SDGsで注目度の高まる「サスティナブル消費」とは?企業が推進する意義と展開方法を解説 

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サスティナブルとは 

引用:https://miraimedia.asahi.com/sdgs-description/

日常生活で広まるSDGsと同様に、サスティナブルの言葉も身近に目にする機会が増えたと思います。改めてサスティナブルとは、「持続可能な」「維持できる」の意味を持つ言葉です。世界規模で抱えている環境問題や社会問題などに向き合い、問題解決に向け取り組むことで、未来の社会にも人間が住みやすい地球を維持していくような概念として一般的に使われています。 

そして、気温上昇や二酸化炭素濃度の増加などの環境問題や急激な人口増加や貧困格差などの社会問題に向き合い、地球環境を破壊せず次の世代も平和で幸せに生活していける社会を「サスティナブル社会」と呼びます。 

特に身近な問題として、地球温暖化が挙げられると思います。地球温暖化の原因は、様々な要素が重なっていますが、世界人口の増加や経済発展に伴う二酸化炭素の排出量の増加が主な原因と言われています。日本だけでなくアメリカやヨーロッパなどの世界各国でも集中豪雨やハリケーン、高温などの異常気象に直面しており、異常気象が引き起こす自然災害は深刻な影響を与えています。 

また世界的な人口増加問題も無視できません。2011年には世界人口が70億人を超え、2100年には約110億人にまで達するとも予想されています。急激な人口増加が引き起こす問題は、貧困格差の拡大や雇用不足、食糧不足などが挙げられます。食糧不足問題に関しては、2019年において飢餓人口が約6億9,000万人になり、11人に1人が飢餓に苦しんでいるそうです。 

これらの問題解決に取り組み「サスティナブル社会」の実現に向けた消費活動を「サスティナブル消費」と言います。「サスティナブル消費」は消費者だけでなく企業に対しても積極的な取り組みを求めています。後ほど詳しく説明しますが、環境や社会に配慮した取り組みをしている企業は投資家からも注目されており、「サスティナブル消費」は今後の企業の成長に欠かせないものとなるかもしれません。 

エシカル消費との違い 

エシカル消費(倫理的消費)は、人や社会、環境に対して良い商品などを購入する消費行動のことです。消費者庁ではエシカル消費について、「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」と説明しています。

言葉の意味からエシカル消費は、主に消費者向けの啓蒙活動で消費行動を変えてもらう意識が強く、消費者に焦点を当てた内容の情報が多くあります。 

対してサスティナブル消費は、サスティナブル社会の実現に向けた取り組みの一環で、消費者や企業に啓蒙活動し社会全体の動きを変える意識が強く、消費者庁の宣伝でも、環境経営やSDGsに取り組んでいる事業者の事例を公表しています。 

サスティナブル消費に関するSDGsについて

SDGsとは、「持続可能な開発目標」のことです。Sustainable Development Goalsの頭文字を取っています。2001年に決定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後を引き継ぐ形で、2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されました。SDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として掲げられ、17のゴール・169のターゲットから構成されています。「No one will be left behind」日本語で「誰一人残さない」の意味を持つスローガンを掲げ、発展途上国と先進国が共に取り組んでいくことを誓っています。 

日本におけるSDGs推進本部は、本部長に内閣総理大臣、副本部長に官房長官・外務大臣、全閣僚で構成されています。SDGs推進本部は、SDGs実施指針に沿って、日本が積極的に取り組むべき課題を8つ優先し「SDGsアクションプラン」を策定しています。 

そして「SDGsアクションプラン2022」には、子育て環境の整備や地方のデジタル化、太陽光や水力、風力などのクリーンエネルギーの推進などが重点事項に定められています。 

また日本には、SDGsの目標に貢献する素晴らしい取組を行う企業・団体等に対して表彰する「ジャパンSDGsアワード」という制度もあります。2021年の本部長賞には、株式会社ユーグレナが選ばれ、その他の賞には、NPO法人や高等学校も選出されていました。 

日本独自の制度を設けてまでSDGsを推進する背景には、環境問題や社会問題が深刻に進んでおり無視できない問題だからです。企業だけでなく、消費者向けにも宣伝がされているのも納得できると思います。企業が積極的に活動する意義には他の背景もあり、次の項目で説明していきます。 

企業が推進する意義

未来で企業が成長するには、サスティナブルに取り組むべきと言われています。様々な理由が考えられますが、4つのポイントに絞って説明します。

ポイント①:企業イメージの向上 

SDGsやサスティナブルの言葉が広がり、環境問題や社会問題を意識する人が増えているからです。特にZ世代においては、社会人になる前に東日本大震災やコロナウイルスの流行を経験しており、社会問題などに対する意識が強い傾向にあると言われています。またZ世代の消費行動は新しく、本当にお金を支払う価値があるものか検討してから購入する人も多いようで、本質を見抜く意識が他の世代より高いとも言われています。 

