デルタモデルは、事業の戦略の方向性を検討する際に役立つフレームワークです。3つの戦略ポジションの中から、それぞれの特性を踏まえて最適な戦略を選択する手法です。本記事ではデルタモデルの3つのポジション、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

経営戦略を検討する際、どのように競争優位性を築くかは重要なポイントです。そのような戦略の方向性を検討するのに役立つフレームワークがデルタモデルです。本記事ではデルタモデルの概要や3つの戦略ポジション、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
デルタモデルとは?

デルタモデルは、ビジネスモデルを顧客との関係性から3つの戦略ポジションに分類したフレームワークです。最適な企業戦略を検討するのに利用されています。このモデルは、MITスローン経営大学院のアーノルド・ハックス氏とディーン・ワイルド氏によって提唱されました。
デルタモデルの3つの戦略ポジション
デルタモデルを活用するには、3つの戦略ポジションを正しく理解することが重要です。ここでは、それぞれの戦略ポジションについて詳しく解説します。
システム・ロックイン
システム・ロックインは、業界標準を確立することで競争優位性を築く戦略ポジションです。例えば、業界標準となるプラットフォームを運営するビジネスモデルが該当します。
■システム・ロックインを実現する手法
・業界標準となり得る製品やサービスの開発
業界標準となり得る製品やサービスを開発し、市場に浸透させます。
・顧客の囲い込み
顧客を自社のプラットフォームに囲い込み、他社サービスへの流出を防止します。
・競合企業の締め出し
顧客の囲い込みや市場シェアの獲得により、参入障壁を高め、競合他社を市場から排除します。
これらのステップを通じて、企業はシステム・ロックインの状態を確立し、長期的な競争優位を確保します。
トータル・カスタマー・ソリューション
トータル・カスタマー・ソリューションは、顧客のニーズや課題に対して、包括的に対応する戦略ポジションです。顧客満足度の最大化を重視し、単一の製品・サービスではなく、複合的なソリューションを提供することで他社との差別化を図ります。
■トータル・カスタマー・ソリューションを実現する手法
・水平方向への拡大
関連する商品やサービスのラインアップを広げることで、顧客の多様なニーズに対応します。
・顧客価値の見直し
顧客が本当に求めている価値を再評価し、それに沿った開発や改善を行います。
このように、様々な角度から顧客の課題解決を図ることで、競争優位性の確立を目指します。
ベスト・プロダクト
ベスト・プロダクトは、製品やサービスの品質・機能・価格などで他社と差別化を実現し、競争優位性を築く戦略ポジションです。
■ベスト・プロダクトを実現する手法
・低価格戦略
コスト削減を徹底し、価格面での優位性を築きます。
・イノベーションの推進
新たな技術やアイデアを取り入れ、革新的な製品やサービスを提供します。
このように、製品・サービスの性能や価格で他社を上回ることで、顧客の支持を獲得し、競争優位性を築きます。
デルタモデルのメリット
デルタモデルは、様々な企業や事業に応用できるフレームワークです。ここでは主な3つのメリットについて解説します。
メリット① 戦略の方向性を明確にできる
デルタモデルの3つの戦略ポジションは、企業が進むべき方向性を定める上で、重要な指針です。自社の強みや市場環境に応じて、どの戦略ポジションが最適かを見極め、目指すべき方向性を明確にします。
その結果、意思決定に迷いがなくなり、効果的な施策を実行できます。
また、自社の強みや弱みを正確に把握するには、「SWOT分析」が有効です。そのため、デルタモデルを使用する際はSWOT分析を組み合わせることで、成果につながる戦略を導き出しやすくなります。
SWOT分析について詳しく知りたい方は、「新規事業開発担当になったら知っておくべきフレームワーク」の記事も併せてご覧ください。
メリット② 成長戦略と差別化戦略を両立しやすい
デルタモデルでは、どの戦略ポジションを目指すかによって、企業の成長戦略と差別化戦略の方向性が明確になります。例えば、以下のとおりです。
・システム・ロックイン
業界標準となるようなプラットフォームを構築し、長期的な利益と持続的な競争優位性を確保します。
・トータル・カスタマー・ソリューション
顧客体験の質を深めることで、差別化と同時に事業の成長が可能です。
・ベスト・プロダクト
技術力や革新性を生かして、製品やサービスの魅力を高めることで、市場シェアの拡大を実現します。
このように、成長と差別化を両立できることがデルタモデルのメリットです。
メリット③ 利益の最大化を図れる
デルタモデルの戦略ポジションは、いずれも異なるアプローチで収益性を高められます。そのため、以下のように、それぞれの特性に応じて利益の最大化を図れる点がメリットです。
・システム・ロックイン
独占状態であることから、安定した収益を確保できます。デルタモデルの中で、最も収益性が高い戦略ポジションです。
・トータル・カスタマー・ソリューション
顧客のニーズや課題を包括的に解決することで、顧客満足度が高まります。結果としてLTV(顧客生涯価値)が向上し、収益の最大化につながります。
・ベスト・プロダクト
低コスト化・高品質化などにより、差別化を図ることで、収益性を高める戦略ポジションです。
このように、デルタモデルは利益の確保につながるフレームワークと言えます。
デルタモデルのデメリット
デルタモデルには注意点もあります。ここでは導入・実践の際に直面しやすい3つのデメリットを紹介します。
デメリット① 戦略ポジションの実現が難しい
デルタモデルで示される各戦略ポジションは魅力的ですが、その実現は容易ではありません。
例えば、「システム・ロックイン」には、業界標準となるプラットフォームの構築が不可欠です。加えて、競合の参入を防ぐための仕組みや仕掛けも必要となるため、結果として膨大なリソースや長期的な取り組みが求められます。
つまり、理論的には魅力的であっても、簡単に達成できない点がデルタモデルのデメリットです。
デメリット② 価格を上げにくい
デルタモデルは、顧客との関係性を重視して競争優位性を築くフレームワークです。そのため、顧客満足度を最優先に考える傾向があり、価格を引き上げにくいという側面があります。
また、市場が成熟している業界では価格競争が激化しているケースも多く、値上げが難しいことも少なくありません。このような背景から、利益率の低下を招く可能性がある点も、デルタモデルのデメリットと言えるでしょう。
デメリット③ 経営資源が不足しやすい
デルタモデルを効果的に実践するには、商品開発力・マーケティング力・顧客分析力など、幅広い経営資源が必要です。しかし、企業によっては人的リソースや資金が限られており、必要な資源を十分に確保できない場合もあります。そのため、デルタモデルを導入する際は、まず自社の経営資源を正確に把握した上で、現実的かつ実行可能な戦略を設計することが大切です。
デルタモデルの事例3選

