競合分析の基本 調査の進め方と活用の仕方

 戦略の策定には、競合他社の分析が重要になります。なぜなら、外部環境としての他社を知ることで貴社についてより深く広い視野を得られるからです。しかし、実際に行われる際には注意点があることに気を付ける必要があります。

競合調査の基本的なことから、進め方や活用の仕方までを説明します。

競合分析とは

 競合分析とは、他社の事業実態、商品戦略、販売戦略、マーケティング戦略の実態を洗い出すことです。それにより、自社戦略を決定する際の視野を広げることが可能になります。例えば、競合社の経営形態を調べるケースではその形態を自社のモデルにすることができ、必要以上のリスクやコストをかけずに体系の検討や再策定などを図ることができます。このように、競合分析によって得られた広い視点から自社を考察する利益を得ることができます。

しかし、注意が必要な点もあります。目的をしっかりと策定してから調査に臨むべき点です。闇雲に調査をしても有益な情報が得られず、その結果有益な活用ができないからです。例えば、来年度の経営方針がきわめて曖昧であるのに競合分析によって他社の方針を参考にしたところで、自社の有益な情報にはなりにくいと考えられます。それどころか、競合分析によって他社の方針を参考にしたところで、かえって自社の目的が混乱する可能性もあります。このように、明確な目的をもって調査に臨む必要があります。

競合分析の進め方

 では、競合分析とは具体的にはどのように進められていくべきでしょうか。調査が実際に行われる際の5つのステップをご紹介いたします。

①目的設定

 最も重要なのは明確な目的設定です。何のために/何を達成させるために分析を行うのかといったことです。なぜなら、その点が疎かであることで逆に損失を被ってしまう可能性があるからです。一般に考えられることは、調査手法の選択ミス、得ようとした情報の選択ミス、活用しきれないデータを集めてしまうなどが起こります。目的設定は競合分析において最も留意すべき点だと言えるでしょう。

②項目設定

 目的を設定したら、目的を達成させるために計画を立てることでより有用な効果を望むことができます。それは、必要な情報を項目化することで設定します。このときヒントとなるのは、マーケティング上のフレームワークである「4P」「3C」の考え方です。

「4C」… Product(商品・サービス) / Price(価格) / Place(立地・流通) / Promotion(広告)

「3C」… customer(顧客) / company(自社) / competitor(競合)

具体的には、競合社のどの項目に焦点を当てて調査を進めていくか決定する際に役に立ちます。例えば、Price(価格)を調べる際には、その項目についてより具体的で詳細な情報を得ることができます。どの情報が必要か考えて臨むことで、目的の明確化が図れます。

このように、これらのフレームワークを軸に必要な情報の項目を設定することで、目的意識を具体化させることができます。

③事実の収集

 項目化が終わったら、それらの項目に沿って、いよいよ情報をしっかりと集める段階に入ります。この際、最適な手法(詳しい説明は下記にて後述)を選ぶことが重要になります。目的に応じて利用すべき手法も大きく変わるからです。効率的な情報集めを行うためには、最適な手段を選ぶ必要があるということです。

④情報収集の読み込みと分析・考察

 情報を集めた後は、収集した事実に対してしっかりとした考察を行う必要があります。直接的な項目の回答が得られるケースは多くないからです。具体的には、事実には必ず背景や経緯があることを理解することが大事です。それらを見つける・考察することにより、どういった戦略の結果が事実につながっているかを整理することができます。このようにして、戦略の全体像を分析することが可能になります。

⑤整理と総括

 情報の取捨選択を行い、得られた考察などを整理します。情報が煩雑になることを避けるためです。調査結果と取捨選択した情報を比較することでまとめをすることができます。このようにして、以上のステップの全体的な総括として展開していきます。

以上の5つのステップが、競合分析の主な進め方です。

では、③事実の収集-⑤整理と総括について、詳しく説明していきます。

様々な調査の手法

 競合分析には、様々な調査手法が用いられます。なぜなら、目的に応じて調査の手法が大きく変わる点、内容に合わせた最適な情報収集の仕方がある点が理由に挙げられます。上述のように、調査手法を誤ることで、大きな回り道になってしまうリスクや意味のない情報を集めてしまう危険があります。効果的に競合分析を進めるための主な調査手法について、データ面の調査・戦略面の調査に分類して具体的にご紹介していきます。

