シニアマーケティングとは?注目される背景や成功事例を徹底解説

日本の高齢化は長年にわたって進行しており、それは現在も継続しています。2023年10月1日時点では、1億2,435万人の総人口のうち、65歳以上の人口は3,623万人で全体の29.1%を占めています。つまり、4人に1人以上が65歳を超えているのが現在の日本の実情です。

さらに、高齢化率は今後も上昇する見込みで、2040年には34.8%、2070年には38.7%と試算されています。このように高齢化が急速に進む中、注目されているのがシニアマーケティングです。本記事では、次のビジネスチャンスを探している方に向けて、シニアマーケティングの意味と注目される背景、成功事例などをわかりやすく解説します。

シニアマーケティングとは

シニアマーケティングとは、65歳以上のシニア層をターゲットとしたマーケティング戦略を指します。商品・サービスの企画や開発、販促施策など、シニア層のニーズや行動特性に合わせて最適化する考え方です。

シニアマーケティングが注目される背景

日本の人口構造が変化する中で、シニアマーケティングは多くの企業にとって重要なテーマの一つとなっています。その背景を押さえておくために、ここでは、企業がシニアマーケティングに注目する3つの要因について解説します。

シニア層市場の拡大

日本では高齢化の進行に伴い、高齢者人口が増加しています。総務省統計局が発表した高齢者人口の割合の推移を見ても、その増加傾向は明らかです。

参考:総務省統計局「1.高齢者の人口

こうした人口構成の変化を背景に、シニア層を対象とした市場規模も拡大しています。その結果、医療・介護分野に限らず、生活関連サービスや消費財など、様々な領域で新たなビジネスチャンスが生まれています。

実際に、みずほコーポレート銀行産業調査部の調査によると、2025年には高齢者向けの「医療・医薬」「介護」「生活産業」の3市場が合計で100兆円規模に達する見通しです。

人口減少が進み、多くの市場で縮小が懸念される日本において、シニア層市場は貴重な成長が期待できる領域として注目を集めています。

アクティブシニアの増加

シニアマーケティングが注目される背景の一つに、アクティブシニアの増加があります。健康寿命の延伸や医療技術の進歩を背景に、近年のシニア層には心身ともに元気な人が増えています。定年後も働き続けたり、趣味を積極的に楽しんだり、新たな学びに挑戦したりと、従来の「高齢者像」とは異なるライフスタイルを送る人も少なくありません。こうした健康で活動的なシニア層は「アクティブシニア」と呼ばれています。

アクティブシニアは消費に対しても前向きで、自身の価値観に合った商品やサービス、体験には積極的にお金や時間を投じる傾向があります。ニーズを的確に捉えた価値提案ができれば、長期的な顧客関係を構築できる可能性が高い層と言えるでしょう。そのため、中長期的に安定した収益基盤の構築が期待できる点も、シニアマーケティングが注目される理由の一つです。

なお、総務省の2011年の「情報通信白書」によると、2030年の高齢者の8割は介護が不要で自立した暮らしをしていると予測しています。このデータからもわかるように、シニア層の多くは必ずしも支援を前提とした存在ではありません。むしろ、主体的に生活を楽しみ、自ら選択し行動する層が多く存在していることを認識する必要があります。

出典:総務省「変わる高齢者像 -アクティブシニアの出現-

シニア層の多様化

平均寿命の延伸により、シニア層のライフスタイルは多様化しています。例えば、健康を維持しながら仕事や趣味に取り組む人がいる一方で、健康状態に不安を抱え、介護や支援を必要とする人もいます。このように、同じシニア層であっても、生活スタイルやニーズは一様ではありません。

こうした多様性は、シニアマーケティングにおいて難しさの一因となる一方で、細分化された市場が広がっていることを意味します。ライフスタイルや価値観に応じた細やかなアプローチを行うことで、顧客獲得につながる可能性が高まる点もシニアマーケティングが注目される理由の一つです。

成功事例:イオンリテール株式会社

実際にシニアマーケティングに取り組み、成果を上げている企業は多くあります。ここでは、その中からイオンリテール株式会社のMySCUE(マイスキュー)の取り組みを紹介します。

出典:MySCUE

イオンリテール株式会社は、2023年9月にシニアケア事業として「MySCUE」を開始しました。本事業の特徴は、ケアラー(家族のシニアケアや介護に携わる人)を主な対象とし、情報とサービスを一体で提供するプラットフォームを展開している点にあります。

具体的には公式アプリを提供しており、ケアラー同士のコミュニケーション促進や、介護に関する疑問・不安の解消に役立つコンテンツを発信しています。シニアケアに関する情報提供にとどまらず、イオンが展開するネット専用スーパーとの親和性が高い点も特徴です。

同アプリは、2025年4月時点で約9万人が会員登録しており、ニッチな領域でありながら着実に利用者を増やしています。

このようにイオンリテールは、「ケアラー」という視点からシニアマーケティングに取り組み、既存サービスと組み合わせることで、企業側とケアラー側の双方に価値をもたらすサービスの構築を進めています。

参考:MySCUE「ケアの“今”をもっと身近に。MySCUEアプリついにリリース!

シニアマーケティングが難しいとされる理由

成功事例がある一方で、「シニアマーケティングは難しい」と感じる企業も少なくありません。その大きな要因の一つが、ターゲットとなるシニア層の顧客理解の難しさにあります。

例えば、「シニア層はデジタルに弱い」という先入観を持つ人も多いかもしれません。しかし実際には、現在のシニア層の多くがスマートフォンを利用しています。モバイル社会研究所の「2025年シニア調査」によると、60歳から84歳を対象とした調査では、スマートフォンの所持率は89%に達しています。

ただし、スマートフォンを所有していても、必ずしもインターネットやSNSを積極的に利用しているとは限りません。次の総務省の調査からもわかるように、年齢が高くなるにつれて、インターネットの利用率は低下する傾向にあります。

出典:総務省「令和4年通信利用動向調査の結果

このように、デジタル技術を日常的に使うシニア層がいる一方で、インターネットをほとんど利用しない層も一定数存在します。こうした利用状況のばらつきが、最適なタッチポイントの設計を複雑にし、シニアマーケティングのハードルを高めているのです。

シニアマーケティングを成功に導くためのポイント

シニアマーケティングを成功させるためには、年齢だけでターゲットを捉えるのではなく、ライフスタイルや価値観を軸に顧客理解を深めることが重要です。デジタル利用状況やライフスタイルにばらつきがあるため、オンライン・オフラインを組み合わせた柔軟なアプローチが求められます。具体的には、市場調査や消費者調査を通じて、ターゲットとなるシニア層のニーズや実情を深く理解した上で事業を展開しましょう。

まとめ

シニアマーケティングは、高齢化が進む日本において、今後ますます重要性が高まる分野です。市場規模の拡大やアクティブシニアの増加により、大きなビジネスチャンスが広がる一方で、難しさを感じる企業も少なくありません。重要なのは、丁寧な市場調査や消費者調査を通じて、シニア層の顧客理解を深めることです。この姿勢こそが、シニアマーケティングを成功へ導く鍵と言えるでしょう。