3つの戦略ポジションをわかりやすく伝えるために、ここでは代表的な企業事例を紹介します。
マイクロソフト
マイクロソフトは、システム・ロックインの代表的な事例です。同社は、Windows OSやOfficeソフトウェアで、圧倒的な市場シェアを獲得しています。その結果、多くの企業や個人ユーザーが、同社の製品・サービスを使い続ける環境が生まれています。この仕組みによって顧客を囲い込み、競合の参入障壁を高く保つ戦略を確立しているのです。
ウォルト・ディズニー・カンパニー
トータル・カスタマー・ソリューションの代表例は、ウォルト・ディズニー・カンパニーです。同社は映画やアニメーション、グッズ販売、テーマパーク、ストリーミングなど様々な方法によって顧客体験を提供しています。このように、キャラクターを中心とした包括的なソリューションによって、顧客満足度の向上と差別化を両立しています。
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロを運営する企業です。そのユニクロは、ベスト・プロダクトの代表的な事例です。同社は低価格でありながら、高品質の衣料品を提供することで、顧客のニーズに応えてきました。この取り組みにより、現在では世界に2,495店舗を展開するグローバル企業に成長しています。
デルタモデルで戦略の方向性を定めよう
デルタモデルは、戦略の方向性を決めるのに役立つフレームワークです。成長戦略と差別化戦略の両立が可能で、競争優位性の確保も目指せます。しかし、デメリットもあり、簡単に実現できるものではありません。
そこでセルウェルでは、「事業を拡大したい」「市場の閉塞感を打破したい」という企業様に向けて、コンサルティングサービスを提供しています。事業展開にお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問合せください。