そのため、Z世代が就職活動をする際、環境問題や社会問題の解決に向け取り組んでいる企業を好む可能性が考えられるでしょう。企業の立場としては、応募者多数となり求めている人材を雇いやすくなるかもしれません。

ポイント②:社会の課題への対応 

SDGsには17の目標があり、目標を成し遂げるための課題を解決することで、経営リスクの回避や社会貢献、地域の信頼の獲得に繋がる可能性があるからです。 

ビジネスにおいて、消費者が抱える不便や不満には大ヒットに繋がるヒントがあると言われていますが、社会問題も同じことが言えるのではないでしょうか。社会問題に向き合うことで、地域の問題解決に役立てれば自社への信頼度は高まるでしょう。向き合う課題の大きさによって、周囲に与える影響度合いに差が生まれるかもしれませんが、利益だけを求める企業には勝てる見込みは十分あると感じます。 

社会が抱える問題にトライすることは、多くの人の役に立つことに繋がる可能性があるので、問題に向き合うこともポイントの1つです。

ポイント③:生存戦略になる

SDGsへの取組が評価される時代になり、人や社会、環境に配慮した実績が無いと取引のスタート地点に立てない可能性があるからです。世界規模で展開をしている企業においては、バリューチェーンを全体的に改善し、関係を持つサプライチェーンにもSDGsに配慮した基準に達しているかを求めているようです。既にIKEAでは、サプライヤーにある一定の基準を要求しているようで、基準に達していない場合は契約しないこともあるとのこと。 

また、投資家の間でESG投資に注目していることも重要なポイント。投資家が投資する基準の1つに、ESGへの取組を注視しているからです。 

ESGとは、Enviromint(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字からなる略語です。この言葉には、気候変動による環境問題、働き方改革、多様性など社会問題に向き合った経済活動、不透明や不正がない経営などの意味があります。 

これまでの企業価値を検討する方法では、財務状況や業績などの分析が重要でしたが、環境問題や社会問題に取り組み、ガバナンスも健全かどうかも企業価値を判断する材料になってきています。投資家は、ESGへの貢献度が今後の企業の成長の鍵になると考えているようです。 

ポイント④:新しい事業機会の創出

SDGsに取り組み地域から信頼を得ることで、地域との連携や新規顧客の獲得など新しい事業展開の機会を期待できるためです。新たな分野へ挑戦することで、イノベーションや協力関係の構築に繋がる可能性があります。 

また、SDGsには潜在的な需要があると見込まれています。SDGsによってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドル、2030年までに世界規模で考えられる雇用は約3億8000万人に達するとの予想。市場規模と雇用の視点から、SDGsに掲げる169のターゲットには今後の社会において新規需要への期待も高まっています。 

これら4つのポイントから分かるように、SDGsに取組むことでブランドの構築や地域との連携、新規需要の開拓といったメリットがたくさんあります。投資家もSDGsに向き合う企業に期待している部分も大きく、国がSDGsを推進している背景も納得できるかと思います。 

サスティナブル消費の展開例

サスティナブル消費の事例として、2社をピックアップしました。 

①三菱商事 

三菱商事はシンガポールの農産物商社の大手、Olam International社と手を取り合い、サスティナビリティなコーヒー豆やカカオ豆を提供しています。SDGsやサスティナブル消費の言葉が広がり、消費者が環境や社会に配慮したサスティナブル商品を求めている傾向にあります。小売店はメーカーにサスティナブル商品を求め、メーカーは原材料を生産者に求めている構造に目をつけ、営農指導による生産性向上やテクノロジーを使った児童労働問題、環境負荷の低減などに取り組んでいます。 

②セブン&アイ・ホールディングス 

お客様も参加型のサーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現し、野菜工場の稼働によるフードロスと水資源の削減に成功しています。サーキュラーエコノミーの取り組みは、店頭でペットボトルを回収し、回収したペットボトルをリサイクル材として新たな商品を販売する構造を作り上げています。その結果、2018年度には、約3億本のペットボトルの回収を達成したそうです。 

野菜工場については、無農薬栽培と安定した収穫を達成し、歩留まりの改善によるフードロスや水資源の使用量を大幅に削減しています。露地栽培では歩留まりが60%に対し、野菜工場では90%、水資源の使用量は約9割も削減しているそうです。

おわりに 

サスティナブルの概要から事例紹介まで詳細に説明してきました。サスティナブルな消費や世界が抱える問題の大きさについてどのように感じたでしょうか。これまでは、経済の発展や便利な世の中に向け環境問題や社会問題など、あらゆる問題をある程度無視して発展を遂げてきましたが、未来の地球について考え具体的な対策に取組む時代になっています。 

今後の企業の中長期的な戦略に、環境や社会問題に取り組む具体的な施策がないと、他の企業と差が開くことが予想されています。これからのZ世代やα世代にも美しい地球を残せるように、サスティナブルを意識していきましょう。