
環境問題・高齢化・地域の過疎化・貧困・教育格差など、現代社会は様々な課題を抱えています。これらの問題は複雑で、行政やNPOだけでは解決が難しくなっています。こうした中で注目を集めているのが、社会課題をビジネスの力で解決するソーシャルビジネスです。社会貢献にとどまらず、経済的にも持続可能な仕組みを構築できる点に特徴があります。本記事では、日本国内で成果を上げているソーシャルビジネス企業3社の事例を紹介し、成功企業に共通するポイントをわかりやすく解説します。
ソーシャルビジネスとは
ソーシャルビジネスとは、社会課題を解決することを目的としたビジネスのことです。ただし、その捉え方は国や地域によって異なります。日本では、経済産業省が以下の3つの要素を満たすビジネスと定義しています。
①社会性:現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
②事業性:①のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
③革新性:新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組を開発すること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

このように、ソーシャルビジネスにはNPOや行政に加えて、社会性や事業性の高い一般企業の事業も含まれます。
ソーシャルビジネスが注目される背景
近年、ソーシャルビジネスが注目されています。ここでは、その背景について解説します。
SDGsや持続可能性への関心の高まり
SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに持続可能な社会を実現することを目指した国際的な目標です。日本でもSDGsの考え方は広く浸透しており、企業や個人の間で持続可能性への関心が高まっています。こうした社会情勢を背景に、企業にも社会的な取り組みが求められるようになりました。実際に多くの企業が社会課題の解決に取り組む中で、ソーシャルビジネスが注目を集めています。
社会課題の多様化と深刻化
現代の社会課題は、環境問題・高齢化・人口減少・貧困・教育格差など、多様化と複雑化が進んでいます。こうした課題は、行政やNPOだけで解決するのが難しく、民間企業の力を生かした新しい解決策が求められています。特に、企業は社会課題の解決と同時に事業としての継続性や収益性も考慮せざるを得ません。その結果、社会的取り組みとビジネスの両立を目指すソーシャルビジネスが注目を集めています。
持続可能な取り組みの重要性
社会課題が複雑化する中、単発的な支援だけでは解決が難しいのが現状です。しかし、NPOなどの非営利活動は、継続に必要な資金面で課題を抱えることが多く、場合によっては長期的な取り組みが困難になることもあります。こうした状況の中、継続的な取り組みを実現できるとして、ソーシャルビジネスが注目を集めています。
企業がソーシャルビジネスに取り組むメリット
企業がソーシャルビジネスに取り組むのは、社会貢献に加えて、多くのメリットが期待できるためです。主なメリットは以下のとおりです。
・ブランド価値・企業イメージが高まる
・顧客からの共感や信頼を得やすくなる
・社会的取り組みが競合との差別化につながる
・投資家からの評価が高まり、企業価値の向上や資金調達の可能性が広がる
・社員のモチベーションの向上につながり、組織全体が活性化する
・取り組みに共感する人材が集まりやすくなる
このように、企業は社会課題の取り組みを通じて、経済的・組織的なメリットを同時に得ることができます。
ソーシャルビジネスの事例3選
ソーシャルビジネスの事例として、国内企業3社の事例を紹介します。
事例① 株式会社ユーグレナ

出典:株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナは、沖縄県で微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)を育成し、食品・飼料・バイオ燃料・バイオプラスチック・培養土・肥料などに加工して販売している企業です。
創業のきっかけは、創業者が学生時代に訪れたバングラデシュで、栄養失調に苦しむ子どもたちを目の当たりにした経験にあります。「子どもたちの栄養問題を解決したい」という思いから、栄養バランスに優れたユーグレナに着目しました。
この理念は実際の取り組みとして形になっており、バングラデシュでは栄養不足の子ども向けにユーグレナ入りクッキーの無償配布を行っています。2014年に始まったこの活動は、2025年3月時点で累計配布数が2,000万食を突破しました。
同社は事業面でも順調で、2024年度の売上高は500億円、営業利益は24億円を記録しています。社会課題の解決と事業の成功を両立させた、国内を代表するソーシャルビジネス企業の一例です。
事例② 株式会社マザーハウス

出典:株式会社マザーハウス
株式会社マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というビジョンのもと活動している国内企業です。具体的には、バングラデシュやネパールなどの途上国に自社工場を設け、現地の素材や人材を生かしてバッグ・ジュエリーなどを製造しています。製造した製品は、日本、台湾、シンガポールにある40以上の店舗で販売しています。
同社のソーシャルビジネスとしての特徴は、現地の労働者が安心して働けるよう、健康診断などの福利厚生を整備し、現地トップクラスの労働環境を提供していることです。
このように、途上国の住民を支援対象とするのではなく、パートナーとして公正な待遇を行うことで、賃金の適正化や労働環境の改善に貢献しています。
事例③ キユーピー株式会社

出典:キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、マヨネーズを主力とする国内大手の食品メーカーです。同社は社会課題の解決の一環として、フードロス削減に取り組んでいます。例えば、マヨネーズを製造する工程で発生する食品残さは、バイオガス発電に活用されています。また、キャベツやレタスなどの葉物野菜の飼料化にも成功しました。
さらに、同社は日本で生産される卵の約10%を消費していますが、その卵を無駄なく活用する仕組みも構築しています。卵の殻は土壌改良剤に、卵殻膜は化粧品に活用され、廃棄物を新たな商品へとアップサイクルしています。
このように、食品ロスの削減にとどまらず、廃棄物を価値ある商品に変える仕組みが同社のソーシャルビジネスの特徴です。
ソーシャルビジネスの成功企業に共通するポイント
先に紹介した3社を比較すると、成功しているソーシャルビジネスにはいくつかの共通点があります。ここでは、成功企業の共通点について解説します。
●社会課題の明確化
いずれの企業も自社の事業や製品の特性を生かして解決すべき社会課題を明確にしています。
・株式会社ユーグレナ:子どもの栄養不足の解消
・株式会社マザーハウス:ビジネスを通じた途上国への貢献
・キユーピー株式会社:食品ロスの削減と資源の有効活用
これらの社会課題を事業の中核に位置付けているのが特徴です。
●収益性と社会貢献の両立
いずれの企業の取り組みも収益性を確保しています。
・株式会社ユーグレナ:2024年度は営業利益24億円を達成
・株式会社マザーハウス:国内外に40店舗以上を構えるまでに成長
・キユーピー株式会社:廃棄物を商品化することでコストを削減
社会貢献と収益性を両立することで、長期的な取り組みを実現しています。
●取り組みの仕組み化
成功企業は、取り組みを仕組み化しているのもポイントです。
・株式会社ユーグレナ:現地でのクッキー配布による栄養支援の仕組み
・株式会社マザーハウス:現地労働者に公正な待遇を提供する生産体制
・キユーピー株式会社:食品残さの活用によるアップサイクル
これら3つの共通するポイントは、ソーシャルビジネスを成功させるためのカギと言えるでしょう。
新規事業のアイデアにソーシャルビジネスを加えよう
ソーシャルビジネスは、社会貢献に加えて、持続的な収益モデルを構築することで企業の新たな成長機会を創出できます。新規事業のアイデアに悩んでいるご担当者様は、環境問題や地域課題など、ソーシャルビジネスの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

