ふるさと納税とは納税者が応援したい自治体へ「寄付」をすることで、所得税の還付や住民税が控除される制度です。実質2,000円でお得な返礼品が届くため、多くの人が利用しています。
その証拠に、2022年のふるさと納税の市場規模は9,654億円(前年比+ 16%)でした。下記のふるさと納税受入額の推移からも右肩上がりに拡大しているのがみてとれます。
本記事ではふるさと納税をビジネスに利用したい方に向けて、仕組みやメリット・デメリットなどについて紹介します。
Contents
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税とは納税者が応援したい自治体に寄付することで、住んでいる自治体に収めるべき所得税や住民税が控除される仕組みです。納税者が寄付をすることで、応援した自治体から返礼品がもらえるため、お得な制度として人気を集めています。
制度のポイントは以下の2つです。
- 住民税や所得税の控除が受けられるのは、寄付金のうち2,000円以上の部分のみ
- 返礼品は寄付額の30%まで
例として、50,000円を他の自治体に寄付した場合について考えてみましょう。
応援した自治体からは、50,000円の30%である最大15,000円の返礼品を受け取れます。一方、住んでいる自治体の翌年の住民税・所得税から48,000円(50,000円-2,000円=48,000円)が控除されます。
つまり負担額2,000円で、応援した自治体の返礼品がもらえるという仕組みなのです。
ふるさと納税のメリット・デメリット
ふるさと納税は納税者・事業者双方にそれぞれメリット・デメリットがあります。
納税者 | 事業者 | |
メリット | ・全国の特産物をお得にもらえる ・寄付金の使い方を決定できる | ・全国に商品・サービスをPRできる ・販売手数料がかからない ・リピーターの獲得に役立つ |
デメリット | ・控除される金額は年収や家族構成により異なる ・寄付後に控除を受けるための手続きが必要 | ・生産が間に合わないことがある |
ここでは、事業者がふるさと納税に出品するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
メリット①:全国に商品・サービスをPRできる
事業者がふるさと納税に出品すると、全国の同制度を利用している納税者にPRできます。
冒頭に紹介したように、2022年のふるさと納税受入額は9,654億円、受入件数は5,184.3万件です。巨大な市場に自社の商品・サービスを露出することで、ブランディングにも役立ちます。
メリット②:販売手数料がかからない
事業者にとって大きなメリットは、販売手数料がかからないことです。
例えば楽天やYahoo!ショッピングなどのECモールで販売した際は、販売手数料・送料・広告費・出店料などの費用が発生します。それがふるさと納税であれば、これらの手数料をかけずに出品できるのです。
事業者のリスクが低いため、EC事業の取っ掛かりとしてふるさと納税を活用することもおすすめです。
メリット③:リピーターの獲得に役立つ
自社の商品・サービスをお得な返礼品で試してもらうことで、リピーターの獲得が期待できます。効果を上げるためには、返礼品を発送した際に自社サイトへの誘導としてチラシを入れることや、アフターサービスの徹底などが有効です。
デメリット①:生産が間に合わないことがある
ふるさと納税は一般的なECサイトよりもお得感があるため、注目数が予想を超えてしまうことがあります。そのような場合、生産が間に合わないなどのトラブルも予想されます。発送が遅れる場合には、事前に「〇月発送予定」などの告知をしておくことが大切です。
とくに自社サイトとふるさと納税の両方に出品する商品は、注意が必要といえるでしょう。
ふるさと納税の返礼品の基準
ふるさと納税の返礼品はどのような商品でも良いわけではなく、「返礼割合3割以下基準」と「地場産品基準」を満たす必要があります。
●返礼割合3割以下基準
返礼割合3割以下基準とは、返礼品の仕入れ額を寄付金の3割以下にする決まりです。ポイントは自治体の仕入れ額が基準で、販売価格・市場価格ではないことです。
●地場産品基準
地場産品基準は「自治体で生産された商品・サービス」のことで、具体的には以下の項目のいずれかを満たす必要があります。
- 自治体で生産されたもの
- 原材料の主要な部分が自治体で生産されたもの
- 製造、加工、その他の加工の主要な部分を自治体で行うことで、相応の付加価値が生じているもの
- 自治体と近隣の自治体で生産されたものとの混在が避けられないもの
- 自治体のキャラクターグッズやオリジナルグッズなどのように、地域独自の返礼品であることが明白なもの
- 返礼品をセットにする場合、主要なものが基準を満たしているもの
- サービスの主要な部分が自治体と関連性の高いもの
- 以下のいずれかに該当するもの
- 自治体間で連携し、共通の返礼品とするもの
- 各都道府県における特産物を都道府県ごとの共通の返礼品とするもの
- 都道府県の区域内にある複数の市区町村にまたがる特産品を、それぞれの市区町村の返礼品とするもの
- 甚大な災害により返礼品を提供できなくなった場合、代わりに提供するもの
ふるさと納税の返礼品として出品する方法
ふるさと納税の返礼品として、自社商品・サービスを出品する方法を紹介します。
1. 該当の自治体で募集しているかを確認
自治体により随時募集や受付期間が設定されているなどの違いがあるため、まずは自治体に問い合わせてください。
2. 自治体の募集要項を確認
返礼品の提供事業者の募集要項で、応募事業者の要件や採用要件などに該当するかを確認します。
例:「令和 5 年度渋谷区ふるさと納税返礼品提供事業者募集要項」
3. 申請書類を提出
募集要項に記載されている書類を提出します。
4. 返礼品を登録
審査が通ると自治体の返礼品として登録されます。
5. ポータルサイトなどで公開
ふるさと納税の返礼品として公開され、寄付の受付開始です。
6. 返礼品の発送
寄付があると、返礼品を発送します。
ふるさと納税の返礼品の人気事例
ふるさと納税の返礼品は、米・肉類・魚介類などの食べ物に人気があります。全国ご当地の美味しい食材をお得に食べられるとあって、多くの方が返礼品として選択しています。
しかし、食品以外は人気がないのかといえばそうではありません。最近ではモノ消費からコト消費といわれるように、モノを消費するよりも体験を重視する方も増えています。
ふるさと納税も例外ではなく、体験型の返礼品も人気があります。
例えば、愛知県豊橋市の「ファイヤーヒーロー体験」は、放水体験・消防署見学・はしご車搭乗体験などができる返礼品です。消防士に憧れる子どもと家族が一緒に充実した体験ができると話題です。
他に京都府京都市の和菓子作り体験や、静岡県富士宮市のパラグライダー体験などがあります。
ふるさと納税の返礼品はアイデア次第
ふるさと納税は実質2,000円で返礼品を受け取れるとあって、多くの人から人気を集めています。事業者にとって、その人気を利用しない手はないでしょう。しかし、自治体を代表するような商品・サービスがないと困っていませんか。
返礼品は食品・家電・旅行・雑貨・体験型など、多くのカテゴリーがあります。アイデア次第で人気商品・サービスを生み出すことも夢ではないため、この機会に返礼品に出品してみてはいかがでしょうか。