ぼすような土地や水、空気を汚染することの無い、すべての資源保全です。(ZERO WATE EUROPE)

つまりは環境に配慮した生産・消費、回収に至るまで、すべてにおいて持続可能なサイクルを作ろうというムーヴメントのことを示すワードとして謳われています。

最近では、15年前まで出たゴミすべてが埋め立てされていましたスロベニアの首都リュブリャナが、2025年までにゴミのうち75%を再資源化させるという「ゼロ・ウェイスト宣言」を行ったことでも注目されました。これはヨーロッパの都市の中でも初の試みです。

15年以上昔に「ゼロ・ウェイスト宣言」をした徳島県上勝町

このゼロ・ウェイストで世界中から注目を浴びつづけている日本の自治体があることをご存知でしょうか?徳島県にある人口わずか2,000人足らずのの上勝町(かみかつちょう)です。

 

 
 
 
 
 
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総面積の85.4%を山林が埋めるこの町の住民は、約800世帯1580人。県の政策がきっかけで町の財源のために「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、その後、地道に活動をつづけています。2003年の宣言は以下の通り。

未来の子供たちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のゴミをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。

1)地球を汚さない人づくりに努めます!
2)ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3)地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!

非常に明瞭ですね。

努力の甲斐あり、2016年にはリサイクル率81%という驚異の数字を実現しています。その取り組みは世界中のゼロ・ウェイスト実践者からの注目を浴びており、年間でこの小さな町に、3,000人近い人々が訪れています。

特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー

特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
http://zwa.jp/

そして世界のトレンドが追いつきつつある現在においてこれらのノウハウは、上勝町で設立された特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーで、広くサービス提供されています。

ゼロ・ウェイストではない切り口で、実践する世界の実践例

ゼロ・ウェイストがこれからの持続可能な世界を実現する為にとても大切な考えであること、それを実践している自治体の素晴らしさについてはわかったけれど…でも実際「ゼロ・ウェイストは素晴らしい!」と謳ったところで、一過性のニュースとして忘れられてしまうでしょう。しかしながら世界では、それ以外の切り口で、着実にゼロ・ウェイストに貢献している人々がいます。

彼らはどのような切り口で実践しているのでしょうか?

「美味しい」を広めるブライトンのシェフ

2014年に、イギリス初のゼロ・ウェイスト・レストランとしてオープンした南部の海辺街・ブライトンのレストラン「SILO」。

ILO Brighton

SILO Brighton
http://www.silobrighton.com/

入り口近くに展示されているコンポスト機(生ごみ処理機)で生ゴミを堆肥にしているほか、食材は中間業者を省く形でほとんどをローカル生産者から直に購入、再生可能な容器で運搬。小麦は敷地内にある施設で製粉され、お酒も地下醸造…といった徹底ぶり。

※このSILOは2019年6月1日の最終営業日をもって、現在はすでに閉店しています。しかしながら次なる挑戦としてロンドンでも注目のヒップエリア、ホックニーへの新店舗出店を企み中だとか。より大きな取り組みを始める彼らにこれからも注目したいですね。

 

 
 
 
 
 
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↓ SILOの哲学をまとめた書籍を近日発売予定

「お得」を謳うミレニアル世代のNY在住の女史

環境に良いということは頭でわかっているけれど……と、多くの人の気持ちを動かすのは甘くありません。しかしながら、そのモチベーションとしていつの世も効果的なのは「お得」であること!どうやらその方式はニューヨーカーにとっても例外ではないようです。

Package Free

SILO Brighton
https://packagefreeshop.com/

そしてこのPackage FreeのCEOとして活躍するのがNYブルックリン在住のローレン・シンガー。多くのお得ティップスを赤裸々に公開している彼女のインスタグラムフォロワーは33万人超!