<データ面の調査>

・WEBサイト分析を行う場合

 similerWEB・SEMrush・BuiltWithなどが有用です。メリットとしては、数値情報が明確に出せること、短期間での分析ができることがあげられます。つまり、具体的なデータにより客観的な観測を迅速に行えます。反対にデメリットには、WEB戦略のみの分析、戦略的な情報などの把握が難しいことがあります。数値解析に特化している分、隠れたコンテクストの把握は難しいのです。

・企業概要・数値情報からの分析を行う場合

 SPEEDA・NIKKEI VALUE SEARCHなどが有用です。メリットは、財務諸表による数値情報からのデータ分析が可能なことです。デメリットは、数値情報中心となり、具体的な戦術面、アクション面の現場情報把握が難しいことです。

・2次資料からの分析を行う場合

 各種調査会社発行のデータ類、帝国データバンク、東京商工リサーチなどが有用です。メリットは、業界情報や業界動向、規定項目による企業データが取れることです。デメリットは、業界情報などに関して、特定企業や特定事業の詳細が見えにくいことです。

・ユーザー層を分析する

 WEBアンケート・座談会等の手法などが有用です。メリットは、簡易的に情報が得られる、短期間で情報が得られる、直接利用者の声が聴けることです。デメリットは、回答者により回答の深度が異なる、競合の戦略情報が見えにくいことです。

 以上4つの手法の全体的な傾向として、メリットに具体的なデータは得られやすいことがありますが、デメリットには戦略的な背景情報が見えにくいことがあります。

<戦略面の調査>

・各種戦略を直接的に分析する場合

 上記のデータ的分析で得られなかった戦略面を分析するには、企業ヒアリング、有識者ヒアリングなどが有用です。メリットは、直接的な戦略実態が見えやすく具体的な行動が理解しやすいことです。つまり、よりリアルな情報を集めることに向いています。デメリットは、対象者により情報の偏りがあり全体像が見えにくいケースがあることです。数値などの客観的指標がないため、推測の範疇が大きい手法と言えます。

 以上のように、競合分析には様々な調査手法が存在し、データ面の調査・戦略面の調査それぞれにはメリット・デメリットが含まれることが分かります。そのため、情報収集後の分析・考察やまとめが重要になります。

分析・考察とまとめ

 上記のように、競合分析には様々な側面があり、最適な手法を選ぶことによって多面的な情報を収集することが可能になります。

 情報収集における本来の目的とは、様々な側面からの事実を通して確からしいものにしていくことです。例えば、手法により得られる情報量や情報深度は大きく異なります。そのように得られた複雑な情報をしっかりと考察し意味合いを見つけていく工程が、競合分析を意味のあるものにするために重要な過程と言えます。

分析結果の活用

 競合分析の活用には、他社のみでなく自社の分析も重要となります。競合分析と自社分析の結果を比較することによって、自社の立場把握や戦略策定の視野を広げる活用が成り立つからです。例えば、分析結果の活用法のひとつに、SWOT分析による自社戦略立案を挙げることができます。

「SWOT分析」… Strength(強み) / Weakness(弱み) / Opportunity(機会) / Threat(脅威)

具体的な用い方としては、まずはそれぞれの要素であるStrength/Weaknesses/Opportunities/Threatsを整理します。SWOT分析を行う際の軸となるのは内部環境と外部環境であるため、自社の分析データと競合分析によって得られた観察データを使って要素を整理していくことが可能になります。

次に、要素の組合せによって戦略を考えることができます。

 – Strengths[強み]×Opportunities[機会]

 自社の強みを理解し、どの機会において生かせるかに焦点を当てて戦略を考えることで、強みを活かしてチャンスに乗る。

 – Weaknesses[弱み]×Opportunities[機会]

 自社の弱みはどの機会において克服されることができるかを明確する。チャンスを活かして弱みを克服できる。

 – Strengths[強み]×Threats[脅威]

 脅威となる競合を乗り越える方法を、強みに注目して考える。強みを活かして脅威を乗り越える/競合に勝つ。

 – Weaknesses[弱み]×Threats[脅威]

 自社の弱点はどのように露呈させないべきか考える。競合や市場環境から弱みを突かれないようにする。

 このように、SWOT分析による自社/競合分析結果の活用によって、貴社の可能性についてより深い理解を得られ、戦略策定が可能になります。