今さら聞けないスターリンクとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

先日、テスラやX(旧Twitter)を率いているイーロン・マスク氏は、ガザ地区にスターリンクによる通信回線の支援を表明し、話題になっています。

このように聞くと、以下のような疑問を持つ方もいるでしょう。

「そもそもスターリンクって何?」

「なぜ、外国の企業が紛争地でインターネット通信を提供できるの?」

そこで本記事では、スターリンクについて今さら聞けないという方に向けて、概要やメリット・デメリット、利用方法について徹底解説します。

Contents

スターリンクとは何?

出典:Starlink

スターリンクとは、イーロン・マスク氏が運営するSpaceXの衛星回線サービスのことです。スターリンクは低軌道衛星を利用し、世界中どこでも使える通信回線網を構築しています。

地上でインフラを整備することなく、通信回線が使えるため、ウクライナやガザ地区などの紛争地においても容易に通信回線網を構築できるのです。

スターリンクの仕組み

出典:Starlink

スターリンクは、高度550kmにある低軌道衛星と地上にあるアンテナが送受信することで、インターネット接続ができる仕組みです。

従来の静止衛星軌道と比較すると、地表から65分の1という近さのため、低遅延と高速通信を実現しています。

ただし低軌道衛星は地表に近い分、1個でカバーできる範囲が狭くなるため、すでに4,800個以上が打ち上げられています。

なお、将来的には1万2,000個を打ち上げて、全世界を超高速通信で結ぶ予定です。

現在スターリンクが使えるエリア

スターリンクのサービスエリアは公式サイトで公開しており、2023年10月31日時点は以下のとおりです。

出典:Starlink

このように、日本はすでに対応エリアに含まれています。具体的には、2022年10月から利用できるようになりました。

スターリンクと一般的なインターネットの違い

スターリンクと一般的なインターネットの違いは、地上のインフラの必要性があるかどうかです。

例えば、光回線であれば光回線網を敷設する必要がありますし、スマホなどの通信回線であれば基地局の整備が必要です。

一方、スターリンクはすでに衛星が打ち上げられているため、地上にアンテナさえあれば通信回線を構築できます。

スターリンクの4つのメリット

スターリンクは、世界中でサービスエリアを広げ、着実に利用者数を増やしています。多くの方が魅力と感じているのは、以下の4つのメリットが挙げられます。

  • 地球上のどこでも利用できる
  • 簡単に設置できる
  • 通信速度が速い
  • 災害時に通信回線を確保できる

スターリンクの理解を深めるために、各メリットの詳細を確認しましょう。

メリット① 地球上のどこでも利用できる

スターリンクは衛星とアンテナが送受信できれば、理論上、地球上のどこでも利用できるのがメリットです。

例えば、山奥や海上など、これまでの技術では難しい場所にも通信環境を構築できます。ほかに、発展途上国や新興国などのインフラ整備が進んでいない地域でも、利用できるのはメリットといえるでしょう。

ただし、サービスを利用・提供するには各国の許可が必要です。

またスターリンクは、アンテナを介さずに直接スマホと接続できるサービスを目指しているので、今後はより利便性が高まると期待されています。

メリット② 簡単に設置できる

スターリンクのメリットは、アンテナを簡単に設置できる点です。

アンテナとWi-Fiルーターを接続し、Wi-Fiルーターとスマホを接続することで、インターネット通信が可能になります。

工事不要で設置できるほどの手軽さが人気の秘密です。

またスターリンクのアンテナには、方向を自動で調節する機能がついています。この機能により、低軌道衛星の位置に自動で向いてくれるため、手動で調節する必要はありません。

メリット③ 通信速度が速い

スターリンクは一般的な衛星よりも地表に近い低軌道衛星と通信するため、より高速な通信速度を実現できます。

各社の通信回線速度のデータを収集している「みんなのネット回線速度」によると、スターリンクの平均ダウンロード速度は48.89Mbpsです。

モバイルルーターの平均ダウンロード速度は34.77Mbpsであることから、モバイルルーターよりも高速な通信が期待できるでしょう。

ちなみに、光回線の平均ダウンロード速度は356.09Mbpsです。

※平均ダウンロード速度とは、インターネットのテキストや写真、動画などのデータを閲覧する際の速度のこと

メリット④ 災害時に通信回線を確保できる

スターリンクは地表にインフラの設備がないため、災害時に強いのがメリットです。

例えば大地震が起きても、大雨・大雪が降っても、低軌道衛星に影響を与えることはありません。

アンテナが使えるのであれば、災害時でも通信環境を確保できます。そのため、災害時の備えとして利用するのも1つの方法です。

スターリンクの3つのデメリット

スターリンクは新たな通信技術として注目を浴びていますが、デメリットがないわけではありません。この章では、スターリンクが指摘されているデメリットや問題点について紹介します。

デメリット① 上空に障害物のない場所に設置する必要がある

スターリンクのアンテナは衛星との間に障害物があると、電波をキャッチできません。例えば、木に囲まれた場所では、利用できない可能性があります。

そのため、利用する際は上空に障害物がない場所に設置してください。

また、スターリンクのアンテナには方向を自動で調節する機能が搭載されています。360°回転しても、アンテナの動きを妨げずに、障害物のない場所を探しましょう。

デメリット② ほかの通信回線サービスに比べて割高

スターリンクを利用するためには、アンテナとWi-Fiの購入費用に加えて、通信回線の月額利用料が発生します。他の通信回線サービスに比べて割高なのがデメリットです。

コストコではアンテナとWi-Fiルーター、2カ月分の月額利用料込みで、55,000円(税込)です。※2023年10月31日時点の価格

デメリット③ 光害の可能性がある

スターリンクの低軌道衛星は、光を発しながら地球上をグルグル回っています。その光によって遠い惑星の光が見えなくなるため、天体観測などに大きな影響が出ると考えられています。

この主な原因は、スターリンクが地上から肉眼ではっきりと確認できるほどの光を放っているためです。条件がそろうとスターリンクトレインと呼ばれる、直線状に並んだスターリンクの光の粒を観察できることもあります。

スターリンクを日本で導入するには

ここまでの記事を読んでスターリンクを利用してみたい方もいるでしょう。日本ではKDDIとコストコの一部の店舗が取り扱っています。

KDDI

出典:KDDI

KDDIはSpaceXと業務提携しており、国内における法人・自治体向けのスターリンクの事業を展開しています。

2023年7月に海上利用向けのサービスを開始したほか、2024年にはスマホを直接接続できるサービスを展開する予定です。

コストコ

出典:コストコ

コストコでは大阪府門真市のショップとオンラインストアで、スターリンクの販売をしています。

個人用として利用を検討している方は、コストコをチェックしてみましょう。

※コストコとはアメリカ発祥の会員制倉庫型店舗

スターリンクは利用者数を伸ばせるか

スターリンクの利用者数は世界で150万人を超え、順調に拡大しているように見えますが、実際は目標よりも大幅に遅れています。2015年の投資家向けの説明では、2022年時点で加入者数が2,000万人に達すると見込んでいたためです。

今後はエリアの拡大やスマホの直接接続とともに、利用者数を伸ばせるかにも注目が集まっていきそうです。