日本発祥の競輪!デジタル化の取り組みで復活の兆し

競輪は日本発祥の競技で、オリンピックの正式種目に採用されています。世界でも「KEIRIN(ケイリン)」と呼ばれ、日本が誇るスポーツといえるでしょう。

しかし日本の競輪は、最盛期の約30%まで売上が落ち込むなど、人気の低迷に悩んでいました。そのようななか、2022年の売上が20年ぶりに1兆円を超え、競輪人気が復活する兆しをみせています。

本記事では、競輪の売上が回復した要因と考えられるデジタル化について紹介します。

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そもそも、競輪とはどんな競技?

競輪は、複数の自転車に乗った選手がバンクと呼ばれる競争路を走り、だれが最初にゴールできるかを競う競技です。自転車のスピードだけで勝負が決まるのではなく、各選手の戦略や駆け引きなどの要素が絡んでくるところに面白さがあります。

また競輪は公営競技の1つで、着順を予想し、車券を購入することも可能です。そのはじまりは1948年の小倉競輪場で、すでに70年以上の歴史があります。

競輪の栄枯盛衰

競輪は、1948年に北九州市の小倉競輪場ではじめて開催されました。戦後の娯楽が少ない日本において人気に火がつくのもはやく、瞬く間に全国に広がりました。1948年の競輪場は4カ所でしたが、4年後の1952年には62カ所と爆発的に増えたほどです。

人気拡大に伴い売上も右肩上がりに増え、1991年に1.9兆円を超えました。しかしバブルがはじけたことから、1992年以降は次第に売上が減少し、2013年には6,063億円とピークの約30%という規模にまで縮小します 。

そこから長い間低迷を続けていましたが、2020年を境に大きく上昇し、復活の兆しをみせています。

復調のカギは競輪のデジタル化

長らく低迷を続けていた競輪が、近年復調の兆しをみせているのは取り組んできたデジタル化が功を奏したためです。具体的に、競輪が行ったデジタル化の実例は以下のとおりです。

・インターネット投票の導入
・アプリの活用
・オンボードカメラを搭載
・AR技術の活用

これらのデジタル化の取り組みについて詳しく解説します。

インターネット投票の導入

デジタル化の取り組みの1つ目は、インターネット投票の導入です。

競輪は1985年に電話投票システム、2002年からインターネット投票を導入しました。これにより、全国43カ所の競輪場で開催されるレースを、競輪場や場外車券売場に行かなくても購入できるようになりました。

利便性の高さから電話・インターネット投票の売上は、年々増加しています。経済産業省の調べによると、投票方法別の売上の推移は以下のとおりです。

出典:経済産業省「競輪・オートレース業界の現状と課題

図からもわかるように、2020年(令和2年)になると電話・インターネット投票が急拡大しています。2020年といえばコロナが流行した年で、自粛生活によりECサイトや動画配信サービスといったインターネットサービスの需要が高まりました。

このような需要は「巣ごもり需要」と呼ばれ、競輪も同様にインターネット投票の需要の高まりから売上が拡大したのです。2022年のインターネット投票による売上は、8,551億円で全体の割合の78%を占めるまでになっています。

モーニング・ミッドナイトはネット投票との相性抜群

競輪は開催時間帯により、以下の4つの種類があります。

・モーニング:8時30分~12
・日中開催:10時30分~16時30分
・ナイター:15時30分~20時30分
・ミッドナイト:20時30分~23時30分

※時間帯は目安です。

インターネット投票の割合が高まっている要因に、競輪の開催時間が関係しています。仕事の都合で日中開催に参加できない方も、モーニングやミッドナイトであれば、インターネット投票を使うことで平日でも車券を購入できるためです。

とくにミッドナイトは近隣住民への配慮から、無観客レースという決まりがあるので、車券を購入する方法は主にインターネット投票となります。

アプリの活用

出典:WINTICKET

競輪のデジタル化の2つ目にアプリの活用があります。

競輪は民間事業者のサイトやアプリからも投票できるのが特徴です。そのような民間事業者が開発したアプリは、投票だけではなく、競輪に関する様々な情報を閲覧できます。

例えば、競輪・オートレース投票サービスの「WINTICKET(ウィンチケット)」です。

WINTICKETは、24時間いつでもどこでも手数料無料で競輪の車券を購入できるサービスです。アプリを利用することで、以下の機能を利用できます。

・全国43カ所の競輪場のレースを購入できる
・高画質のレース映像が視聴できる
・ABEMAの競輪やオートレースの番組を視聴できる
・豊富な決済方法で資金をチャージできる
・即時精算に対応している
・レース情報・オッズを確認できる
・AI予想機能が搭載されている

このように投票や競輪に関する情報源として活用されており、インターネット投票の普及に役立っています。

オンボードカメラを搭載

出典:PIST6オフィシャルサイト

株式会社ミクシィは千葉市が主催する競輪リーグの「PIST6 Championship」において、自転車にオンボードカメラを搭載し、迫力ある映像を配信しています。

オンボードカメラの映像はレース会場である「TIPSTAR DOME CHIBA」の競輪場、またはミクシィが運営する競輪・オートレースの投票サービスの「TIPSTAR」で楽しめます。

選手目線の映像により、まるで自分が自転車を操縦しているかのような臨場感を体験できるでしょう。

また「PIST6 Championship」はダンスやレーザーショー、音や光を用いた近未来的なパフォーマンスで盛り上げており、新たな競輪の運営方法としても注目を集めています。

AR技術の活用

出典:ABEMA

動画配信サービスABEMAは、2021年8月19日~21日の平塚競輪場で開催された「湘南クリーンサイクル杯」において、ARマッピングを活用した映像を配信しました。

ARマッピングとは、画面上で現実と仮想が融合する技術です。

具体的には実際の平塚競輪場のライブ映像に、架空の映像を合成し、まるで最先端のスポーツスタジアムのように変える試みです。例えば平塚競輪場のイメージキャラクターにちなんで、シャチがバンクから飛び出すなど、エンターテインメント色の強い競輪レースが楽しめます。

さらに、2021年9月30日~10月2日に行われた「WINTICKET グレードレースSP」では、ARマッピングがさらにパワーアップしました。注目選手の特徴やその強さなどを示すパラメータがAR化されたため、初心者でも楽しめたはずです。

このように最先端技術を使い、より魅力的に発信する試みが続けられているのです。

競輪が抱えている課題

競輪はインターネット投票により、人気が回復しつつありますが、「施設の老朽化」や「来場者数の減少」という課題もあります。今後は、若者や女性、子どもなどが一緒に楽しめるような施設への改修が期待されています。

今後は老朽化した競輪場を改修できるかに注目

競輪はインターネット投票などのデジタル化により、売上回復に成功した業界といえるでしょう。

また2025年には佐世保競輪場の全面改修が終わる予定で、だれもが親しみやすい競輪場になるとのことです。近年の人気の高まりとともに、老朽化した競輪場の改修が進み、来場者数も復活するときがくるかもしれません。

今後は、さらなる競輪のデジタル化や老朽化した競輪場の動向に注目してみましょう。