 

 
 
 
 
 
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お得を謳うことこそ、人間の欲を突いた戦略という意味で本質的と言わざるをえないですが……「結果よければすべて良し」かもしれませんね。

「シェア」で取り組むシドニーのカップル

どんなに努力しても生ゴミが出てしまう…けれどコンポストを購入・維持のは大変……、そんな人にとってこのサービスは願ったり叶ったりかもしれません。

Share Waste

Share Waste
ttps://sharewaste.com/

その名も「シェア・ウェイスト」。〈ゴミを出す人〉と〈ゴミを欲しい人〉をつなぐマッチングサービスです。

ゴミを欲しい人?なんて思うかもしれませんが、いるんです。

ここでの〈ゴミを欲しい人〉=〈生ごみを遣って堆肥をつくりたい人〉のこと。生ゴミは栄養たっぷりな堆肥をつくる大事な栄養素になります。しかしながら堆肥を作る、といってもコンポストが必要になりますし、維持するための場所も費用も手間もかかります。そこでこのマッチングが一役買うわけです。

たとえば、着なくなった服を誰かに譲るフリマを想像するとわかりやすいかもしれません。あなたが「ゴミ」として破棄しようとしたものは、どこかの誰かにとっての「宝の山」かもしれないのです

東京ドーム115杯のゴミを排出する日本でできること

今回ご紹介したのはゼロ・ウェイストのムーヴメントの氷山の一角でしかありません。日々、団体や個人レヴェルでサステナブルな世界を目指しこの動きは広がりつつあります。

翻って、日本はどうでしょう?

上勝町のような取り組みがニュースとして取り上げられるだけあって、現状は「東京ドーム115杯」です。デパートで見かける丁寧な商品梱包、ペットボトル1本購入するだけで断らない限り入れてくれるビニル袋……。

いきなりすべてを変えてしまおうとすることは負担が非常に大きいですが、個人レヴェルとしては「なるべくゴミが出るプロダクトを買わない」「エコバックを持ち運ぶ」「お得を意識すること」など今日からできることがいくつもあります。

一方、小売経営としても「ゼロ・ウェイストの姿勢こそお得である」ということをクライアントに謳うことはできるでしょう。すでに日本でも有料ビニル袋が浸透してきているように、もしコンビニが同じ施策をとったとしたら、日本の光景は変わるかもしれません。

加えて、経営面から見たときにメリットとなることが多いのも事実でしょう。もちろんコンポストまで揃える…となると初期投資など費用面での問題は否めませんが、長い目でみたときに実態の伴ったゼロ・ウェイストは非常に効果的なブランディングとしてユーザー支持に繋がるでしょう。

経営に透明性が求められていくこれからの時代、ゼロ・ウェイストの意識を取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考リンク

一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度)について
https://www.env.go.jp/press/106564.html

Zero Waste Scotland launch new circular economy website
https://www.rebnews.com/zero-waste-scotland-launch-new-circular-economy-website/

From no recycling to zero waste: how Ljubljana rethought its rubbish

https://www.theguardian.com/cities/2019/may/23/zero-recycling-to-zero-waste-how-ljubljana-rethought-its-rubbish

Greener cups, fewer straws and tracing your coffee’s journey via app

https://stories.starbucks.com/press/2019/greener-cups-fewer-straws-and-tracing-your-coffees-journey-via-app/

WHAT IS ZERO WASTE?

https://zerowasteeurope.eu/what-is-zero-waste/

GOING zero WASTE

https://www.goingzerowaste.com/

ZERO WASTE SCOTLAND

https://www.zerowastescotland.org.uk/content/who-we-are

特定非営利活動法人 ゼロ・ウェイストアカデミー

http://zwa.jp/

ゼロ・ウェイスト政策 / 上勝町

http://www.kamikatsu.jp/zerowaste/sengen.html

徳島・上勝町「ゼロ・ウェイスト運動」前編:リサイクル率81%を達成した小さな町の大きな挑戦

https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900038/

8 reasons one Japanese town called Kamikatsu is inspiring us the zero waste way

https://www.ecoconscioustraveller.org/travel-in-japan-8-reasons-one-japanese-town-is-inspiring-us/

Simple, sustainable and not ‘superchef’: the UK’s first zero-waste restaurant

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2014/sep/30/simple-sustainable-not-superchef-silo-uk-first-zero-waste-restaurant