自動配送ロボットが変える物流の世界!メリットや課題を解説

自動配送ロボットとは、自動運転技術を活用し、物流拠点や小売店から消費者に荷物を届けるロボットです。2023年4月に道路交通法が改正され、公道を走れるようになりました。

物流業界の人材不足やEC市場の拡大に対応するために、各メーカーが実用化に向けて、開発・実証実験に取り組んでいます。

本記事では、自動配送ロボットが注目される背景やメリット・デメリット、課題についてわかりやすく紹介します。

Contents

自動配送ロボットが注目される背景

自動配送ロボットは実用化が期待されている技術です。なぜ注目されているかといえば、以下の背景が影響しています。

  • EC市場の拡大による宅配需要の急増
  • 物流業界の人手不足
  • 買い物弱者への対応

それぞれの背景について掘り下げてみます。

EC市場の拡大による宅配需要の急増

国内のEC市場規模は、年々右肩上がりに拡大しています。2013年の市場規模は11兆円でしたが、2021年には20兆円を超えるほどに成長しています。市場規模の推移は以下のとおりです。

出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

EC市場が拡大するほど、宅配需要が増えることを意味します。

国土交通省の調べによると、2021年の宅配便取扱個数は49億5,323万個でした。前年比で1億1,676万個も増えています。急増する宅配需要に対応するために、自動配送ロボットが期待されているのです。

物流業界の人手不足

宅配需要が拡大している一方で、物流業界は深刻な人手不足が続いています。

近年、トラック運転者の有効求人倍率は2倍程度で、全職業平均と比較すると高止まりしている状態です。

参考:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事

また就業者の29歳以下の割合は、全産業が16.5%に対して、貨物運送が10.0%とトラック運転者の高齢化が進んでいます。加えて、2024年に時間外労働の時間が年間960時間に規制されることで、さらに人手不足が深刻化すると考えられています。

自動配送ロボットは、このような人手不足の解消に役立つ技術として開発が進められているのです。

買い物弱者への対応

買い物弱者とは、近くの店舗の廃業や移動手段がなくなり、生活に必要な買い物が困難になっている方のことです。高齢化・過疎化が進む地方において、問題となっています。

そこで、自動配送ロボットを活用した移動販売が注目されています。荷物を積んだ状態で地域を巡回することで、買い物弱者も買い物がしやすくなるためです。

自動配送ロボットを導入するメリット・デメリット

自動配送ロボットを導入するメリットとデメリットを以下の表にまとめました。

メリット・人手不足を解消できる
・非接触で配達できる
デメリット・到着までに時間がかかる
・導入コストがかかる

メリット① 人手不足を解消できる

自動配送ロボットは、配送作業を自動化できるため省人化につながります。普及が進むことで、物流業界の人手不足が解決できます。

メリット② 非接触で配達できる

新型コロナ禍では、宅配においても非接触のニーズが高まりました。玄関前に荷物を置いてもらう、置き配サービスを利用した方も多いでしょう。

自動配送ロボットを導入すると、非接触の配送が可能になります。今後もコロナウイルスや新たなウイルスが流行しないとは限りません。

そのような場合に、自動配送ロボットは配達先、配達人の感染リスクを下げられるメリットがあります。

デメリット① 到着までに時間がかかる

自動配送ロボットはメリットばかりではなく、デメリットもあります。1つ目は、到着までに時間がかかることです。道路交通法の改正により、公道を走れるようになりましたが、最高時速が6kmという制限があります。早足程度のスピードのため、どうしても目的地に到着するまでに時間がかかります。

デメリット② 導入コストがかかる

導入コストは目的やロボットの大きさなどにより異なりますが、初期費用が数百万円に加えて、1台あたり月10万円程度のコストがかかります。このように、導入コストの高さが自動配送ロボットのデメリットです。

自動配送ロボットの普及の課題

自動配送ロボットは実証実験が進み、各地で活用の検討が進んでいます。ただし、本格的に普及するには、以下の2つの課題をクリアする必要があると考えられています。

  • インフラの整備

自動配送ロボットが走行する場所は歩道ばかりではなく、車道と歩道の区別のない場所もあります。そのような場所で、事故なく安全に配達するためには、インフラの整備や社会受容性の向上が必要です。

  • 遠隔監視システムの省人化

自動配送ロボットは、センサーで周囲の状況を判断することで、安全に走行するように設計されています。加えて、さらに安全性を確保するために、1人のオペレーターがロボットを遠隔監視しています。

しかし、1人のオペレーターが1台のロボットを監視していても配送効率は向上しません。1人のオペレーターが4台を同時に監視する製品も開発されているものの、より多くのロボットを同時に監視できるシステム開発が必要です。

日本企業の自動配送ロボットの取り組み

各メーカーは実証実験を行うなど、自動配送ロボットの実用化に向けて、研究・開発を加速させています。ここでは、日本企業の取り組みについて紹介します。

日本郵政:ドローンと自動配送ロボットによる無人配送サービス

出典:日本郵政

日本郵政は、ドローンと自動配送ロボットを組み合わせた無人配送サービスの構築を目指し、これまでに数々の実証実験を実施しました。

  • 2018年

福島県南相馬市および双葉郡浪江町にて、実際の道路環境や配送環境に近い自動車学校で、無人配送の実験を行う

  • 2019年

日本郵便オフィスで、配送ロボットがエレベーターと連動し、フロアを移動して社内便配送の実証実験を行う

  • 2020年

日本初となる公道での実証実験を行う

このように、積極的に自動配送ロボットの実証実験を行っています。

ヤマト運輸:京セラと共同による個人向け配送サービスの実証実験

出典:ヤマト運輸

ヤマト運輸と京セラは北海道石狩市で、公道を使った自動配送ロボットによる個人向け配送サービスの実証実験をしました。

物流大手のヤマト運輸と、自動配送ロボットの京セラが手を組み、実用的・効率的な製品の開発が進められています。

なお、京セラは大型の自動配送ロボットの開発をしているメーカーです。ほかにも、移動販売ロボットなどを手掛けています。

楽天:自動配送ロボットを使い毎日配送を実施

出典:Rakuten Drone

楽天は、茨城県つくば市内の「西友」と「スターバックス」の商品を、自動配送ロボットを使い地域の住民へ配送しています。すでに毎日配送サービスを提供していることから、実用化している事例といえるでしょう。

消費者がスマホ向けの専用サイトから商品を注文すると、30分~1時間で届くとのことです。

自動配送ロボットが当たり前になる時代が近づいている

自動配送ロボットは、物流が抱える問題の解決に期待されています。2023年4月に道路交通法も改正され、公道を走ることも可能になりました。

今後もインフラの整備、ロボットの開発・研究が進み、暮らしに自動配送ロボットが当たり前になるかもしれません。これからの展開や活用方法に注目していきましょう。